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第3章 神と悪魔、そして正義

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突如襲来した狩屋新と名乗る男を前にした二人は、彼の発する狂気じみた発言から危険性を感じ、彼を抑えるために戦闘態勢に入った

「行くよ。新君!」
その言葉の後、義寛はその場から一瞬で消え、新の背後をとっていた。
「〈一刀:葵〉」
義寛の持つ刀の切っ先が紫色に輝き、弧を描くような形でほぼ同じタイミングで二回、狩屋に斬撃を放った。
しかし、義寛は自らが放った一撃には何の手ごたえもなかった・・・・・・・・・・・・ことに違和感を覚え、すぐに新から距離をとった

「あーごめんねぇ!言ってなかったよぉ!君らの攻撃はぁ僕に届かないんだよぉ~!残念でしたぁ!」
新は手を仰ぎながら、狂気じみた笑みでそう語り、それを聞いた義寛は茜音の元に戻り、体勢を立て直した


「茜音さん。はったりの可能性もあるのでいくつかの攻撃手段を試してみましょう。僕からも仕掛けますが、茜音さんからの攻撃もお願いします。それと、いざとなった際の撤退の手段も準備しておいてください。」

「わかりました、義寛さん。けど危ないようでしたらすぐに変わりますからね?」

「了解しました。行きますよ!」
そういって義寛は、新に向かって飛び出した。それと同時に茜音は校庭中に術式をセット、さらに新への攻撃用の術式を発動し待機していた。

「アハッ!まだ来てくれるんだね!いいよぉ!さぁもっと!殺しあおう!」
新はそう言って飛び出した義寛を迎え撃つ形で戦闘態勢に入った

「〈一刀:椿〉!」
義寛は飛び出して着地した瞬間スライディングし、新の下に潜り込むと上に向けて強烈な突きを放ったが、その一撃は新の体をすり抜けた

「当たんないよぉ!〈空式:白群〉」
新は真下にいる義寛に手で触れようとしてきた。それに対し何か悪い予感を感じた義寛は茜音が周囲に張り巡らした転移術式を起動。一瞬で茜音のもとにもどった。
そして、義寛がいなくなったことで、空ぶった新の手が地面に触れたその瞬間、地面全体に貼られていた茜音の術式が跡形もなく消え去った

「義寛さん!」
急に術式が消え去り、そしてそれに対し自分があまり違和感を感じていない・・・・・・・・・・ことに、茜音は焦って義寛に声をかけた。

「分かっていますよ。茜音さんの術式が消えたはずなのに、僕らは初めからそこになかった・・・・・・・・・・・かのように感じている。これが彼の能力か...!」
茜音の感じた違和感を義寛も感じており、先ほどの自分の攻撃が当たらなかったのも、新に当たってはいたが、当たったという事実をなかったことにされたということに、義寛はようやく気付いた。

「義寛さん、彼の能力の発動条件はおそらく手で触れることです。そして彼の能力を受けたものは、彼の思った通りになります。そして――どこまでかは分かりませんが、それに対し私たちは#何の違和感も抱かない__・・・・・・・・・・__#...!」
茜音は冷や汗をたらしながら、深刻な顔でそう語った。

「あはぁ!気づいちゃったねぇ!そうさ!僕の能力名は〈空虚からうつろ〉!僕は僕が触れたものの過去・現在・未来を僕の思った通りに改編できるんだぁ!いいでしょ!まぁ時間が経ちすぎると僕自身も忘れちゃうんだけどねー。それでさぁ、まだ戦う気、ある?」
新は変わらず狂った笑みを浮かべたまま、そう語った。そしてそう語る彼からは、戦闘が始まった時以上の圧が放たれていた。

「まだやるさ。君が街に被害を加えるかもしれないからね。もしそうなったら息子に顔が立たないよ。それに、宗太が帰ってきたときに安心できる場所を残しておかなきゃ、怒られちゃうしね。」
義寛はそう語った後に、もう一度新に向けて刀を構えた。新を見据える義寛の眼には恐怖などは微塵も感じられず、ただひたすらに希望だけが写っていた。

「そうね。息子も含めて、戻ってきた子たちが、また無事に暮らせるようにしなきゃ。それが私たちの役目だもの。新君には悪いけど、ここで降参してもらうわよ!」
茜音はフフッとわらって、さっきより少しばかり楽しそうに語り、もう一度消えた場所に術式を張り巡らせた。

「うんうん。やっぱりいいよぉ!さっすがあいつの親だね!期待してこっちに来てよかったぁ。じゃあ本気で行くよぉ!」
新は首を傾げ、力を抜いた様な姿勢になると、彼の周囲に茜音の術式を塗りつぶすかたちで、泥のようなものが排出され、そこからどす黒い色をした腕が生えてきた。

「まさか、あの手のようなものに触れられれば、彼の能力が発動するのか?まずいな...あの手が生える泥がどんどんこっちに近づいてくる。茜音さん!遠距離で攻めますよ!滞空は極力控えるように!」
義寛はバックステップで下がりながら、迫りくる手を躱していた。

「はい!義寛さん!〈風魔術:天斬あまぎり〉。〈水魔術:白渦〉!」
義寛の指示を聞いた茜音は下がるための魔術を発動、義寛の〈一刀:葵〉に匹敵する威力の風の刃、大地ごと泥を押し流さんとする水流が新たに向けて放たれた。
茜音の放った攻撃は、泥を押し流し、手を切断した。残念ながら切断された手は再生したが、これにより二人はあることに気づいた。
それは、あの泥の手の能力発動のトリガーは、掌で触れること・・・・・・・だろうということ。
ただし、あの泥が完全になくなる瞬間を一秒作ってようやく、彼に一撃を飛ばすことができる。そしてその行為はかなり困難であり、その上その一撃では仕留められない可能性が高い。

「茜音さん。やりたくはありませんが、持久戦と行きましょう。彼の改変が能力である以上、何かしらのエネルギーを使っているはずです。もしくは何らかの代償を払って。それならば彼が動けなくなるのを待ちましょう。先ほどの水魔術の準備をしておいてください。」

「わかりました。義寛さんは?」

「隙ができた瞬間に叩き込む技の準備をします。茜音さんには申し訳ないですが、その時まで僕は隠れるので、茜音さんはできるだけヘイトを稼いでください。彼の泥が彼の周囲2メートル前後になった瞬間に仕掛けます。頼みますよ!」
義寛は茜音にオーダーを伝えると、一瞬で消えた

「もう!言うだけ言っていなくなっちゃうなんて!まぁいいわ。だってこういう時の戦闘は私のほうが強いもの!」
茜音は先ほど仕掛けた術式を展開、全方位から〈水魔術:白渦〉を新たに向けて放った。莫大な水の奔流が
泥を押し流す。

「だからさぁ、そんなンしたって戻るだけだって!」
それが新の周囲に近づいた瞬間、何事も術式ごとなかったかのように消え去り、泥が元に戻ろうと流れ出そうとする。そのコンマ数秒の間に、刀を構えた義寛が新の背後をとった。

「一手遅い。〈一刀・奥義:血染彼岸けっせんひがん〉。」
赤黒い血のような液体が滴る刀が、地面に平行に、沿うように抜かれ新の体を上下に真っ二つにした。

「だから効かないって!そういうのはぁ!ってあれぇ?」
切られて上半身だけになった新は、自分の体を何度も触るが新の体が戻ることはない。今までできたことができなくなった新は、かなり焦っているようだった。

「当然だよ。〈血染彼岸〉は『切断』という概念を付与した刀で相手を切る技だ。そして概念が付与された攻撃は、攻撃された箇所にその概念を強制する。よかったよ。君のその能力じゃ概念攻撃には対応できないようでね。でも安心してよ。君の改変能力で君の死は改変できているようだからね。」
倒れる新から、義寛は距離を取りながら、茜音の戻りを待っていた。

「終わったのね義寛さん。でも、詰めが甘いわよ。〈光魔法:断魔の鎖〉」
茜音はまだ手を伸ばそうとする新の腕をひろげる形で、地面に張り付けた。

「あーあ、遊びすぎちゃった!まさかこんなに強いなんて!今回はもうお別れだけど、次会ったらまた殺ろうねぇ!」

「na突如襲来した狩屋新と名乗る男を前にした二人は、彼の発する狂気じみた発言から危険性を感じ、彼を抑えるために戦闘態勢に入った

「行くよ。新君!」
その言葉の後、義寛はその場から一瞬で消え、新の背後をとっていた。
「〈一刀:葵〉」
義寛の持つ刀の切っ先が紫色に輝き、弧を描くような形でほぼ同じタイミングで二回、狩屋に斬撃を放った。
しかし、義寛は自らが放った一撃には何の手ごたえもなかった・・・・・・・・・・・・ことに違和感を覚え、すぐに新から距離をとった

「あーごめんねぇ!言ってなかったよぉ!君らの攻撃はぁ僕に届かないんだよぉ~!残念でしたぁ!」
新は手を仰ぎながら、狂気じみた笑みでそう語り、それを聞いた義寛は茜音の元に戻り、体勢を立て直した


「茜音さん。はったりの可能性もあるのでいくつかの攻撃手段を試してみましょう。僕からも仕掛けますが、茜音さんからの攻撃もお願いします。それと、いざとなった際の撤退の手段も準備しておいてください。」

「わかりました、義寛さん。けど危ないようでしたらすぐに変わりますからね?」

「了解しました。行きますよ!」
そういって義寛は、新に向かって飛び出した。それと同時に茜音は校庭中に術式をセット、さらに新への攻撃用の術式を発動し待機していた。

「アハッ!まだ来てくれるんだね!いいよぉ!さぁもっと!殺しあおう!」
新はそう言って飛び出した義寛を迎え撃つ形で戦闘態勢に入った

「〈一刀:椿〉!」
義寛は飛び出して着地した瞬間スライディングし、新の下に潜り込むと上に向けて強烈な突きを放ったが、その一撃は新の体をすり抜けた

「当たんないよぉ!〈空式:白群〉」
新は真下にいる義寛に手で触れようとしてきた。それに対し何か悪い予感を感じた義寛は茜音が周囲に張り巡らした転移術式を起動。一瞬で茜音のもとにもどった。
そして、義寛がいなくなったことで、空ぶった新の手が地面に触れたその瞬間、地面全体に貼られていた茜音の術式が跡形もなく消え去った

「義寛さん!」
急に術式が消え去り、そしてそれに対し自分があまり違和感を感じていない・・・・・・・・・・ことに、茜音は焦って義寛に声をかけた。

「分かっていますよ。茜音さんの術式が消えたはずなのに、僕らは初めからそこになかった・・・・・・・・・・・かのように感じている。これが彼の能力か...!」
茜音の感じた違和感を義寛も感じており、先ほどの自分の攻撃が当たらなかったのも、新に当たってはいたが、当たったという事実をなかったことにされたということに、義寛はようやく気付いた。

「義寛さん、彼の能力の発動条件はおそらく手で触れることです。そして彼の能力を受けたものは、彼の思った通りになります。そして――どこまでかは分かりませんが、それに対し私たちは#何の違和感も抱かない__・・・・・・・・・・__#...!」
茜音は冷や汗をたらしながら、深刻な顔でそう語った。

「あはぁ!気づいちゃったねぇ!そうさ!僕の能力名は〈空虚からうつろ〉!僕は僕が触れたものの過去・現在・未来を僕の思った通りに改編できるんだぁ!いいでしょ!まぁ時間が経ちすぎると僕自身も忘れちゃうんだけどねー。それでさぁ、まだ戦う気、ある?」
新は変わらず狂った笑みを浮かべたまま、そう語った。そしてそう語る彼からは、戦闘が始まった時以上の圧が放たれていた。

「まだやるさ。君が街に被害を加えるかもしれないからね。もしそうなったら息子に顔が立たないよ。それに、宗太が帰ってきたときに安心できる場所を残しておかなきゃ、怒られちゃうしね。」
義寛はそう語った後に、もう一度新に向けて刀を構えた。新を見据える義寛の眼には恐怖などは微塵も感じられず、ただひたすらに希望だけが写っていた。

「そうね。息子も含めて、戻ってきた子たちが、また無事に暮らせるようにしなきゃ。それが私たちの役目だもの。新君には悪いけど、ここで降参してもらうわよ!」
茜音はフフッとわらって、さっきより少しばかり楽しそうに語り、もう一度消えた場所に術式を張り巡らせた。

「うんうん。やっぱりいいよぉ!さっすがあいつの親だね!期待してこっちに来てよかったぁ。じゃあ本気で行くよぉ!」
新は首を傾げ、力を抜いた様な姿勢になると、彼の周囲に茜音の術式を塗りつぶすかたちで、泥のようなものが排出され、そこからどす黒い色をした腕が生えてきた。

「まさか、あの手のようなものに触れられれば、彼の能力が発動するのか?まずいな...あの手が生える泥がどんどんこっちに近づいてくる。茜音さん!遠距離で攻めますよ!滞空は極力控えるように!」
義寛はバックステップで下がりながら、迫りくる手を躱していた。

「はい!義寛さん!〈風魔術:天斬あまぎり〉。〈水魔術:白渦〉!」
義寛の指示を聞いた茜音は下がるための魔術を発動、義寛の〈一刀:葵〉に匹敵する威力の風の刃、大地ごと泥を押し流さんとする水流が新たに向けて放たれた。
茜音の放った攻撃は、泥を押し流し、手を切断した。残念ながら切断された手は再生したが、これにより二人はあることに気づいた。
それは、あの泥の手の能力発動のトリガーは、掌で触れること・・・・・・・だろうということ。
ただし、あの泥が完全になくなる瞬間を一秒作ってようやく、彼に一撃を飛ばすことができる。そしてその行為はかなり困難であり、その上その一撃では仕留められない可能性が高い。

「茜音さん。やりたくはありませんが、持久戦と行きましょう。彼の改変が能力である以上、何かしらのエネルギーを使っているはずです。もしくは何らかの代償を払って。それならば彼が動けなくなるのを待ちましょう。先ほどの水魔術の準備をしておいてください。」

「わかりました。義寛さんは?」

「隙ができた瞬間に叩き込む技の準備をします。茜音さんには申し訳ないですが、その時まで僕は隠れるので、茜音さんはできるだけヘイトを稼いでください。彼の泥が彼の周囲2メートル前後になった瞬間に仕掛けます。頼みますよ!」
義寛は茜音にオーダーを伝えると、一瞬で消えた

「もう!言うだけ言っていなくなっちゃうなんて!まぁいいわ。だってこういう時の戦闘は私のほうが強いもの!」
茜音は先ほど仕掛けた術式を展開、全方位から〈水魔術:白渦〉を新たに向けて放った。莫大な水の奔流が
泥を押し流す。

「だからさぁ、そんなンしたって戻るだけだって!」
それが新の周囲に近づいた瞬間、何事も術式ごとなかったかのように消え去り、泥が元に戻ろうと流れ出そうとする。そのコンマ数秒の間に、刀を構えた義寛が新の背後をとった。

「一手遅い。〈一刀・奥義:血染彼岸けっせんひがん〉。」
赤黒い血のような液体が滴る刀が、地面に平行に、沿うように抜かれ新の体を上下に真っ二つにした。

「だから効かないって!そういうのはぁ!ってあれぇ?」
切られて上半身だけになった新は、自分の体を何度も触るが新の体が戻ることはない。今までできたことができなくなった新は、かなり焦っているようだった。

「当然だよ。〈血染彼岸〉は『切断』という概念を付与した刀で相手を切る技だ。そして概念が付与された攻撃は、攻撃された箇所にその概念を強制する。よかったよ。君のその能力じゃ概念攻撃には対応できないようでね。でも安心してよ。君の改変能力で君の死は改変できているようだからね。」
倒れる新から、義寛は距離を取りながら、茜音の戻りを待っていた。

「終わったのね義寛さん。でも、詰めが甘いわよ。〈光魔法:断魔の鎖〉」
茜音はまだ手を伸ばそうとする新の腕をひろげる形で、地面に張り付けた。

「すまないね。ありがとう茜音さん。」
義弘はお礼を言いながら刀を鞘にしまい、新に質問しようとしたその瞬間、新はアハハと大声で笑いだした。

「あーあ、遊びすぎちゃった!まさかこんなに強いなんて!今回はもうお別れだけど、次会ったらまた殺ろうねぇ!」
そういった新は光の粒子になり始めた。

「何を...!どこに行くんだ!?」
急に消え去ろうとする新に、義寛は焦りだした。

「ダメ、義寛さん。これは世界からの強制退去!私の術式じゃ止められない!」
義寛と同じように、焦りながらも茜音は退去の術式の解析を試みたが、これは世界のシステムを利用した超常的な術式だということに気づいた。自分ではどうしたって止めることができないことに茜音は歯ぎしりするほどの悔しさを感じていた。

「じゃあねぇ!」
そんな二人を傍目に、新はあった時と変わらない狂気じみた笑みを浮かべて去っていった。




数十名にも及ぶ高校生がこの地球を去った日。地球にて通常では起こりえない超常的な戦闘が行われていた。
結果的にいなくなった怪物は、戦って残された二人に何とも言えない不気味さを残して去っていった。
ただし、こんなことが地球であったということに、転移した彼らが気付くのはまだ先のこと...





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