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第3章 神と悪魔、そして正義

第30話

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密会が終わった俺は王城下の下水道を通って、王国の外を目指していた。

「よお、マスタァ。密会は無事に終わったんやな」
俺が走っていると影からロビンが現れた

「おう、無事に終わったよ。まぁ、それなりに良い報告はできたよ。内容については後で話すけど、結構なハードスケジュールになるぜ。覚悟しとけ。」

「わかっとるわ。それだけのことをマスタァをしようとしとるんや。それに協力する俺らがそれを分からんわけないやろ」
ロビンは俺の肩を叩きながらそういった

「すまんな。まぁ、ヴァネッサも同じこと言うだろうけど。それで、そっちはどうだ?収穫はあったか?」

「あるにはあるで。見た感じ、この国はかなりの格差がある国や。ただ、この国はマスタァの世界で言う資本主義に近い経済体制で動いている国や。けど、そこに法が追いついていないって感じやろうな。」
ロビンは苦い顔でそう言った

「そうか。だから戦争か。この国は新しい市場を求めて魔皇国に攻め入るつもりか。」
合点がついた。経済難だから一刻も早く自国の経済をどうにかしなければいけない。けど王政をとっているせいで法整備が進まない。だからその場しのぎではあるけど、新しい市場を手に入れて経済を安定させようってことか。

「どうしたん。マスタァ、考え事か?」
長く黙る俺にロビンが話しかけてきた

「ん、ああ、いや、問題ない。この国の戦争する理由がちょっとわかった気がしたってだけだ。」

「ならええわ。大方マスタァの予想と俺の予想は同じや。後でヴァネッサと合流した時に確認しようや。」

「そうだな。ヴァネッサとの集合場所まではあと少しだ。さっさと行こう」
俺がそう言って少しペースを上げると

「せやな。」
ロビンもまたペースを上げた

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

俺とロビンは何事もなく集合場所にたどり着いた。そしてそこには既にヴァネッサが立っていた

「あら、マスターちゃん。用事は終わったのね。どう?上手くいった?」

「おう、いい話し合いができたよ。ヴァネッサの方はどうだった?」
ヴァネッサには持ち前の話しやすさを武器に市民への特に貧困層への聞き込みをしてもらっていた。

「そうね。人前だったからか上辺だけでも幸せを取り繕ってたって感じかしら。
きっと、みんなギリギリの生活をしているのね。何かあげれるものがあったら良かったのだけど…」
ヴァネッサはとても残念そうに語っていた

「まぁ、経済の不調で最も影響を受けるのは一般市民だ。貧困のレベルが上がれば尚更苦しくなる。正直、この国が戦争に勝っても、この差は直らねぇ気がするな」

「それは同感や。戦争で得られる利益は一時的なものや。そんなんはいつか効果がきれて、また貧困に戻る。だからまた戦争をする。悪循環の極みやぞ、こんなん」
ロビンはそう悪態をついた

「だから俺たちはこの戦いの被害を最小限に抑える必要がある。」

「それと、この国の腐った膿を吐き出すってのも加えておいてちょうだい。」
ヴァネッサの声には少しの怒りがこもっていた

「ああ、当たり前だ。必ず、この国を変える。じゃなきゃ俺の同郷の奴らを助けられねぇからな」
話しが一区切りついたと同時に俺らは下水道の外、つまり王国のそうに着いていた


「ロビン、ヴァネッサ。俺たちはこのまま、南の国へ行く。目的は魔皇国の王との接触。戦争への対策をしてもらう為にもな。」

「それと、マスタァのお仲間の保護やろ?」

「そうだ。これを俺らは2ヶ月以内に終わらせる。最悪のパターンにも備えとけよ。俺にも何が起きるか分からないところがあるからな」
最悪のパターンは神聖国と王国の連合軍との戦争だ。ただ、上手く行けばこれを避けられるはずだ…

「そんなの分かっているわよ。私はマスターちゃんの行くところならどこまでもついて行くわよ」
そう言ってヴァネッサは俺の頭を撫でてきた

「せやぞ。俺らはマスタァの矛であり盾や。そんなん気にせず行こうや」
そう言ってロビンは俺の背中をはたいてきた

「痛ってぇ!強いんだよ、アホロビン!」
俺がロビンを睨むと

「なっはっはっはっ!!威勢がええなぁ!やっぱりマスタァは最高や!」
そう言ってロビンは俺の頭を撫でた



笑いながら楽しやっていたこの時の俺たちはこの後、自分たちが思っている以上の最悪な状況に陥るのをまだ知らない。



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