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中級冒険者レオン
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中級冒険者レオン
俺は中級の冒険者レオン、冒険者なんて聞こえのいい事言ってるけど、要は個人で成果をあげる何でも屋だ。
子供の頃、両親は農家で自分は農家だけにはなりたくないと思っていた、朝から晩まで畑に心血注いで、丹精込めて作ったものが安値で買い叩かれていく日々を送っていれば、先祖の土地がなんて言って貧乏な生活をしていくなんて馬鹿らしいと思った。
子供の頃からゴブリンと戦って、なんとなく自分は冒険者になるんだろうな、なんて思っていた。
だが冒険者は冒険者で大変な職業だ、魔物に合わせた狩り方をしないといけない、皮をあまり傷つけるなや綺麗に捌けとか、現地で血抜きしろとか、薬草採取だってそうだ、この薬草は葉を使う、こっちの薬草は根を使う、そんなんは当たり前で、それでも近くに手ごろなダンジョンがあるので、数こなしていくとそれなりに金になってはしゃいだ。
大金貨を手にする様になって、生活が華やか?になり始めてやっと自分にはなんの楽しみもない事に気が付いた、日に日に溜まっていく金に執着しなくなり、仕送りもそれなりにやって、いっちょ前に酒なんか飲み始める様になっても、心はどこか空のままだった。
「おい!レオン!今日もつまんなそうな顔してんな!」
「ほっといてくれ」
「そんな事言うなって!例の店一緒にいこうぜ!なんでも夜営業始めたんだってよ!早速マスターが入り浸ってるって話だ!他の奴らが押し掛ける前に食いに行こうぜ!」
なんでもない顔なじみに引っ張られて、ふらふらと最近色々と噂になってる店まできた。
どいつもこいつも飯や酒ぐらいでガタガタ言いやがって、腹に溜まればなんでもいいじゃないか、飢えた事がないから味や質なんかを求める事になるんだ。
「いらっしゃい」
「うぃっす!斗真さん夜始めたって言うから、早速きちゃいました!夜はどんなメニューなんですか?」
「主に串物を出しています。串の盛り合わせなんか色々味わえていいですよ。それとエールもはじめましたんで、よかったらどうぞ」
「じゃあ串盛りとエール二つお願いします!」
「はい!いつもありがとうございます!」
可愛らしい狐人族の子が注文を取ったと思ったら、すぐに串盛りとエールは運ばれてきた。
随分と早いな、手を抜いているんじゃないだろうか?
「じゃあ乾杯すっか!んこれ、ああっこうやって開けんのか。それにしても随分冷えてるエールだな」
俺も同じ様にエールを開けると、とりあえず飲む。
「おお!なんだこれ!」
「くぅううう美味いなこれ!冷ええてるのがまたいい!」
喉を駆け抜ける爽快感!味わいのある苦味!こんなにエールって美味かったか?
「どれ串を一つ・・・おお!こりこりしてやがる!タレの甘味と何とも言えない旨味!なるほど!ここでエールをんぐんぐんぐっったは~!!!うめぇ!!」
一々美味そうに食いやがって、俺も遅れながら串を食う。
見た目じゃなんの肉かわかんねぇ、けどこいつはうめぇ!よく焼けて香ばしいのに甘味あるタレと脂の美味さがかけ合わさり何とも言えない美味さだ!次は?ねっとりこってりとしたうま味のある串!こりこりの食感が気持ちいい串!どいつもこいつも触感がまず違う!それでいてどいつもこいつも独特の風味を放ちやがる!嫌な臭いはねぇ・・・これは丁寧な仕事してんな。
そんでもってまたエールが美味い!組み合わせがいいのかわからねぇけど美味い!。
「なぁ店主さん!これなの肉なんだ!?ってすまねぇ答える訳ねぇよな商売のネタだもんな」
「これは肉屋で廃棄される予定だった、内臓達ですよ」
あっさり答えてくれたのと、普段は食わない内臓と聞いて二重に驚いた。
「これが内臓!?美味い肉ならいくらでも売ってるのに、なんで内臓?」
「だって手間暇かけてやれば、こんなに美味くなるのにもったいないじゃないですか。下処理さえちゃんとやってやれば、物によっては肉より内臓が好きなんて人もいるくらいですよ?」
確かにと思った、事実この人の出す串物は全部うめぇ、手を抜いてこんな味が出るわけもない、確かに手間暇かけた味だ。
「そんな簡単に教えていいんですか?真似する奴でるかも」
「真似する人が出るくらいで丁度いいんですよ。それにね普通に肉出すより手間も暇もかかるから、最初は挫折するでしょうね。それでも店に並ぶって事は自信があるって事です。お客さんに出して満足してもらえる品ってわけですよ」
なんかわからんが、心の空洞が埋まった感じがした。
じんわりと腹や胸が熱くなるのを感じる。
毎日どこか機械的で、ただ金稼いで、食って寝て、を繰り返していた俺の心に熱が入るのを感じる。
そうか、飯屋も客と勝負してんだな、自分の自信あるもんを客に出して美味いって言わせたら勝みたいな、そう考えると商売してるやつらは、みんな客と勝負してんだなと思った。
「それにお客さん、こんなにいい内臓他に中々ないですよ。きっと狩ってきた人が丁寧に扱ったんだろうね。血抜きもしっかりしてある、肉屋の中には肉にまで血が回って駄目な肉売ってる所もあるから、命がけで狩りしてきてくれた人の為にも、美味く料理してやんなきゃ可哀そうだってなもんだ」
俺達が狩ってきた獲物がこんなにも美味くなんのか?血抜きにも意味はあったんだな。
「なぁ大将!俺が獲物を狩ってきたら、ここで料理してくれるかい?」
そう言うと、斗真って大将は困った顔しながらも。
「俺なんかで良ければ精一杯やるよ」
そう言うと店内の客達もおぉ~と声が沸いた。
「おい!レオン!急に変な事言うから驚いたぞ!それにしてもお前、なんか楽しそうだな」
「酒も飯も、こんなに楽しいのは小僧だった時以来だ」
妙な感覚だった、周りの景色に色が付いた様な、そんな気持ちのいい風を浴びながら、宿に帰り、心地の良いまま眠りについた日だった
俺は中級の冒険者レオン、冒険者なんて聞こえのいい事言ってるけど、要は個人で成果をあげる何でも屋だ。
子供の頃、両親は農家で自分は農家だけにはなりたくないと思っていた、朝から晩まで畑に心血注いで、丹精込めて作ったものが安値で買い叩かれていく日々を送っていれば、先祖の土地がなんて言って貧乏な生活をしていくなんて馬鹿らしいと思った。
子供の頃からゴブリンと戦って、なんとなく自分は冒険者になるんだろうな、なんて思っていた。
だが冒険者は冒険者で大変な職業だ、魔物に合わせた狩り方をしないといけない、皮をあまり傷つけるなや綺麗に捌けとか、現地で血抜きしろとか、薬草採取だってそうだ、この薬草は葉を使う、こっちの薬草は根を使う、そんなんは当たり前で、それでも近くに手ごろなダンジョンがあるので、数こなしていくとそれなりに金になってはしゃいだ。
大金貨を手にする様になって、生活が華やか?になり始めてやっと自分にはなんの楽しみもない事に気が付いた、日に日に溜まっていく金に執着しなくなり、仕送りもそれなりにやって、いっちょ前に酒なんか飲み始める様になっても、心はどこか空のままだった。
「おい!レオン!今日もつまんなそうな顔してんな!」
「ほっといてくれ」
「そんな事言うなって!例の店一緒にいこうぜ!なんでも夜営業始めたんだってよ!早速マスターが入り浸ってるって話だ!他の奴らが押し掛ける前に食いに行こうぜ!」
なんでもない顔なじみに引っ張られて、ふらふらと最近色々と噂になってる店まできた。
どいつもこいつも飯や酒ぐらいでガタガタ言いやがって、腹に溜まればなんでもいいじゃないか、飢えた事がないから味や質なんかを求める事になるんだ。
「いらっしゃい」
「うぃっす!斗真さん夜始めたって言うから、早速きちゃいました!夜はどんなメニューなんですか?」
「主に串物を出しています。串の盛り合わせなんか色々味わえていいですよ。それとエールもはじめましたんで、よかったらどうぞ」
「じゃあ串盛りとエール二つお願いします!」
「はい!いつもありがとうございます!」
可愛らしい狐人族の子が注文を取ったと思ったら、すぐに串盛りとエールは運ばれてきた。
随分と早いな、手を抜いているんじゃないだろうか?
「じゃあ乾杯すっか!んこれ、ああっこうやって開けんのか。それにしても随分冷えてるエールだな」
俺も同じ様にエールを開けると、とりあえず飲む。
「おお!なんだこれ!」
「くぅううう美味いなこれ!冷ええてるのがまたいい!」
喉を駆け抜ける爽快感!味わいのある苦味!こんなにエールって美味かったか?
「どれ串を一つ・・・おお!こりこりしてやがる!タレの甘味と何とも言えない旨味!なるほど!ここでエールをんぐんぐんぐっったは~!!!うめぇ!!」
一々美味そうに食いやがって、俺も遅れながら串を食う。
見た目じゃなんの肉かわかんねぇ、けどこいつはうめぇ!よく焼けて香ばしいのに甘味あるタレと脂の美味さがかけ合わさり何とも言えない美味さだ!次は?ねっとりこってりとしたうま味のある串!こりこりの食感が気持ちいい串!どいつもこいつも触感がまず違う!それでいてどいつもこいつも独特の風味を放ちやがる!嫌な臭いはねぇ・・・これは丁寧な仕事してんな。
そんでもってまたエールが美味い!組み合わせがいいのかわからねぇけど美味い!。
「なぁ店主さん!これなの肉なんだ!?ってすまねぇ答える訳ねぇよな商売のネタだもんな」
「これは肉屋で廃棄される予定だった、内臓達ですよ」
あっさり答えてくれたのと、普段は食わない内臓と聞いて二重に驚いた。
「これが内臓!?美味い肉ならいくらでも売ってるのに、なんで内臓?」
「だって手間暇かけてやれば、こんなに美味くなるのにもったいないじゃないですか。下処理さえちゃんとやってやれば、物によっては肉より内臓が好きなんて人もいるくらいですよ?」
確かにと思った、事実この人の出す串物は全部うめぇ、手を抜いてこんな味が出るわけもない、確かに手間暇かけた味だ。
「そんな簡単に教えていいんですか?真似する奴でるかも」
「真似する人が出るくらいで丁度いいんですよ。それにね普通に肉出すより手間も暇もかかるから、最初は挫折するでしょうね。それでも店に並ぶって事は自信があるって事です。お客さんに出して満足してもらえる品ってわけですよ」
なんかわからんが、心の空洞が埋まった感じがした。
じんわりと腹や胸が熱くなるのを感じる。
毎日どこか機械的で、ただ金稼いで、食って寝て、を繰り返していた俺の心に熱が入るのを感じる。
そうか、飯屋も客と勝負してんだな、自分の自信あるもんを客に出して美味いって言わせたら勝みたいな、そう考えると商売してるやつらは、みんな客と勝負してんだなと思った。
「それにお客さん、こんなにいい内臓他に中々ないですよ。きっと狩ってきた人が丁寧に扱ったんだろうね。血抜きもしっかりしてある、肉屋の中には肉にまで血が回って駄目な肉売ってる所もあるから、命がけで狩りしてきてくれた人の為にも、美味く料理してやんなきゃ可哀そうだってなもんだ」
俺達が狩ってきた獲物がこんなにも美味くなんのか?血抜きにも意味はあったんだな。
「なぁ大将!俺が獲物を狩ってきたら、ここで料理してくれるかい?」
そう言うと、斗真って大将は困った顔しながらも。
「俺なんかで良ければ精一杯やるよ」
そう言うと店内の客達もおぉ~と声が沸いた。
「おい!レオン!急に変な事言うから驚いたぞ!それにしてもお前、なんか楽しそうだな」
「酒も飯も、こんなに楽しいのは小僧だった時以来だ」
妙な感覚だった、周りの景色に色が付いた様な、そんな気持ちのいい風を浴びながら、宿に帰り、心地の良いまま眠りについた日だった
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