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最終話『満月』
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終-1
ストレッチパンツのポケットに入れていたスマートフォンが振動する。取り出して画面を確認すると、恋人からの着信だった。呆れるような気持ちと嬉しいような気持ちを同時に抱きながら、倉富浩平は受話器ボタンをタップする。
「はいはーい」
『浩平、出てくれてよかった』
聞き慣れたはずの恋人の声も、電話を通して聞くとなんだかいつもと違って聞こえる。元々低くて男らしい声をしていたが、今日は更に渋さが増したような気がした。
『今何してるんだ?』
「飯買いに行こうかと思ってたとこだよ。そういう剛は何してんの?」
『さっき飲み会が終わって今ホテルに帰ったところだ』
浩平の恋人――垣内正剛は今出張で埼玉に行っている。何かの発表会に出席しなければならないと言っていたが、内容に興味がなかったので詳しくは聞いていない。
「二次会とかなかったんか?」
『あるにはあったが、逃げてきた。会社の人間と飲んだって何も楽しくないし、早く浩平の声を聴きたかったから』
「んなことしてたらあんたハブられるんじゃねえの?」
『別にハブられたって構わない。元々そんなに深い付き合いをしてるわけじゃないし』
正剛は真面目な性格だが、職場における人間関係には結構ドライだ。仕事以外ではあまり関わりを持とうとしない。そういう浩平も似たようなところはあるけれど、酒は好きなので飲み会には積極的に参加していた。
『浩平……寂しい』
電話の向こうの声が、まるで萎れた風船のように小さくなる。
『浩平に逢いたい……』
「出張一日目でそんな調子でどうすんだよ? あと三日もあるんだぜ?」
『浩平、今からこっちに来ないか? 俺が仕事に行ってる間観光とかしてていいから』
「アホなこと言ってんじゃねえよ。俺も仕事だっつーの」
『有給を使うとか』
「そんな急に取れるわけねえだろ」
『そうだよな……』
そう言った声の暗さからも、彼が今飼い主に見捨てられた子犬のような寂しそうな顔になっているのが想像できる。今朝空港まで送ったときの別れ際にもそんな顔をしていた。
「三日なんてすぐだって。永遠の別れじゃねえんだからそんな落ち込むなよ」
『浩平は寂しくないのか?』
「数日くらいなら平気だっつーの。さすがに一ヶ月とかなったら寂しくてやばそうだけど」
『俺は一日だって離れたくなかった。やっぱり出張断ればよかった……』
「だからアホなこと言うなって。俺のためにもしっかり働いてくれよな。じゃ、そろそろ切るぜ?」
『も、もう切るのか?』
「明日も仕事だからな。ちゃっちゃと飯買って食わねえと」
『もっと話したい……。浩平の声を聞いてたい……』
「明日また電話すりゃいいだろ? わがまま言ってないで剛もさっさと休めよ」
『うう……わかった。じゃあまた明日かける』
「おう」
こちらから切らないと正剛はいつまで経っても切らない気がしたので、浩平は早々に通話終了ボタンをタップする。けれど本音を言えば、浩平ももう少し正剛と話していたかった。さっきは強がってみせたけど、本当は正剛がいなくて結構寂しい。
正剛と恋人として付き合い始めて約半年、今二人は二年ほど前に正剛が建てた一軒家で同棲している。正剛の元妻やその子どものために建てられた家なのだと思うと少し複雑だったが、たった二年しか使われずに手放すのももったいないし、場所も悪くなかったからそうすることに決めたのだ。
高校生の頃、正剛とセフレのような関係にあった頃は、こんな未来があればいいな、なんておぼろげに想像していたこともある。浩平は正剛のことが本気で好きだったし、正剛もまた同じ気持ちを持っているように感じていたからだ。
けれど二人の仲は神様の悪戯によって引き裂かれ、想像していた幸せな未来も、まるで厚い雲に覆われたかのように見えなくなってしまった。やむを得ない事情とはいえ、あのときは自分を切り捨てた正剛が許せなかったし、時が経って心の傷はだいぶ癒えていたけれど、それでも半年前に再会するまで、彼を許せないという気持ちはずっと胸の奥にこびりついていた。
正剛と幸せに暮らす未来なんてもう絶対に訪れないと確信していたのに、その憧れていた景色が今ここにある。と言っても正剛は出張で留守にしているが、ここは確かに彼と自分との幸せが育まれる場所だった。
買い物を終えてコンビニから歩いて帰っていると、浩平のすぐ目の前に低いエンジン音を立てるスポーツカーが停まった。なんだこいつ、と怪訝に思いながら車を覗き込んでいると、浩平がいるほうの窓が開いて奥にいる運転手が手を上げた。
「浩平くん、久しぶり」
「あ! 雄哉さん!」
乗っていたのは高校生の頃によく遊んでいた男――雄哉だった。浩平より十歳ほど年上で、最後に見たときより少し老けてはいるものの、相変わらず色気のある整った顔立ちをしている。
「後ろ姿見て、もしかしたらって思って近づいてみたら本人でびっくりしたよ」
「いや~、ホント久しぶりっすね!」
高校生の頃に正剛と関係を持って以来、雄哉とはメッセージのやり取りはしていたものの、顔を合わせる機会はなかった。だから会うのは約三年半ぶりだ。
「雄哉さん、家この辺じゃないでしょ? 今日はどうしたんすか?」
「仕事でちょっとこの辺に用があってね。その帰りなんだ。せっかく再会できたことだし、少しドライブしない?」
「いいっすけど、俺あんま時間ねえから車ん中で飯食ってもいいっすか?」
「ああ、構わないよ」
了承されたのでドアを開け、助手席に乗り込む。車はすぐにゆっくりと動き始めた。
「雄哉さん、車変えたんすね。カッコいいな~これ」
「ついこの間変えたばかりなんだ。スポーツタイプだけど結構快適だよ」
外装もそうだったが、インテリアも洗練されたデザインという感じがする。きっとお高いのだろうが、値段はあえて訊かないようにした。
「浩平くん、少し大人っぽくなったね。けど坊主頭だし、服のチョイスもあの頃と変わってないからわかったよ」
「雄哉さんも相変わらずお洒落なイケメンって感じじゃないっすか。今もやっぱ遊びまくってるんすか?」
雄哉は生粋の遊び人だった。当時も浩平以外にセフレが何人かいるようだったし、いわゆるハッテン場にもよく出入りしていたはずだ。
「まああの頃に比べたら多少落ち着いたかな。僕ももう三十過ぎたことだし……。そういう浩平くんは例の彼氏と上手くいってるのかい?」
正剛とのことはメッセージアプリを通して雄哉にも話している。
「まあ上手くいってるほうじゃないっすかね? 一緒に暮らし始めてそろそろ半年になるけど、なんも苦じゃないしむしろそれなりに楽しんでますよ」
「そっか。上手くいってるなら何よりだ。でもこっちのほうは不満を抱いてるんじゃないのか?」
雄哉の左手が浩平の尻に伸びてくる。性の匂いを感じさせる触り方に一瞬ビクッとなってしまうけれど、すぐに冷静さを取り戻してその手をそっと引き剥がした。
「雄哉さん、期待外れだったら悪いんすけど、俺浮気とかする気まったくないっすよ? マジであいつのこと大事に想ってるし、バレないかもしれないけどそれでもあいつを裏切るようなことしたくないんす。だからすんません」
「案外真面目なんだな~浩平くんは。けどタチばかりでネコはほとんどしてないんだろう? お尻が疼いちゃったりするんじゃないのかい?」
「最近はそうでもないっすよ。すっかりタチが板についたっつーか、あいつ犯すの最高に気分いいし、ケツの具合も最高なんっすよね~。まあ他のと比べてどうなのかはわかんないっすけど」
再会した日、浩平は正剛にタチしかしてないと言ったが、あれは嘘だ。正剛がどれほどの覚悟を持って自分と再び関係を持とうとしているのか試したのだ。それでも結局彼を信じきれずに突き放してしまったけれど、それで終わりにすることができず、去っていった彼を追いかけた。
受け入れる側の経験をそれなりに積んでいれば、挿入する側の要領もなんとなくわかってくる。だから初めてでも問題なく行為を進められたし、正剛にはきっと見破られなかっただろうけど、それでもあそこまで上手く噛み合ったのは互いの身体の相性がよかったからに他ならないのだろう。
「そんなに気持ちいいなら僕もそのお尻試してみたいな~」
「そんなん駄目っすよ。絶対他の奴になんか触らせないっす」
心配しなくても今の正剛は他の男や女に靡いたりしないだろうが、それを想像すると破壊衝動が湧き出してくるくらいには腹が立つ。
「俺、あいつと出逢う前は恋人つくってそいつと一緒に生きてくってのは想像できなかったっつーか、ちょっと恐いな~とか思ってたんすよね。親の離婚もちょっと影響してると思うんすけど、せっかくくっついたのにいつか別れなきゃいけねえときが来ちまうんなら、最初から恋人になんかならなきゃいいじゃん、とか思ったり」
両親は円満な離婚だったが、それでも大好きな二人が離れ離れになってしまうというのは子どもながらに辛いものがあったし、母や弟と離れて暮らすのは寂しかった。そんな思いをまたすることになるくらいなら、最初から大事な人なんてつくらなければいいという極端な考えが浩平の中にはあったのだ。
「けどあいつと出逢って、あいつのこと好きになって、こいつと一緒に生きていきたい、こいつのそばにいたいとか柄にもなく思っちまって……。それは今もすげえ思うっすね。この先どうなるかなんかわかんねえけど、どうなろうが今一緒にいるのをやめるとか考えられねえかな……」
「でも大丈夫なのかい? 相手はノンケ上がりだから、また裏切られるようなことがあるかもしれないよ?」
「そんときはあいつを殺して俺も死ぬっすよ。本人にもそう言ってるんで」
「物騒だな……」
「けどたぶん、今度は大丈夫と思うっすよ。そう信じてるっす」
何か根拠があるわけじゃないけれど、それでも今の正剛は十分に信頼できると思っている。
「まあ駄目になったら今度は僕のところに来なよ。僕がいっぱい慰めてあげるから」
「雄哉さんもそろそろ恋人つくったらどうなんすか? 募集したら応募殺到しそうじゃないっすか」
「需要があるうちはしっかり遊ぶことにしてるんだ。けどそういう相手をつくるなら、僕は浩平くんがよかったな~」
雄哉の声は冗談を言っているようなそれじゃなかった。
「俺、雄哉さんは嫌っすよ。普通に浮気しそうだし」
「傷つくな~。こう見えても僕は結構一途なんだよ?」
「まったく説得力ないっすね……」
ははは、と雄哉は笑った。
何気なく窓の外を見やると、東の空で月が優しい光を放っている。あれは十三夜月くらいになるのだろうか? となると正剛が出張から帰って来る頃には、ちょうど満月になるかもしれない。
終-2
最寄りの空港は規模が小さいからか、ロビーに人の姿は疎らだ。ソファーも空いているところが多かったので、浩平は到着口に一番近いそれに座って恋人の帰りを待つことにする。さっき飛行機が降り立つのが見えたから、きっともうすぐ現れるだろう。
正剛と付き合い始めてから四日も顔を合せなかったのは初めてだ。今回はたまたま当たってしまっただけで元々正剛は滅多に出張がない職だし、浩平もまた同じだった。毎晩電話で会話は交わしたものの、やっぱり顔を見られないのは寂しかったし、相手に触れられないことへのもどかしさも募っている。だから早く会いたいと、そわそわと落ち着かなくなりながら、何度も到着ゲートを確かめてしまう。
正剛の姿がゲートの向こう側に見えたのは、それから五分ほどしてからだった。正剛もこちらに気づき、満面の笑みになって大きく手を振ってくる。
「浩平!」
ゲートをくぐると、正剛は恥ずかしいくらい大きな声で浩平の名を呼び、まるで大好きな飼い主を見つけた犬のように勢いよく駆け寄って来る。もう手が届くという距離まで来ると、引きずっていたスーツケースを手放して浩平を抱きしめた。
「会いたかった……」
その言葉が嘘でないことを証明するように、そう言った声は感極まったようなそれだった。抱きしめる力も強く、ちょっと息苦しいような思いがしながらも、すぐに嬉しさに塗りつぶされて浩平も強く抱きしめ返す。
「あんたさ、高校んときは人目がどうのこうの言ってたくせに、今はずいぶんと大胆になったな」
「浩平以外に失って困るものなんてないからな。他人にどう思われようがどうでもいい」
「ずいぶんとお変わりになられたことで」
「こ、こういう俺は嫌いだろうか?」
心配そうにこちらの瞳を覗き込んでくる正剛に思わず苦笑を零しながら、浩平は広い背中を一つ叩いてやる。
「いいんじゃねえの? そういう剛も俺は結構好きだぜ?」
「ならよかった」
「なんなら車まで手ぇ繋ぐか?」
「いいのか?」
「俺は元々そういうの全然気にしないしな。ほら、行こうぜ?」
「うん!」
握った手は浩平のそれよりも一回りくらい大きい。体温もこちらより高いみたいで、冷房のせいで少し冷えていた手がじんわりと温もっていくのを感じる。大好きな人が自分のそばに帰ってきたのだと、改めて実感した瞬間だった。
バスルームの中には、正剛の淫らな声と彼の中を浩平の硬くなった己が撹拌する湿った音が響き渡っている。正剛の広い背中に何度も吸い付きながら必死に腰を振り、中を擦るのに伴う快感に自身も掠れた吐息を零しつつ、浩平は硬く尖った彼の乳首と性器に手を触れる。
「あっ! 浩平駄目っ……今触られたらイってしまうっ……!」
「いいぜ、イけよっ……? 俺もそろそろイきそうな感じだからっ」
行為は風呂を出てからと決めていたのに、正剛の裸に触れていると我慢できなくなって結局風呂場で始めてしまった。そのせいでローションの準備もなくて急遽リンスを使う羽目になってしまったが、こうして無事に結合できている。
高校生の頃は浩平のほうが受け入れる側をしていたけれど、社会人になり恋人として付き合い始めてからは逆のポジションをすることのほうが多かった。幸いにも正剛には後ろの才能もあったらしく、いつもこんなふうに感じすぎてグズグズになってくれているし、浩平のほうも不思議とこちらのほうがしっくりきている。
昔と変わったのはセックスのポジションだけじゃない。あの頃は浩平のほうが正剛に甘えていたのに、今は正剛のほうがデカい図体をしながら浩平にすり寄って来ることのほうが多い。そちらもまたしっくりきているので何も問題ないが。
そんなふうに変わったものは少なくなかったが、それでもあの頃よりずっと満たされた気持ちでいる。それはきっと身体だけじゃなく互いの心もちゃんと繋がっているからなのだろう。
「剛っ……好きだぜっ……何があっても絶対っ、放してやらねえからなっ」
「俺も浩平が好きっ……大好きっ……あっ! ダメっ、イクっ……!」
手に握っていた正剛自身から白濁が迸る。同時に中が強く収縮し、強烈な快感に頭の中を真っ白にさせながら、浩平も正剛の中に精を放った。
風呂から出ると、あまり間を置かずにポジションを入れ替えての二回戦を、今度はベッドの上で楽しんだ。受け入れる側をするときはグズグズになってあんなに可愛いのに、攻める側になったときの正剛は男らしさを全開にしていてカッコいい。どちらの正剛のことも浩平はどうしようもないくらい愛おしかった。
「浩平、こっちに来てくれないか? 今気づいたんだが、今夜は綺麗な満月だ」
二度目の風呂から上がり、先に服を着ていた正剛が、ベランダから声をかけてくる。
「気づくの遅っ! 出張からの帰りしなに気づかなかったのかよ?」
「浩平に逢えることの嬉しさと期待で空を見る余裕がなかった……」
「可愛いこと言ってんじゃねえよ」
呆れるような気持ちが先に出てくるが、それもすぐに嬉しさに塗りつぶされた。
「ほら、浩平も一緒に見よう?」
「わかったよ、ったく……」
浩平も上だけ着てベランダに出る。
「下は穿いて来なかったのか?」
「外からは見えねえよ。で、満月がなんだって?」
手すりに身体を預けると、後ろから逞しい腕が浩平を包み込んでくれる。まだ本格的に夏を迎えたわけじゃないので夜は涼しかったが、そうされると風呂上りなのも相まって暑かった。それでも自分を抱きしめた腕を振りほどいたりしない。むしろその腕に優しく触れながら、今度は背中側に柔らかく体重をかける。
見上げた空には綺麗な満月が白い輝きを放っている。空港に迎えに行く頃はまだ東の空の低い位置にあったが、今はほぼ真上まで来ていた。
「なあ浩平、高校生の頃に同性同士で結婚できたらいいのにって言ったの覚えてるか?」
「剛がそんなこと言ったのか?」
「言ったのは俺じゃなくて浩平だ。あの頃の浩平にしては珍しく真面目なことを考えてるんだなと少し驚いたのを覚えてる」
「俺がそんなことをねえ……まあでも言ったかもな。今もそれは思うし」
「あの頃はその言葉にピンとこなかったんだが、今は俺もその言葉に激しく同意するよ。俺も同性婚が認められたらと強く思う。もしそうなったら、俺は浩平と結婚したい」
浩平を抱きしめる腕の力が少し強くなる。相変わらず言葉でも行動でもストレートに伝えてくるなと感心するような気持ちになりながら、浩平もまたその腕をギュッと引き寄せた。
「結婚なんかしなくたって一緒にいられるだろ?」
「そうかもしれないが、俺は見える形での繋がりが欲しいんだ。それに倉富正剛って名乗りたい」
「あんたが俺の籍に入るのかよ!?」
「駄目か?」
「いや、駄目じゃねえけど……」
本当はそういうふうに思ってくれていることが嬉しい。それに浩平だって結婚できるなら正剛としたかった。
「これから先もこうして二人で一緒に月を眺めることができるだろうか?」
「先のことなんかどうなるかわかんねえよ。けどそうだったらいいなってめっちゃ思う」
「浩平に捨てられやしないか心配だ……」
「バーカ。俺は剛を捨てるつもりなんかねえよ。今度離れ離れになるようなことになったら、剛を殺して俺も死ぬって言ったろ? あれ本気だからな」
「そうか」
物騒なことを言って脅したつもりなのに、正剛は嬉しそうに笑っていた。
一度壊れてしまった恋が再び実るなんて、それは本当に奇跡に近い出来事なんだろう。浩平だってまさかこうして正剛と一緒に暮らせる日が来るなんて、一度目の別離からは想像もできなかったし、正剛もきっと同じだろう。
だけど自分たちは今一緒にいる。互いが互いを想い合い、ともに生きることを心の底から望んでいる。それを心と身体の両方で感じながら、浩平はもう一度白く美しい輝きを放つ満月を、そっと見上げた。
見えない月 完
ストレッチパンツのポケットに入れていたスマートフォンが振動する。取り出して画面を確認すると、恋人からの着信だった。呆れるような気持ちと嬉しいような気持ちを同時に抱きながら、倉富浩平は受話器ボタンをタップする。
「はいはーい」
『浩平、出てくれてよかった』
聞き慣れたはずの恋人の声も、電話を通して聞くとなんだかいつもと違って聞こえる。元々低くて男らしい声をしていたが、今日は更に渋さが増したような気がした。
『今何してるんだ?』
「飯買いに行こうかと思ってたとこだよ。そういう剛は何してんの?」
『さっき飲み会が終わって今ホテルに帰ったところだ』
浩平の恋人――垣内正剛は今出張で埼玉に行っている。何かの発表会に出席しなければならないと言っていたが、内容に興味がなかったので詳しくは聞いていない。
「二次会とかなかったんか?」
『あるにはあったが、逃げてきた。会社の人間と飲んだって何も楽しくないし、早く浩平の声を聴きたかったから』
「んなことしてたらあんたハブられるんじゃねえの?」
『別にハブられたって構わない。元々そんなに深い付き合いをしてるわけじゃないし』
正剛は真面目な性格だが、職場における人間関係には結構ドライだ。仕事以外ではあまり関わりを持とうとしない。そういう浩平も似たようなところはあるけれど、酒は好きなので飲み会には積極的に参加していた。
『浩平……寂しい』
電話の向こうの声が、まるで萎れた風船のように小さくなる。
『浩平に逢いたい……』
「出張一日目でそんな調子でどうすんだよ? あと三日もあるんだぜ?」
『浩平、今からこっちに来ないか? 俺が仕事に行ってる間観光とかしてていいから』
「アホなこと言ってんじゃねえよ。俺も仕事だっつーの」
『有給を使うとか』
「そんな急に取れるわけねえだろ」
『そうだよな……』
そう言った声の暗さからも、彼が今飼い主に見捨てられた子犬のような寂しそうな顔になっているのが想像できる。今朝空港まで送ったときの別れ際にもそんな顔をしていた。
「三日なんてすぐだって。永遠の別れじゃねえんだからそんな落ち込むなよ」
『浩平は寂しくないのか?』
「数日くらいなら平気だっつーの。さすがに一ヶ月とかなったら寂しくてやばそうだけど」
『俺は一日だって離れたくなかった。やっぱり出張断ればよかった……』
「だからアホなこと言うなって。俺のためにもしっかり働いてくれよな。じゃ、そろそろ切るぜ?」
『も、もう切るのか?』
「明日も仕事だからな。ちゃっちゃと飯買って食わねえと」
『もっと話したい……。浩平の声を聞いてたい……』
「明日また電話すりゃいいだろ? わがまま言ってないで剛もさっさと休めよ」
『うう……わかった。じゃあまた明日かける』
「おう」
こちらから切らないと正剛はいつまで経っても切らない気がしたので、浩平は早々に通話終了ボタンをタップする。けれど本音を言えば、浩平ももう少し正剛と話していたかった。さっきは強がってみせたけど、本当は正剛がいなくて結構寂しい。
正剛と恋人として付き合い始めて約半年、今二人は二年ほど前に正剛が建てた一軒家で同棲している。正剛の元妻やその子どものために建てられた家なのだと思うと少し複雑だったが、たった二年しか使われずに手放すのももったいないし、場所も悪くなかったからそうすることに決めたのだ。
高校生の頃、正剛とセフレのような関係にあった頃は、こんな未来があればいいな、なんておぼろげに想像していたこともある。浩平は正剛のことが本気で好きだったし、正剛もまた同じ気持ちを持っているように感じていたからだ。
けれど二人の仲は神様の悪戯によって引き裂かれ、想像していた幸せな未来も、まるで厚い雲に覆われたかのように見えなくなってしまった。やむを得ない事情とはいえ、あのときは自分を切り捨てた正剛が許せなかったし、時が経って心の傷はだいぶ癒えていたけれど、それでも半年前に再会するまで、彼を許せないという気持ちはずっと胸の奥にこびりついていた。
正剛と幸せに暮らす未来なんてもう絶対に訪れないと確信していたのに、その憧れていた景色が今ここにある。と言っても正剛は出張で留守にしているが、ここは確かに彼と自分との幸せが育まれる場所だった。
買い物を終えてコンビニから歩いて帰っていると、浩平のすぐ目の前に低いエンジン音を立てるスポーツカーが停まった。なんだこいつ、と怪訝に思いながら車を覗き込んでいると、浩平がいるほうの窓が開いて奥にいる運転手が手を上げた。
「浩平くん、久しぶり」
「あ! 雄哉さん!」
乗っていたのは高校生の頃によく遊んでいた男――雄哉だった。浩平より十歳ほど年上で、最後に見たときより少し老けてはいるものの、相変わらず色気のある整った顔立ちをしている。
「後ろ姿見て、もしかしたらって思って近づいてみたら本人でびっくりしたよ」
「いや~、ホント久しぶりっすね!」
高校生の頃に正剛と関係を持って以来、雄哉とはメッセージのやり取りはしていたものの、顔を合わせる機会はなかった。だから会うのは約三年半ぶりだ。
「雄哉さん、家この辺じゃないでしょ? 今日はどうしたんすか?」
「仕事でちょっとこの辺に用があってね。その帰りなんだ。せっかく再会できたことだし、少しドライブしない?」
「いいっすけど、俺あんま時間ねえから車ん中で飯食ってもいいっすか?」
「ああ、構わないよ」
了承されたのでドアを開け、助手席に乗り込む。車はすぐにゆっくりと動き始めた。
「雄哉さん、車変えたんすね。カッコいいな~これ」
「ついこの間変えたばかりなんだ。スポーツタイプだけど結構快適だよ」
外装もそうだったが、インテリアも洗練されたデザインという感じがする。きっとお高いのだろうが、値段はあえて訊かないようにした。
「浩平くん、少し大人っぽくなったね。けど坊主頭だし、服のチョイスもあの頃と変わってないからわかったよ」
「雄哉さんも相変わらずお洒落なイケメンって感じじゃないっすか。今もやっぱ遊びまくってるんすか?」
雄哉は生粋の遊び人だった。当時も浩平以外にセフレが何人かいるようだったし、いわゆるハッテン場にもよく出入りしていたはずだ。
「まああの頃に比べたら多少落ち着いたかな。僕ももう三十過ぎたことだし……。そういう浩平くんは例の彼氏と上手くいってるのかい?」
正剛とのことはメッセージアプリを通して雄哉にも話している。
「まあ上手くいってるほうじゃないっすかね? 一緒に暮らし始めてそろそろ半年になるけど、なんも苦じゃないしむしろそれなりに楽しんでますよ」
「そっか。上手くいってるなら何よりだ。でもこっちのほうは不満を抱いてるんじゃないのか?」
雄哉の左手が浩平の尻に伸びてくる。性の匂いを感じさせる触り方に一瞬ビクッとなってしまうけれど、すぐに冷静さを取り戻してその手をそっと引き剥がした。
「雄哉さん、期待外れだったら悪いんすけど、俺浮気とかする気まったくないっすよ? マジであいつのこと大事に想ってるし、バレないかもしれないけどそれでもあいつを裏切るようなことしたくないんす。だからすんません」
「案外真面目なんだな~浩平くんは。けどタチばかりでネコはほとんどしてないんだろう? お尻が疼いちゃったりするんじゃないのかい?」
「最近はそうでもないっすよ。すっかりタチが板についたっつーか、あいつ犯すの最高に気分いいし、ケツの具合も最高なんっすよね~。まあ他のと比べてどうなのかはわかんないっすけど」
再会した日、浩平は正剛にタチしかしてないと言ったが、あれは嘘だ。正剛がどれほどの覚悟を持って自分と再び関係を持とうとしているのか試したのだ。それでも結局彼を信じきれずに突き放してしまったけれど、それで終わりにすることができず、去っていった彼を追いかけた。
受け入れる側の経験をそれなりに積んでいれば、挿入する側の要領もなんとなくわかってくる。だから初めてでも問題なく行為を進められたし、正剛にはきっと見破られなかっただろうけど、それでもあそこまで上手く噛み合ったのは互いの身体の相性がよかったからに他ならないのだろう。
「そんなに気持ちいいなら僕もそのお尻試してみたいな~」
「そんなん駄目っすよ。絶対他の奴になんか触らせないっす」
心配しなくても今の正剛は他の男や女に靡いたりしないだろうが、それを想像すると破壊衝動が湧き出してくるくらいには腹が立つ。
「俺、あいつと出逢う前は恋人つくってそいつと一緒に生きてくってのは想像できなかったっつーか、ちょっと恐いな~とか思ってたんすよね。親の離婚もちょっと影響してると思うんすけど、せっかくくっついたのにいつか別れなきゃいけねえときが来ちまうんなら、最初から恋人になんかならなきゃいいじゃん、とか思ったり」
両親は円満な離婚だったが、それでも大好きな二人が離れ離れになってしまうというのは子どもながらに辛いものがあったし、母や弟と離れて暮らすのは寂しかった。そんな思いをまたすることになるくらいなら、最初から大事な人なんてつくらなければいいという極端な考えが浩平の中にはあったのだ。
「けどあいつと出逢って、あいつのこと好きになって、こいつと一緒に生きていきたい、こいつのそばにいたいとか柄にもなく思っちまって……。それは今もすげえ思うっすね。この先どうなるかなんかわかんねえけど、どうなろうが今一緒にいるのをやめるとか考えられねえかな……」
「でも大丈夫なのかい? 相手はノンケ上がりだから、また裏切られるようなことがあるかもしれないよ?」
「そんときはあいつを殺して俺も死ぬっすよ。本人にもそう言ってるんで」
「物騒だな……」
「けどたぶん、今度は大丈夫と思うっすよ。そう信じてるっす」
何か根拠があるわけじゃないけれど、それでも今の正剛は十分に信頼できると思っている。
「まあ駄目になったら今度は僕のところに来なよ。僕がいっぱい慰めてあげるから」
「雄哉さんもそろそろ恋人つくったらどうなんすか? 募集したら応募殺到しそうじゃないっすか」
「需要があるうちはしっかり遊ぶことにしてるんだ。けどそういう相手をつくるなら、僕は浩平くんがよかったな~」
雄哉の声は冗談を言っているようなそれじゃなかった。
「俺、雄哉さんは嫌っすよ。普通に浮気しそうだし」
「傷つくな~。こう見えても僕は結構一途なんだよ?」
「まったく説得力ないっすね……」
ははは、と雄哉は笑った。
何気なく窓の外を見やると、東の空で月が優しい光を放っている。あれは十三夜月くらいになるのだろうか? となると正剛が出張から帰って来る頃には、ちょうど満月になるかもしれない。
終-2
最寄りの空港は規模が小さいからか、ロビーに人の姿は疎らだ。ソファーも空いているところが多かったので、浩平は到着口に一番近いそれに座って恋人の帰りを待つことにする。さっき飛行機が降り立つのが見えたから、きっともうすぐ現れるだろう。
正剛と付き合い始めてから四日も顔を合せなかったのは初めてだ。今回はたまたま当たってしまっただけで元々正剛は滅多に出張がない職だし、浩平もまた同じだった。毎晩電話で会話は交わしたものの、やっぱり顔を見られないのは寂しかったし、相手に触れられないことへのもどかしさも募っている。だから早く会いたいと、そわそわと落ち着かなくなりながら、何度も到着ゲートを確かめてしまう。
正剛の姿がゲートの向こう側に見えたのは、それから五分ほどしてからだった。正剛もこちらに気づき、満面の笑みになって大きく手を振ってくる。
「浩平!」
ゲートをくぐると、正剛は恥ずかしいくらい大きな声で浩平の名を呼び、まるで大好きな飼い主を見つけた犬のように勢いよく駆け寄って来る。もう手が届くという距離まで来ると、引きずっていたスーツケースを手放して浩平を抱きしめた。
「会いたかった……」
その言葉が嘘でないことを証明するように、そう言った声は感極まったようなそれだった。抱きしめる力も強く、ちょっと息苦しいような思いがしながらも、すぐに嬉しさに塗りつぶされて浩平も強く抱きしめ返す。
「あんたさ、高校んときは人目がどうのこうの言ってたくせに、今はずいぶんと大胆になったな」
「浩平以外に失って困るものなんてないからな。他人にどう思われようがどうでもいい」
「ずいぶんとお変わりになられたことで」
「こ、こういう俺は嫌いだろうか?」
心配そうにこちらの瞳を覗き込んでくる正剛に思わず苦笑を零しながら、浩平は広い背中を一つ叩いてやる。
「いいんじゃねえの? そういう剛も俺は結構好きだぜ?」
「ならよかった」
「なんなら車まで手ぇ繋ぐか?」
「いいのか?」
「俺は元々そういうの全然気にしないしな。ほら、行こうぜ?」
「うん!」
握った手は浩平のそれよりも一回りくらい大きい。体温もこちらより高いみたいで、冷房のせいで少し冷えていた手がじんわりと温もっていくのを感じる。大好きな人が自分のそばに帰ってきたのだと、改めて実感した瞬間だった。
バスルームの中には、正剛の淫らな声と彼の中を浩平の硬くなった己が撹拌する湿った音が響き渡っている。正剛の広い背中に何度も吸い付きながら必死に腰を振り、中を擦るのに伴う快感に自身も掠れた吐息を零しつつ、浩平は硬く尖った彼の乳首と性器に手を触れる。
「あっ! 浩平駄目っ……今触られたらイってしまうっ……!」
「いいぜ、イけよっ……? 俺もそろそろイきそうな感じだからっ」
行為は風呂を出てからと決めていたのに、正剛の裸に触れていると我慢できなくなって結局風呂場で始めてしまった。そのせいでローションの準備もなくて急遽リンスを使う羽目になってしまったが、こうして無事に結合できている。
高校生の頃は浩平のほうが受け入れる側をしていたけれど、社会人になり恋人として付き合い始めてからは逆のポジションをすることのほうが多かった。幸いにも正剛には後ろの才能もあったらしく、いつもこんなふうに感じすぎてグズグズになってくれているし、浩平のほうも不思議とこちらのほうがしっくりきている。
昔と変わったのはセックスのポジションだけじゃない。あの頃は浩平のほうが正剛に甘えていたのに、今は正剛のほうがデカい図体をしながら浩平にすり寄って来ることのほうが多い。そちらもまたしっくりきているので何も問題ないが。
そんなふうに変わったものは少なくなかったが、それでもあの頃よりずっと満たされた気持ちでいる。それはきっと身体だけじゃなく互いの心もちゃんと繋がっているからなのだろう。
「剛っ……好きだぜっ……何があっても絶対っ、放してやらねえからなっ」
「俺も浩平が好きっ……大好きっ……あっ! ダメっ、イクっ……!」
手に握っていた正剛自身から白濁が迸る。同時に中が強く収縮し、強烈な快感に頭の中を真っ白にさせながら、浩平も正剛の中に精を放った。
風呂から出ると、あまり間を置かずにポジションを入れ替えての二回戦を、今度はベッドの上で楽しんだ。受け入れる側をするときはグズグズになってあんなに可愛いのに、攻める側になったときの正剛は男らしさを全開にしていてカッコいい。どちらの正剛のことも浩平はどうしようもないくらい愛おしかった。
「浩平、こっちに来てくれないか? 今気づいたんだが、今夜は綺麗な満月だ」
二度目の風呂から上がり、先に服を着ていた正剛が、ベランダから声をかけてくる。
「気づくの遅っ! 出張からの帰りしなに気づかなかったのかよ?」
「浩平に逢えることの嬉しさと期待で空を見る余裕がなかった……」
「可愛いこと言ってんじゃねえよ」
呆れるような気持ちが先に出てくるが、それもすぐに嬉しさに塗りつぶされた。
「ほら、浩平も一緒に見よう?」
「わかったよ、ったく……」
浩平も上だけ着てベランダに出る。
「下は穿いて来なかったのか?」
「外からは見えねえよ。で、満月がなんだって?」
手すりに身体を預けると、後ろから逞しい腕が浩平を包み込んでくれる。まだ本格的に夏を迎えたわけじゃないので夜は涼しかったが、そうされると風呂上りなのも相まって暑かった。それでも自分を抱きしめた腕を振りほどいたりしない。むしろその腕に優しく触れながら、今度は背中側に柔らかく体重をかける。
見上げた空には綺麗な満月が白い輝きを放っている。空港に迎えに行く頃はまだ東の空の低い位置にあったが、今はほぼ真上まで来ていた。
「なあ浩平、高校生の頃に同性同士で結婚できたらいいのにって言ったの覚えてるか?」
「剛がそんなこと言ったのか?」
「言ったのは俺じゃなくて浩平だ。あの頃の浩平にしては珍しく真面目なことを考えてるんだなと少し驚いたのを覚えてる」
「俺がそんなことをねえ……まあでも言ったかもな。今もそれは思うし」
「あの頃はその言葉にピンとこなかったんだが、今は俺もその言葉に激しく同意するよ。俺も同性婚が認められたらと強く思う。もしそうなったら、俺は浩平と結婚したい」
浩平を抱きしめる腕の力が少し強くなる。相変わらず言葉でも行動でもストレートに伝えてくるなと感心するような気持ちになりながら、浩平もまたその腕をギュッと引き寄せた。
「結婚なんかしなくたって一緒にいられるだろ?」
「そうかもしれないが、俺は見える形での繋がりが欲しいんだ。それに倉富正剛って名乗りたい」
「あんたが俺の籍に入るのかよ!?」
「駄目か?」
「いや、駄目じゃねえけど……」
本当はそういうふうに思ってくれていることが嬉しい。それに浩平だって結婚できるなら正剛としたかった。
「これから先もこうして二人で一緒に月を眺めることができるだろうか?」
「先のことなんかどうなるかわかんねえよ。けどそうだったらいいなってめっちゃ思う」
「浩平に捨てられやしないか心配だ……」
「バーカ。俺は剛を捨てるつもりなんかねえよ。今度離れ離れになるようなことになったら、剛を殺して俺も死ぬって言ったろ? あれ本気だからな」
「そうか」
物騒なことを言って脅したつもりなのに、正剛は嬉しそうに笑っていた。
一度壊れてしまった恋が再び実るなんて、それは本当に奇跡に近い出来事なんだろう。浩平だってまさかこうして正剛と一緒に暮らせる日が来るなんて、一度目の別離からは想像もできなかったし、正剛もきっと同じだろう。
だけど自分たちは今一緒にいる。互いが互いを想い合い、ともに生きることを心の底から望んでいる。それを心と身体の両方で感じながら、浩平はもう一度白く美しい輝きを放つ満月を、そっと見上げた。
見えない月 完
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