上 下
33 / 132
第三章 黄巾の反乱と漢王朝の衰退

第三十三話 曹孟徳の暗殺

しおりを挟む

翌日昼までに、官軍は宛県城の包囲を解き、凡そ三里(約1.2km)程退いた場所に布陣した。

官軍側としては、とにかく黄巾軍の新たな指導者である、趙弘ちょうこうを捕らえたい。
黄巾軍が討って出れば、その主力部隊に攻撃目標を絞り、精鋭部隊をそこへ集中させる。

官軍の精鋭を率いるのは、将軍の朱儁である。
その他の部隊は、敵を遊撃ゆうげきし、撹乱かくらんして黄巾軍の主力と切り離す戦いをせねばならない。

孟徳の部隊は前方で、まず敵と当たってもまともには戦わず、敵部隊を陽動ようどうするのが役目となる。
相手は大軍であるから、こちらが逃げれば相手は弱いと見て、主力を押し出してもみ潰しに来るに違いない。
敵の主力が現れれば、後方で待機する朱儁の部隊で迎撃げいげきする作戦である。

日は中天に差し掛かっている。
鉄の板を連ねて貼り合わせたよろいの上から、あか戦袍せんぽうを身にまとった孟徳は、白馬に跨がると、騎兵部隊を率いて颯爽さっそうと戦場に向かった。

敵は北門から出撃すると、部隊を大きく展開させ、鶴翼かくよくの形を取りながら前進して来る。
数で勝っている黄巾軍は、官軍を取り囲んで壊滅させる作戦である。

この時、朱儁が最も信頼し、目を掛けている指揮官の一人に、孫堅そんけん、字を文台ぶんだいという武将が居た。
彼も孟徳と同様、先鋒で敵の陽動作戦に参加している。

孫堅の部隊は、敵の左翼側に、孟徳の部隊は右翼側をそれぞれ攻撃目標と定めた。


いよいよ戦闘が開始されようとした時、ふと孟徳は、太陽の周りを旋回している一羽の鷹を発見し、高い空を見上げた。

手をかざして太陽の光りを遮り、目を細めて鷹を見ようとしたが、視界が霞んではっきりと見えない。
孟徳は目をこすった。

「どうかしましたか?顔色がすぐれぬご様子ですが…?」
異変を感じた指揮官の一人が隣に馬を並べ、問い掛けた。

「いや、大丈夫だ…!全軍、戦闘配置に付け…!」

孟徳は青白い顔のまま、額の汗を拭い、兵を指揮する羽旄うぼうを手に取った。が、羽旄のを握る手に力が入らない。
孟徳の脳裏に、一抹の不安がぎった。

朝、朝食を済ませた後、幕舎へ戻ると翠仙の姿が消えていた。

何処へ行ったのであろう…?

不審に思い辺りを探したが、結局見付ける事は出来ず、孟徳は翠仙の身を案じつつ戦場へと向かったのである。

まさか…翠仙が…

孟徳は全身から血の気が引くのを感じながらも、今更後戻りは出来ぬと思い、羽旄を高く掲げると、全軍に突撃命令を下した。

それとほぼ同時に、孫堅軍も黄巾軍の左翼へ攻め掛かかる。

敵へ向かって、一斉に兵士たちが突撃を開始し、孟徳の周りを騎馬たちが駆け抜けて行く。
激しい動悸に思わず胸を押さえたが、孟徳は気力を振り絞り、兵士たちを追って馬を走らせた。
だが、次第に視界がせばまり、辺りの景色は歪んで来る。

まずい…!
孟徳はそう感じたが、必死にこらえながら馬を止めず走った。
その時、後方から走り寄って来た一頭の騎兵が、意識を失い掛けている孟徳の側へ素早く近寄り、彼の体を支えた。


黄巾軍の右翼と左翼で始まった戦闘を、精鋭部隊を引き連れた朱儁将軍は、後方の小高い丘から見守っていた。
流石に数で勝る黄巾軍は、孫堅軍、曹操軍を物ともせず押し寄せている。
だが、右翼と左翼を掻き乱され、次第にその陣形は崩れつつあった。

「良し、両軍とも作戦通りに上手く戦っている様だ。両翼が本体から離れたら、間髪を入れず突撃を開始する…!」
朱儁は味方の兵士たちを振り返り、全軍に響き渡る大声たいせいで告げる。
そして再び戦場を見守っていた朱儁は、やがて眉間に深い皺を寄せ、右翼側を指差した。

「曹操軍の動きが鈍い…うまく統率が取れておらぬ様子である…!何かあったのか…!?」

確かに、左翼の孫堅軍は乱れ無く、上手く敵を撹乱出来ているが、右翼の曹操軍はまとまりを欠き、次第に敵に飲み込まれて行く様に見える。

「このままでは、壊滅する…!」
朱儁がそう叫んだ時、虎淵が前へ進み出て、素早く朱儁に拱手した。

「将軍!私が、援護に向かいます…!」

「曹孟徳殿は、お前の主君であったな…!」
虎淵を馬上から見下ろしながら、朱儁が大きく頷くと、虎淵は素早く馬に跨がり、数十騎の騎馬を率いて丘を駆け降りて行った。


孟徳の部隊は完全に統率を失い、黄巾軍に追われる兵士たちは、右往左往しながら戦場を駆け回っている。
戦場へ突入した虎淵は、指揮官の一人を見付け出し、側へ駆け寄った。

「孟徳様は?!どうした?!」

「それが…先程から姿が見当たらず、我々も探している所です…!」
指揮官は不安な表情で、周りを見渡しながら答えた。

「何だって…?!」
それを聞いた虎淵は瞠目し、振り返って戦場の中に孟徳の姿を探したが、その姿は何処にも見当たら無い。
虎淵の全身から一気に血の気が引き、たちまち恐怖と不安が襲った。

まさか、孟徳様が…敵に討ち取られた…!?

その思いに捕われると、虎淵にはそこが戦場である事すら分からなくなってしまった。
虎淵の不安が馬にも伝わっているらしく、彼の馬は落ち着き無く首を激しく振り、その場で足踏みを繰り返している。

その時、焦る虎淵の目に、紅い戦袍せんぽうまとい、白馬に跨がった人物が戦場を横切る姿が飛び込んで来た。

その姿は、紛れも無く孟徳である。

「孟徳様ーーー!!」

虎淵は思わず叫び、直ぐ様馬首を返すと、彼の方へ馬を走らせた。

孟徳は離れた位置からではあるが、虎淵の姿に気付いたらしく、馬の足を緩めると、虎淵に向かって手で合図を送って来る。
兵たちを後方へ、退却させるよう言っている様である。
虎淵は大きく頷き、振り返って全兵士たちへ、後方へ引くよう命令を送った。

再び、虎淵が孟徳の方を振り返ると、孟徳は虎淵に向かって、遠くの林の方を指差した後、単騎で敵陣の方へ駆け始めた。

「孟徳様…!?」

虎淵には、孟徳の意図が読み取れ無い。

孟徳様の様子がおかしい…?!

困惑したまま、走り去る孟徳の後を追おうとした時、岩場から放たれた矢が戦場を貫く様に飛び、勢いを保ったまま、馬上の孟徳の肩に当たった。

岩場の陰には、三人の男たちが身を潜めていたのである。

「あの、紅い戦袍を纏っているのが、標的だ…!狙いを外すな…!」
男たちは再び矢をつがえ、狙いを定めて一斉に矢を放った。

放たれた矢は、馬上で体勢を崩した孟徳の体に、吸い込まれる様に次々と突き立った。

「孟徳様ぁーーーっ!!」

絶叫する虎淵の前で、全身に矢を受けた孟徳の体は馬上で傾き、やがて地面へと落下して行った。



「曹孟徳が、討たれただと…?!」

駆け付けて来た伝令兵を、信じられぬという表情で見下ろした朱儁は、顔色を失った。
だが、狼狽うろたえている暇は無い。
指揮官を失った曹操軍は、黄巾軍に飲み込まれ、完全に壊滅してしまった。

「…やむを得ぬ…!」

朱儁は渋い表情で戦場を顧みると、自部隊に突撃命令を下した。
曹操軍を敗走させた事で、敵は勢いに乗っている。
敵に隙を見出だすには、そこしか無い。
朱儁は冷静に戦況を読み取り、敵の主力部隊を巧みに誘い出して、真っ向勝負を仕掛けた。

凡そ数刻の戦闘ののち、日が傾き始めた頃、朱儁将軍の率いる精鋭部隊は、遂に黄巾軍の指導者である趙弘を捕らえ、それを斬る事に成功した。

しかし、再び宛県城へ退却した黄巾軍は、新たに韓忠かんちゅうという者を指導者に立て、籠城を続けたのである。

夕刻、赤い夕日に照らされた戦場には、戦死した兵士や馬たちの死体が積み重なり、折れた軍旗や防具、武器などが無残に散乱している。
孟徳の軍は、この戦いで退却を余儀なくされ、生き残った兵士たちは戦線から離脱する事となった。

虎淵は朱儁の幕舎へ向かい、中へ通されると、朱儁の前に膝を突き拱手した。

「曹孟徳様が、戦死なさいましたので…私は、孟徳様のご遺体を、雒陽らくようまでお運びしたいと思います… 」
「そうか…分かった。気を付けて参れ…」

深く項垂うなだれた様子の虎淵を見下ろし、朱儁は哀れみを目に表しながら、彼の肩を力強く叩いた。
翌朝、虎淵は孟徳の遺体を収めたひつぎしゃに乗せ、それを馬に繋ぐと、帰還する兵たちと共に戦場を後にした。

宛からの退却途中、虎淵たちは雒陽へ向かう王允の部隊と遭遇した。
孟徳の戦死を聞いた王子師おうししは驚きを隠せなかったが、孟徳の柩を前に暫し瞑目めいもくし、やがて低く呟いた。

「孟徳殿は、漢王朝の希望であった…彼を失うのは、わしにとっても辛い事である…」


曹孟徳戦死の報は、既に雒陽の張譲ちょうじょうの元へも届いていた。

「遂に、あの目障りな小僧を、片付ける事が出来ましたな。実にお見事です。」

屋敷を訪れていた宦官の蹇碩けんせきは、積年の溜飲りゅういんを下げたと言わんばかりに、晴れやかな表情で、張譲に深く礼をした。

「何、あの様な豎子じゅしを始末するのに、難しい事などござらぬ…黄巾党の中には、我々を頼りに昵懇じっこんを求め、賄賂を送って来る者が少なく無い。今、天下を動かしているのは、我々なのである…!」

張譲は誇らしげにそう言うと、口元に不敵な笑みを浮かべ、鋭い眼光で窓の外に広がる青空を見上げた。


何処までも広がる青い大空のもと、粛々と列を成して進んでいる集団があった。
雒陽の城門を通過すると、そのまま宮殿へと真っ直ぐに向かって行く。

宮門を潜り、柩を宮殿の中に運び込んだ虎淵は、王子師と共に朝廷へと参内した。
運び込まれた白い柩に、集まった文武百官は皆眉をひそめ、訝し気に見ている。

前へ進み出た王子師は皇帝に拝謁し、辞を低くして申し述べた。

「宛城での戦にきまして、騎都尉きといの曹孟徳殿が敵の矢を受け、戦死致しました。」

「その報は、既にわれにも届いておる。手厚く葬ってやるが良い…!」
皇帝はその白い柩を、憐憫れんびんを催す様な眼差しで見詰め、そう告げた。
それを聞いた王子師は、更に前へ進み出ると、先程より少し声を高くした。

「陛下、しかしその死には、疑惑がございます…!」

その発言に、朝廷内がざわめいた。
皇帝の傍にはべる宦官たちにも、そのざわめきが広がり、蹇碩が険しい表情で張譲に視線を送る。
張譲は何食わぬ表情で黙したまま、王子師の顔をじっと睨んでいた。

「疑惑があると…?申してみよ…!」
皇帝は思わず玉座から立つと、訝し気に王子師を見下ろす。

「はい、それには先ず、そちらの柩をおあらため頂きたく存じます…!」

王子師がそう言って白い柩を指し示すと、虎淵が素早く柩に近寄り、その蓋を開いた。

「…これは…!」
柩の中を覗き込んだ皇帝は、思わず息を呑み、信じられぬという顔で声を震わせた。




馬上で意識を失い掛けていた孟徳は、後方から走り寄った騎馬兵に体を支えられ、味方にも気付かれぬ内に、そのまま戦場を離脱した。

少し走った場所にある林の中へ駆け込むと、その兵士は素早く孟徳を馬から降ろし、木の根元へ彼の体を横たえた。
孟徳は重い瞼を開き、苦しげに喘ぎながら、その者を見上げた。

「…翠仙…?お前か…?!」

その兵がかぶとを外すと、長い髪が肩を滑り落ちる。
翠仙は兵士の格好で武装し、孟徳の部隊に紛れ込んでいたのである。

「お前…俺に、毒を盛ったのか…?」

「ごめんなさい、孟徳様…」

翠仙は、激しく肩で息をする孟徳を、悲しげな眼差しで見詰めた。

「でも、渡された量の半分も入れていないから、命を落とす事はありません…」
そう言うと、翠仙は素早く孟徳の兜を外し、着ていた紅い戦袍を脱がせ始める。

「翠仙…?何をしている…?」
「少しの間、体の麻痺が続くでしょうが、我慢して下さいね…直ぐに、お仲間を呼んで来ますから…」
そして顔を上げると、孟徳の冷たい手を強く握り、自分の胸に押し当てた。

「私は、張譲様にお仕えしている刺客です…!あなたを戦死に見せ掛け、命を奪うのが目的で、私はあなたに近付いた…」

翠仙は瞳を潤ませながら、青白い孟徳の顔を覗き込む。

「私は、ただの道具に過ぎず…自分でもそう言い聞かせて、今まで生きて来ました。でも、あなたは…あなただけは、私を人として、一人の女として扱ってくれた…!あなたと共に過ごした時間ときは、本当に私にとって大切な、幸せな時間ときでした…!」

翠仙の頬を、溢れた涙が伝い、孟徳の冷たい手の上にこぼれ落ちた。

「孟徳様…!私は、あなたとずっと一緒に居たかった…あなたを、心から愛しています…!」

そう言うと翠仙は、孟徳に額を寄せ、血の気の引いた孟徳の唇に、そっと自分の艶やかな唇を重ねた。

やがて閉じた瞼を開き、潤んだ瞳のままで孟徳を見詰めた後、翠仙は立ち上がり、孟徳の紅い戦袍を身に纏った。

「翠仙…!どうする気だ…?」
孟徳は必死に体を起こし、翠仙の足元へ這い寄ろうとしたが、体が言う事を聞かない。
翠仙は兜を被り、孟徳の白馬に跨がると、振り返って叫んだ。

「孟徳様は、命を狙われています。そこから、動かないで…!」

そして白馬の腹を蹴ると、再び戦場へ向けて走り出す。

「待て…!翠仙、行くな…!」

孟徳は力の限りに叫んだ。
遠退く意識の中で、翠仙の姿は次第に霞んで行く。

翠仙…!俺も、お前を愛している…!

そう叫びたかったが、最早、翠仙は手に届かない所まで行ってしまった。
孟徳は地面に這いつくばり、やがて意識を失って、その場に倒れ込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

和ませ屋仇討ち始末

志波 連
歴史・時代
山名藩家老家次男の三沢新之助が学問所から戻ると、屋敷が異様な雰囲気に包まれていた。 門の近くにいた新之助をいち早く見つけ出した安藤久秀に手を引かれ、納戸の裏を通り台所から屋内へ入っる。 久秀に手を引かれ庭の見える納戸に入った新之助の目に飛び込んだのは、今まさに切腹しようとしている父長政の姿だった。 父が正座している筵の横には変わり果てた長兄の姿がある。 「目に焼き付けてください」 久秀の声に頷いた新之助だったが、介錯の刀が振り下ろされると同時に気を失ってしまった。 新之助が意識を取り戻したのは、城下から二番目の宿場町にある旅籠だった。 「江戸に向かいます」 同行するのは三沢家剣術指南役だった安藤久秀と、新之助付き侍女咲良のみ。 父と兄の死の真相を探り、その無念を晴らす旅が始まった。 他サイトでも掲載しています 表紙は写真ACより引用しています R15は保険です

西涼女侠伝

水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超  舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。  役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。  家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。  ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。  荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。  主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。  三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)  涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

【18禁】「巨根と牝馬と人妻」 ~ 古典とエロのコラボ ~

糺ノ杜 胡瓜堂
歴史・時代
 古典×エロ小説という無謀な試み。  「耳嚢」や「甲子夜話」、「兎園小説」等、江戸時代の随筆をご紹介している連載中のエッセイ「雲母虫漫筆」  実は江戸時代に書かれた随筆を読んでいると、面白いとは思いながら一般向けの方ではちょっと書けないような18禁ネタもけっこう存在します。  そんな面白い江戸時代の「エロ奇談」を小説風に翻案してみました。    下級旗本(町人という説も)から驚異の出世を遂げ、勘定奉行、南町奉行にまで昇り詰めた根岸鎮衛(1737~1815)が30年余にわたって書き記した随筆「耳嚢」  世の中の怪談・奇談から噂話等々、色んな話が掲載されている「耳嚢」にも、けっこう下ネタがあったりします。  その中で特に目を引くのが「巨根」モノ・・・根岸鎮衛さんの趣味なのか。  巨根の男性が妻となってくれる人を探して遊女屋を訪れ、自分を受け入れてくれる女性と巡り合い、晴れて夫婦となる・・・というストーリーは、ほぼ同内容のものが数話見られます。  鎮衛さんも30年も書き続けて、前に書いたネタを忘れてしまったのかもしれませんが・・・。  また、本作の原話「大陰の人因の事」などは、けっこう長い話で、「名奉行」の根岸鎮衛さんがノリノリで書いていたと思うと、ちょっと微笑ましい気がします。  起承転結もしっかりしていて読み応えがあり、まさに「奇談」という言葉がふさわしいお話だと思いました。  二部構成、計六千字程度の気軽に読める短編です。  

剣客居酒屋 草間の陰

松 勇
歴史・時代
酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

処理中です...