103 / 116
最終章
03.精霊術士の決意
しおりを挟む
――見上げた夜空には、金色の満月が浮かび上がる。
地面からは、まだ熱の余波が漂っているような感覚だ。
谷の真下。流れていた滝は二つに割れて、勢いをなくして宙で散り散りになっている。大きな爆発を受けて、辺りはすっかり崩落してしまった。
わたしたちを中心に、足元には巨大な魔術陣が広がっている。魔術士の人たちが数人がかりで複雑な呪文を唱えている。
崩れた谷底の景色から覗き見える月夜空と、降臨の儀式の様子に、感じ取る。
刻々と、終わりが近づいているんだと。
大きな体をぎゅっと腕に抱いているから、わかる。
儀式が進行するごとに、だんだんと、力が抜け落ちていくのが。失われていくのが。
――出会えてよかった。
儀式が始まって、少ししてのことだ。
クロウさんが、一瞬だけ目を覚ました。意識を取り戻した。
でも、さっきまでの会話は、ほんの僅かな最期の時間だったんだ。
遺した言葉。儀式の光に包まれて、悟った。
愛してるでも、一緒に生きたいでもない。
わたしとここまでの道を辿ってこられてよかった。この道で後悔はしていない。それに、わたしを信じてくれている。そんな言葉だと思った。
膝に頭を置いてあげる。
こうしてると、ただ眠ってるだけみたい。
眠ってるクロウさんは、子どもみたいでかわいい。よく眉間にシワを寄せて、目を細めて睨んでるみたいな顔をしてるから、余計に。
わたしに頭を預けて、体の力を抜いているのが無防備で、幼く感じる。
両腕は真っ黒なままで、魔族の状態から元に戻っていない。瞳の色は、赤から青に戻ってたけど。
でも、と赤瞳の顔を思い出す。あの姿になっても、変わらなかった。どんな見た目になっても、中身が変わってしまったように感じても、クロウさんだと思った。
人間を見下して、蔑んで。人の歴史なんて無意味だ、何もかも滅ぶべきだと声を上げていたけれど。
たくさん迷って、たくさん戸惑っていた。うろたえるところはかわいくて、やっぱりクロウさんなんだと思った。
だけど。
もう、脱け殻なんだ。
頬に触れると、嫌そうにしかめた顔をして起きちゃいそうなのに。
もうクロウさんは、何をしても、どこを触っても、反応を返してくれないんだ。
魔術陣が一際光り輝く。円を描きながらわたしたちのいる中央へと集まってきて、まっすぐに頭上へと伸びていく。
遠くから見たら、光の柱みたいになってるのかな。その中心にいても、不思議と眩しくは感じない。
光を辿るように、空を見上げていると、なんとなく感じた。近づいてきてるんだ、って。
精霊さん。もともとはわたしの中にいたみたいだけど、わたしが暴走させてしまった。わたしを見守ってくれていたはずなのに、復讐の道具に使ってしまった。仇で返すような真似をしてしまった。
そんな精霊さんに、やっと会えるんだろうか。
生まれつき宿っているものじゃない。儀式で呼び出されて、魔族の力を餌にして、正式な形で現世に降臨する、精霊さん。
天を仰ぐ。頭上に、見えた。はっきりと。
「……ああ。そういう姿なんですね」
一目では、水だ、と思った。
水をまとうみたいに、透き通った水が形を作っていく。精霊さんが取る、その姿は。
「人そっくりじゃないですか。精霊も、魔族も、やっぱり人間と生きるために生まれてきたんですか?」
ほとんど、人のシルエットだった。
流れるように水が動いて、形は安定していない。そのせいで顔立ちまでははっきりしない。けど大きさも、頭や手や足の位置も。どこをどう見ても、人と同じ形だった。
「魔族も、とは。大きく出るよのう。のう、ミリア」
「やっぱりわたしのことは知ってるんですね。もともとわたしの中にいた精霊さんですか?」
「いいや? お主の中にいたのは火の精霊。我は水の精霊じゃ。我らは常に人間らを見守っておるでな。名を知るくらい造作もない。それに火の奴は、ほれ、そいつに喰われてしまったからのう」
水の精霊さんは、水流のような手で、クロウさんを指差す。
火の精霊さんがもともとわたしの中にいて、試練の洞窟でクロウさんと会って力を貸してくれたんだ。今目の前にいるのは、別の精霊さんらしい。
「ま。そいつが亡骸となった今や、しばらくすればこちらに戻ってこようぞ。今は留守だから我が召喚に応じてやった、というところじゃ」
水の精霊さんは、切り上げるように言う。
火の精霊さんって、今は留守なんだ。どういうふうにして力を貸してくれてるのかはわからないけど。
改めて見上げて、思う。ようやく、頭が冷静に、今の状況を認識してきた。
……本当に、知覚できた。今まで声すら聞けなかったのが嘘みたいに。はっきりと、目の前にいると、わかる。
ほぼ伝説上の存在。奇跡を起こす、人々にとっては神様のような存在――精霊様。
他の人にも知覚できているみたい。その場にいる誰もが、精霊を見上げて、呆然としているからわかる。精霊の声を聞き入れるように、釘付けになっている。
「して、ミリア。そこな魔族は、我が復活の儀の生け贄となった。何か、成し得たいことがあるはずじゃ。我の力を好きに使え。我はそのすべてを見届けよう」
精霊さんは周りの人たちに目を向けることはない。これだけ注目されても、全然意に介していない。
精霊さんは祭られ、信仰される存在。だからこんな視線なんて今さらなんだ。
問いかけに、改めて気を引き締める。クロウさんを抱き寄せる。
「はい。お力をお借りします」
でも、その前に――。周囲に目をやる。
ダインさん。それにボスさん。二人の傍には、それぞれ魔術士の人が治癒のためについていたはずだ。
ボスさんは、まだ遠いところにいる。支えるために寄り添っているのは、たぶんマチさんだ。
ちゃんと見えてるのかな。聞こえてるのかな。精霊さんの姿は、声は――。
「……アデルさん!」
クロウさんを抱いたまま、背筋を伸ばして声を張る。でも光の向こう側だから、よく見えない。
さっきまで、魔術士の人が懸命に治癒術をかけていた。
頭領を死なせるな。死なないで。無事でいて。そんな言葉が思わず上がるほど、みんな必死だった。
ボスさんが精霊を見られなければ意味がない。みんなそのためにがんばってたんだ。
精霊さんは今ここにいる。みんなにも声が聞こえてる。
ボスさんも、声を、姿を。一目でも。
「どうした、ミリア。我は気まぐれでな。儀式の労など汲まず、さっさと天上に帰ってしまうやもしれぬぞ?」
精霊さんの声に、はっとなる。
……わたしの、成し得たいこと。望み。生きていく希望。
わたしはわたしで、これが願いを叶えるための、唯一の手段だ。これに懸けて、ここまできたんだ。
きっと見えてるはずだと、今は信じるしかないけど。早くしないと、手遅れになるかもしれないから。
精霊さんに向きなおる。
やらなくちゃ。決心していた。確証はなくても、ダメ元でも。これしかないから。
小さく息を吸う。すでに心に決めていたことだけど。
決意を、口にする。
「クロウさんの命を、取り戻します」
「じゃろうのう。そなたであれば、そのための大業であったのだろう」
精霊さんはわかっていたかのように、あっさり言う。
「身体だけであれば、造作もない。欠損なく元の形を作り出せるじゃろう。しかし、そこに魂はない。脱け殻を忘れ形見にして、共に生きようというつもりか?」
「そんなつもりはありません」
首を振る。そんな不確かなものを求めたわけじゃない。
でもボスさんと何度も話して、やっぱりどうあっても無理難題なのは変わらないんだって、悟った。
だから、わたしの答えを出した。
「だから、わたしの全部を代償にして、クロウさんの魂を呼び戻します」
精霊は、神様じゃない。仮初めの肉体は作り出せても、生命そのものは作り出せない。
それならわたしそのものを引き換えに差し出す。全部クロウさんに捧げる。迷いなんかあるわけない。それでクロウさんの人格も、記憶も、呼び寄せて取り戻せるのなら――
「……って。前までのわたしだったら、迷わずそう言ってたんでしょうね」
なんて、前までのわたしなら、考えただろう。
わたしが犠牲になっても、クロウさんが生きていてくれるならいい。クロウさんが無事でいてくれればいい。
それだけ考えて、それしか考えられずに、そんなことをやらかしていただろう。
「わたしはわたしの命を大事にします。そうしないと悲しむ人がいる。たくさんの、生かそうとしてくれた人の想いを無駄にすることになる。精霊の力は、間違ったことには使いません。今まで教えてもらったことにも、背きません」
今までだったら、きっと、迷わず自分を捧げてた。でもそれじゃ意味がないんだ。
クロウさんが命を懸けて守ろうとしてくれたもの。全力を捧げて大切にしてくれたもの。それがわたしなんだ。
前までのわたしは、もうここにはいない。
本当は弱くて、怖がりなあなたを知ったから。
「何より、そんなことしても、クロウさんは悲しんじゃうだけです。また一人ぼっちになっちゃうだけですから」
もう一人にはさせない。怖い思いなんてさせない。
そのままの自分を受け入れられるように。そのままで素敵なあなたを。わたしが、受け止める。
「ならばどうする? 一つの生命の蘇生など、神の領域じゃ。万物の流れを操作する力など、望むには無謀だぞ」
「操作するわけじゃありません。元の形に呼び戻すんです。……できるはずです。この右腕と引き換えなら」
クロウさんの右腕に触れる。魔族のまま戻らない、真っ黒な腕だ。
ここからだ。ボスさんにも話した、わたしの考えた筋道。可能性の糸口。
懸命に繋いだ方法を、口にする。
「精霊が供物として食べるのは、負の魔力っていうエネルギーです。クロウさんが呪術を右腕で吸収して、強力な魔人になったおかげで、古代に近い状態の精霊様をこうして降臨させられた」
負の魔力の話。ダインさんから教えられたことをなぞる。
生け贄として求められるもの。精霊の餌。それは負の魔力だ。生け贄が強力な魔力を持つほど、強力な精霊を呼び寄せられる。
つまり儀式の工程には、魔力以外の要素は必要ないということになる。
クロウさんは右腕で、呪術の使い手そのものを吸収した。呪術の使い手――シャノンちゃんの中には、大量の人間と繋がり続けた結果、純然な魔力以外のものが膨大に詰まっていた。
それは、大勢の人の情報。人を縛り、干渉し続けたことで出来上がった、大量の魂の欠片。
「だから、魔力以外のものが、まだここに残ってるはずです。クロウさんの身体の中に、生け贄としては不要なものが。これから行き場を失う、たくさんの魂の情報が、あるはずなんです」
そのはずだ。
魂を操作しようなど無謀な話。けれど同じものを代償にするのなら。魂という不確かなものを呼び寄せて、精霊の力で元の場所へと戻すことができれば――。
精霊さんは笑う。吹き出したようにも、失笑したようにも見えたけど。
何も言わないまま、水の指先を動かす。それに操られたように、周囲の光が生き物のように動いて一ヶ所に集まっていく。
何かが形作られる。ぼんやりと人のようなものが浮かび上がって、うっすらと色がつく。
人の姿だ。大柄な、赤毛の男の人。でも、幻影みたいなもの……じゃ、ないみたい。
男の人は、まばたきをして、わたしを見る。この場にいる人として、胸に手を当てて、わたしに小さく頭を下げてきた。
「――君の呼び掛けに応えよう。僕でもまだ役に立てるのなら、喜んで力になろう」
精悍な顔立ちなのに、ちょっと気弱な感じの笑みを浮かべる。姿は幻影みたいなのに、声もはっきりと聞こえた。
名乗られなくてもわかった。前にクロウさんは、精神体みたいなものと会い、会話したと言っていた。
右腕で呑み込んで、クロウさんの中で生き続けていた、一つの魂。
この人は、レヴィさんの師匠さん――シレウスさんだ。
「僕の魂はすでに彼に託してある。もう彼のものだ。好きに使ってほしい」
シレウスさんは、クロウさんに目を向ける。今まで何があったのか、これから何が起きるのか、すでに理解したような顔で、それははっきりとした承諾だった。
隣にもう一つ、光が集まっていく。シレウスさんよりもだいぶ光が弱くて、ゆらゆらと不安定だ。それでもゆっくりと姿が見えてくる。
小さな女の子だ。わたしと同い年くらいか、少し下くらい。
金色の髪に、緑の瞳。ダインさんと同じ特徴の女の子が、そこに現れた。
「ミリア。……ありがとう」
長い髪を揺らして、すごく幼く見える笑顔を浮かべる。
……シャノンちゃんだ。そっか。本当は、そんな姿をしてたんだ。
「私の中の、たくさんの魂の情報。あなたたちのためになるのなら、いくらでも使って」
魂の情報。
シャノンちゃんがそう伝えてくれたおかげだ。他人と結びつく呪術の特性と、この利用方法。シャノンちゃんと会話することができなければ、わからなかった。
笑顔で返してあげたかったけど、笑おうとすると涙がこぼれそうになった。気を引き締めるように表情を正して、一呼吸おいてから、口を開く。
「はい。クロウさんを助けるために、あなたたちを使わせてください」
シレウスさんも、シャノンちゃんも、笑って頷く。当たり前のことのように、承諾してくれた。
……最初は、レヴィさんから渡された形見の宝石だ。想いを託されて、それからクロウさんはシレウスさんと会って、より強く決意したと言っていた。
〈聖下の檻〉の地下深くでは、シャノンちゃんに出会えた。声が聞けてよかった。きっと一人ぼっちで、ずっと助けを求めてたはずだ。
たくさんのことを知れた。たくさんの人の想いを辿ってきた。それらに支えられて、わたしたちはここまで来られた。
もう決めていたことだ。わたしは、再び、精霊さんを見上げる。
「……理の逆行じゃ。死にかけの魂どもを代償にしようとも、完全な形とはならぬ」
精霊さんは、念を押すように言う。
「一度失ったものを取り戻すなど、人の世では不可能に等しい。万物の流れに逆らうその意味、重み……微弱な魂が耐えられるかは我も与り知らぬことじゃ」
口調は厳しい。それが現実なのだろう。そう簡単なことではない。
「しかし……それがお主の答えか。ミリア」
それでも、決意は変わらない。無茶なことはとっくにわかってるんだ。今さら迷うなんて無意味だ。
精霊さんは、確認のように聞く。
改めて。わたしの決意を、気持ちを、示す。
「はい。これがわたしの答えです。クロウさんは、絶対に死なせません。一緒に生きるって決めたんです。どれだけ不完全な魂でもいい。元通りになんてならなくても、後悔なんてさせません。わたしと一緒にいて、絶対に幸せにしますから」
できるかどうかじゃない。こうすると決めた。そのためなら手段はなんでもいい。
わたしが、絶対に後悔させない。先のことなんて、怖がらなくていい。
「一緒に生きましょう。クロウさん」
クロウさんに視線を落として、胸に抱きかかえる。
「ずっと一緒です。どこまでも、一緒です」
そう約束したんだ。
不完全な形でもいい。どんな状況になってもいい。二人でいるんだ――と。
精霊さんが手をかざす。光が呼応して、幾本もの筋になって、水流のように脈動する。
シレウスさんとシャノンちゃんの姿は、光に覆い尽くされた。精霊さんの手の先に集まっていく。
ぱあっと光が弾けた。一ヶ所に集まっていた光は、無数の小さな粒になって、ちかちかと周囲を照らし出す。辺りに溢れ返って、舞うように、包み込むように、ふわりと漂う。
もしかしたらこれが、魂の欠片なのかな。手を伸ばす。けれど触れることはできない。
――理の逆行。
一度失われた魂を、呼び戻すこと。
魂は、ただの情報の集合体なのか。それなら心は、人格は、どこにあるのか。
ボスさんにはいろんな可能性のお話をされた。不安には思いたくないけど、脳裏に過る。
たくさんの欠片を代償に、魂を呼び戻せたとして。もしも記憶や人格に欠損があったなら、それは本当にクロウさんなのか。わたしと一緒にいてくれた、今までのクロウさんと同じだと、言い切れるのか。
わからない。そもそも本当にちゃんと取り戻せるかどうかさえも、わからない。
それでも、このまま失いたくない。
もしも不完全でも。元のままのクロウさんではなくなっていたとしても。わたしが支える。絶対に幸せにしてみせる。
大丈夫。わたしが、ずっと一緒にいるから。
光が少し和らいだ。少し視界が晴れて、もう一度周囲に目を向ける。
アデルさん――。遠くにいるのは変わらない。マチさんが寄り添ったままだ。
でも、目と目が合ったとは思えなかったけど。
ほんの僅かに、口元が動いたのが見えた気がした。
何かに引き寄せられるように、空へと流れていく光の筋に逆らって、光の粒は精霊さんが手をかざした先へと――クロウさんの身体へと降りていく。
魂を操作するなんて、蘇らせるなんて、神の領域。精霊は万能の神様じゃない。手を尽くしたとしても、もう祈ることしかできない。
ましてや、精霊の依り代の精霊術士なんていっても、所詮はただの人間だ。わたしは、見ていることしか――
ふと、クロウさんに触れる、か細い手が見えた。
クロウさんを抱きしめて俯いていた姿勢から、びっくりして顔を上げる。
シレウスさんよりもシャノンちゃんよりも、ずっとずっと弱い光。透けていて、それこそ幻影みたいな、嘘みたいな。
「レ――」
でも、わたしの目には、確かに見えた。
水色の長い髪。白い手で触れて、クロウさんを見つめて。そうして、瞼を伏せた姿が。
「リフェル……さん」
言いかけたときには、光の中に溶けるように消えていた。
幻……なんかじゃない。
そっか。あの宝石の中に、きっと、ずっと宿ってたんだ。
ずっと、見てくれてた。
そうですよね。
助けてくれる、もう一つの魂。
あのことからわたしたちは、歩んできた。
歩んで、そうして、ここまでたどり着いたんだから。
後悔なんてしない。
二人でいられるなら、大丈夫。
これからも、ずっと。
……一緒に生きよう。クロウさん。
地面からは、まだ熱の余波が漂っているような感覚だ。
谷の真下。流れていた滝は二つに割れて、勢いをなくして宙で散り散りになっている。大きな爆発を受けて、辺りはすっかり崩落してしまった。
わたしたちを中心に、足元には巨大な魔術陣が広がっている。魔術士の人たちが数人がかりで複雑な呪文を唱えている。
崩れた谷底の景色から覗き見える月夜空と、降臨の儀式の様子に、感じ取る。
刻々と、終わりが近づいているんだと。
大きな体をぎゅっと腕に抱いているから、わかる。
儀式が進行するごとに、だんだんと、力が抜け落ちていくのが。失われていくのが。
――出会えてよかった。
儀式が始まって、少ししてのことだ。
クロウさんが、一瞬だけ目を覚ました。意識を取り戻した。
でも、さっきまでの会話は、ほんの僅かな最期の時間だったんだ。
遺した言葉。儀式の光に包まれて、悟った。
愛してるでも、一緒に生きたいでもない。
わたしとここまでの道を辿ってこられてよかった。この道で後悔はしていない。それに、わたしを信じてくれている。そんな言葉だと思った。
膝に頭を置いてあげる。
こうしてると、ただ眠ってるだけみたい。
眠ってるクロウさんは、子どもみたいでかわいい。よく眉間にシワを寄せて、目を細めて睨んでるみたいな顔をしてるから、余計に。
わたしに頭を預けて、体の力を抜いているのが無防備で、幼く感じる。
両腕は真っ黒なままで、魔族の状態から元に戻っていない。瞳の色は、赤から青に戻ってたけど。
でも、と赤瞳の顔を思い出す。あの姿になっても、変わらなかった。どんな見た目になっても、中身が変わってしまったように感じても、クロウさんだと思った。
人間を見下して、蔑んで。人の歴史なんて無意味だ、何もかも滅ぶべきだと声を上げていたけれど。
たくさん迷って、たくさん戸惑っていた。うろたえるところはかわいくて、やっぱりクロウさんなんだと思った。
だけど。
もう、脱け殻なんだ。
頬に触れると、嫌そうにしかめた顔をして起きちゃいそうなのに。
もうクロウさんは、何をしても、どこを触っても、反応を返してくれないんだ。
魔術陣が一際光り輝く。円を描きながらわたしたちのいる中央へと集まってきて、まっすぐに頭上へと伸びていく。
遠くから見たら、光の柱みたいになってるのかな。その中心にいても、不思議と眩しくは感じない。
光を辿るように、空を見上げていると、なんとなく感じた。近づいてきてるんだ、って。
精霊さん。もともとはわたしの中にいたみたいだけど、わたしが暴走させてしまった。わたしを見守ってくれていたはずなのに、復讐の道具に使ってしまった。仇で返すような真似をしてしまった。
そんな精霊さんに、やっと会えるんだろうか。
生まれつき宿っているものじゃない。儀式で呼び出されて、魔族の力を餌にして、正式な形で現世に降臨する、精霊さん。
天を仰ぐ。頭上に、見えた。はっきりと。
「……ああ。そういう姿なんですね」
一目では、水だ、と思った。
水をまとうみたいに、透き通った水が形を作っていく。精霊さんが取る、その姿は。
「人そっくりじゃないですか。精霊も、魔族も、やっぱり人間と生きるために生まれてきたんですか?」
ほとんど、人のシルエットだった。
流れるように水が動いて、形は安定していない。そのせいで顔立ちまでははっきりしない。けど大きさも、頭や手や足の位置も。どこをどう見ても、人と同じ形だった。
「魔族も、とは。大きく出るよのう。のう、ミリア」
「やっぱりわたしのことは知ってるんですね。もともとわたしの中にいた精霊さんですか?」
「いいや? お主の中にいたのは火の精霊。我は水の精霊じゃ。我らは常に人間らを見守っておるでな。名を知るくらい造作もない。それに火の奴は、ほれ、そいつに喰われてしまったからのう」
水の精霊さんは、水流のような手で、クロウさんを指差す。
火の精霊さんがもともとわたしの中にいて、試練の洞窟でクロウさんと会って力を貸してくれたんだ。今目の前にいるのは、別の精霊さんらしい。
「ま。そいつが亡骸となった今や、しばらくすればこちらに戻ってこようぞ。今は留守だから我が召喚に応じてやった、というところじゃ」
水の精霊さんは、切り上げるように言う。
火の精霊さんって、今は留守なんだ。どういうふうにして力を貸してくれてるのかはわからないけど。
改めて見上げて、思う。ようやく、頭が冷静に、今の状況を認識してきた。
……本当に、知覚できた。今まで声すら聞けなかったのが嘘みたいに。はっきりと、目の前にいると、わかる。
ほぼ伝説上の存在。奇跡を起こす、人々にとっては神様のような存在――精霊様。
他の人にも知覚できているみたい。その場にいる誰もが、精霊を見上げて、呆然としているからわかる。精霊の声を聞き入れるように、釘付けになっている。
「して、ミリア。そこな魔族は、我が復活の儀の生け贄となった。何か、成し得たいことがあるはずじゃ。我の力を好きに使え。我はそのすべてを見届けよう」
精霊さんは周りの人たちに目を向けることはない。これだけ注目されても、全然意に介していない。
精霊さんは祭られ、信仰される存在。だからこんな視線なんて今さらなんだ。
問いかけに、改めて気を引き締める。クロウさんを抱き寄せる。
「はい。お力をお借りします」
でも、その前に――。周囲に目をやる。
ダインさん。それにボスさん。二人の傍には、それぞれ魔術士の人が治癒のためについていたはずだ。
ボスさんは、まだ遠いところにいる。支えるために寄り添っているのは、たぶんマチさんだ。
ちゃんと見えてるのかな。聞こえてるのかな。精霊さんの姿は、声は――。
「……アデルさん!」
クロウさんを抱いたまま、背筋を伸ばして声を張る。でも光の向こう側だから、よく見えない。
さっきまで、魔術士の人が懸命に治癒術をかけていた。
頭領を死なせるな。死なないで。無事でいて。そんな言葉が思わず上がるほど、みんな必死だった。
ボスさんが精霊を見られなければ意味がない。みんなそのためにがんばってたんだ。
精霊さんは今ここにいる。みんなにも声が聞こえてる。
ボスさんも、声を、姿を。一目でも。
「どうした、ミリア。我は気まぐれでな。儀式の労など汲まず、さっさと天上に帰ってしまうやもしれぬぞ?」
精霊さんの声に、はっとなる。
……わたしの、成し得たいこと。望み。生きていく希望。
わたしはわたしで、これが願いを叶えるための、唯一の手段だ。これに懸けて、ここまできたんだ。
きっと見えてるはずだと、今は信じるしかないけど。早くしないと、手遅れになるかもしれないから。
精霊さんに向きなおる。
やらなくちゃ。決心していた。確証はなくても、ダメ元でも。これしかないから。
小さく息を吸う。すでに心に決めていたことだけど。
決意を、口にする。
「クロウさんの命を、取り戻します」
「じゃろうのう。そなたであれば、そのための大業であったのだろう」
精霊さんはわかっていたかのように、あっさり言う。
「身体だけであれば、造作もない。欠損なく元の形を作り出せるじゃろう。しかし、そこに魂はない。脱け殻を忘れ形見にして、共に生きようというつもりか?」
「そんなつもりはありません」
首を振る。そんな不確かなものを求めたわけじゃない。
でもボスさんと何度も話して、やっぱりどうあっても無理難題なのは変わらないんだって、悟った。
だから、わたしの答えを出した。
「だから、わたしの全部を代償にして、クロウさんの魂を呼び戻します」
精霊は、神様じゃない。仮初めの肉体は作り出せても、生命そのものは作り出せない。
それならわたしそのものを引き換えに差し出す。全部クロウさんに捧げる。迷いなんかあるわけない。それでクロウさんの人格も、記憶も、呼び寄せて取り戻せるのなら――
「……って。前までのわたしだったら、迷わずそう言ってたんでしょうね」
なんて、前までのわたしなら、考えただろう。
わたしが犠牲になっても、クロウさんが生きていてくれるならいい。クロウさんが無事でいてくれればいい。
それだけ考えて、それしか考えられずに、そんなことをやらかしていただろう。
「わたしはわたしの命を大事にします。そうしないと悲しむ人がいる。たくさんの、生かそうとしてくれた人の想いを無駄にすることになる。精霊の力は、間違ったことには使いません。今まで教えてもらったことにも、背きません」
今までだったら、きっと、迷わず自分を捧げてた。でもそれじゃ意味がないんだ。
クロウさんが命を懸けて守ろうとしてくれたもの。全力を捧げて大切にしてくれたもの。それがわたしなんだ。
前までのわたしは、もうここにはいない。
本当は弱くて、怖がりなあなたを知ったから。
「何より、そんなことしても、クロウさんは悲しんじゃうだけです。また一人ぼっちになっちゃうだけですから」
もう一人にはさせない。怖い思いなんてさせない。
そのままの自分を受け入れられるように。そのままで素敵なあなたを。わたしが、受け止める。
「ならばどうする? 一つの生命の蘇生など、神の領域じゃ。万物の流れを操作する力など、望むには無謀だぞ」
「操作するわけじゃありません。元の形に呼び戻すんです。……できるはずです。この右腕と引き換えなら」
クロウさんの右腕に触れる。魔族のまま戻らない、真っ黒な腕だ。
ここからだ。ボスさんにも話した、わたしの考えた筋道。可能性の糸口。
懸命に繋いだ方法を、口にする。
「精霊が供物として食べるのは、負の魔力っていうエネルギーです。クロウさんが呪術を右腕で吸収して、強力な魔人になったおかげで、古代に近い状態の精霊様をこうして降臨させられた」
負の魔力の話。ダインさんから教えられたことをなぞる。
生け贄として求められるもの。精霊の餌。それは負の魔力だ。生け贄が強力な魔力を持つほど、強力な精霊を呼び寄せられる。
つまり儀式の工程には、魔力以外の要素は必要ないということになる。
クロウさんは右腕で、呪術の使い手そのものを吸収した。呪術の使い手――シャノンちゃんの中には、大量の人間と繋がり続けた結果、純然な魔力以外のものが膨大に詰まっていた。
それは、大勢の人の情報。人を縛り、干渉し続けたことで出来上がった、大量の魂の欠片。
「だから、魔力以外のものが、まだここに残ってるはずです。クロウさんの身体の中に、生け贄としては不要なものが。これから行き場を失う、たくさんの魂の情報が、あるはずなんです」
そのはずだ。
魂を操作しようなど無謀な話。けれど同じものを代償にするのなら。魂という不確かなものを呼び寄せて、精霊の力で元の場所へと戻すことができれば――。
精霊さんは笑う。吹き出したようにも、失笑したようにも見えたけど。
何も言わないまま、水の指先を動かす。それに操られたように、周囲の光が生き物のように動いて一ヶ所に集まっていく。
何かが形作られる。ぼんやりと人のようなものが浮かび上がって、うっすらと色がつく。
人の姿だ。大柄な、赤毛の男の人。でも、幻影みたいなもの……じゃ、ないみたい。
男の人は、まばたきをして、わたしを見る。この場にいる人として、胸に手を当てて、わたしに小さく頭を下げてきた。
「――君の呼び掛けに応えよう。僕でもまだ役に立てるのなら、喜んで力になろう」
精悍な顔立ちなのに、ちょっと気弱な感じの笑みを浮かべる。姿は幻影みたいなのに、声もはっきりと聞こえた。
名乗られなくてもわかった。前にクロウさんは、精神体みたいなものと会い、会話したと言っていた。
右腕で呑み込んで、クロウさんの中で生き続けていた、一つの魂。
この人は、レヴィさんの師匠さん――シレウスさんだ。
「僕の魂はすでに彼に託してある。もう彼のものだ。好きに使ってほしい」
シレウスさんは、クロウさんに目を向ける。今まで何があったのか、これから何が起きるのか、すでに理解したような顔で、それははっきりとした承諾だった。
隣にもう一つ、光が集まっていく。シレウスさんよりもだいぶ光が弱くて、ゆらゆらと不安定だ。それでもゆっくりと姿が見えてくる。
小さな女の子だ。わたしと同い年くらいか、少し下くらい。
金色の髪に、緑の瞳。ダインさんと同じ特徴の女の子が、そこに現れた。
「ミリア。……ありがとう」
長い髪を揺らして、すごく幼く見える笑顔を浮かべる。
……シャノンちゃんだ。そっか。本当は、そんな姿をしてたんだ。
「私の中の、たくさんの魂の情報。あなたたちのためになるのなら、いくらでも使って」
魂の情報。
シャノンちゃんがそう伝えてくれたおかげだ。他人と結びつく呪術の特性と、この利用方法。シャノンちゃんと会話することができなければ、わからなかった。
笑顔で返してあげたかったけど、笑おうとすると涙がこぼれそうになった。気を引き締めるように表情を正して、一呼吸おいてから、口を開く。
「はい。クロウさんを助けるために、あなたたちを使わせてください」
シレウスさんも、シャノンちゃんも、笑って頷く。当たり前のことのように、承諾してくれた。
……最初は、レヴィさんから渡された形見の宝石だ。想いを託されて、それからクロウさんはシレウスさんと会って、より強く決意したと言っていた。
〈聖下の檻〉の地下深くでは、シャノンちゃんに出会えた。声が聞けてよかった。きっと一人ぼっちで、ずっと助けを求めてたはずだ。
たくさんのことを知れた。たくさんの人の想いを辿ってきた。それらに支えられて、わたしたちはここまで来られた。
もう決めていたことだ。わたしは、再び、精霊さんを見上げる。
「……理の逆行じゃ。死にかけの魂どもを代償にしようとも、完全な形とはならぬ」
精霊さんは、念を押すように言う。
「一度失ったものを取り戻すなど、人の世では不可能に等しい。万物の流れに逆らうその意味、重み……微弱な魂が耐えられるかは我も与り知らぬことじゃ」
口調は厳しい。それが現実なのだろう。そう簡単なことではない。
「しかし……それがお主の答えか。ミリア」
それでも、決意は変わらない。無茶なことはとっくにわかってるんだ。今さら迷うなんて無意味だ。
精霊さんは、確認のように聞く。
改めて。わたしの決意を、気持ちを、示す。
「はい。これがわたしの答えです。クロウさんは、絶対に死なせません。一緒に生きるって決めたんです。どれだけ不完全な魂でもいい。元通りになんてならなくても、後悔なんてさせません。わたしと一緒にいて、絶対に幸せにしますから」
できるかどうかじゃない。こうすると決めた。そのためなら手段はなんでもいい。
わたしが、絶対に後悔させない。先のことなんて、怖がらなくていい。
「一緒に生きましょう。クロウさん」
クロウさんに視線を落として、胸に抱きかかえる。
「ずっと一緒です。どこまでも、一緒です」
そう約束したんだ。
不完全な形でもいい。どんな状況になってもいい。二人でいるんだ――と。
精霊さんが手をかざす。光が呼応して、幾本もの筋になって、水流のように脈動する。
シレウスさんとシャノンちゃんの姿は、光に覆い尽くされた。精霊さんの手の先に集まっていく。
ぱあっと光が弾けた。一ヶ所に集まっていた光は、無数の小さな粒になって、ちかちかと周囲を照らし出す。辺りに溢れ返って、舞うように、包み込むように、ふわりと漂う。
もしかしたらこれが、魂の欠片なのかな。手を伸ばす。けれど触れることはできない。
――理の逆行。
一度失われた魂を、呼び戻すこと。
魂は、ただの情報の集合体なのか。それなら心は、人格は、どこにあるのか。
ボスさんにはいろんな可能性のお話をされた。不安には思いたくないけど、脳裏に過る。
たくさんの欠片を代償に、魂を呼び戻せたとして。もしも記憶や人格に欠損があったなら、それは本当にクロウさんなのか。わたしと一緒にいてくれた、今までのクロウさんと同じだと、言い切れるのか。
わからない。そもそも本当にちゃんと取り戻せるかどうかさえも、わからない。
それでも、このまま失いたくない。
もしも不完全でも。元のままのクロウさんではなくなっていたとしても。わたしが支える。絶対に幸せにしてみせる。
大丈夫。わたしが、ずっと一緒にいるから。
光が少し和らいだ。少し視界が晴れて、もう一度周囲に目を向ける。
アデルさん――。遠くにいるのは変わらない。マチさんが寄り添ったままだ。
でも、目と目が合ったとは思えなかったけど。
ほんの僅かに、口元が動いたのが見えた気がした。
何かに引き寄せられるように、空へと流れていく光の筋に逆らって、光の粒は精霊さんが手をかざした先へと――クロウさんの身体へと降りていく。
魂を操作するなんて、蘇らせるなんて、神の領域。精霊は万能の神様じゃない。手を尽くしたとしても、もう祈ることしかできない。
ましてや、精霊の依り代の精霊術士なんていっても、所詮はただの人間だ。わたしは、見ていることしか――
ふと、クロウさんに触れる、か細い手が見えた。
クロウさんを抱きしめて俯いていた姿勢から、びっくりして顔を上げる。
シレウスさんよりもシャノンちゃんよりも、ずっとずっと弱い光。透けていて、それこそ幻影みたいな、嘘みたいな。
「レ――」
でも、わたしの目には、確かに見えた。
水色の長い髪。白い手で触れて、クロウさんを見つめて。そうして、瞼を伏せた姿が。
「リフェル……さん」
言いかけたときには、光の中に溶けるように消えていた。
幻……なんかじゃない。
そっか。あの宝石の中に、きっと、ずっと宿ってたんだ。
ずっと、見てくれてた。
そうですよね。
助けてくれる、もう一つの魂。
あのことからわたしたちは、歩んできた。
歩んで、そうして、ここまでたどり着いたんだから。
後悔なんてしない。
二人でいられるなら、大丈夫。
これからも、ずっと。
……一緒に生きよう。クロウさん。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
この称号、削除しますよ!?いいですね!!
布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。
ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。
注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません!
*不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。
*R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる