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(そ、そうなのですか……。確かに、その影響でしょうか、目つきと声質が変わってますよね)
(でしょ? とにかく、今のアイツは男として接してください。記憶は持ち越してるから、その辺は安心していいからね)
(は、はい)
二木遥(男バージョン)の、取り扱い説明が終了。元の位置に戻る。
「二人とも、何話してたんだよ。オレに言えないような内緒話か?」
「そんなんじゃないけど、色々。そんなことより、ここでなにやってるんだ?」
さっきの内容を教えるわけにもいかず、話題をチェンジ。遥が主役の話にした。
「ああ、今から悠人っちとクレープ食べに行くんだよ。ほら、最近オープンしたって店があるだろ」
「それ知ってますー! 美味しいと評判のお店ですよねー」
なぜ、地元民の俺が知らないことを昨日来たばかりの人が知っているんだ。どんだけ詳細まで調べてるんだよ。
「ふーん、悠人とクレープねぇ。それなら俺も誘ってくれたらよかったのになぁ」
俺たちはいつも三人一緒だから、こういうのはちょっと寂しかったりする。ううん、ごめん嘘。すっごく悲しくて寂しい。
「ぁん? 順平も誘ったぜ? メッセージに反応がなかったから、メールも送ってあるぞ」
「メッセージ? メールも? どっちも来てないぞ?」
両親からの連絡は大抵スマホに来るから、常に電源を入れてあるんだけどな。俺は首を捻り、中古スマホを見て――あ、電源が切れてる。
「あー悪い悪い。こっちが確認できてないだけだったよ」
何かの拍子に消えちゃったんだろう。苦笑して電源ボタンを長押して…………およ、起動しない。
もう一度、しっかり押して………………みても、結果は同じ。
うん、壊れちゃいましたね。
買い換えた時期を考えると、そろそろだと思ってたんだ。サヤが反応してないから、レベル2か1の不幸だね♪
「? げんなりしてどうした?」
「いや。なんでもないよ」
このせいで、また出費が嵩む。財政を考えると、新調できるのは数ヶ月先だなぁ……。
「それならいいけどよ。連絡に気付いてなかったんなら、二人も一緒に来るか? 悠人っちも喜ぶはずだぜ?」
「う~ん。サヤはどうしたい?」
今日の主役は、この人。俺の一存では決められないのだ。
「そのお店は、候補の中に入っていましたからねー。是非、ご一緒したいですっ」
「順平。だ、そうだ」
「オッケー。じゃあ行くとしましょう」
ということで、ようやく最初の目的地が決定。俺達は、悠人に連絡しながら鼻歌交じりで歩く遥の後を付いていく。
「ふふふーん♪ ふふふーん♪」
(ぁ、そうそう。大切なこと忘れてたけど、レベル3の不幸は大丈夫だろうね?)
サヤだけに聞こえるように、小声で話しかける。
(はいです。変わりゆく不幸の内容にも、即座に対応しますですよっ)
(即座にって……手ぶらじゃないか。あの不思議な機械を手に持ってた方がいいと思うけど?)
「そこは、心配ご無用です。今は『モールスモード改』にしてますからね」
(もーるす?)
まーた新しい単語が出てきたよ。
(順平さんは、モールス信号をご存じですか?)
「ああうん。『つー』って音の長短で会話する、昔の通信とかで使ってたやつだよね?」
(そうです。順平さん、知識が古いですねー。実は年齢詐称してませんか?)
(いいから続けて)
年齢を偽って俺に何の得があるんだよ。
(『モールスモード改』はその振動版でして。変更があるたびにポケットの中でブーンと震えます。それを私が読み取り、即座にお伝え)
(なにそれすごい。なにげに凄い技能もってるんだね……)
(モールス検定一級ですからね! 合格率は過去、たったの二人だけですよ!)
(へぇ。驚きだ)
(えへへ。お褒めにあずかり光栄です)
いやいや、違うんだよサヤさん。俺が驚いたのはね、「率」って言ったのに人数を出したところだよ。
(しかし、驚いたと言えば私もそうですよー。まさか遥さんにそんな秘密があったとは)
(そのうち慣れるよ。素朴な疑問なんだけども…………あれは、不幸、幸せ、どっちの影響?)
(それが、わからないのですよ~。今までそんな例はありませんし、そもそも不幸や幸せは同じものが長時間続くわけではないので、数年間も同じ人格が現れ、しかも日によって替わるというのは摩訶不思議です)
(ぅーん。だよねぇ)
(もしかすると……。私たちですら知らないような、いわば第三の力のようなものが働いているのかもしれません)
だとすると、不幸、幸せ、サンタ力、か。
人の生と死に関わる力と肩を並べるんだから、必然的にサンタさんは神様と同等の力を持っていることになる。さしずめトナカイは使い魔か。
「二人とも、悠人っちはもう着いてるらしいから、ちょいと歩くペース上げるぜー」
「はいよ」「はいです」
俺達は同時に返事をして、早めにスタスタトコトコ。歩幅を広げて進んでいると――んん? 不意に、サヤが含み笑いをした。
「なに? 何か面白いもんでもあった?」
「あ、いえ。小神さんが女性の格好してたらコントだなー、って思いましたね」
「あーそっか。あはははははは」
「そーなんですよー。想像しちゃいましたけど、ありえないですよね」
「あはははははは。あはははははははは」
「……順平さん、否定しないんですねー」
そんなこんなで待ち合わせ場所の、駅前の噴水に到着。今日も白月町のシンボル・白い月から勢いよく水が噴出している。
「悪い。待たせたなっ」
遥が詫びを入れているのは、もちろん小神悠人。俺の親友だ。
そんな彼の出で立ちは、ゴスロリ服。どっからどう見ても女の子にしか見えません。
サヤ、見事予想が的中。やったね♪
(でしょ? とにかく、今のアイツは男として接してください。記憶は持ち越してるから、その辺は安心していいからね)
(は、はい)
二木遥(男バージョン)の、取り扱い説明が終了。元の位置に戻る。
「二人とも、何話してたんだよ。オレに言えないような内緒話か?」
「そんなんじゃないけど、色々。そんなことより、ここでなにやってるんだ?」
さっきの内容を教えるわけにもいかず、話題をチェンジ。遥が主役の話にした。
「ああ、今から悠人っちとクレープ食べに行くんだよ。ほら、最近オープンしたって店があるだろ」
「それ知ってますー! 美味しいと評判のお店ですよねー」
なぜ、地元民の俺が知らないことを昨日来たばかりの人が知っているんだ。どんだけ詳細まで調べてるんだよ。
「ふーん、悠人とクレープねぇ。それなら俺も誘ってくれたらよかったのになぁ」
俺たちはいつも三人一緒だから、こういうのはちょっと寂しかったりする。ううん、ごめん嘘。すっごく悲しくて寂しい。
「ぁん? 順平も誘ったぜ? メッセージに反応がなかったから、メールも送ってあるぞ」
「メッセージ? メールも? どっちも来てないぞ?」
両親からの連絡は大抵スマホに来るから、常に電源を入れてあるんだけどな。俺は首を捻り、中古スマホを見て――あ、電源が切れてる。
「あー悪い悪い。こっちが確認できてないだけだったよ」
何かの拍子に消えちゃったんだろう。苦笑して電源ボタンを長押して…………およ、起動しない。
もう一度、しっかり押して………………みても、結果は同じ。
うん、壊れちゃいましたね。
買い換えた時期を考えると、そろそろだと思ってたんだ。サヤが反応してないから、レベル2か1の不幸だね♪
「? げんなりしてどうした?」
「いや。なんでもないよ」
このせいで、また出費が嵩む。財政を考えると、新調できるのは数ヶ月先だなぁ……。
「それならいいけどよ。連絡に気付いてなかったんなら、二人も一緒に来るか? 悠人っちも喜ぶはずだぜ?」
「う~ん。サヤはどうしたい?」
今日の主役は、この人。俺の一存では決められないのだ。
「そのお店は、候補の中に入っていましたからねー。是非、ご一緒したいですっ」
「順平。だ、そうだ」
「オッケー。じゃあ行くとしましょう」
ということで、ようやく最初の目的地が決定。俺達は、悠人に連絡しながら鼻歌交じりで歩く遥の後を付いていく。
「ふふふーん♪ ふふふーん♪」
(ぁ、そうそう。大切なこと忘れてたけど、レベル3の不幸は大丈夫だろうね?)
サヤだけに聞こえるように、小声で話しかける。
(はいです。変わりゆく不幸の内容にも、即座に対応しますですよっ)
(即座にって……手ぶらじゃないか。あの不思議な機械を手に持ってた方がいいと思うけど?)
「そこは、心配ご無用です。今は『モールスモード改』にしてますからね」
(もーるす?)
まーた新しい単語が出てきたよ。
(順平さんは、モールス信号をご存じですか?)
「ああうん。『つー』って音の長短で会話する、昔の通信とかで使ってたやつだよね?」
(そうです。順平さん、知識が古いですねー。実は年齢詐称してませんか?)
(いいから続けて)
年齢を偽って俺に何の得があるんだよ。
(『モールスモード改』はその振動版でして。変更があるたびにポケットの中でブーンと震えます。それを私が読み取り、即座にお伝え)
(なにそれすごい。なにげに凄い技能もってるんだね……)
(モールス検定一級ですからね! 合格率は過去、たったの二人だけですよ!)
(へぇ。驚きだ)
(えへへ。お褒めにあずかり光栄です)
いやいや、違うんだよサヤさん。俺が驚いたのはね、「率」って言ったのに人数を出したところだよ。
(しかし、驚いたと言えば私もそうですよー。まさか遥さんにそんな秘密があったとは)
(そのうち慣れるよ。素朴な疑問なんだけども…………あれは、不幸、幸せ、どっちの影響?)
(それが、わからないのですよ~。今までそんな例はありませんし、そもそも不幸や幸せは同じものが長時間続くわけではないので、数年間も同じ人格が現れ、しかも日によって替わるというのは摩訶不思議です)
(ぅーん。だよねぇ)
(もしかすると……。私たちですら知らないような、いわば第三の力のようなものが働いているのかもしれません)
だとすると、不幸、幸せ、サンタ力、か。
人の生と死に関わる力と肩を並べるんだから、必然的にサンタさんは神様と同等の力を持っていることになる。さしずめトナカイは使い魔か。
「二人とも、悠人っちはもう着いてるらしいから、ちょいと歩くペース上げるぜー」
「はいよ」「はいです」
俺達は同時に返事をして、早めにスタスタトコトコ。歩幅を広げて進んでいると――んん? 不意に、サヤが含み笑いをした。
「なに? 何か面白いもんでもあった?」
「あ、いえ。小神さんが女性の格好してたらコントだなー、って思いましたね」
「あーそっか。あはははははは」
「そーなんですよー。想像しちゃいましたけど、ありえないですよね」
「あはははははは。あはははははははは」
「……順平さん、否定しないんですねー」
そんなこんなで待ち合わせ場所の、駅前の噴水に到着。今日も白月町のシンボル・白い月から勢いよく水が噴出している。
「悪い。待たせたなっ」
遥が詫びを入れているのは、もちろん小神悠人。俺の親友だ。
そんな彼の出で立ちは、ゴスロリ服。どっからどう見ても女の子にしか見えません。
サヤ、見事予想が的中。やったね♪
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