異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝

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オグレスからの贈り物

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 八百万 
 
 七色豚、七色シリーズの中では一番発見が容易く、また猪の様に群れで動くために一匹見つけると、怒涛の大量高級食材ゲットのチャンスで、豚にしては大きくとれる肉も多い。 
 
 それでいて戦闘能力や魔法の複数回同時使用なども可能なので、群れを相手にする場合は、爆撃の様なファイヤーボールやアイスニードルなど複数の魔法が雨あられの様に襲い掛かってくる為、高位冒険者でないと群れを丸ごと相手する事は難しく。 
 
 また並みの刀剣では歯が立たない為、武器にも注意が必要である。 
 
 その肉は永く煮込めば、もちもちのぷるぷるで、味も複雑怪奇に口の中で様々な肉の旨味を放ち、舌の上でとろける際はまるでオーケストラを聞いているかの様な重厚感ある味に体が震えだすものも多く、ガツガツ貪る様に食べたい!でもこの味を口の中で時間をかけて味わいたい!といった味の構想曲に人を導く。 
 
 それ故に、下手な味つけは、音楽の音のバランスを崩すが如く目立ってしまって、なんだこの味付け?と頭の中が混乱して、その混乱によっては車や船酔いの様な三半規管の揺れを感じ吐き出してしまう程、繊細で緻密な味の付け方や、いっそ大胆で大雑把な味付けの方があったりと中々に難しく。 
 
 斗真の様にトウロンポウやクリスピーポークとして複雑にスパイスを使い、尚且つ七色豚の味を損なわずに完璧に調理した人間は少ない。 
 
 それ故に複雑に味付けを加えた七色豚は、料理として格段に高級感を出し、素材だった時のレアリティよりも完璧に調理された料理は高価な値段の料理になる。 
 
 その料理された時に価格が跳ね上がる性質から、七色豚の味を何段にも高みにあげるために一攫千金狙いで研究する商会、料理人は多いが、これが中々に難しく、高価でもあるが故に安易に研究に消費する事も躊躇われるジレンマに悩まされる事も多い。 
 
 資金に潤沢な研究家や料理人でも、七色豚を無駄に消費すると、あいつはこれだけの数の素材を無駄にしてまだ何も成せていないなど言われる事もあるので、メンツの部分も関わってくるため、無駄に大量消費して研究する事も出来ず、非常に扱いが難しいのが正直な所である。 
 
 ハイオーガのオグレス 
 
 オグレスが大量に見つけたのは七色豚、それも超超貴重な子ブタの七色豚から超大型の七色豚などである。 
 
 七色豚を見つけたオグレスは、これを売りに出そうなんて思わず、まっさきに考えたのは八百万にもっていって料理してもらって、街のみんなにも食べてもらおうと考えた。 
 
 七色豚の抵抗にあいダメージを受けつつも、オグレスの脳内では、みんなが喜んでくれてきっとオグレスはみんなに褒められるだろうなと言った考えでいっぱいで、多少のダメージなんてなんのその、軽いケガ程度ではもうわくわくしているオグレスを止められる魔物はいなく。 
 
 あっという間に七色豚の巨大な群れを制圧すると、せっせとアイテムボックスに詰め込み、にこにこ顔でダンジョンから帰還して八百万に訪れた。 
 
 「みて!斗真兄ちゃん!七色豚!オグレスいっぱい捕まえた!これでみんなにお肉の料理つくって!ねねお姉ちゃんとリリお姉ちゃんにもおみやげ!!七色豚美味しいよ!」 
 
 八百万解体場、龍種が複数匹でも並べられる広さの敷地に、七色豚の山が築かれる。 
 
 「すっご~い!これ全部オグレスが捕まえたの!?」 
 
 「そそそ、そう!僕!頑張った!みんなの笑う顔!見たい!」 
 
 「わぁ~でもいいの?お金にかえたら当分楽して生活できる量だよ?」 
 
 「お金、お腹いっぱいにならない、あれば困らない知ってる。でもダンジョン行けばいつでもお金手に入る!七色豚!みみみ、みんな好き!街の人みんな好き!オグレス、みんなの笑顔が好き!七色豚!みんなで食べたい!」 
 
 「じゃあ七色豚は格安でみんなに売るとして、その売り上げはオグレスに渡す形にすればいいんじゃないかな?うちは内臓なんかもらえれば作業代としても嬉しいし、どう?」 
 
 「斗真兄ちゃんにまかせる!内臓、八百万でしかお金にならない、それでもいいの???」 
 
 「七色豚の内臓は滅茶苦茶美味しいよ、夜に食べにくればいい。オグレスがとってきた七色豚の内臓なんだからタダでおなか一杯食べていいからね」 
 
 「わぁ!!!夜も楽しみ!!七色豚の内臓!!ありがとう!兄ちゃん!」 
 
 七色豚の超びっくり肉!作ろう! 
 
 問題はプルドボークにするか?クリスピーポークにするかだ。 
 
 プルドポークのあのほぐれる肉も美味いけど、叡智の箱でスパイスミックスしたクリスピーポークなんて、パリパリのサクサクで絶対理性が飛ぶんだよなぁ!!やっぱりクリスピーポークっしょ! 
 
 大量に仕上げる為の、マジックオーブン!火入れも楽々でミスしようとしても出来ない、超料理器具の一つ。 
 
 パリパリの皮がパイ生地の様に唇で儚く割れ、その下に広がるのはトウロンポウの様に煮込んだのか!?と思われる程のむっちりした脂、その下の層は今度はむっちりからとろとろのじゅくじゅくになり甘く柔らかく舌の上で消える、そして肉の部分に歯がはいり、しっとりくにくにした柔らかい肉の層を断裂していく快感!!!。 
 
 そして下に広がる味は、もうこの味以外は考えられない!思いつかない!といった感想が広がる、スパイスと脂の味の濁流、脳に雷でも落ちて来たかのような味の広がりに、アルコール中毒にでもなったかの様に体が震える。 
 
 今!例え!魔物に!襲われても!俺は!この!肉を!食うのを!辞めない!!!!!それでも邪魔するなら理性もなにもかもを振り切った人類の限界を超えた一撃で敵を確実に絶命させて、またこの料理に齧り付くだろう!。 
 
 もぐもぐごくごくと流れ込む脂の波!その波で胸焼けする所かすっきると喉を潤し!また潤滑に肉を貪る!脂だぞ!腹が満たされると、ちょっとうっって思ったり、人によっては脂身なんて気持ち悪~いなんて言う人もいるだろう、太っちゃう~なんて、てやんでぃ!ちくしょう!しゃらくせぇ!!!! 
 
 むしろクリスピーポークの肉カスと脂を米にかけて醬油で食いたい!!!!!脂とは美味いものなのだ!気持ち悪くなっちゃう~~・・・・・・・・、なんだこのやろう!!ゲンコツするぞ!!!!!! 
 
 パリパリサクサクの脂身ももっちりぷるりのコラーゲンたっぷりの肉と脂も最高の一品!七色豚のクリスピーポーク!! 
 
 「おいしい!!!あぐぐぐ!こんなのオグレス知らない!食べた事ない!!!!凄い!兄ちゃんは凄い!!!!みんなも!みんなも食べて!凄い!すごいんだよおお!!」 
 
 「はいは~い!いらっしゃい、いらっしゃい!今日は我が町でも有名な優しいオーガ、オグレスが手に入れてきてくれた七色豚のクリスピーポークだよぉ!理性が吹っ飛ぶ、桃源郷の味がする、まさにぶっとびポーク!食べる人は今一度覚悟を決めて食べにきてね~!」 
 
 すでに並んでいる人も、これから並ぶ人も、いつも以上に我先にと八百万の列に並ぶ、店内に入れないので店先の屋根だけついてる広場で七色豚を食べているオグレスを見て、住人たちは、そのうまそうな食いっぷりに唾を飲み込み期待する、それと同時にみんなが七色豚を捕まえて来たオグレスにお礼を言う。 
 
 「うひゃぁ~香りだけでも美味そうなのに!見ろよあのオグレスの食いっぷり!美味そうだなぁ!」 
 
 「ああ!ざくざくの音がここまで聞こえるし、みろよ!あのぷりんぷりんの肉の層!絶対美味いぞあれ!!!」 
 
 「かぁ~だめだ!食わなきゃ死ぬに死ねない!絶対食いたい!」 
 
 「あぁあぁ!あんなにがぶがぶ食いついて!羨ましい!」 
 
 「オグレスが捕まえたんだってよ!大したもんだぜ!ありがとうな!オグレス!」 
 
 「あいつはすっかり街の福の神だぜ!この前もこまってる街の人間の為に頑張ってた!」 
 
 「あの子は純粋でいい子だよ。むしろ俺達もオグレスになんかお礼しなきゃなぁ」 
 
 「それいいな!俺達もオグレスが大切な友人だと伝わる事はいい事だ!何かしてやりてぇな!」 
 
 「くわわぁ!それにしても美味そうに食うし!美味そうな音が店からもオグレスからもしやがる!いつも以上に我慢できねぇ!」 
 
 「店の中も幸せでいっぱいみたいな連中のだらしない顔みろ!早く席あけてくれえええええええ!!!」 
 
 「これ食い逃した奴はまじ悲惨だぞ!ぐぅぅぅぅ腹減った!」 
 
 「あまりの美味さに乱闘おきないといいけどな」 
 
 「いや、わかんねぇぞ!店の連中、無我夢中で肉に齧り付いてやがる!俺らの声なんぞ聞こえてねぇよ!」 
 
 「すげぇな!まさにぶっとぶってやつだな!」 
 
 「そんなにか!そんなに美味いのかよ!早くくいてええええええええええええ!!!」 
 
 街の名物オーガ、オグレスからの贈り物
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