上 下
43 / 56
第3章 神と悪魔、そして正義

第37話

しおりを挟む
俺とバロムが握手をしていると、周りを覆っていた黒い泥のようなものが、先ほどの魔道具に吸収されていった

「はぁ、契約できてよかったですね。団長。私はもうダメかと」
フルーメはため息まじりにそう言った

「それはあんたらのやり方が悪い」
俺がフルーメの方を見てそう言うと

「ナッハッハッ!そりゃすまんな!こっちも焦っているからな」
バロムはそう言って笑っていた

「あ、俺の名前はヴェールで通してくれ。一応な」

「わかっとるわ。わざわざ偽名を使うなんてやましいことがある奴がやることだからな。そんなやましい奴の協力者になったんだ。そんぐらい守ってやるよ」
バロムはニヤリと笑いながらそう言った

「情報は定期的に俺の仲間に渡させますす。そいつの名前はロビンです。じゃ、俺は戻ります。」
そう言って外向けの対応に戻った俺はその場を去った

「よかったですね。団長。これで計画が一歩前進しましたよ」
バロムの方を向いてそう言った

「おう。それとあいつの教育係はお前さんがついてやれ。」
バロムは先程より、どこか真面目な顔でそう言った

「はいはい。わかりましたよ。」
フルーメはそれに対し、呆れ口調でそう返した

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

2人との話し合いの後、宿に戻った俺は今日の話し合いの内容をロビンとヴァネッサに話した

「あら、いい契約してきたじゃない。これでだいぶ、マスターちゃんのやりたいことがやりやすくなったわね!」
ヴァネッサは手を叩いて喜んでいた

「マスタァにしちゃ上等やな。」
ロビンはいつも通り茶化すようにそう言った

「うるせぇよ。お前はもっとヴァネッサみたいに素直に褒められねぇのか。」

「うーん。無理やな。」
ロビンはわざとらしく頭を傾げながらそう言った

「チッ。まぁいいや。とりあえず、内容から分かってもらえると思うけど、ロビンにはフロスト王国にスパイに行ってもらう感じになるけど大丈夫か?」

「ん?まぁええけど、マスタァとの連絡はどうするんや?こんな長距離での通信は流石の俺でも無理やで?」

「ああ、それに関してはこれ使いな。」
そう言って俺は杭のような黒と白の棒をそれぞれ一本ずつ渡した

「なんやこれ?」
それを受け取ったロビンは首を傾げてそう聞いてきた

「ワープゲート用のポータルみたいなもんだ。そいつを地面に刺して起動させると、大地の魔力を吸って、それを燃料としてワープゲートを出現させる。」
「片方を魔皇国の近くのどこかに、もう片方をフロスト王国側にブッ刺して起動させれば、簡単に行き来できんだよ。」

「そいつぁ便利やな。こいつがありゃ連絡も楽やな。」

「ただ気をつけろよ。その杭は簡単に破壊できる。もし仮に片方が壊されたら起動できなくなるからな。」
俺はロビンの目を見てそう注意した


「わかったよ。任せとけ。必ずマスタァの役に立つような情報を持ってきてやるよ」
ロビンの目からは先ほどまでとは違う、気迫のようなものを感じた

「了解、任せた。ヴァネッサは引き続き俺と行動を共にしてもらう。目的はこの国での生徒が暮らせる安全地帯の確保。
そして、アレクサンドラ・メルキスの解放の補助だ。後者に関してはロビンにも手伝ってもらう可能性があるから、それだけは理解しておいて欲しい。」

「了解したぜ」
「わかったわ」

「何かあれば知らせろ。以上だ」
俺がそう言った瞬間、ロビンは一瞬でその場から去った

「明日から、俺は訓練に加わる。ヴァネッサはその間は自由に動いてもらって構わない。」

「あら、私結構、簡単な立ち回りなのね。よかったわ。それじゃあまた明日会いましょうね」
ヴァネッサは手を振りながら、自分の部屋へ帰っていった


残った俺は、自分の部屋で明日からの訓練について少し考えてから、眠りについた

******************

朝、俺が第三騎士団の訓練所に行くと、フルーメがいつも通りニコニコしながら立っていた

「おはようございます。副団長。本日は何用ですか?」
俺は第三騎士団の団員たちの前だったので、営業スマイルと丁寧な口調でフルーメに話しかけた

「うん。おはよう。ヴェール君。実はね、団長から君の訓練を僕が持つように言われてね。」
フルーメのその言葉に、訓練していた団員たちは手を止め、かなり驚いた様子で俺の方を見ていた

「わかりました。それで、ここでやるんですか?」

「いや、僕がいつも使っているところでやろうと思ってね。それじゃあ、行こうか」
フルーメはそう言った後、訓練所の奥の方にある第三騎士団の隊舎の方に向かって歩き出した

「はい。行きましょうか。」
俺は素直にそれに従って、フルーメの後をついて行った


フルーメは隊舎の中に入ると、第三騎士団の一階にある受付エリアの奥の方に進んでいき、そこにある鉄製の扉をこじ開けて中に入った。その部屋には、何もなく、あるのは中心にあるハッチだけであった。フルーメはランタンを取り出し、ハッチを開けた。
ハッチの中は下に続く階段になっており、フルーメの持つランタンなしには先が見えなかった。

「うん、ここまで来れば大丈夫だね。口調、戻してもいいよ」

「そりゃどうも。それより、ここばどこだ?明らかに普通の部屋ではないけど」

「ああ、ここは第三騎士団の団長、副団長クラスじゃないと知り得ない場所でね。どんな部屋かは下に着けばわかるよ」
フルーメの発言に怪しさを感じた俺は、探知スキルを地下全体に向けて発動した

「なんだ…これ…!?」
俺のスキルは恐ろしいものを探知してしまった

「おや、気付いてしまいましたか。まぁ地下につけばわかったことですし、問題はないでしょう。うん、もう地下に着いたようですね」

地下に着いた俺たちの目の前には、全長数百メートルにも及ぶであろう"龍"が威風堂々と鎮座していた

「彼の龍は我ら人型の生命が誕生する前より、我らの世界を守護していたといわれる原初の龍種の1人、[雨神龍ティトリ]様です。」
雨神龍と呼ばれたそれは、全身を深い青色の鱗で包んでおり、緑色に輝く眼には何か神秘的なものを感じる。そんな見た目をしていた。

その龍を目の前にした俺はなぜかわからないが、今まで感じたことのないほどの安心感を感じていた

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語

ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態パラダイス✕脱線大暴走ストーリー=166万文字完結÷微妙に癖になる。 変態が、変態のために、変態が送る、変態的な少年のハチャメチャ変態冒険記。 ハクスラとはハックアンドスラッシュの略語である。敵と戦い、どんどんレベルアップを果たし、更に強い敵と戦いながら、より良いマジックアイテムを発掘するゲームのことを指す。 タイトルのままの世界で奮闘しながらも冒険を楽しむ少年のストーリーです。(タイトルに一部偽りアリ)

立日の異世界冒険記

ナイトタイガー
ファンタジー
ある日、ニートの立日健が異世界に飛ばされた。勇者として歓迎されると思っていたら、召喚された先はとんでもない世界だった。期待していたチート能力は授けられなかったが、幸いにして健には秘策があった。次から次と降りかかる数々の試練を乗り越え、健は現実世界を目指す。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...