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第3章 神と悪魔、そして正義

第29話

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協力者、クリストフ・シュタインの顔からは付き合いの短い俺でさえもわかるほどの嬉しさが伝わってきた

「そんなに俺が生きていることが嬉しかったか?」

「もちろんさ。正直、君が生きている確率はかなり低いものだと思っていたからね。手紙が来た時は、嬉しすぎて大声を出しそうになったのを必死にこらえたよ」

「そりゃ良かった。それで、お前は今回の目的はわかっているよな?」

「分かっているよ。報告会みたいなものだろう?」

「その通りだ。質問は俺からさせてもらうぞ。いいよな?」

「ああ、いいとも。お互い時間がないからね。手短に行こう」

「そうだな。俺が聞きたいのは『転移者たちの現状』と『南の大陸との対立の状況』の2つだ。あんたのわかる限りで教えてもらおう。」
俺の問いにクリストフは少し驚いた顔を浮かべた

「おや、次は南に行くつもりか……」

「なんか問題でもあるのか?」

「それも含めて2つ目の問に答えることにしよう。しかし、まずは1つ目の問に答えるとしよう。」
そう言ってクリストスは紙の束を渡してきた

「なんだこれ……ってまさかこれ…!?」
書いてある数値、その種類。これはステータス表だ……しかもこの枚数。
まさかこいつ、クラスメイト全員分のステータス表を持ってきたのか……?

「そうだ。君の考えている通りそれは君のクラスメイトらのステータスだ。元にしたデータは2日前のものだから、現状の彼らとほとんど差異はないだろう。」
クリストフはステータス表をじっくり見ている俺に続けてこういった

「そしてその中には私の協力者が4人いる。」
俺はその言葉を聞いて、あの3人の顔がよぎった

「あんたまさか…!?あいつらを!?」

「君の予想通りだ。リュウジ・クラキ、ハナ・クロサワ、ナギサ・トウジョウの3人は私の協力者だ。」
それを聞いた瞬間俺は立ち上がり、クリストフの襟を掴んだ

「なんであいつらを巻き込んだ!?」
怒る俺の腕をクリストフは強く握った

「君は、自分1人でこの問題を解決できると本気でおもっているのか?
君の友人らは何も知らないまま、事を解決してもらうの待っていないといけないほど、弱い人間なのか!?
僕は彼らが強い人間だと思う。
僕は彼らが強い人間だと信じている!
君よりも付き合いが短い僕が信じることが出来て!君が出来ないのはどこかで君が、彼らのことを下に見ているのではないのか!」
クリストフは声を荒らげた。自分が強いと思い込み、仲間は守らなくちゃいけない人間だと、どこかで下に見ている俺を叱るように…

「すまねえ、クリストフ。お前の判断は間違っちゃいない。間違ってるのは、俺の方だ。」
そう言って俺はクリストフの襟を離した

「まぁ、君がそう思うのも無理はないと思うからね。君の考え、全てが間違ってる訳では無いよ。
そうだ、言い忘れていたが彼らとの協力の理由は彼らが僕に頼み込んできたからだよ。なんでも、彼らの神様がそうするように言ったらしいからね。」

「そう…か。あいつらからだったのか…」
俺は、3人が自ら動いたことに驚きを感じていた

「それともう1人、アルト・クサナギ。彼も協力者だ。彼には洗脳の主が僕であると嘘をついてもらっている。」

「なんでだ?そんな必要あるのか?」

「王族には彼の能力を隠密とは言っているが、本来の彼の能力は洗脳系だ。
同系統の能力は打ち消し合うようでね。彼には協力者になってもらいたかったんだ。」

「なんでそんなこと知ってるんだ?俺らの能力がわかったのって王の間での鑑定だろ?」

「それはね。僕が君らが召喚された時に、〈鑑定〉で君らのスキルを見ていたからだよ。そしてその中に洗脳系のスキルを持っている彼と『神に嫌われた男』なんて爆弾を抱えた君を見つけてね。
それで〈隠密〉を使って彼と接触、その段階で彼にはこの後起きるであろう展開を伝えておいた。
彼はとてもいい子でね。二つ返事で私の協力者になることを同意してくれたよ。その後の鑑定は君の騒動で曖昧になったからね。後で鑑定してその結果を渡すことにしたんだ。」

「それでその書類を改ざんしたおかげで、王族の奴らは草薙のスキルを隠密系と勘違いしてるって訳か」

「その通り!そして今のところは彼がスキルを使用して、転移者の洗脳を弱めているよ。そして君の友人3人だが…」

「何かあったのか!?」
何か訳ありという顔をするクリストフを見て俺は不安を感じた

「まぁ、落ち着きたまえ。3人だが、成長という面に関しては順調だ。3人とも着実に強くなっている。ただ、精神面はまずい。特にハナ・クロサワは君が死んでいるかもしれないということに心が壊され始めている。ほか2人は彼女ほどではないが、苛立ちや焦りを感じていると言ったところだろう。申し訳ない。私の管理不足だった。3人のメンタルがここまでになるとは予想していなかった」
そう言ってクリストフは頭を下げた

「あんたは悪くねぇよ。付き合いが長い俺でも予想していなかった事態だ。会って数ヶ月のあんたが分からないのも無理はない。
それで、俺が生きているのは伝えるつもりか?」

「時期をみて…だろう。2ヶ月後、彼らの能力を見るための大規模な狩猟が行われる。僕もそこについていく。出来ればだがそこで彼らに伝えられるといいのだが…」

「そうか。俺はあいつらの逃げ先を連邦と魔皇国に頼むつもりだ。あんたもそのつもりだろ?」

「その通りだ。君が南の大陸について聞きたいのもそういう経緯があったからだろう?」

「そうだ。まぁ、この国と魔皇国が連携を取れるならこんな話はしに来なかったんだがな。」
俺は溜息をつきながら、いくつかの書類を手渡した

「おや、これは君が調べた魔皇国の情報かね?」

「一応な。ただあんたの方が知ってるだろ?」

「そうだね。この情報の中に僕が知らないものはなかったよ。ただ、内容は間違っていない。王国と魔皇国は戦争1歩手前と言っていい状況にある。
ただ、いくら女神からの神託といえど、このまま戦争を仕掛けても、味方する国は居ないだろう。ただ、」
クリストフは苦い顔をしながらそういった

「ヴァール神聖国を除いて、だろ?」
ヴァール神聖国は4つの大陸の中心にある大陸を支配する宗教国家。女神ヴァールを主神とする星神教を信仰している国である。
信仰している神が創世神ということもあり、この世界の至る所でこの宗教は根付いている。そのため、他国への影響力は強く、様々な国に強く出ることが出来る。
しかし、この国は魔族が支配する異常なほどに魔皇国を敵視しており、それ以外の国に魔皇国を滅ぼすための協定を持ちかけるほどである。

「その通りだよ。あの国がこの神託を大義に協力しない理由はない。ただ、口頭ではあの国は動かない。だから、この国が神託があったことを発表して直ぐに、これの真偽の確認に動くだろう。
そこがタイムリミットだろう。その時がくれば、間違いなくこの国と神聖国が魔皇国と戦争を起こしてしまう。それは防がなければいけない」
クリストフは先程の笑った顔と打って変わって、真剣な顔立ちで話した

「分かってる。魔皇国の方は俺に任せろ。クリストフにはできる限り発表を遅れさせて欲しい。」

「もちろんそのつもりさ。魔皇国との話し合いは頼むよ。僕が動く訳には行かないからね」
信頼からか、クリストフはもう一度笑みを浮かべた

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「そういえば、あんた俺に聞きたいことあるんじゃないのか?」
俺は出ていこうと思った時、ふと思い出して、クリストフに聞いた

「おや、忘れていたね。聞きたいことは単純だよ。君の戦力を聞きたくってね。どのくらいの相手なら君は殺せる?」

「倒せるじゃなくて殺せるなんだな。
まぁ、王国と魔皇国が戦争起こしても、10日間なら耐えれる。そんなところだよ。
誰が殺せるかだけど、あんたクラスならギリギリだよ。」
俺はクリストフを横目に見ながらそういった

「1例に僕をあげるって、なんだか怖いね」
そう言われたらクリストフは「怖い怖い」と言いながら笑っていた

「じゃあなクリストフ。次会うときはお互いにいい報告ができるといいな。今回みたいなのじゃなくて」

「そうだね。今日のは報告ってよりも確認だったからね。君の無事を祈るよ」

こうして、俺たちの密会は無事に終わった。
必ずしもこの密会で話したこと通りに行くとは限らない。そのはずなのに彼らの目には希望の光があった
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