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花蜜牛の牛タンステーキ、試される客

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 -B級冒険者双剣のフィルー 
 
 最近冒険者で有名な、急に変な建物が出来上がった飯屋、八百万、色んな有名冒険者が並んででも食べたい飯を出す店。 
 
 俺は興味なかったんだ、冒険者ならゲン担ぎや行きつけの店なんかあったりするもんだ。 
  
 あえて他の奴らと一緒の店を行きつけにしたり、その店で飯を食ってゲン担ぎにするなんてカッコ悪くないか?俺なら俺の、俺唯一の店がいい最初はそう思ってた。 
 
 でも聞けば、C級のレックスが気が付けば俺を抜いてA級に上がっていた、PTでも美味くいっている様で周囲からの評判もいい、実力はA級と言われていたレオンも今じゃA級トップ今年中にはSにも届くんじゃないかとか言われてる、気まぐれやで熱意がなかったレオン、軽くゆるく適当にがモットーだった男が、今じゃ冒険者からも商人からも近隣住民の中でさえ評判が良くなり、人気者になっている。 
 
 どんな心境の変化だ?聞けば八百万って飯屋で衝撃を受けたとか、大物マスター達のたまり場、魔窟とまで言われている店だと聞いたが、他の奴等に聞いても概ね評判がいい、他にもランクEで満足してる、その日暮らしの冒険者達もDやCに上がっていたりと不思議な事が起こっている。 
 
 俺は別にそんなジンクスなんか気にしないが、評判だからちょっと覗いてやろうって気持ちで飯屋の列にならんでいる、そろそろ開店時間かと思っていると、肉屋のフィガロと冒険者マスターのニーアが出て来た、ごきげんで先頭に並んでいる奴と話して帰っていった。 
 
 冒険者ギルドを辞めたのに、カリスマ的存在感は健在の様で流石、複数の国からもSSSランクを授けられた歴戦の猛者だと思う。 
 
 そんな理性ある災害とまで言われる人物達が集まる店、多くの冒険者の在り方を変えた店に俺はこれから入るんだ、そう思うと口ではなんでもない飯屋だと思いつつ心臓の鼓動が早くなる。 
 
 可愛らしい獣人の子供が二人、店内に案内してくれると、店はあっと言う間に全席埋まる。 
 
 メニューは決まってるみたいで、次々料理が運ばれてくる。 
 
 「は~い!今日は花蜜牛の牛タンステーキだよ!お米のお替りは無料でもお肉は有料だからね!」 
 
 花蜜牛だって!?ダンジョンも中階層でとれる上等な牛型魔物じゃねぇか!?それの?どこだって? 
 
 「なぁお嬢ちゃん?牛タンって・・・・その牛の何処の事いってるんだ?」 
 
 「牛タンってのは牛の舌の事だよ!ほらこの舌の事!」 
 
 小さな舌を出して、指をさす、つまりは牛の舌を食えって訳だ。 
 
 俺はどうしていいかわからず、手が止まってしまった、俺以外にも嬢ちゃんが舌と言った瞬間に動きを止めた奴は何人かいた、それでも舌と聞いても、へ~って程度で食い始めてる冒険者はきっと常連連中なんだろう、こんなの慣れっこだみたいな感じで、談笑しながらも「美味い!?」と大声で聞こえてくる。 
 
 おいおいおい冗談だろ、花蜜牛とはいえ舌が美味いってマジなのか!?ここの常連はこういったもんに抵抗はないのか?そういえば、夜は内臓の煮込みや焼きが出るっていってたのもマジな話なのか?平気な奴等はそれらを乗り越えたからなのか?。 
 
 ここで舌なんか食えるか!?と言って出ていくのは簡単だ、だけど周りの奴らは食い始める、そして声を上げる!「美味い」と本気か!?お前ら!?舌なんだぞ!いないのか?誰も出ていく奴はいないのか!?。 
 
 美味い美味いと言われる中で俺だけが尻尾巻いて逃げる訳にはいかねぇ!厚めに切られた肉を一切れ掬い、思い切ってかぶりつく!? 
 
 ええい!?・・・・・もぐ・・・ん?もぐ!んん?もぐもぐんんんん!?これは!? 
 
 何とも言えない美味さの衝撃!食った事のない特別な脂の感じ!生まれてから長い間飯を食ってきて味わった事のない旨味を舌に感じ、思わず席を立ちあがって声を張り上げる。 
 
 「美味い!!!!!????あっっっ・・・・すんません」 
 
 大きな声が自然と出てしまい、小声で謝って席につくと、他の席からも声があがった。 
 
 「わかるぞ!?最初はびびるよな!」 
 
 「そうだそうだ!舌なんて言われたら、流石にびびっちまうぜ!」 
 
 「でも美味いな!本当に!」 
 
 「ああ!こりゃご馳走だ!酒も飲みてぇ!」 
 
 「馬鹿!この店と言えば、米だろ!?やっぱり肉と米の相性がたまんねぇや!」 
 
 「やっぱりうめぇよな!おらぁお替りするぜ!」 
 
 「常連でもびびる奴はいるんだ!初めてなら尚更だよなぁ」 
 
 「ああ!でもなんだかんだでうめぇから何も言えねぇ!」 
 
 励ましの言葉に、俺の美味いって言葉に賛同したり、色んな声が上がる、俺も座り直してもう一度肉を食う!。 
 
 美味い!まずサクサクの触感!肉なのにサクサクするってのがまず訳が分かんねぇ!それでいて噛みしめると出る甘い脂に、タレが混ざり、口の中を幸せにする。 
 
 ここで米を食った、美味い!固めに炊きあげられた、粒を感じる米が肉と脂、タレの旨味と混ざり合い何とも言えない、そして飲み込む!こうなってくると、食欲旺盛な体はもう止まらない!肉!米肉!米!間に塩漬けで休み!スープで喉を潤して!煮込まれた野菜達もまた美味い!サラダにかかってるタレも生野菜にあう!美味い!?。 
 
 「嬢ちゃん!?肉と米お替りをくれ!?」 
 
 「は~い!お肉は別料金だからね~、銀貨三枚だよ~」 
 
 「問題ねぇ!?ってかそんなに安いのかよ!?」 
 
 これでもB級冒険者!金ならある!飲み食いに大金貨だって使う事があるくらいなのに!?こんなに美味い飯が銀貨5枚!?肉のお替りで三枚!?冗談じゃねぇ!?儲けでてんのかこの店!?駄目だ駄目だ駄目だ!潰れてもらっちゃ困る!これからは俺もこの店に通うんだから!? 
 
 満足して、一息つく・・・・べらぼうに美味かった!?他じゃ比べられない!最初はビビったけど!間違いなく美味かった!。 
 
 ふぅと一息はいた後、水をごくごくと飲む、その水がまたなんともいえないくらい美味い! 
 
 こんな満足感今まで感じた事なかった、どこの飯屋いっても高い店にいっても貴族が通うような上級な店にいっても感じるのは、まぁ美味かったな、腹も膨れたしこんなもんかなって感じだ。 
 
 何が違うんだ?わからねぇ、けど今の俺は満たされている!明日も戦いそして生きるのだと!力が漲ってくる!まるで夢か希望でも見つけたような、ガキの頃の憧れを思い出したかのような感覚に、今の俺はどんな事があっても対処できる!謎の無敵感に包まれている!周りの人にそれを祝福されているかの様な不思議な感覚、俺は自然と笑顔になりながら帰りの道を歩いた。
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