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おじさんはリアルでも奇跡を起こす

第024話 大人気!!

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「ふぅ……ようやく人気がないところに来たな」

 あれから逃げるように移動し続けること約十分。大分周りに人の気配が少なくなった。俺はマヒルたちを追ってくる気配がないのを確認すると、歩くスピードを落として周りの景色を見ながら進んでいく。

 この辺りは街中にもかかわらず、木が沢山植えられていて自然が多い。

 引っ越してきたばかりだからこの辺りの地理が全然分からない。でも、知らない場所を散策していると、なんだか探検でもしているような気持ちになって少しワクワクするよな。

「あれは……」

 少し進んだところで案内板を見つけた。どうやら俺は大きな公園の近くに来ていたようだ。

「一休みするか」

 俺は誘われるように公園に足を踏み入れる。

「気持ちいいな」

 園内には遊歩道が敷かれ、その道の両脇に木が植えられている。その木々が空を覆って、強い日光を遮ってくれていた。

 近くに池があって、吹き抜ける風が心地いいし、視覚的な涼しさも感じられる。

 しばらくその道を歩いていくと、先には芝生の生えた開けた場所があった。

 そこでは沢山の人たちが各々の楽しみを満喫している。日向ぼっこしたり、犬と遊んだり、木陰で本を読んだり、酒を飲んだり。やっていることは本当に様々だ。

「キュンッ」
「キュ」
「ピッ」
「ん? 遊びたいのか? 近くにいるなら別にいいぞ」

 マヒルたちが俺の顔をつついてアピールしてくるので許可を出す。その途端、三人は俺の肩と頭から飛び降りて追いかけっこを始めた。

「俺はそこのベンチで座っているからなぁ」

 三人に声を掛けて俺は木陰にあったベンチに腰を下ろす。

「可愛いなぁ……」

 俺は三匹が近くでじゃれ合っている様子を眺めて呟く。

 本当に可愛い。とても、非常に、とんでもなく。あんなに可愛い子達がこの世に居ていいのだろうか。勿論良いに決まっている。

 燦燦と照り付ける太陽の下、鮮やか緑の絨毯の上で戯れるモフモフとプニプニ。最高だ。もはや名作と呼ばれる絵画と言ってもいい。

「あ~!! きちゅねしゃん!!」
「かわい~!!」
「まんまる~」

 マヒルたちを眺めていると、舌ったらずな子供たちがマヒルたちを指さして、はしゃいでいる姿が目に入った。

 その保護者達は何故かマヒルたちを指さして口をパクパクさせているが、どうかしたんだろうか。

 まぁいい。それよりも折角だから子供たちに喜んでほしい。

「すみません」
「あ、は、はい。なんでしょうか」

 俺が話しかけると、不審者と思われているのか、物凄く頬を引く付かせて返事をする保護者。

「はじめまして。あの私、関内巫光と申します。プレイヤーをやっております。初対面ではありますが、よろしければあの子達と遊んであげていただけないでしょうか?」

 出来るだけ怪しまれないようにギルドカードを見せながら、チラリとマヒルたちを見て提案した。

「い、いいんですか?」
「はい。あの子たちは優しい子たちなので、嫌がることをしたり、痛いことをしなければ、襲い掛ったりしませんのでご安心いただければ」

 まだ心配そうなので、安全性に問題ないことをアピールして安心させる。

「そ、ぞれじゃあ、お願いしてもいいですか?」
「はい。勿論です。皆、こっちに来てくれ」

 安心したらしい保護者に返事をした後、マヒルたちを呼び寄せる。すぐに駆け寄ってきて、マヒルたちは俺の前に並んで大人しく座った。

「お前たち、あの子達と遊んであげてくれないか。勿論攻撃とかしちゃだめだぞ?」
「キュンッ!!」
「キュ」
「ピピピッ」

 俺がマヒルたちにお願いしてみると、彼らは快く頷いた。俺はマヒルたちを連れて子供たちに近づいていく。

 子供たちは知らない大人が迫ってくるを見て少し怯えた様子を見せる。

「きみたち、この子たちと遊んであげてくれないか?」
「わぁ~、きちゅねさん、きちゃ~」
「しっぽがいっぱい~」
「ぷにぷに~」

 しかし、マヒルたちを前面に立たせるとすっかりその警戒心は消えていた。

「痛くしたり、嫌がるようなことをしなければ、触ってもいいからね」
「わぁーい。モフモフ~」
「ふわふわ~」
「ひやっこーい」

 俺の言葉を聞いた子供たちはすぐにマヒルたちに抱きついて可愛がる。

「あはは、くしゅぐったーい!!」
「きゃっきゃっ」
「変な形~」

 マヒルたちも負けじと、顔を舐めたり、体を変形させたりして子供たちの興味を引いていた。

 モフモフと幼子が戯れる光景。

 尊さがさらに増した。

「あ~、きちゅねさん、いいなぁ」
「あいもあしょぶ~」

 目を奪われていたら、どこからともなく他の子供たちがやってきてさらに賑やかになってくる。

「あ、あの、ウチの子もご一緒してもいいでしょうか?」
「ウチも」

 事後承諾と言う感じだが、子供たちの保護者たちが申し訳なさそうに俺に話しかけてきた。

「はい、構いませんよ」

 マヒルたちも楽しそうなので、俺は頬を緩ませて頷いた。
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