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ハッピーおじさんと新しい生活

第044話 ダウジングってすげぇ!!①

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「急に引っ越すなんてひどいよ」

 次の日、何も言わずに引っ越してしまったことを亜里沙に責められていた。

 昨日は兄貴から聞いてすぐに準備して急いでここまでやってきたらしい。

 彼女には入院してからも退院してからも世話になりっぱなしだ。それなのに相談しなかったのは不義理だったと思う。

「悪かった」
「ぶぅ~」

 頭を下げるが、亜理紗は頬を膨らませて拗ねてしまい、このままでは許してくれそうにない。

 仕方ない。いつもの方法でいくか……。

「なんでも一つ言うことを聞いてやるから。それで許してくれ」

 昔から亜理紗の機嫌が悪くなった時はこれで機嫌を取っていた。

 いつもお菓子を買ってほしいとか、遊びに連れてってほしいとか、可愛いお願いばかりなので問題ないはずだ。

「ホントに何でもいいの?」
「おいおい、あくまで俺の出来る範囲で頼むぞ」

 こちらを試すような表情をする亜理紗。なんだか嫌な予感がしたので、俺は念のため釘を刺す。

「ちっ」
「なんだ、今の舌打ちは!!」
「なんでもないよ、気にしないで。内容は考えとくね」
「はぁ……分かったよ……」

 答える気がない亜理紗に諦めて、俺はため息を吐いた。

 亜理紗は俺に何を頼む気だったんだ……。

 なんとか事なきを得た俺は、安堵で体をぶるりと震わせた。

 まぁ、亜理紗の声色は元に戻ったので、これで大丈夫だろう。なんとなく掌の上で転がされているような気がするが、亜理紗なら問題ない。

 可愛いから全て許そう。

「パパッ!!」
「パパ」
「ピッ」

 俺の思考を遮るように幼女形態のマヒルとヨルが俺に飛びついてきて、ワラビモチが頭に乗ってきた。

 はぁ……癒される。他のことがどうでもよくなるな。

「どうしたんだ?」
「ぽんぽん」
「へりへり」
「そうか。朝ご飯にするか」

 三人は俺から離れてしょんぼりした様子でお腹を擦る。

 どうやらお腹が空いたらしい。そういえば、しばらく亜理紗に怒られていたのでまだ朝ご飯を食べていなかった。

「亜理紗手伝ってくれ」
「はーい」


 朝食を食べ終えた俺はこれからすべきことを考える。

「まずは何から始めるか……」

 しばらくはテント暮らしでいいとして、やっぱり一番最初にやるべきは飲み水の確保か。ペットボトルの水を大量に買ってきたけど、使えば使うだけ減っていく。

 早めにどうにかする必要があるだろう。

「最初にやることは井戸掘りか」
「きゅう?」
「きゅん?」

 俺が呟くと、マヒルとヨルが不思議そうに俺の顔を覗き込んでいた。

「ああ、悪い。どうかしたのか?」
「きゅんきゅん」
「おっ。手伝ってくれるのか。ありがとな」
「きゅんっ!!」

 彼女たちに向き直って用を尋ねると、お手伝いしてくれるそうだ。

「さて、始めるか」
「いいよー」

 亜理紗がカメラを起動して撮影を開始する。こんなところを撮って何になるのか分からないが、風呂とかトイレとかそんな所を撮られなければ大丈夫だろう。

 俺は複数の五円玉を糸に通してペンデュラムモドキを作成し、ダウジングを始めた。

「おじさん、そんなので水脈なんて分かるの?」
「分からん。でも、なんのあてもなく探すよりは幾分かマシだろ」
「それもそっか」

 亜理紗はダウジングに半信半疑だが、何の知識もなく、手掛かりもない状態で探すよりもずっといいはずだ。

「こ、これは!?」

 しばらく歩いていると、ペンデュラムが凄い勢いでグルグルと回り、ぐちゃぐちゃに動き出した。明らかに異常な動きだ。ここに水源があるに違いない。

「ここを掘るぞ」
「りょーかい!!」

 俺と亜理紗は協力して早速スコップでその場所をを掘り始めた。

 プレイヤーの身体能力によって地面も楽に掘ることができる。

 ――バキッ
 
「「あっ」」

 逆にスコップの方が持たなかった。数メートル程掘っただけで折れてしまった。

 さて、どうしたものか。

「きゅっ」
「そうか、ありがとな。頼んだぞ」

 ヨルが手を挙げて自分に任せろと言うので彼女に頼むことにした。

 俺たちが穴から出た後、ヨルがその場所に手を翳す。すると、見る見るうちに穴が深くなっていく。

 そういえば、ヨルは土壌操作というスキルを持っていた。土の状態を変化させるスキルだと思ったら、こんなことも可能だとは。これは農業が捗りそうだ。

「きゅう?」
「どうかしたのか?」
「きゅきゅっ」
「ひとまず引き上げてくれるか?」
「きゅんっ」

 何かあったのかと思えば、どうやら土ではない何かが埋まっているとのこと。どうやらそれは水ではないらしい。

 ヨルは指示に従い、土を操ってその謎の物体を地上に運び出した。

「こ、これは……!?」

 地下から顔を出したのは古ぼけた木製の箱が数十個。なんだか千両箱によく似ている。慎重にフタを開けてみると、まさかのまさか、中には黄金色《こがねいろ》の楕円形の代物がびっしりと詰まっていた。

「小判?」

 それはどう見ても大量の小判だった。

「はぁあああああああっ!?」
「えぇえええええええっ!?」

 俺と亜理紗は驚きのあまり、無意識に叫んでいた。
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