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第3章 神と悪魔、そして正義

第39話

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俺にとって衝撃的なことを言い放ったティトリは、驚いている俺と対照的に、不思議そうな顔をしていた

「お前さん。もしかして聞いておらんのか?」

「ああ、父さんも母さんも、なにも言ってなかった…なんで…?」
でも、この世界のことを知らない俺に話しても信じなかっただろうけど…

「そうか…知らんのか。まぁ、あの2人ならば話さないかも知れんがな。」

「父さんたちはどうしてこの世界に来たんだ?」

「知らんな。儂が2人と会ったのは数百年前・・・・だが、その時に聞いた話は異世界に来てからの話だったからな。どうしてこの世界に来たかは、転移でとしか聞いておらん。」

数百年前!?俺の両親ってただの人間だよな?それとも、この世界とあっちの世界でかなり時間の差があるのか?それなら、あっちの世界に戻ってもなんら影響がないんじゃないか?
これについては引き続き調べた方がいいな。正直この問題をロビンたちに投げるのも無理そうだから、俺自身が調べなきゃな…

「そうか…なら、あんたが会ったあとでもいい。父さんたちについて教えてもらえないか?」

「いいだろう。そうだな、あれは儂がまだこの世界にほとんど干渉していなかった数百年ほど前の出来事だ…」





__________________

時は遡り、約550年前。
世界が今より、技術が発達しておらず、逆に自然が豊かだった時代。

東西南北の大陸にまともな国など存在せず、人々は、今ヴァール神聖国と呼ばれている中央大陸に存在する国家のもとで過ごしていた。

そんな中、この世界に2人の人間が呼び出された。
2人の名は、小鳥遊義寛、白石茜音。
ほんの少しの力を与えられただけの、地球人。そんな弱い2人は力強く、生きるために戦い続けた。
戦いなんて存在しない日本から来た2人にとって、力がなければ生きていけないこの世界は辛く、苦しいものだった。
魔物どころか、時には人の命を奪うことになることが簡単に起きるこの世界で、2人は時に悩みながらも戦い続けた。
冒険者としてこの世界に生きた彼らは、戦争に巻き込まれることもあった。
その時、人を殺した感覚を彼らは今でも覚えているそうだ。

この世界に来て5年。
2人はもう一度、どうしてこの世界に呼ばれたのかを考え、その答えを求めるために世界を旅し始めた。
そんな中彼らは、管理者と呼ばれる龍に出会った。龍は彼らの境遇を知り、彼らのためにこの世界の仕組みについて語った。
この世界の成り立ち、どういうシステムで稼働しているのか。そして、彼らがなぜ呼ばれたのか。
最後に関しては龍の予想に過ぎなかったが、この龍の発言から2人は一つの答えにたどり着くことができた。

『自分たちは魔族と呼ばれる、女神が忌み嫌う種族の殲滅のために呼ばれたのだと。』

この結論に至った彼らは龍に聞いた。
「僕らがいなければ、人間が魔族に勝つことはないのか?」と。
龍は答えた。「断定はできない。ただそうならないための我ら管理者だ。魔族という一つの種の殲滅のために神が力を貸すなら、我ら管理者が魔族に力を貸そう」と。

自分たちが、野原に呼ばれたのはなにかの偶然だったのだろう。それにもしかしたら、自分たち以外にも呼ばれた人がいるのかも知れない。その人たちがこの世界でどう生きているのかはわからないが、もし帰りたいのなら自分たちが帰る時に連れて行きたい。
それに、こんな状況になった元凶の女神に文句の一つでも言ってやりたい。
新たな決意を固めた2人は、協力者を探すため、自分たち以外の転移者を見つけるため、世界に飛び出した。

ただし、2人が想像していたよりも早く人間と魔族の対立は加速していっていた。一年も待たずに戦争が始まったことで2人は準備を完全に整える間もなく、戦争に参戦することになった。
旅の中で出会い、自分たちについてくることを決めた5人の仲間と共に、第三勢力として、事態の解決に動いた。
そしてーーその過程で何十人もの死者を出した。

人間側には、バール・シュタインと呼ばれる騎士が、魔族側にはアレクサンドラ・メルキスという女性の拳闘士が説得に向かった。
そして2人を含む残ったメンバーは大地の形を変えたり、一定のラインからは進もうとすると戻される術式を設置したりなど、戦争を行えなくするために戦地を駆け抜けた。

結果として、戦争は双方の代表同士での話し合いを行い、停戦という形で落ち着いた。
そして、2人は自分たちの世界に戻るため、自分たちがいなくなった後に人間と魔族が対立した時に対処するためにさまざまな知識を与えた。もちろん、その中にはこの世界のシステムについても含まれていた。

2人の説得に、両軍のトップは同意し、事態の解決のために奮闘することを約束した。結果としてはこの後も人間が魔族を攻撃したり、敵視することもあったが、それはこの会議に参加しなかったヴァール神聖国や、そこから派生したフロスト王国だけであった。

大国の技術力や旧時代の知識、さらに管理者たちが与えたこの世界のシステムに干渉する方法。2人だけでは到達することのなかったであろう場所に辿り着くことができた。
これにより、2人は圧倒的な力、神にすら到達しうる術式を作り上げることに成功した。

2人が異世界に転移してから8年、小鳥遊義寛、白石茜音はついに自分たちの世界に戻る手段を手に入れた。
そして、2人はその力を持ってして、女神ヴァールの領域に侵入。女神に勝負を挑んだ。
世界の監視者である女神は、圧倒的な力を持つ2人に苦戦を強いらせるほど、強かった。
ただし、女神は侮っていた。必ず、自らの世界に戻って見せるという2人の意志の力を。自分たちに理不尽を押し付けた女神への怒りを。
その結果、女神は自らの神性力を3分の1ほどを2人に奪われることになる。

2人はその力を使用し、地球への転移魔法陣を作成、自らの世界に帰っていった。

地球に戻った2人は、地球では一年しか経っていなかったことに驚きながらも元どおりの生活に戻った。

2人がいなくなった後の異世界は、2人が残した考えを後世に伝えながら、人間、魔族の垣根をなくすことを目的に次の時代へと歩き出した。
数百年経った今でも、完全に垣根をなくすことはできていないが、いくつかの国では、ほとんど垣根がない状態まで進んでいる。
これは2人の残した考えが大きく影響していると言って良いだろう。

__________________


「これでワシの知っている話は全部だな。何か質問はあるか?」
俺の両親についての話をし終わったティトリは俺の方を見てそう聞いた後にフム、と言ってこう続けた

「まぁ、急に両親が隠していた話を聞いて、質問を言えというのは酷か。時間はある。しっかり自分の中で考えをまとめると良い。」
ティトリは大きな指を器用に使い、俺の頭を撫でながら、優しく語った

「ああ、ありがとう…」
ティトリの話に動揺しながらも、自分両親について、俺は考えを少しずつ、纏め始めた




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