異世界定食屋 八百万の日替わり定食日記 ー素人料理はじめましたー 幻想食材シリーズ

夜刀神一輝

文字の大きさ
上 下
21 / 186

ねねとリリ2

しおりを挟む
 ーねねとリリー 
 
 急に現れた不思議な隣人の斗真さんは、人族なのにとても優しく、そう凄く優しい目で私とねねの事をみていました、そしてシチューと言うスープを一緒に食べた。 
 
 体全体が衝撃で震える程美味しかった、この世の中にこんなに美味しいものがあるのか!?お父さんとお母さんとねねとみんなで外食をした日、ちょっと高い食事、お貴族様が食べる様な食事を庶民でも食べれる様にしたお店でもこんな衝撃はなかった。 
 
 美味しい!美味しい!!美味しい!!!ホロホロでとろけるお肉!濃厚な味!後を引く味わい!濃いのに何処かすっきりとしていて、程よい余韻が口の中で広がる!ああもう本当に美味しい! 
 
 その料理を食べて、自分は一食一食を何処か雑に扱っていたのに気が付き、両親が死んでからあまりまともな食事をしてなかった事に気が付いた。 
 
 それからも斗真さんはねねと私に優しくしてくれた、私はどこか申し訳ないと思いながらも、甘えさせてくれる斗真さんに甘えた、ねねにいたってはあれから斗真さんの話ばかり。 
 
 そんな斗真さんをルーカスさんのお店に案内すると、あの厄介者のイールを食べると言う、イールは泥臭くて、骨が多くて食べずらいけど、物凄く安く買える貧民食いと言われる魚だ、見た目が気持ち悪いと食べたがる人は少ない、それに上手く焼けないと噛んだ瞬間にじゅわっと生臭い汁が出るので、正確には貧民も食わないが正解だ。 
 
 そんなイールを嬉しそうに買う斗真さん、本当だったら止たりした方がいいのだろうけど、凄い自信に溢れていて、それに私なんかより色々な物事を知っている大人なのだから、何かあるんじゃないかと思って何も言わなかった。 
 
 そしてイールを料理する斗真さん、初めはちょっと不安だったけど、その思いは段々と消えていく、焼きの段階に入って物凄くいい匂いが部屋いっぱいに広がった、自分の脳内であのイールを思い出して天秤にかける、凄くいい匂いだけど、イールはあのイールだ、自分でも焼いていい匂いがしたなんて経験何度もあるじゃないか、今度は上手く焼けた、今度こそうまく焼けた、そうして裏切られた事なんて何度もある、ああっそれなのにこの匂いは一体なんだろう、自分の中のイールを調理していると言う不安が、吹き飛んで、こんなの絶対美味しい匂いじゃないかと心が震える。 
 
 出されたイールは茶色くてりてりと光って綺麗に焼けている、それを食べた瞬間、皮目はサクサクとしてその下にある身はふわふわとして噛むとじゅわっと脂が出る!甘い!それに臭くない!口の中に広がるぶよぶよ感もなく、ホロホロと口の中に消えていく!美味しい!美味しい!イールの下に敷き詰められた米!前は固かったり、べとべとだったりしたけど、斗真さんのは違う!ふっくらとしてもちもちと一粒一粒が粒として感じられる!丁度いい歯ごたえがなんとも言えない、口の中が幸せになった後、ごくごくと喉奥に運んで飲み込む瞬間が気持ちいい! 
 
 あのイールが!こんなに美味しいなんて!これは凄い発見だ!みんな喜ぶ!みんな食べたくなる!みんな驚く!斗真さんは魔法使いみたい!あれだけ多くの人が諦めた食材をこんなに美味しくしてしまうなんて!凄い凄いすご~い!!ねねみたいにはしゃぎたいのを我慢して冷静に答える、これで銅貨一枚なんてとても信じられない!? 
 
 ねねは見た目5歳くらい、リリも8~10歳くらいの見た目だ、そんな10歳足らずの子が色んなことを我慢してしっかり者の姉をやっている、わからない事なんて沢山ある、こんな二人に子供が孤児院に行かずに生活出きていたのは、冒険者ギルドマスターのニーアと商業ギルドのマスターギムレッドが様子見をしてた事が大きいだろう、他にも魚屋のルーカス、肉屋のフィガロ、教会の聖女クリスタなど二人の両親と親しかった大人たちが、悪い方向に進まない様に見守っていたのが大きい、何度もうちにこないか?と声をかけたり、売れ残った食材をあげたり、それでも自分達で生きていくと言うリリの意思は固かった、周りの大人を跳ねのけるほど、だがその思いも限界に達しようとした時に現れた、斗真はまさに天啓だった。 
 
 リリは斗真にだけは何故か素直に甘えた、家で食べていけばいいと言う斗真に、両親の様な打算などない無償の愛を勝手に感じた。 
 
 斗真は斗真で田舎に引っ越して置きながら、結局は自分は人との繋がりを求めていたのだと気が付く、都会で子供とこんなにも親密になる事もは万が一にもなかっただろう。 
 
 リリとねねは食事がどれだけ大切で、楽しくて、一緒に美味しいものを食べるとお互いに中をこんなにも縮めるものなのだと理解し、命に感謝する事を教えられ、そして美味しく食べようと調理してくれる人の温かさを知った。 
 
 山菜そば、素朴な山菜達の一つ一つの個性がこんなにも主張され、一つ一つが独特の味をしている事に驚き、理解した。 
 
 丸鍋、タートルもどきとか、水辺にいるあれとか正式な名前はない亀も、物凄く美味しかった!プルプルした身に驚き、濃厚な出汁に舌が喜び、お肉がほろほろと口の中にで消えるのに、シャキシャキと何処かしっかりとした繊維しつを感じる、味わった事のないお出しは口の中でぎゅっと旨味を放つのに喉に運ぶとサラサラと嫌味なく爽やかに消えていく、そして一口もう一口と飲んでしまい、思わず全部飲み干してしまう所だった。 
 
 雑炊と言うお米と醬油と言うタレで味を調えた物は絶品だった、斗真さんが涼しい風が出る装置を使ってくれて、心地よい風が吹き抜ける中食べた雑炊は、贅沢すぎる一品で、ちょっと前まで自分は不幸の中にいたけど、斗真さんにあってから否斗真さんが幸せを運んできてくれた。 
 
 その日は斗真さんの家のお風呂に入って、汗を流し、温かいお湯がこんなにも気持ちいいのだとまた新たに新発見した、ふかふかの綺麗なお布団に横になると、驚くほど簡単に眠ってしまい、次の日もゆっくり起きてしまった。 
 
 心も体も安らいで、気の抜けた私とねねに。 
 
 「なんなら家に住めばいい、一緒にご飯もできて、きっと楽しい」 
 
 そんな一言に、涙が溢れた。 
 
 我慢しなきゃいけないのに、泣いちゃいけないのに、涙は溢れて止まらなかった、本当は思いっきり泣きたかったんだ、両親が亡くなった時も、二人で生きていかなきゃいけなくなって、本当はもっと大人を頼るべきだったんだ。 
 
 私につられて、ねねも泣いて、二人で泣いた、泣き叫んだ、お父さんに会いたい!お母さん会いたい!いかないで!置いていかないで!無理だよぅ!私だけじゃ!ねねをちゃんと育てられないよぅ!苦しいよぅ!つらいよぅ!もっと一緒にいたかった!ほめてほしかった!抱きしめてほしかった!お父さんの為に!お母さんの為に!もっといろいろな事がしたかった!会いたい!会いたい!会いたい! 
 
 泣いて、泣いて、泣いて、叫んで、その間ずっと私とねねを抱きしめて、優しく頭を撫でてくれて、優しく背中を叩いてくれて、がんばったねってえらいねって斗真さんはずっと私とねねを慰めてくれた。 
しおりを挟む
感想 144

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...