飛翔英雄伝《三國志異聞奇譚》〜蒼天に誓う絆〜

銀星 慧

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第七章 魔王の暴政と小さき恋の華

第八十話 旅立ち

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赤い夕陽が稜線りょうせんの向こう側へ隠れ、空が紫紺しこんに染まり始めた頃、むら外れの小さな池に佇むていへ足を運んだ伯斗は、そこで鈴星の姿を見付け、肩を震わせて泣いているその背中に声を掛けた。

「こんな所に居たのか…寒いだろう?もう行こう。」
冷たい頬を流れ落ちるなみだを拭いながら、鈴星は黙ったまま小さく首を横に振る。

「わらわと麗蘭は、姉妹の様な存在だった…麗蘭の事を…ずっと、ずっと信じておったのに…!」
声を震わせ、何処か遠くへ眼差しを送る鈴星に歩み寄ると、伯斗は彼女の両肩にそっと手を乗せ、優しく彼女の体を抱き寄せた。

「お前の気持ちは良く分かる。だが、もう許して挙げなさい。彼は悪い人間では無い筈だ。“娘”と偽っていたのも、きっと深い訳があったに違い無い…」
「………」
伯斗の胸に顔をうずめる鈴星は、それでもまだ肩を震わせ泣いている。

「孟徳の事が、好きなのであろう?」

そう言われると、鈴星は泪に濡れる大きな瞳を上げ、驚きの表情で伯斗を見上げた。
鈴星の瞳は、空にまたたき始めた星の光の様に、きらきらと輝き美しかった。
伯斗は愛おしい眼差しでそれを見詰めると、彼女の柔らかい髪をで下ろす。

「私は、何処に居ようとお前の幸せを祈っている。意地を張っては成らぬ、彼に付いて行きなさい。」

「兄様…!」
再び溢れ出した泪が頬を零れ落ち、鈴星は彼の胸に顔を埋めて泣いた。
声を震わせながら、鈴星は問い掛ける。

「でも、わらわが居なくなったら…兄様はどうするの…?」
「私は、故郷くに許嫁いいなずけを残して来た…彼女の元へ、帰ろうと思う。」
そう答えると、伯斗は彼女の頭を優しく撫でる。
そして鈴星の手に唐紅のひもを握らせ、柔らかく微笑みながら伯斗が言った。

「さあ、いま彼を追わなければ、お前はきっと一生後悔するだろう…!」

濡れた頬を上げ、手の中のひもをじっと見詰めれば、孟徳の笑顔が浮かんで来る。
その唐紅の纓は、きっと孟徳の美しい黒髪に似合うに違い無いと思い、僅かな金しか残っていなかったのに、どうしても彼に贈りたくて買ってしまった物である。

鈴星は、目をつむってそれを強く握り締め、自分の胸に押し当てると、意を決した様に再びまぶたを開いて伯斗を見上げた。

「有り難う、兄様…!わらわは、兄様の事が大好きだ。一生忘れない…!」

そう言って、頬を紅潮させたまま満面の笑みを浮かべると、鈴星は途端に着物の長いすそひるがえして亭から走り出た。

肩に掛かる長い髪を揺らして走る彼女の後ろ姿を、亭の中に佇む伯斗は何処か寂しげな眼差しで見送り、

「鈴星…私も、お前の事が大好きだよ…」
そう小さく呟くと、少し悲しげに微笑した。


鈴星は、城邑じょうゆうの広い通りへ出て孟徳と虎淵を探したが、既に邑を出てしまったのか、彼らの姿は何処にも見当たらなかった。
不安な面持ちで立ち止まると、鈴星は辺りを見回した。

「何処へ行ってしまったの…もう、邑を出てしまったのであろうか…?」

夕闇が迫り、通りの店先には提灯ちょうちんの灯りがともされ始める。
このまま完全に夜になれば、もう彼らの姿を見つけ出す事は出来ぬであろう。

鈴星は唐紅の纓を胸に握り締め、想いがどうか孟徳の元へ届くよう強く祈った。
そして再び顔を上げると、東の城門の方へ向かって走り出す。
胸が苦しくなるのをこらえ、息を切らせながら暫く通りを走ると、前方に城門が見えて来た。

「…あっ!」
突然、履いていた靴の片方の紐が切れ、石につまづいて勢い良くその場に転倒した。

「うっ…」
倒れた鈴星は直ぐに体を起こしたが、痛みに顔をゆがめた。
見ると、手や膝をき酷く出血している。
途端に泪があふれたが、鈴星はその泪を拭いながら切れた紐を結び直し、痛む足を引き摺って立ち上がると、再び懸命に走った。

そびえる城門の上に大きく広がる紫紺の空を見上げた時、きらめく一筋の流星が見えた。
その流星が落ちて消えていった先を見下みおろすと、城門の丁度その真下辺りに、此方こちらへ向かってやって来る人影が見えたので、鈴星は、はっとして立ち止まりそちらをじっと凝視した。

「……!!」
黄昏時たそがれどきの夕闇の中、次第にその人物の姿が鮮明に見えて来ると、こらえていた泪が鈴星の赤い頬を流れ落ちる。

「鈴星……!!」

孟徳は驚いた顔で一瞬立ち止まったが、彼女の姿を認めると直ぐに此方へ向かって走り出した。
息を切らせて鈴星の目の前までやって来ると、頬を紅潮させたまま、にっこりと微笑みを浮かべる。

「お前を…探していたんだ。どうしても、伝えたい事があって…」

「わらわも、お前を探していた…」

濡れた瞳のまま孟徳の顔を見上げた鈴星は、彼に微笑み返してそう言った。
転んだ拍子に跳ねた泥が顔に付いていたが、鈴星はそれに気づかなかったのであろう。
孟徳は彼女の傷付いたてのひらを優しく握り、指で頬に付いた泥をそっと落とした。

「今まで、何度もお前の事を諦めようと思ったが…このまま想いを伝えられず別れれば、きっと後悔する。」

頬を紅くしながら語り掛ける孟徳のそのつややかな口元を見詰めながら、鈴星はただ黙って赤い瞳を潤ませている。

「俺は、幼い頃からずっとお前の事が好きだった。もし…俺の事を許してくれるなら、一緒に行かないか、鈴星?」

孟徳が照れた様子でそう問い掛けると、頬を紅潮させながら鈴星は少し俯いたが、やがて瞳を上げて孟徳を見上げた。

「孟徳…わらわを、連れて行ってくれるのか…?」
「ああ、勿論だ。俺と一緒に行こう…!」

再び孟徳が微笑むと、次の瞬間には泪にむせびながら、鈴星は彼の胸の中へ飛び込んだ。

「嬉しい、孟徳…!わらわも、お前の事が好き…!」

そう言って彼の背中に回した腕に力を込めて、ぎゅっと強く抱き着く。
鈴星の手には、唐紅の纓がしっかりと握り締められていた。
泣きながら震わせるその肩を優しく強く抱き締め、孟徳は微笑を浮かべて彼女の柔らかい髪にそっと頬を寄せる。

二人が寄り添う影は、夕闇の中ともされたまちの灯りの下に鮮やかに映し出され、既に漆黒しっこくとなった上空には、彼らを温かく包み込む様な、満天の星空が何処までも広がっていた。




「何?絶世の美少女だと…?!」

胡軫こしん文才ぶんさいは眉をひそめ、いぶかしげに彼の幕舎を訪れた人物を見上げたが、無類むるいの女好きである彼は、“美少女”という言葉に頬を緩めた。
その様子を見逃さず、

「ああ、そりゃあもう兄貴好みの美少女だ!成長すれば、天下一の美女になるに違い無い…!」
更にそう言って、卓を挟んで向かい合って座る牛毅ぎゅうきは、文才の好奇心をあおる。

「だが、ちょっと問題が起こってしまって…」
急に言い出し難そうな態度を見せる牛毅に、怪訝けげんな表情を浮かべて文才が問い掛けた。

「何だ?申してみよ…!」
「実は、そのむすめ呂奉先りょほうせんに奪われてしまったのだ…わしが兄貴の為に捕まえたのに、あの餓鬼が横取りしやがった…!」

「何だと!?」

それを聞いた文才は途端に目をいからせ、目の前の卓に握り締めた拳を思い切り叩き付けた。

その怒鳴り声と、卓が真っ二つにへし折れる音が幕舎の外にまで響き渡り、驚いた兵士たちが皆幕舎の方を振り返る。
真っ二つになった卓を前に、おののいた牛毅は思わずその場に仰け反った。

文才の奉先に対する怒りは、牛毅の想像を遥かに超えている。
さきの戦で、二人は共に董仲穎の命を受け、連合軍を率いて北上する孫文台そんぶんだいを迎撃に向かい陽人で激突した。

その時、奉先は文才に偽の書簡を送って彼の軍を大いに掻き乱し、挙げ句に副将の華雄かゆうを文台に討ち取られるなど大打撃を与えられ、敗走を余儀なくされてしまったのである。

あの餓鬼がきが余計な事をしなければ、孫文台に負ける事などあり得なかった…!!
文才の胸中にある思いはそれであり、呂奉先に対する怒りが収まる事は無かった。

「ま、まあまあ、落ち着いてくれよ兄貴…!娘を取り戻す策を考えてあるんだ…」
こめかみに浮いた青筋を引きらせ、怒りに震える文才をなだめようと、牛毅は慌てて持参した酒を取り出し、酒器に移して彼に差し出した。

幾らか落ち着きを取り戻した文才は、酒を一気に煽り大きく一息を入れる。
それから牛毅が彼に耳打ちをすると、軽くうなづきながら聞いていた文才は、やがて口の両端を上げてにやりと笑った。


雒陽らくようから住民たちを引き連れて進む董卓軍の行軍は、長安まで残り二日程度の距離にまで近付いていた。

途中のむらで小さなしゃを手に入れ、それに貂蝉ちょうせんを乗せる事にしたのだが、その邑で出会った、しゅんと言う名の少年を一緒に連れて行く事になった。

俊は家族とはぐれ、迷子になっていたらしい所を仲間の兵士に発見され、奉先の元へと連れて来られた。
歳は十歳前後であろうが、体格の良い少年で背も高かった。しかし非常に無口で、殆どと言っていい程言葉を話さない。
唯一、自分の名だけは答えたが、その他の事に関しては何を聞いても答えなかった。

二人を乗せた車を馬に引かせ、奉先はその車を先導する様に飛焔ひえんを寄せて歩いた。
そこからは暫く続く道幅の狭い、切り立った崖の上を行かねばならない。
右手の崖を見下ろせば、足がすくむ程の高さであり、民たちの進む速度は自然と遅くなる。
彼らは慎重に民たちを誘導しながら、崖沿いの道を進んで行った。

「それにしても、奉先殿はほとほと子供と縁が有りますね。」
高士恭こうしきょうが飛焔に馬首を並べ、笑いながらそう言うと、奉先は苦笑を浮かべて貂蝉と俊の乗った車をかえりみた。

「ふっ…確かに。正直、俺は子供が苦手なのだがな…」
奉先が呟く様に言うと、士恭はちらりと車を横目に見てから彼の耳に小声で話し掛ける。

「しかし…あの貂蝉と言うむすめには、気を付けた方が良ろしいですよ。“貂蝉”と言う名も、きっと本当の名では無いでしょうし…」
士恭は眉間に深く皺を寄せ、怪訝な顔付きで彼に忠告を送る。

貂蝉ちょうぜん”とは、てんの尾とせみの羽を用いた飾りの事であり、高位高官が好んで着用する冠を差す言葉である。
それらは“貂蝉冠”などと呼ばれ、それを管理する職も存在していた。

そもそも、貂蝉は奉先を殺そうとした娘である。それを奉先が連れて歩いている事に、士恭は少なからず良い感情を抱いてはいなかった。

「ああ、そうだな…」
心配する士恭に微笑を向け、彼を安心させようと小さく頷いて見せたが、奉先は複雑な感情をいだきつつ、貂蝉の乗った車に憂いの眼差しを送った。

暫く険しい登り坂を進むと、少し緩やかな曲がり道に差し掛かる。
そこから来た道を振り返って見ると、霞む山並みに、美しい滝が流れ落ちている幻想的な光景が広がっていた。

「貂蝉、俊、見てみろ、綺麗だぞ。」
車蓋しゃがいに掛けたすだれ越しに奉先が呼びかけると、貂蝉が簾を上げて顔を覗かせる。

「わあ!本当、綺麗っ!ねえ、俊も見て…!」
貂蝉は嬉しそうに感嘆の声を上げ、振り返って俊に手招きをした。
「………」
彼も簾の隙間から外を眺めたが、彼は特に感情を見せず黙ったままである。

「俊ったら…少しは笑ってみなさいよ!」
貂蝉は少し怒った様に頬をふくらませ、両手の指先で俊の頬をつまんで引っ張った。
「………」

二人の様子を目を細めて見詰めていた奉先だったが、ふと顔を上げ、辺りを見回した。
その辺りには少し開けた林があり、冷たい風が吹き抜け、草木がざわざわと音を立てて揺れている。
このような場所で敵と遭遇すれば一溜ひとたまりもないであろう。
兵を伏せるには丁度良い場所ではあるが、連合軍が先回りをしてそこへ兵を伏せているとは考え難い。

だが、何かが可怪おかしい…
本能でそれを感じている。
飛焔の背にくくり付けてある方天戟ほうてんげきに手を伸ばし、奉先はそれをゆっくりとほどきながら飛焔の足を進めた。

その時、突然林の中から武装した兵士たちが現れ前方を塞ぐと、驚いた民たちは悲鳴を上げ、彼らの部隊は一瞬にして混乱におちいってしまった。

「慌てるな!皆落ち着け!」

奉先は馬上から、崖の上を逃げ惑う人々に向かって怒鳴り声を上げる。
だが、彼らの恐怖心は一気に全体へと伝わり、その場から逃げ出そうと慌てた民が押し合い、足を踏み外して崖から転落する者もあった。

「奉先…!!」

叫び声に振り返ると、貂蝉と俊の乗った車にも人波が押し寄せ、崖の方へと押されている。
貂蝉は車から身を乗り出して、必死に助けを求めていた。

最早、収拾がつかぬ…!
奉先は飛焔から飛び降り、人々を掻き分けて車の方へと向かった。
車を引いていた馬は興奮し、激しくいななきを上げている。
奉先は馬の手綱を引いて落ち着かせると、何とか車を崖の反対側へと誘導した。

突然現れた兵たちをかえりみると、それは董卓の配下、胡文才の兵であり、敵ではなかった。

「がっはっはっ!!お前の部隊は良く統率が取れているな!感心したぞ…!」
文才は皮肉を言いながら大声で笑い、奉先の部隊の行く手をはばむ。

「胡将軍…!一体、何の真似だ?!」
奉先は怒りをあらわに彼を怒鳴り付けた。

「何だと?!それは此方こっち台詞せりふだ!貴様がわしの女を奪ったのであろう!」
文才は怒気を発して奉先に怒鳴り返す。

「何の話だ…?!」
彼の言っている事が理解出来ず、奉先は眉をひそめた。

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