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ルシフェル

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 俺たちは闘技場の極小地獄から、観覧席に移動すると、魔王ルシフェルは嬉しそうに俺に抱き着いた。 
 
 「お父様!どうして地上にいるの!?お父様も覚醒したの!?」 
 
 「俺は君のお父様じゃない」 
 
 「いいえ!貴方はお父様よ!人間には出せない神聖ってものがあるわ!お父様の力は他の国の神の力だって使いこなすわ!」 
 
 「俺はその人ではないというのに、突き詰めれば同じ様になるだけで別物だ」 
 
 「つまり私のお父様ね!」 
 
 もうそれでいいよ・・・・。 
 
 「一輝様」 
 
 「セバス。他の十王は六道に落ちた。時期戻ってくるだろうさ」 
 
 「寛大な処置に感謝いたします」 
 
 「シモン・ペテロ」 
 
 シモンの名を呼ぶと、シモンは体を震わせ俺の前で跪いた。 
 
 シモン・ペテロ 
 
 名前を呼ばれて、咄嗟に跪いてしまった。 
 
 彼には確かに神格がある、私の神ではないとしても極々私の神に近い神聖を得ている。 
 
 それが原因で体が何よりも早く従順に従う。 
 
 これはいい事なのか?私のお慕いする神以外に似ているからと言う理由だけで、跪いていいのか?答えは否!断じて否!似ているとはいえ非なる神!紛い物に従うなど、使徒としてあるまじき行為、体を動かせ!立ち上がれ!奴の神聖に抗わなければいけない。 
 
 「ぐぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 
 
 体を震わせ、血の涙を流し、本能や強制力に抗い立ち上がる。 
 
 「立ち上がるか、いい許してやる」 
 
 その一言で跪いた姿勢からスッと立ち上がる事が出来た。 
 
 「それで?お前も俺と殺りにきたのか?」 
 
 「御冗談を、挨拶にきただけですよ」 
 
 明らかにあの、殺戮のシモン・ペテロが戦闘を避けての発言だった。 
 
 「だが、困りましたね。日本は貴方のおかげできっとダンジョン後進国からはずれるでしょう」 
 
 「ダンジョン?あまり興味はない、どちらかと言えば唐突に現れる時空の歪、インスタントダンジョンの方が興味がある」 
 
 「おや地形を一つ一つ探索していく事はお嫌ですか?」 
 
 「ああ、そうだな。敵だけ倒すなら文句もないが、一階一階丁寧に探索するより、いきなり強敵と戦える方が性にあってる」 
 
 「なるほど、でも最近日本のダンジョンは活発ですよね」 
 
 「毘沙門天と風林火山を送り込んだ上に、アイテムボックスも流通から貸し出しまで大量に扱っているからな、これだけでも状況はかなり変わる。探索者の治療は続けるからもっと日本は変わるぞ」 
 
 「アイテムボックスの出どころまで貴方だったなんて、これは意外でした」 
 
 「錬金術もあまり進んでいないようだったからな、仕方ない」 
 
 「なるほど、会いに来て正解でした。」 
 
 「敵対しない事を祈っているが、そちらの神次第かな?」 
 
 「そうですね。聖堂教会も神魔天教も血教も仏滅部隊や他の特殊部隊も主次第で敵になりますから」 
 
 「これからも依頼があれば治癒してまわっていくが、魔王や二代目英雄達がどうでてくるかな?」 
 
 「私はお父様に従うわ!他の魔王は知らないけどね」 
 
 他の魔王、魔王は何人いるんだろうか? 
 
 最後の授業も終わったし、ホームルームに出る気もしないのでこのまま帰ろうと思うのだが、この二人は? 
 
 「俺は帰りますけど、お二人は?」 
 
 「私は失礼するよ」 
 
 「私はお父様の住んでる所みてみたいわ!」 
 
 というのでシモンとはそのまま別れ、ルシフェルを連れてセバスと狂と自宅に帰った。 
 
 玄関まで行くとあこが出迎えてくれる。 
 
 「おかえりなちゃい」 


 「たでーま」 
 
 俺が天照を抱っこするのを目を見開いてルシフェルは見ている。 
 
 「その子は?」 


 「ああ、日本の御三家の一人、天照あこだ。縁あって一緒に住んでる」 
 
 しーんとしたいや~な空気が流れる。 
 
 「ずるい」 
 
 
 「ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい!!!どうしてその子と一緒に住んでるの!?」 
 
 「嫌、他にも俺の両親とか妹とか月詠まやとかもいるけど」 
 
 「そうなんだ。お父様には大切なものがいっぱい、大切なものだけに囲まれて、そうやって生きるのがお父様だもんね?・・・・・・やっぱりお父様に私は必要ないんだ」 
 
 今にも泣きそうになりそうな、ルシフェルの顔 
 
 「だから簡単に他人にあげるし、捨てちゃうし、手に負えなきゃ地下に閉じ込めちゃうんだ!?」 
 
 火球が少しずつルシフェルの周りに増えていき、俺とあこ目掛けて飛び込んでくる。 
 
 結界で防ぎつつ、爆散する爆発は異空間に逃がす。 
 
 「切れるにしても急だな?」 
 
 セバスが割って入る 
 
 「魔王の大半はこうですよ。情緒が不安定で無差別に力を行使する。お下がりください」 
 
 「みんなみんなみんなみんなみんな、その子が大事なんだ!!」 
 
 火球をどんどん放つも、セバスの両手から出る糸により簡単に切断されて、ルシフェルは拘束される。 
 
 「くぅぅう!アリアドネの糸!こんなもの!お前たちの大切な物を奪って私と同じ気持ちにしてあげる!!!」 
 
 周囲がルシフェルの魔力で赤く染まり、月までもが赤く輝く。 
 
 「血の暴走を・・・・・」 
 
 闘気に魔力がまざり、それを吸収して変わろうとしているルシフェルの間に、ベルゼブブが割って入った。 
 
 「そこまでですよ。お嬢様、やれやれ目を離したすきに」 
 
 ベルゼブブは俺とあこを見る。 
 
 「家庭的な慈愛に触れて羨ましくなってしまったんですかね?でもこれ以上はまだいけません。帰りましょうアメリカに」 
 
 黒い歪が出来ると、ルシフェルをかかえて空間に飛び込んで消えていった。 
 
 「なんだったんだ?ありゃ?」 
 
 「私にも詳しくは?ですが、一つだけ推測するなら、ルシフェルは両親からの愛に飢えている、一輝様を父と呼び、その父と呼んだ男性が自分以外の子を甘やかした事に酷い憎しみを感じたのでしょう。そうとしか考えられません」 
 
 「俺はあの子の父じゃない」 
 
 「どういった基準があるのかはわかりませんが、認定されてしまいましたし」 
 
 「やれやれまた厄介な」 
 
 魔王、何がトリガーになるかもわからない。 
 
 続々と他の魔王や英雄達も動き始めつつあった。
 
 
 
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