高坂くんは不幸だらけ

甘露煮ざらめ

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第三話(1)

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「おお~。ここが、私が待ち焦がれていた理想郷ですか~」
「いちいち大げさだなぁ」

 一夜明けた休日の午後一時半過ぎ。俺たちは、ホームタウンである白月町の市街地に来ていた。
 行動が午後になったのは、フローリングの応急処置をしていたから。朝一で近所のホームセンターへ行ったり、店員さんに相談したりと随分時間を喰ってしまったのだ。

「むむむ。世間は平日とはいえ、人影がまばらですね」
「持ち上げとといて落とすの止めてやれよ」

 三ヶ月前隣町に大型ショッピングモールが出来た影響で、依然と比べると活気がなくなってしまった。しかし最近は対抗策として、若者に人気のブランド店やお洒落な雑貨屋なんかを積極的に呼び込んで、少しは客を取り戻しつつあるのだ。
 ここから見る限りでも、一か月前と比べると新店舗が二、三増えている。

「もー、冗談ですよー。事前に調べたところめぼしいお店が沢山見つかりましたので、今からワクワクです」
「調べたって。どうやって調べたの?」
「このスマートホンの機能の中に、ここ周辺の地図やらオススメのショップ情報やらが入ってるんですよー」

 ポケットから黒のスマホを取り出し、自慢げに披露してくれた。
 異世界の、しかも店の情報まであるとは、なんつー高性能。というか、原則として人間と接触禁止だってのにどうしてそんなモノが用意されている。
 そういえば……深く考えなかったけど今朝、補強用のテープを買った時コイツは「私のミスですのでお代は私もちで」と、お金を払ってた。つまりは円を持っているということで、案外シガミも下界に興味津々じゃないのだろうか?
 まあ、今更どうでもいいけどね。

「それで、サヤ。行きたい店は決まったの?」
「まだです~。なので、今から本日のルートを決めたいと思いますっ」

 サヤはタップとスワイプを繰り返し、指を忙しなく動かして検索をしている。初めての下界での買い物とあって、随分と楽しそうだ。

「ふむぅ………………」

 そうして、五分経過。
 どうも決めあぐねているらしい。まっ、これも醍醐味の一つだからゆっくりすればいいよね。
 十分、経過。
 ま、まあ。醍醐味なんだし、もうちょっと――

「よっし! 最後の限定アイテムゲット!!」
「アンタは何やってたんだよ!」

 街中で、大声でツッコんでしまった。道端でつっ立ってた貴重な十分を返しやがれ。

「す、すみません。このRPGはその土地に行って通信をすることでレアアイテムが入手できるのですが、地球だけ揃ってなかったのです。長年コンプリート不可と思ったので、つい……」
「そりゃ、収集できなくて当然だろうね」

 なぜ降り立ってはいけない土地を組み込むのか。製作者の意図が見えない。

「もういい。あと五分だけ待つからすぐに決めなさい」
「イエッサー!」

 ビシッと敬礼を決め、今度こそ検索をスタート。真面目に頭を悩ませ始めたのだった。


 
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