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おじさんはリアルでも奇跡を起こす

第041話 来ちゃった!!

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「すっかり日が暮れてしまったなぁ」

 設営していたら、いつの間にか時間が経っていた。

「くぅ~」
「ぽんぽん」
「ピッ」

 マヒル、ヨル、ワラビモチの三人がお腹が空いたことをアピールしている。彼女たちも集中していて何も食べていなかったので当然だ。

「ヴェ~」

 シルクシープのリーダーがやってきて、異常なしと報告してくれる。

「お前たちも何か食べるのか?」
「ヴェ~」

 こいつらも一緒に食べられればと思って聞いたら、是非とも食べてみたいとのこと。

 ただ、いまここには俺、マヒル、ヨル、ワラビモチ、シルクシープ数十匹がいる。この数を普通の料理で満足させるのは難しい。

「やっぱりこういう時はアレか」

 これだけの大人数を満足させられて、手間がかかりすぎない料理と言えば皆大好きなアレだろう。

「今日はカレーにしよう」

 そう。カレーだ。

 カレーならそれほど時間が掛からずに大量に作ることができる。幸い今日買い込んできた食材の中に材料は大量に含まれている。

「か、れ?」
「ああ。美味いから楽しみにしててくれよな?」
「きゅ~」

 ヨルが慣れない言葉で俺に尋ねてくるので、頭を撫でると尻尾をわさわささせて目を細める。

「ん?」
「きゅうっ」
「ピッ」
『ヴェ~』

 視線を感じた方を見てみると、他の皆たちも目をキラキラとさせて見つめてくるので、全員を撫でてやる羽目になった。

 皆可愛いから仕方ないな。

「皆は休んでてくれ」
「きゅんッ」
「きゅっ」
「ピッ」
「何? シルクシープと狩りをしてくる?」

 しばらく皆と戯れた後、皆は狩りに行きたいと言い出した。

 三人とも今まで戦っているところを見る限り、シルクシープ相手に負ける要素は一つもない。それに、今は仲間のシルクシープたちもいるから安全度はさらに高い。

「マヒル達もシルクシープの見分けはつくのか?」
「きゅっ!!」

 俺の質問にマヒルが代表して返事をして皆も同じように同意するように頷いた。

 仲間同士は感覚的に分かるとのこと。それなら間違えて攻撃してしまうこともなさそうだし、別にいいか。

「あんまり遠くにいかないこと。なにかあったらすぐに戻ってくること。これを守れるなら行って来てもいいぞ」
「キュッ!!」

 マヒルとヨルが狐モードになり、皆が器用に敬礼のようなポーズをした。

 心配だけど、過保護は良くないよな。

「気を付けて行って来いよ」

 彼らは意気揚々と出かけて行った。

「作るか」

 彼らの背中を見送った俺はカレーを作り始める。

 宝くじのお金とアイテムボックスがあるのをいいことに、ガスボンベもコンロも業務用を何個も買ってきたし、寸胴も複数ある。

 他にもいくつもの鍋を取り出して、ご飯を鍋で十個以上炊いておいた。

「流石にこれだけあれば大丈夫だろ」

 俺はお湯を沸かしつつ、野菜を切り、肉と玉ねぎを炒め、鍋に投入していく。一体何個の人参と玉ねぎ、ジャガイモの皮を剥いたか覚えていない。

 それだけでかなり重労働だった。

「よし、できた」

 長い格闘の末、俺は甘口、中辛、辛口の三種類のカレーを作り終えた。

「キュウッ!!」
「キュンッ!!」
「ピッ!!」
『ヴェ~』

 ちょうどその時、皆も帰ってくる。

「おお、大量だな」

 彼らは各々大量のアイテムを抱えて戻って来た。

「ありがとな」

 俺の前にアイテムを置いていく彼らの頭を一人ずつ撫でながらアイテムを受け取っていく。

 全てのアイテムをアイテムボックス仕舞い終わった俺は、皆カレーを配っていく。ひとまず皆中辛だ。

「よし、これで全員に行き渡ったか?」

 俺が尋ねると、皆が鳴いて肯定する。

 こういうことも考えて器を沢山買っておいてよかった。

 最後に自分用に辛口のカレーを盛り、椅子に腰を下ろした。

「それじゃあ、いただきます!!」
「キュウッ」
「キュイ」
「ピッ」
『ヴェヴェ~』

 俺の食前の挨拶に合わせて皆も鳴いてから口を付ける。マヒルたちは今日は狐モードのまま食べるようだ。

「キュウウウウウウウッ!!」
「キュウウウウウウンッ!!」
「ピィイイイイイイイッ!!」
『ヴェエエエエエエエッ!!』

 食べた瞬間、皆喜びの咆哮を上げ、すぐにガツガツと頬張り始めた。

「お代わりできるからしたい奴は言えよ。それと、今のが中辛で、それよりも甘めの味と辛い味の三種類あるから好みで選べるぞ」

 美味そうに食べている様子を見ていると頬が緩む。

「うん、美味いな」

 俺も口に放り込んだ。やっぱりカレーは美味い。

「キュウッ!!」
「キュイッ!!」
「ピピピピッ!!」
『ヴェッヴェッ!!』

 そのすぐ後に皆がお代わりをねだってきた。

 そんな嬉しそうな顔をされたら、出さないわけにはいかないだろう。

 それから俺はしばらくの間、カレーの盛りマシーンになった。そして、俺が満足できたころには準備したカレーが全て消えてしまった。

 モンスター達の食欲は恐ろしいな。

「さて、そろそろ寝るか。本当にいいのか?」
「ヴェ~」
「分かった。見張りは任せたぞ」
「ヴェヴェ!!」

 見張りはシルクシープたちが買って出てくれたので、彼らに任せて俺たちはテントに入ろうとする。

「お……ん……」

 しかし、その時、遠くから何かが聞こえた気がした。

「あれは……」

 振り返ると、何やら砂煙のような物が見える。

「おじさーん!!」
「亜理紗!?」

 徐々に近づいてきて再び聞こえてきた声は聞き覚えるのある声だった。俺は居るはずのない存在に困惑しながら叫ぶ。

「ど、どうしてここに……?」
「てへっ。来ちゃった!!」

 俺が呆然としながら呟くと、亜理紗はあざとい仕草でそう宣うのだった。
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