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一章 〜異世界と旅立ち〜

1話 『一通の手紙』

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 今日もまたいつもと同じ部活を終えて、愛するアニメの待つ我が家に帰る。普通はこういう時って愛する家族とか何とか言うのだろうけど、僕の場合のそれはアニメだ。

 実を言うと僕はオカルト系統や異世界と言ったものは信じていない。あんなものある訳ない。頭では理解している。ないものだと思うが、あっては欲しいとも思う。
 いや、違うな。心からそれを望んでいる。
 異世界に行くこと、それが僕の夢だからだ。
 信じていないのにその夢を見るなんて、なんだか不思議な話だ。

 もしも行けたのなら、僕は何をするのかな?
 きっと、魔法を使って、剣を振って、毎日に楽しさを感じるんだろう。
 そしていつかまた、他の世界を夢見るんだ。
 だって、この世界から他の世界に行けたのだからと言って。
 そうやって夢を追い続ける先で誰かと出会って、幸せな日々を送っていく。
 そう考えるだけなら……妄想するだけなら……。
 まぁ異世界に行ける希望自体が薄いからな。
 薄すぎて希望を見失うまである。

 いつかそんな日が来ないかと、来たらどうしようかな、と妄想しながら帰るのが僕の日課になった。1日の中で2番目に楽しい時間だ。
 その時間もそろそろ終わる。

 ああ、やっと家に着いた。今日は少し帰るのが遅くなってしまった。部活が長引いたからな。
 僕は某運動に所属している。ただただ走ったり筋トレをするだけ。
 正直なところ続ける理由がないけど、強制的に1つ入らされる。厄介な事極まりない。
 しょうがないから続けはするけどね。

 もう辺りは暗くなっている。そんな暗い中で、優しく明かりの灯る我が家に帰還だ。

「ただいまー」
「おかえり、心葉。今日はなんだか遅かったわねぇ。ご飯、置いといたからね。
 それと、あんたに手紙がきてたわよ」
「 手紙?  誰から?」
「そんなの知らないわよ。あんたの方がわかるんじゃないの? ご飯食べてからにしてよ。片付けちゃいたいから」
「うん、そんじゃあそうするよ」

 今どき手紙を書いて送ってくるなんてどんなやつだろう? 携帯ってもんがあるだろうに。
 あ、だめだわ。僕の携帯には友達なんて2.3人しか入っていなかったっけ……。
 それにしても手紙ってな……。
 ハッ、もしかしてラブレター ⁉︎   いやぁまさかね。
 だいたい僕は人とあまり関わってないし目立たないように過ごしてるからな。関わっているのもごく少数、アニメオタクと言われてるような人たちだけだ。僕もそうなのかな……。ま、僕が誰かに好かれるなんて万が一にもないだろう。
 くだらない事考えてないでさっさとご飯食べよ。

 おっ、今日の晩御飯はハンバーグか。大好物だ。
 子供ってだいたいこういう料理が好きだよね。
 ハンバーグとかカレーとか。カレーなんて辛いのに。でも僕も好きなんだよな。なんでだろ?
 

 ふぅー、ご飯も食べたしお風呂も済ませた。
 歯も磨いたし、もうすることもないだろ。
 見てないアニメを消化したいけど、件の手紙があるしな。今日はおあずけか。
 そんじゃ、さっそくその手紙というのを読んでみるかな。
 僕は机の上に置いてある手紙を手に取りベッドに寝転ぶ。

 ……うーん……白い封筒、名前はない。
 周りを全部見ても何も書いてない。なんなんだろう?
 お母さんはよくこれで僕宛の手紙だって思ったな……。まさか中を見られたか? そんなことないよね、多分……。
 なんかの呪いの手紙とかじゃないといいけど。
 信じてないのに気にしてしまうところがまだ子供というか小心というか……とりあえずあけてみるか。


『とびらを開けろ』


 そこにはたった7文字しか書かれていなかった。
 こんだけか? いやいくらなんでもそれは酷いな。せめて何言ってんのかわかるように書いてよ……。それにとびら?  なんのことだ?
 なんも理解できないぞ……。あと何で平仮名?
 
 困ったもんだ。きっといたずらなんだろうな。
 まったくだれが送ってきたんだか。学校の奴らかな? 明日注意深く探してみよ。見つけたらとっちめてやるか!
 ……とっちめるなんて久しぶりに使ったな。
 だいたい僕はそういうのはあまり好きじゃないんだ。安全が一番。でもやられたまま黙ってるつもりはないかな。
 昔からよく言われてたっけ。 

『やられて黙ってるなんて男じゃないぞ!心葉、人には優しく、時に厳しくだ。そうして自分の道を貫いていけ! でも決して人の道からは外れるな‼︎ 』

 今思うとけっこうすごい事を言ってると思う。
 ……まぁ、探す程度にしておくか。

 ふわぁあ、さすがに眠くなって来た。
 もう11時か、そろそろ寝よう。
 今日はほんとにアニメとかは止しておこうかな。明日に響くしね。

 ……明日か。どんな1日になるのやら……。
 つまらない日になるのは確実かな。
 そうやっていろいろなことを考えて、僕はそのまま眠りについてしまった。
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