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第五話 教団の幕切れ 《最終話》
しおりを挟む時折、遠くから雷鳴が響き渡って来る。
雨足は次第に強くなり、屋根や柱を打ち付ける雨が、激しさを増していた。
信者たちに連行された奉先と虎淵は、狭い通路を抜けて、地下へ降りる階段へ差し掛かっていた。
「さっさと歩け…!」
警棒を手にした男性信者が、奉先を支えて歩く虎淵の背中を小突く。
虎淵は険しい表情で、その信者を一睨みしてから、俯いて歩く奉先の顔を覗き込んだ。
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ、そんな事より…虎淵、お前は鶏を捌くのは得意だったな…?」
奉先は青白い顔で呟いた。
「?!」
虎淵には、一瞬何の事か解らなかったが、奉先の目を見て直ぐに解した。
「お前は三羽、俺は二羽だ…!」
そう言うと、二人は同時に、取り囲んだ信者たちに飛び掛かった。
白く長い信者たちの着衣から、奉先はそれを鶏と表現したのであろう。
虎淵が後方に居る三人を、素手で素早く打ち倒すと、奉先は前を行く二人に掴み掛かり、二人が手にした長い警棒を奪い取って、蹴りで信者たちを跳ね飛ばす。
信者たちは階段を転げ落ちたが、直ぐに立ち上がり、階段を駆け上がって来た。
奉先は狭い通路を遮る様に、警棒を横に掴んで、襲って来る信者を押し戻す。
「こいつ…!手負いの癖に、何て力だ…!」
信者たちが束になっても、奉先の力には及ばない。
「麗蘭殿が待っている筈だ…!共に鈴星殿を救い出せ…!」
奉先は棒を押さえながら振り返り、虎淵に叫んだ。
「先生は…?!」
「俺は大丈夫だ…!行け…!」
迷っている暇は無い。虎淵は頷くと、素早く振り返り、狭い通路を走り去った。
少女たちに紛れ、高い祭壇が組まれた広い部屋へ連れて来られた麗蘭は、怪しまれぬ様少女たちの動作を真似、一緒に白い床へ並んで跪いた。
祭壇の脇には篝火が煌々と焚かれ、祭壇の前に一人の女が数名の信者を従えて立っている。
美しい女ではあるが、何処か怪しげな雰囲気である。
成人であろうが、若々しさと幼さも感じさせる。
麗蘭は、然りげ無く着物で顔を隠していたが、目だけを上げて、女を訝し気に覗き見た。
あれが、教祖の聖母天華か…
天華のすぐ近くに、鈴星の姿を捉えた時、麗蘭は思わず声を上げそうになった。
鈴星は虚ろな眼差しで、ただじっと立ち尽くしている様子である。
明らかに様子がおかしい。その手には、血濡れた短刀が握られていた。
更に、側には白い杖を突いた男性信者の姿がある。
彼は目が見えぬ様子で、床に杖を突きながら、杖の先に付いた鈴を鳴らしている。
鈴星たちは、操られているのか…?!
天華に従う信者が、床に跪く少女たちに近づくと、その手にそれぞれ短刀を握らせる。
訳も分からぬまま、麗蘭も手に短刀を握らされた。
「さあ、余の可愛い娘たちよ…!余に、汝らの若く美しい魂を捧げよ…!」
天華がそう言いながら、少女たちの前で両腕を開くと、少女たちは渡された短刀の刃を掌に充てがい、躊躇わず横に引く。
少女たちの手からは、真っ赤な鮮血がこぼれ落ちる。
銀の杯を手にした信者が、少女たちの前へ来て、その血を杯で受け止めた。
一人一人順番に、少女の血を杯へ注いで行く。
やがて、銀の杯は麗蘭の前へ運ばれて来た。
麗蘭は一度深く息を吐いてから、握った掌の短刀を横に引こうとした。
「待て…!!」
その時、白い杖を持つ盲目の男が声を上げた。
男は目を閉じたまま、何かを探る様に、ゆっくりと首を動かしている。
やがて、男は光の無い目を開いた。
「この中に男が居る…!探せ!」
そう言うと、信者たちに室内を捜索させた。
信者が少女たちの顔を上げさせ、一人ずつ確認している。
やがて捜索する信者は、跪いて俯く麗蘭の背後まで迫る。
まずい、万事休すか…!!
そう思い、握った短刀から掌を離そうとした時、
「僕は、此処だ…!」
そう叫んで、虎淵が柱の陰から飛び出し、信者に飛び掛かった。
「お前か…!しつこい奴だ、取り押さえよ!」
盲目の男が杖を突き出し、信者たちに命令する。
虎淵は、群がる信者たちを次々に倒したが、やがて信者たちに囲まれ、遂に取り押さえられた。
しかし、虎淵が現れたお陰で、麗蘭にまで捜索が及ばず、一先ず窮地を脱した。
「何をしておる、杯を持って参れ…!」
祭壇の上から、天華が信者に向かって怒鳴った。
信者は急いで、麗蘭の前に置かれた銀の杯を取り上げると、恭《うやうや》しく天華に手渡す。
それを受け取った天華は、銀の杯に注がれた少女たちの赤い血を満足げに見てから、祭壇の方へ向き、杯を両手で捧げ持って、高く掲げた。
「汚れ無き少女の魂よ…余に、永遠の命と美しさを与え賜え…!」
そして、自らの唇に杯を傾け、少女たちの血を一気に飲み干した。
その時、建物のすぐ側で落雷があり、辺りに激しい閃光が閃き、耳を劈く程の雷鳴が響き渡った。
やがて、冷たく湿った風が室内に流れ込んで来る。
「?!」
突然、天華は手にした銀の杯を、床へと落とした。
その音に、盲目の男が振り返る。
「天華様、如何なされた…?!」
「うう…くっ…苦しい…!」
天華は悶え始めると、床の上に倒れ込む。
「はぁ、はぁ…!」
天華は、苦しそうに床に這い蹲り、赤く長い爪で床を引っ掻く。
震えるその手は、次第に瑞々しさを失い、表面に赤い斑点が浮かび上がる。
盲目の男は、急いで祭壇へ上がり、天華の側に落ちている銀の杯を拾い上げ、臭いを嗅ぐ仕草をする。
「まさか…!」
男は立ち上がると、祭壇から降り、床に跪いている少女たちの前を歩いた。
そして麗蘭の前で立ち止まり、杖で麗蘭の顔を上げさせた。
「お前だな…!天華様の神聖な杯に、男の血を混ぜたのは…!」
麗蘭は男を見上げ、口角を上げて笑った。
「ばれたか…!」
そう言うと、自分の左の掌を開いた。
掌には、短刀で切り裂いた跡がある。
虎淵が信者たちに取り押さえられている間に、麗蘭は自分の血を銀の杯へ注いでおいた。
「悪いな、神聖な物とは知らなかったのだ…!」
「貴様、よくも…よくも、余に汚れた血を…!」
天華は髪を振り乱したまま、よろけながら立ち上がると、自分の首を長い爪で掻き毟り、麗蘭を指差して喚く。
いつの間にか、天華の黒髪には白髪が混じり、銀色に変化していた。
「黙れ!信者たちよ、よく見よ!あの女は妲己だ…!お前たち、あの様な妖孽(魔物)に魂を売り渡す積もりか?!」
麗蘭は立ち上がり、纏った女物の着物を脱ぎ捨て、天華を指差しながら、毅然と信者たちを見渡した。
それを見た信者たちに、動揺が広がる。
「おのれ…!許さぬ!皆の者、その豎子を捕らえ、八つ裂きにするのじゃ!」
爪で傷だらけになった醜い顔を上げ、天華が叫ぶ。
だが、信者たちはその異様さに戦き、誰一人麗蘭を捕らえようとはしない。
すると、盲目の男が徐に杖を突いて、鈴の音を響かせ始めた。
突然、麗蘭の周りに跪いていた少女たちが立ち上がる。
そして、手にした短刀を振り翳して、襲い掛かって来た。
麗蘭は身を翻し、素早くその場から離れたが、少女たちは次々に襲って来る。
掴み掛かって来たのは、穹の姉、祥雲であった。
「祥雲、穹が待っている…!お前の大切な弟では無いのか?!」
素早く祥雲を羽交い締めにし、麗蘭は耳元で叫んだが、祥雲にはまるで聞こえていない様である。
「女を殴るのは、趣味では無いが…止むを得ぬ…!」
軽く舌打ちをすると、手刀で祥雲の首筋を強く殴り付けた。
祥雲は小さく呻き声を上げ、その場に崩れ落ちた。
信者に取り押さえられていた虎淵も、信者たちを振り払い、麗蘭を襲う少女たちを止めに入る。
やがて、麗蘭の前に、刀を手にした鈴星が立ちはだかった。
「鈴星、お前もか…?!」
麗蘭はうんざりとした表情で、鈴星を見上げた。
鈴星は無言で、麗蘭に斬り掛かって来る。
麗蘭は素早く躱し、刀を握る鈴星の腕を掴んだ。
「目を覚ませ…!俺を忘れたのか?!」
両手で、必死に鈴星の腕を押さえようとしたが、鈴星の力は尋常では無い程の強さである。
その力に押され、麗蘭は柱に背中を押し付けられた。
短刀の刃が、麗蘭の目前に迫る。
「くっ…!やめろ、鈴星…!」
「麗蘭様!」
虎淵は襲って来る少女たちを躱しながら、麗蘭の元へ走った。
「虎淵…!あいつだ!あの男の鈴を奪え!」
麗蘭が叫ぶと、虎淵は祭壇の前に立つ盲目の男を振り返った。
男は、杖に付いた鈴を鳴らしている。
虎淵は男に飛び掛かり、男から杖を奪おうとしたが、男は必死に抵抗し、杖を放そうとしない。
突然、虎淵の背中に天華が飛び付いて来た。
天華は鬼の様な形相で髪を振り乱し、虎淵の首を絞め上げる。
長い爪が喉に食い込み、虎淵の顔は、見る間に蒼白になった。
「う…!」
天華を振り払おうと、虎淵は踠き、体勢を崩して後方へ倒れ込んだ。
虎淵と天華の体が、祭壇の脇に立つ篝火に接触し、転倒する。
燃え盛る炎が、天華の上に落ちて来た。
「ぎ、ぎゃああああ…!!」
けたたましい叫び声と共に、天華の姿は炎の下に消えて行った。
「て、天華様…?!」
床に倒れていた男は、体を起こし、燃え盛る炎の方を顧みた。
手探りで杖を探したが、床に落ちた杖は、虎淵の手で拾い上げられ、虎淵はそれを高く振り上げると、勢い良く床へ叩き付けた。
土製の鈴は、床の上で激しい音を立て、粉々に砕け散った。
その瞬間、まるで操られていた糸が切れた様に、少女たちはその場にばたばたと倒れて行く。
鈴星の腕からも力が抜け、その場に崩れ落ちた。
「鈴星…!」
倒れ掛かった鈴星の体を支え、麗蘭は鈴星を抱き抱えた。
「虎淵、その娘が祥雲だ!奥に穹と少女たちが閉じ込められた部屋がある…急げ!」
そう言うと麗蘭は、懐から取り出した鍵を、虎淵に投げて渡した。
虎淵は鍵を受け取り、祥雲を抱き上げると、直ぐに室内を後にした。
炎が祭壇を包み込み、高い火柱を上げて建物に広がって行く。
「鈴星、大丈夫か?しっかりしろ…!」
麗蘭は、鈴星の肩を揺すった。
鈴星は長い睫を閉じ、青白い顔のままである。
天井から、焼けた梁や板が落ちて来る。
鈴星を両腕で抱き上げ、その場を離れようとした時、焼け落ちた柱が倒れ掛かって来た。
「麗蘭殿…!!」
振り返ると、奉先が倒れ掛かった柱を、両腕で押さえて立っていた。
奉先は怪我を負っているらしい。着物が血で染まっている。
「奉先…!!」
「急げ…!長くは持たぬ…!」
奉先は苦しそうに呻いた。
麗蘭は急いで鈴星を抱え、その場から脱した。
次の瞬間、奉先は柱から手を放し、柱は轟音と共に炎に巻かれて行った。
奉先の後から、広間へ役人たちを引き連れて入って来たのは、曹家の主であった。
「父上!」
「麗蘭、急げ!此処は危険だ!早く逃げよ…!」
その後、主と役人たちは、急いで信者や少女たちを建物の外へ連れ出した。
遠くから、誰かが自分の名を呼んでいるのが聞こえる。
朦朧とする意識の中で、鈴星は長い睫を開いて、その声の主を確かめようと顔を上げた。
誰かの腕に抱き抱えられているらしい。
声の主は、鈴星を抱えたまま、雨の降りしきる中を走っているのであろう。冷たい雨粒が顔に落ちて来る。
「鈴星、大丈夫だ…!お前の事は、俺が護る…!」
声の主は鈴星を覗き込んでいるが、辺りは暗く、雨が目に流れ込んで来て、その顔を見る事が出来ない。
やがて鈴星の意識は、再び遠退いて行った。
次に目を覚ました時、鈴星は牀の上に横たわっていた。
「気が付いたか、鈴星殿…良かった。」
傍らには、鈴星の手を握り、微笑む奉先の姿があった。
「奉先…わらわは、一体何処で…何をしておったのであろうか…?良く、覚えておらぬのだ…」
鈴星は不思議そうに首を傾げた。
「あなたは、天聖師道の者たちに、拐かされたのだ。だが、もう心配はいらぬ。奴らは滅び、もう狙われる事は無い。」
奉先は微笑し、鈴星の小さな細い手を撫でた。
「何だか、不思議な夢を見ていた…誰かがわらわを抱えて、何処かから連れ出してくれたのだ…あれは…」
鈴星は、高い天井を見上げながら呟いた。
「…あの少年は、麗蘭に良く似ていた気がする…」
「それはきっと、ただの夢だ。もう少し休んだ方が良い…」
そう言って、鈴星の額から髪を撫で下ろし、再び鈴星を眠らせると、奉先は室内を後にした。
昨夜の雨はすっかり上がり、朝から眩しい日の光が、地上へ降り注いでいた。
焼け落ちた寺は、跡形も無く崩れ去り、そこには灰になった骨組みの残骸があるだけである。
「主と役人たちが捜索したが、結局女の死体を発見する事は出来なかったそうだ…あれは、本当に妖孽だったのであろうか…?」
奉先は麗蘭と焼け跡を歩きながら、首を捻った。
「さあな…ただの思い込みの激しい、年増女だったのではないか?少女の血で、美しくなると信じ込んでいたのであろう…」
麗蘭は笑って答えた。
「それより、傷はもう良いのか?」
「麗蘭殿、知らぬのか?実は、俺も妖孽の類でな、不死身なのだ!」
奉先は腰に手を当て、踏ん反り返る。
「馬鹿馬鹿しい…!」
眉間に皺を寄せ奉先を睨むと、麗蘭は肘で奉先の腹を小突いた。
「うぐ…!」
奉先は腹を押さえて呻く。
屋敷へ戻ると、門の前に穹と祥雲の姿があった。
穹は、元気に手を振りながら走って来る。
「お兄ちゃんたち、ありがとう!」
「この度は、大変お世話になりました。」
すっかり顔色の良くなった祥雲が、二人に深々と頭を下げた。
「良かったな、穹。これからも、しっかり姉さんを護るんだぞ!」
「うん!」
麗蘭が穹の肩を強く叩くと、穹は顔を輝かせて返事を返した。
穹と祥雲は、並んでしっかりと手を繋ぎ、歩き去って行く。
二人を見送りながら、麗蘭は呟いた。
「次は、お前たちの番だな…」
そう言って振り返り、奉先を見上げた。
鈴星がすっかり元気を取り戻すと、早速、奉先も劉家へ向かう為の準備を整えた。
曹家の主は、二人の門出を祝う為に新しい車を用意し、二人はその車で出発する事になった。
「先生、どうぞお幸せに!麗蘭様の事は、僕が護りますから、心配は要りません!」
虎淵が奉先の手を取り、少し声を振るわせて言った。
城門の前に曹家の者たちが集まり、車を囲んで二人を祝福していた。
「ああ…よろしく頼む。麗蘭殿は、少し難しい人ではあるが…根は優しい方だ。何があっても、麗蘭殿の事を信じ、付いて行って欲しい…」
そう言うと、奉先は虎淵の手を強く握り返した。
「子が産まれたら、わしに会わせてくれよ。わしが名付け親になろう。」
主が奉先の肩を叩きながら、鈴星に笑顔を向けると、鈴星は顔を紅潮させ、恥ずかし気に俯いた。
「それにしても、麗蘭の奴…折角の祝いの場に、顔も出さぬとは…」
「構いません、麗蘭殿とは、また何時でも会えますから…」
奉先は苦笑し、主に丁寧に頭を下げると、鈴星の手を取り、車へ乗り込んだ。
従者が繋いだ馬の背に鞭を呉れ、車はゆっくりと動き出した。
城邑の門を潜り、見送る人々の姿が次第に遠ざかって行く。
奉先は車から顔を出し、城壁の上や辺りを見回したが、やはり麗蘭の姿は無かった。
「麗蘭の事が、心配か?」
鈴星に声を掛けられ、はっとした。
奉先は車の中へ引っ込むと、鈴星を見詰めた。
「そうでは無いが…いや、実はほんの少し、心配だ…」
そう言って、奉先は苦笑した。
麗蘭は一人、何も無くなった奉先の草廬の入り口に立っていた。
皆と共に、二人を見送る積もりであったが、どんな顔をすれば良いか分からず、迷っている内に、気付くとそこへ来ていた。
「はあ…」
麗蘭は深々と溜息をついた。
室内はすっかり片付いているが、部屋の奥の牀だけは、そのまま置かれていた。
牀の上へ上がり、体を傾けて横たわった。
奉先…鈴星…
二人共、幸せになれよ…
何故か瞼が熱くなり、止め処なく泪がこぼれ落ちた。
「麗蘭殿、俺の寝床に入るなと、申したであろう…」
いつの間に眠っていたのか、麗蘭が目を開くと、目の前に微笑を浮かべる奉先の顔があった。
「?!」
驚いた麗蘭は、牀の上で飛び起きた。
泪で濡れた目を、何度も擦る。
「奉先…!お前、何で此処に居る…?!」
奉先は体を起こし、少しばつが悪そうに、頭を掻きながら答えた。
「実は…鈴星殿に、追い返されてしまったのだ…俺が、此処へ心を置き忘れていると言われてな…」
「父上を説得して、当分は何処へも嫁に行かぬから…時期が来たら、必ず迎えに来てくれと言われた…」
「…何だそれは…結局、愛想を尽かされたのではないか…?」
「そ、そうでは無い…!ただ、今はまだ、身を固めるには早過ぎると言う事だ…!」
奉先は咳払いをしながら、少し赤面した。
「はは、わかった。では、そういう事にしておこう!」
麗蘭は笑いながら、牀から飛び降りた。
「良し、では稽古の時間だぞ!もたもたするな…!」
「え…!い、今直ぐにか…?!」
驚く奉先を尻目に、麗蘭は走って草廬から飛び出した。
「全く…麗蘭殿の自由奔放さには、ほとほと手が焼ける…!」
奉先は苦笑すると立ち上がり、麗蘭の後を追って草廬を出て行った。
-《完》-
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主人公の快刀乱麻ぶりが痛快でした。カルト教団ものとしてとても良く出来た面白さだと思います。
貴重なご感想有り難うございます!!
こちらは短編ですが、本編にも少しだけ関わってくる内容となっております。
またシリーズで何か思い付けば書くかもしれません。