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おじさんはリアルでも奇跡を起こす

第038話 当選!!

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「おじさん、お疲れ様」
「はぁ……大丈夫だったか? 初めての経験で緊張してしまってな。上手くできてなかったらすまんな」

 俺はソファに背を預けてぐったりとしながら謝罪する。

 ガチガチになって頭の中が真っ白になってしまい、正直自分でも何を言っていたのかあまり覚えていない。亜理紗の役に立てれば思って出演したが、迷惑をかけてしまってたら申し訳ない。

「んーん。良かったよ。皆も大喜びしてたじゃない」
「そうか?」

 亜理紗がそう言ってくれるが、覚えてなさ過ぎて実感がない。

「大丈夫だって。おじさんのおかげで一杯ファン増えたから」
「それならいいんだけどな」
「もっと自信をもって。私の配信がこんなに人気になったのもおじさんのおかげなんだから」
「はははっ。そうか」

 亜理紗が気を遣って励ましてくれる。

 これ以上落ち込んでもいられないな。

「そんなことよりも、お疲れ様ってことで打ち上げしよ。さっきの生配信すっごく沢山の人が見てくれたから、お祝いに出前でもとろうよ」

 亜理紗が喜んでいるみたいだし、打ち上げをするのも悪くない。

「それはいいな。頼むか」
「やったぁ!!」

 俺たちは近所で評判の鰻屋と寿司屋から出前を取ることにした。

 電話をしてみたら、普段は出前やっていないんだけど、今日はたまたま暇だからという理由で引き受けてくれた。

 なんだか電話口で驚いていたような気がするけど、大丈夫だろうか。

 なにはともあれ、亜理紗のために神様が気を利かせてくれたのかもしれないな。

「う、な、ぎ?」
「うな?」
「ピッ?」

 鰻屋の意味が分からない様子で首を傾げる三人。

「魚の種類だ。甘じょっぱいタレを絡めて焼いてあって凄く美味しいんだ。それにいなり寿司は勿論、色んな種類のお寿司もあるからな?」
「きゅうんっ!!」
「きゅっ!!」
「ピッ!!」

 俺の言葉を聞いてなんとなく理解したらしい三人は大いに喜んだ。



「今日はお疲れ様でした。皆配信に参加してくれてありがとね。おかげで大成功に終わったよ。だから、お祝いに沢山食べてましょう!! 乾杯!!」
「乾杯!!」
「きゅんっ!!」
「きゅうっ!!」
「ピッ!!」

 うな重や寿司をテーブルに並べ終わったところで宴会が始まる。

 頼んだ物よりも数も質もいいような気がする。気のせいだろうか。

 出前してくれた鰻屋さんもお寿司屋さんも、亜理紗のことを知っていたみたいでサインを求めていた。なぜか俺までサインすることになったが。俺のサインなんて意味ないだろうに。

 俺は料理を受け取った時を思い出しながら、マヒルたちに料理を取り分けてから自分も食べ始める。

「うん、美味いな」

 評判通り、うな重もお寿司もとても美味しかった。流石名店と呼ばれるだけある。

「あぁ~、こらこら、汚れちゃってるじゃないか」

 しばらく食べていると、マヒルとヨルが口元を汚しているので拭いてやる。

 やはり元々狐だから、まだまだ人としての食べ方に慣れていないようだ。

「お前たち、食べづらいなら元の姿に戻ってもいいからな?」
「きゅんっ」
「きゅうっ」

 俺の言葉を聞いた二人は首を振ってそのまま一生懸命食べる。人の姿で食べられるようになりたいらしい。

 あぁ、健気で可愛いな。

「おじさん、昨日買った宝くじの抽選日っていつなの?」

 ほっこりしていると、亜理紗が俺に尋ねる。

「HAPI7か? 確か今日だったな」
「ねぇねぇ、早速見てみようよ」
「どうせ当たってないから急がなくてもいいだろうに」
「そんなことは見てみないと分からないでしょ」
「まぁそうだけど」

 俺はワクワクした様子の亜理紗に急かされて、宝くじのサイトを開いてもらい、抽選番号を確認する。

 俺が購入したのは七つの数字を当てるという宝くじで、「08、11、15、22、26 28、30」という数字だ。

「今回の数字は、08、11、15、22、26 28、30だって」

 その結果に俺は絶句する。

「どう? 当たってた?」
「……あぁ、当たってた」

 黙ってしまった俺を促すように声を掛けてきた亜理紗に呆然としたまま返事をする。

「何等?」
「一等だった……」

 しかも俺が当たっていたのはまさかの一等。七つの数字全てが合っている。俺がまさかそんな幸運に見舞われることになるなんて思わなかった。

 念のために何回も確認したが、間違いない。

「それって十億円ってこと?」
「そうだな……」

 現在十億円までキャリーオーバーされているという宣伝が宝くじ売り場にでかでかと掲げられていた。

 つまり、亜理紗の言う通り、俺は十億円に当選したということだ。

「すっごーい!! これでお金持ちだね!!」

 亜理紗は無邪気に喜んでいるが、俺はしばらくその事実を受け入れることができなかった。
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