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三章 〜王都とクエストギルド~

53話 『新たな発見』

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 僕がなんの前置きもなく急に魔法を使ったもんだからみんな驚いている。おっさんのそれはちょっと大袈裟だな……。こんなとこに敵襲って……。
 そんなことは放っておいて、僕は続けた。

「リッタ、今度は何も言わないでそれに杖をあててみて!」
「え?」
「いいからやってみて!」

 何がなんだか分かっていないようだったが、僕の押しが強かったからか、リッタは何も聞かずに杖を動かした。
 そしてその杖が『フレイル』に触れた瞬間、その炎が杖に燃え移り始めた。

「うわぁ! 杖が燃えてるよ!」
「うぉい! 水だ水! だれか水もってこい!」
「水よ起これ!『アクアル』!」

 僕の魔法によって水の球が発生し、杖に燃え移った炎を『フレイル』ごと消火する。魔力を抑えめに発動したから今度はそこそこなサイズだったが、消化能力は抜群だ。
 ちなみにこれは水属性初級魔法に属する。
 『アクアル』の消えた場所には、おっさんの自信作が残骸となって転がっていた。

「俺の……俺の杖がぁ……」

 おっさんはこの通りだけど、もうこの際放っておこう。

「もう、心葉! 私も燃えちゃうとこだったよ!」
「そうだよ! そこなんだよ!」
「まだ何かあるのですか?」

 僕の一連の言動が全く理解できないまま話しが進んでいき、危うく自分が燃えそうになったのだ。怒るのは当然かな。悪かったと思うけど、今は僕の話しに付き合ってほしい。

「今、リッタは杖で『フレイル』に触れる事が出来たんだよ! おかしいと思わない?」
「たしかに……『パニッシュ』が発動してない……のかな?」
「でもコノハがやった時には触れたらすぐに弾けていました!」
「そうだな、どこかおかしいような気がするぞ」

 意外と早く立ち直ったおっさんを含め、3人とも僕が抱いた疑問のところにようやくたどり着いたみたいだ。
 この疑問を解消するためにはもう一つ実験する必要がある。

「じゃあ次は『パニッシュ』がちゃんとかかっていることを確かめよう!」
「どうするんだ?」
「簡単な事ですよ! こうするんです。『フレイル』!」

 再び僕らの前に小さな炎が現れた。本日何回目の登場だろう。

「リッタ、今度は『パニッシュ』って唱えてからそれに触れてみて!」
「うん! 『パニッシュ』!」

 思っていた通り、少し杖が光だした。リッタはその光った杖を火の球の方へ動かしていく。だんだん近づいていって、杖の先端が火の球に触れる。
 その瞬間だった! 火の球に亀裂ができ、光と共に一瞬で弾け飛ぶ。
 さっき僕がやった時と全く同じ光景が目の前で繰り広げられたのだ。

「今度は……出来たよ!」
「やっぱりこうなった!」

 ほんとに思った通りだ。これで証明された。
 僕がやった時も詠唱はしていたけど、僕がなにをしたところであてにならないからな。僕の魔力だし。ほかの人で試した結果がこれなんだ。間違いないだろう。

 この世界では付与された固有魔力は詠呪によって発動される。

 新しい事を発見したんだ。なかなかの成果かな。
 それじゃ、さっさと二人の武器にも付与をして、午後の時間を有意義に使おう!
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