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「おいアルク。どこに『ラッキーラビット』がいるんだよ」
「モンスターどころか、人すらいねーじゃねーか。どういうことだよ、おい」

 ティル達がJ地点で狩りを始めて、暫くした頃。その奥にある人気(ひとけ)がないエリアで、3人の男達が仲間の少年を睨みつけた。
 ラッキーラビットとは、合流階層で極々稀に――数年に一度の間隔で出現する、捕まえると特別なアイテムが手に入るレアモンスター。3人はミッションを達成したあと少年の目撃情報を信じて来ており、無駄足を取られたと苛立っていたのである。

「完全に、見間違いだよな? そうなんだよなぁ?」
「…………いえ。違いますよ」
「は? はあっ? これのどこがだよ」
「360度見回しても、なにもいやしない。見間違いだろ」
「いいえ、見間違いではありませんよ。僕は僕の目的を果たす為に、皆さんをここに誘い込んだんですよ」

 物静かな印象を受ける、18歳の細身の少年――アルク・クラトはゆっくりと首を左右に振り、彼は正面にいた男性――リーダーであるケン・ヤズスの肩に触れる。

「ヤズスさん。僕のスキルは、『レンタル』。触れた人のスキルの10%を1時間借りられる、というもの。このせいで僕は誰かの協力が必要な冒険者であり、足元を見られて酷い・・扱いを受けていましたよね?」

 報酬は固定で、1日6000G。大事な場面では戦力ではなく雑量係として扱われ、基本的には3人の世話係のような状態となっていた。

 この待遇はスキル内容を鑑みると理不尽なものではなく、実際こんな条件で雇ってくれるパーティーは他にない。3人はガサツで口が悪いものの、ケネス達とは違い常識を持っている人間だった。

 けれど――アルクは、幼い頃からプライドが高い人間だった。

『どうしてこの僕が……。こんな雑魚スキルを持たないといけないんだ……っ』

 最初はスキルへの恨み節から始まり、

『僕のスキルは、使い方によっては活躍できるのに……っ。どいつもこいつも、それが分からない……。分からないから、軽視される……っ』

 やがて敵意は『理解しない周り』へと向けられるようになり、

『いや、まだだ。諦めるのは早い。スキルは、成長するものだ……。その時が来たら……っ。軽んじてきたヤツらを全員、絶対に……っっっ』

 成長しても意味はなかった。その現実に直面した時、ソレは自身を邪険にした・・・・・・・・世の中全てを対象とした理不尽な復讐心へと変貌を遂げる。
 今のアルクは、恨みを晴らす為に生き続けるだけの存在。思考回路はすっかりねじ曲がっていた。

「ですが、それも今日で終わり。この瞬間からは復讐の幕開けで、貴方達には最初の犠牲者になってもらいますよ」
「……はあ? お前、酒でも飲んで酔ってるのか? 何をどうしたら、お前が俺たちを――」
「それは、身を以て味わってもらいましょう。『レンタル』」

 肩に触れていたアルクは、口角を吊り上げスキルを発動させる。
 その瞬間、だった。ケンは身体の中心から『何か』が抜き取られる感覚に襲われ、彼は自身のスキルを失ってしまった。




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