78 / 132
第七章 魔王の暴政と小さき恋の華
第七十八話 思わぬ再会
しおりを挟むすっかり日が暮れ、夜になると雨足は少し弱まったが、夜風は凍える程の冷たさであった。
汴水から数里離れた小高い丘を越えた辺りに、小さな邑里の門が建っているのが見える。
小さな家屋が幾つかぽつぽつと立ち並び、そこは非常に小さな邑であった。
邑の片隅に、傾き掛けた小さな家屋がある。
家の中には火が焚かれ、少女が一人忙しく室内を動き回っては、慣れない手付きで火に掛けた鍋に切った根菜や青菜を放り込んでいた。
その時、入り口から聞こえた馬の嘶きに、少女はぱっと顔を上げ急いで戸口へ走って行く。
「兄様、お帰り…!」
少女は嬉しそうに戸口へ呼び掛けた。
入り口の戸を開いて、中へ入って来るのは伯斗である。
しかし、彼の背に見知らぬ青年が背負われているのを見て、少女の顔は一瞬で怪訝なものに変わった。
「すまない、今日は魚は釣れなかったよ…」
「どういう事…?この人は一体…」
「怪我を負っている。直ぐに手当てをしなければ…鈴星、湯を沸かしてくれないか?」
伯斗は問い掛ける少女の言葉を遮り、彼女を振り返ってそう頼んだ。
“鈴星”と呼ばれたその少女は、少し不満を表情に表したが、仕方が無いといった様子で部屋の奥へと向かう。
やがて、沸かした湯を桶に入れて運んで来ると、怪我人を牀の上に寝かせ、濡れたその身体を拭き取り手当てをしている伯斗の脇に、そっとそれを置いた。
「!?」
だが次の瞬間、寝かされた怪我人を伯斗の肩越しに覗き見た鈴星は、思わず息を呑んで瞠目した。
「れ、麗蘭…っ!?」
その声に、驚いた伯斗が振り返る。
「鈴星、知り合いか?!」
「わ、わらわが…まだ劉家の屋敷にいた頃…姉妹の様に親しかった、曹家の娘だ…」
鈴星は、動揺を隠せない様子でそう答えた。
「娘!?よく見ろ、彼は男だぞ…!」
そこに横たわる青年を、伯斗が驚きの表情で見下ろすと、僅かに冷静さを取り戻した鈴星も彼と共にその顔を見詰める。
「うん…でも、とても良く似ている…」
鈴星は眉を顰めながら、小さくそう呟いた。
「…うっ…っ」
小さく呻き声を上げて重い瞼を上げると、薄暗い天井が目に入る。
ゆっくりと視線を移動させたが、そこには見知らぬ光景が広がっていた。
激しい頭痛と目眩を感じながら、彼はゆっくりとその場で身体を起こした。
次の瞬間、首に激痛と違和感を覚え、はっとして恐る恐る自分の首筋に手を当てる。
首の傷には包帯が巻かれ、手当てが施されていた。
しかし、声が出せない。
突然、部屋を仕切る簾が開かれ、驚いた彼は思わず足元の着物を手繰り寄せ、自分の剣を探した。
「お前、目覚めたのか…!?」
そこに立っているのは、驚きの眼差しで彼を見下ろす、一人の美しい少女である。
その姿を見上げた時、彼もまた余りの驚きに目を見開いた。
り、鈴星……っ!?
思わず声を上げそうになったが、彼の喉から言葉が出て来る事は無かった。
「兄様が、怪我を負っていたお前を此処へ連れて帰って来たのだ。ずっと眠ったままだったから、もう目覚めぬかと思っていたぞ…!」
彼に近付いた鈴星は牀の上に膝を突くと、いきなり腕を伸ばして彼の肩を掴み、その額に自分の額を押し当てる。
「良かった!熱もすっかり下がったようだ…!」
そう言うと、満面の笑みを浮かべて彼を見詰めた。
彼女のその眩しすぎる笑顔に、思わず赤面する。
「それにしても…本当に良く似ておるな…」
今度は床に手を突き、彼の顔を覗き込む様にしてまじまじと見詰める。
「わらわの知っている、“麗蘭”と言う娘に…」
「…っ!?」
その言葉に、彼はぎくりとして狼狽えた。
鈴星は、彼のその様子にくすくすと笑った後、
「麗蘭は、わらわの姉妹の様な存在であった…今、何処でどうしておるのか…きっと、わらわがこんな所に居るなど、知らぬであろう…」
そう言って、少し伏し目がちに呟く。
「………」
鈴星は、俺だと気付いていないのか…?
そう思い、彼は少し複雑な気持ちに染まりながら、黙ったまま彼女の横顔を見詰めていたが、
「そうだ、お前…自分の名は分かるか?」
と突然、顔を上げた鈴星に問い掛けられ、少し慌てて首を縦に振った。
そして指を動かし、宙に文字を書く仕草をして見せる。
「そうか、少し待っていておくれ。」
鈴星はそう言って微笑むと、部屋の奥から筆と硯を持ち出して来た。
それを彼の手に握らせると、白い布切れを床に広げる。
彼は筆に墨を付け、
『孟徳』
と、その上に丁寧に文字を書いた。
鈴星は、曹家と深い親交のあった劉家の娘である。
麗蘭と鈴星は幼馴染みであり、二人は幼少の頃から姉妹の様に仲が良かった。
鈴星が十代に入ると、その美貌に惹かれた多くの男たちから縁談を持ち掛けられたが、彼女はどんなに良い縁談も悉く断った。
実は、鈴星はいつも麗蘭が劉家の屋敷へやって来る時、従者として付いて来る少年、奉先に幼い頃から恋心を抱いていたのである。
それを知った鈴星の父は、曹家の主に相談を持ち掛け、奉先を婿養子として迎える事にした。
しかし、その当時、“龍神の呪い”の為、“娘”と偽り育てられていた麗蘭は、自分が男である事を鈴星に打ち明けられずにいたが、彼もまた、幼い頃からずっと鈴星に淡い恋心を抱いていたのである。
「…本人は否定しておったが、奉先の奴…やっぱり、わらわの事より麗蘭の事が好きだったのであろうな…わらわと居ても、心ここに在らずで。結局、縁談は破談となってしまった…」
孟徳の身体の傷を手当てしながら、鈴星はそう言って、小さく溜め息を漏らし力無く笑う。
「………」
孟徳は目を細めて、鈴星の横顔を見詰めていた。
「でも、奉先の気持ちは分からぬでも無い。麗蘭は、とても男勝りで勇敢だったが、優しくて魅力的な娘だったのだ…わらわも、麗蘭の事が大好きだった…」
顔を上げた鈴星は、孟徳を見詰め、
「もし麗蘭が男だったら、きっと…わらわは奉先より、麗蘭を好きになっていたであろう。」
そう言うと、瞳を輝かせて笑った。
その瞬間、孟徳は思わず鈴星の両肩を掴み、彼女の煌めく瞳を強く見詰め、何かを言いたそうに唇を震わせる。
「孟徳…っ、痛い…」
「…!」
驚いた鈴星が頬を紅潮させるのを見て、孟徳は慌てて手を放した。
「気が付いたか、青年…!」
そこへ伯斗が現れ、微笑を浮かべて孟徳を見ながら、二人が座った牀に歩み寄る。
孟徳は再び慌てて、鈴星から離れた。
「ふふ、私が居ては邪魔だったか…?」
その様子に目を細め、伯斗は少し意地悪く笑った。
鈴星は、紅い頬を膨らませながら伯斗を睨む。
「兄様ったら!何を言っておる…?!彼は、孟徳。首に受けた傷で、声が出せぬらしい…」
「ああ、そうだろう。声帯に傷を負っている様だからな…暫くは話す事は出来ぬであろうが、心配するな直に良くなる。」
「………」
伯斗は目元に柔らかく微笑を浮かべ、少し気落ちした様に俯く孟徳の肩を優しく叩いた。
「私は、劉伯斗と申す。鈴星とは従兄妹同士で、半年程前からこの邑に住んでいる。」
伯斗がそう言って身の上話しを始めると、孟徳の隣に座っていた鈴星は急に無口になり、少し俯いてから、
「わらわは…着物を洗って干して来る…」
と言って立ち上がると、その部屋を出て行く。
伯斗は鈴星の背を黙って見詰め、彼女の姿が見えなくなるまで見送った後、徐ろに口を開いた。
「董卓の専横が始まって、あの子の父親は財産を奪われた挙句に、有らぬ罪を着せられ投獄されると、死罪を言い渡されてしまったのだ…」
「…!?」
孟徳は驚いて、思わず瞠目した。
劉家の主がその様な目に合っていたとは、今の今迄知らなかった。
恐らく、曹家の主である父は知っていたであろうが、孟徳に心配を掛けまいとしたのか、彼にはその事を一言も語らなかったのである。
「彼の友人や知人が、減刑を求めて朝廷に訴えたが聞き入れられず…遂に、鈴星にまで捕縛の命が下ってしまった…」
伯斗はそこまで話すと、瞼を閉じ、深い溜め息を吐く。
「私は誰にも知られぬ様、彼女を屋敷から連れ出し、この邑へ匿った。今まで、炊事などした事が無かったあの子が…慣れない仕事に文句も言わず、こんなあばら家で良く堪えてくれている…」
近くの井戸から汲み上げた水で、鈴星は桶に入れた着物を洗っていた。
水は氷の様に冷たく、悴む手は思う様に動かせない。
鈴星は額の汗を拭い、赤くなった手に「はあ、はあ」と自分の息を吹き掛けた。
大きな桶を両腕に抱え、あばら家へ戻って来ると、裏庭の物干し竿に、洗った着物を一枚ずつ掛けていく。
すると、彼女の背後から近寄った人影が、突然手を伸ばして、桶の中の濡れた洗濯物を掴み取った。
「!?」
驚いて振り返ると、そこには、微笑を浮かべた孟徳が立っている。
「孟徳…!寝ていなくて良いのか?!」
心配気な面持ちで見詰める鈴星に、孟徳は小さく頷き、手にした洗濯物をパタパタと風に晒すと、丁寧に皺を伸ばして竿に掛ける。
鈴星はそれを見て、手を口元に当てながら「うふふ…っ」と笑った。
「お前、男の癖に、随分と器用ではないか…!」
彼女の額に浮かんだ小さな汗の滴が、差し込む朝日にきらきらと輝き、頬を紅潮させて笑うその姿は実に美しかった。
笑顔を湛えたままの孟徳は、暫しその姿に見惚れ、彼の視線がじっと自分に注がれている事に気付いた鈴星は、はっとし恥じらう様に俯いた。
再び孟徳が桶に手を伸ばし、取り上げた着物を広げて風に曝し竿に掛けると、今度は頬を紅くして顔を上げた鈴星が、彼のその姿にぼんやりと見惚れる。
頬を刺す様な冷たい風が、彼女の肩に掛かる柔らかな長い髪を靡かせていたが、鈴星は不思議と少しの寒さも感じなかった。
そうやって暫く彼らの元で療養し、気付けば既に十日が経過していた。
虎淵や文謙たちが心配して、俺を探しているだろう…
きっと、奉先も…
孟徳は竈に火を焼べながら、燃え盛る炎を瞳に映し、ぼんやりと考えていた。
ふと自分の胸に手を当てて、小さく溜め息を漏らす。
翡翠の首飾りを何処かで失ってしまった…
あれは、“降龍の谷”で劉玄徳に貰った物だが、その後翠仙に贈り、彼女が命を落とした後、再び孟徳の手に戻った。
彼にとっては思い出深い品であり、それからは何時も肌身離さず持ち歩いていた。
鈴星は、俺が“麗蘭”であるとは思っていない…やはり、真実を話すべきであろう…
それまで何度もそう思ったが、実際に鈴星を前にすると、どうしても言い出せない。
そもそも今は声を出す事が出来ぬので、彼女と筆談をするしかないが、その筆を取る手が伸びなかった。
孟徳は、部屋の隅に置かれた硯に、胡乱な眼差しを送る。
俺は…もう自分を偽って生きるのはやめると、呂興将軍の前で誓った筈である。
今更、真実を語る事に何を躊躇う必要が有ろうか…!
そう思い、暗い瞳に小さな燈火を照らすと、孟徳は顔を上げて竈の前から立ち上がろうとした。
その時、突然入り口の戸が開かれ、野菜の入った籠を抱えた鈴星が元気良く入って来る。
「孟徳、火の番を任せて悪かったな!直ぐに食事の支度をするから、待っていておくれ!」
彼女はそう言って、驚きの表情で見上げる孟徳に笑顔を向けた。
「?どうかしたのか…?」
彼のその様子に、小さく首を傾げながら鈴星が問い掛ける。
途端に孟徳は表情を変え、慌ててぎこち無い作り笑いを浮かべると、首を激しく横に振った。
鈴星はくすくすと笑い、炊事場へと向かう。
心折れるの早過ぎるだろっ…!何をやっているのだ、俺は…!!
思わず自分で自分を罵りたくなった。
鈴星の顔を見ると、奮い立った勇気も決意もあっと言う間に萎んでしまう。
彼女を想う気持ちは日毎に強くなって行くが、それと同時に、後ろめたい想いもどんどんと増して行くのである。
本当の事を知ったら…きっと彼女は怒るであろうな…
彼女の後ろ姿を見詰めながら、孟徳は強く唇を噛み締めた。
「美味しくなかったか?…孟徳?」
浮かない表情で椀に注がれた粥を啜る孟徳に、鈴星が心配気に問い掛けた。
はっとして顔を上げ、孟徳は苦笑を浮かべて小さく首を振る。
それから少し翳りのある眼差しを向け、悲しげな瞳で彼女を見詰めた。
「そうだ…!後で兄様が釣りに行った河へ一緒に行ってみないか?」
ぱっと顔を上げた鈴星が、明るい表情で嬉しそうに問い掛けると、孟徳は微笑し、彼女に大きく頷いてみせた。
伯斗は、早朝から汴水の下流へ魚を捕りに出掛けていた。
そろそろ日も中天に差し掛かる頃である。
捕った魚を竹で編んだ魚籠に入れていると、彼の視界に、丘の上から此方へ歩いて来る人影が映った。
その若い青年は伯斗に近付くと、
「この辺りで人を探しています。“曹孟徳”という人物なのですが…聞き覚えは有りませんか?」
彼にそう声を掛け、丁寧に拱手した。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
和ませ屋仇討ち始末
志波 連
歴史・時代
山名藩家老家次男の三沢新之助が学問所から戻ると、屋敷が異様な雰囲気に包まれていた。
門の近くにいた新之助をいち早く見つけ出した安藤久秀に手を引かれ、納戸の裏を通り台所から屋内へ入っる。
久秀に手を引かれ庭の見える納戸に入った新之助の目に飛び込んだのは、今まさに切腹しようとしている父長政の姿だった。
父が正座している筵の横には変わり果てた長兄の姿がある。
「目に焼き付けてください」
久秀の声に頷いた新之助だったが、介錯の刀が振り下ろされると同時に気を失ってしまった。
新之助が意識を取り戻したのは、城下から二番目の宿場町にある旅籠だった。
「江戸に向かいます」
同行するのは三沢家剣術指南役だった安藤久秀と、新之助付き侍女咲良のみ。
父と兄の死の真相を探り、その無念を晴らす旅が始まった。
他サイトでも掲載しています
表紙は写真ACより引用しています
R15は保険です
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
【18禁】「巨根と牝馬と人妻」 ~ 古典とエロのコラボ ~
糺ノ杜 胡瓜堂
歴史・時代
古典×エロ小説という無謀な試み。
「耳嚢」や「甲子夜話」、「兎園小説」等、江戸時代の随筆をご紹介している連載中のエッセイ「雲母虫漫筆」
実は江戸時代に書かれた随筆を読んでいると、面白いとは思いながら一般向けの方ではちょっと書けないような18禁ネタもけっこう存在します。
そんな面白い江戸時代の「エロ奇談」を小説風に翻案してみました。
下級旗本(町人という説も)から驚異の出世を遂げ、勘定奉行、南町奉行にまで昇り詰めた根岸鎮衛(1737~1815)が30年余にわたって書き記した随筆「耳嚢」
世の中の怪談・奇談から噂話等々、色んな話が掲載されている「耳嚢」にも、けっこう下ネタがあったりします。
その中で特に目を引くのが「巨根」モノ・・・根岸鎮衛さんの趣味なのか。
巨根の男性が妻となってくれる人を探して遊女屋を訪れ、自分を受け入れてくれる女性と巡り合い、晴れて夫婦となる・・・というストーリーは、ほぼ同内容のものが数話見られます。
鎮衛さんも30年も書き続けて、前に書いたネタを忘れてしまったのかもしれませんが・・・。
また、本作の原話「大陰の人因の事」などは、けっこう長い話で、「名奉行」の根岸鎮衛さんがノリノリで書いていたと思うと、ちょっと微笑ましい気がします。
起承転結もしっかりしていて読み応えがあり、まさに「奇談」という言葉がふさわしいお話だと思いました。
二部構成、計六千字程度の気軽に読める短編です。
【18禁】「胡瓜と美僧と未亡人」 ~古典とエロの禁断のコラボ~
糺ノ杜 胡瓜堂
歴史・時代
古典×エロ小説という無謀な試み。
「耳嚢」や「甲子夜話(かっしやわ)」「兎園小説」等、江戸時代の随筆をご紹介している連載中のエッセイ「雲母虫漫筆」
実は江戸時代に書かれた書物を読んでいると、面白いとは思いながら一般向けの方ではちょっと書けないような18禁ネタや、エロくはないけれど色々と妄想が膨らむ話などに出会うことがあります。
そんな面白い江戸時代のストーリーをエロ小説風に翻案してみました。
今回は、貞享四(1687)年開板の著者不詳の怪談本「奇異雑談集」(きいぞうだんしゅう)の中に収録されている、
「糺の森の里、胡瓜堂由来の事」
・・・というお話。
この貞享四年という年は、あの教科書でも有名な五代将軍・徳川綱吉の「生類憐みの令」が発布された年でもあります。
令和の時代を生きている我々も「怪談」や「妖怪」は大好きですが、江戸時代には空前の「怪談ブーム」が起こりました。
この「奇異雑談集」は、それまで伝承的に伝えられていた怪談話を集めて編纂した内容で、仏教的価値観がベースの因果応報を説くお説教的な話から、まさに「怪談」というような怪奇的な話までその内容はバラエティに富んでいます。
その中でも、この「糺の森の里、胡瓜堂由来の事」というお話はストーリー的には、色欲に囚われた女性が大蛇となる、というシンプルなものですが、個人的には「未亡人が僧侶を誘惑する」という部分にそそられるものがあります・・・・あくまで個人的にはですが(原話はちっともエロくないです)
激しく余談になりますが、私のペンネームの「糺ノ杜 胡瓜堂」も、このお話から拝借しています。
三話構成の短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる