上 下
15 / 39

鬼神衆

しおりを挟む
 最初の予定していた治癒会場に場所を移し、一人一人丁寧に処置していく。 
 
 軽傷な者など一人もいなく、皆が重く酷い状態である。 
 
 それと同時に別の場所では食事が用意されていた。 
 
 急激な再生に肉体は枯渇するので、当然腹が減る、大量のエネルギーが必要になってくるのだが、その料理達がまた美味そうで困る。 
 
 酷く太っていた身とちては、そう簡単にばくばく食う訳にもいかないので食べれないのだが。 
 
 「本物だ!六条一輝の力は本物だ!俺の手!足が!」 
 
 「あああ、ある、本当に手足がある・・・・神よ」 
 
 「手足だけじゃねぇ!体のいたる所の痛みがねぇ!古傷の様な痛みもドン痛も何もない!」 
 
 「それでいて力が漲る!溢れる!四肢を失っても更に鍛えたはずの力が、前以上に膨れ上がる!」 
 
 「うぉ!何人か悟りを得て、位階が上昇してるぞ!」 
 
 座禅を組んで瞑想する人達、気づきを得て精神的に変化が訪れる、中には驚異的な強さを手に入れたり、今の段位から数段飛ばした上の段位に覚醒したりする。 
 
 骨格の矯正から筋肉の使い方、尋常では使用できない関節やその筋肉をバネの様な役割を与え、常人では不可能な肉体操作の戦闘が可能になる。 
 
 「確実に若返ってるぞ!」 

 「これな!治療所の話じゃねぇ!再生!?新生じゃねぇか!!!」 
 
 そんな彼らを見ながら、狂一とセバスが会話をしていた。 
 
 「御屋形様にここまで世話になっちまったが、やっぱり俺達はもどれねぇよセバス」 
 
 「私たちを襲撃しようとしたこと、悔やんでいるのか?」 
 
 「御屋形様をうたがっちまった。捨てられたと思った。誰がどう見ても戦える様じゃなかったのにな、それでも側に置いてほしかった」 
 
 「悪い事ではなかろうよ、そう思う事は」 
 
 「そして俺達元鬼神衆は最後の一線を越えた、これは明確な粛清対象だ」 
 
 「御屋形様はそれを許された。鬼神衆に戻るも、野に下るも好きにするがいいと、もしくは鬼神衆とは別部隊になるか?とも言われていた」 
 
 「別部隊?」 
 
 「六条一輝を守護する特選部隊、羅刹、御三家と違って自由に動くあの方に必要な部隊だ」 
 
 「若の為に戦えるのは悪くねぇな、でもそれじゃあけじめにならねぇんじゃねぇか?」 
 
 「狂一、御屋形様もまた限界に達しようとしていたのだ。もし今自分が死んだら?次代の天照は傷つき使い物にならなくなった者達をどう扱うだろうか?それこそ本当にただご苦労だったと放逐するのではないか?そう考えた天照様は今の内にと彼らの望むように出来るだけ配慮した結果だったのだ、決して捨てたのではない。天照様は日本の結界の要だ。テロで魔法戦になりどれだけの大魔法が使われても、建物の被害は最小限に人的被害はゼロ、スタンピードが起ころうが、異能者が暴れようが、異能者の集団と我らが戦おうが、日の本は天照様の結界に守られている。魔法を放てば都合がよく魔物だけが倒される。被害は対決している異能者同士だけが受け、一般人は完全に無傷。そんな結界にまもられている国が他にあるか?何を代償にすればそんな結界が張れる!?人間の命が千だの万だのでもそんな都合のいいもんは作れない。でも神が自ら代償を払うというなら?神が人々の痛みを肩代わりするというのなら?・・・・・・可能だったのだ。そして死ねば次代の天照が顕現し、日の本を守る。今の天照様のお姿は?もう・・・・・もう人としての原型を留めてはいない、本来なら代替わりする。つまりもう亡くなってもおかしくないのだが、次代にこの呪いを継承する事、この辛さを後のよに残さなければいけない残響の念から、今だ耐えられておられるのだ」 
 
 その話に絶句する狂一。 
 
 多くの者がこの事を知らない上に、姿さえ見る事がない天照、ダンジョン発生に滅亡危機に瀕していた日本を立て直した神代御三家の頂点、天照。 
 
 神話の力を二代目に継承する為に、現天照の命は終わろうとしていた。 
 
 治療の休憩中にそっと近づいて聞いてしまった場違いな俺、嫌、むしろセバスは普通に喋っていたから周りにいた人たちは結構普通に話が耳に入っていた。 
 
 もう隠すも何もないといった状況なのだろうか? 
 
 場違いなのにも関わらず、俺が見てみましょうか?なんて軽口をいってしまうと。 
 
 「本当ですか!?天照様を見ていただけますか!?」 
 
 「うぇぇ!?でもそれって凄い病気かなんかなんでしょ?俺で如何にかなるかなんてわかりませんよ!?」 
 
 「今!この世界に!貴方以上の治癒師!解呪の出来る人間が他にいるわけがない!・・・・・天照様は治癒を望んではおられなのです。これは全て私の独断と我がままでおこなっています。あの子はまだ幼い子なのです!天照になり!強制的に精神が成長しただけで、本来ならまだまだ幼子なのです!!世の中の事を何一つ知らない、都会に憧れ、アイドルに憧れ、洋服や可愛い宝石に目をキラキラさせるような、まだまだまだまだまだ幼子なのです!!代償が必要なら我が身を捧げます!いくらでも使えばいい!あの子を・・・・・・あのまだ幼いあの子をすくってくださるなら・・・・・・鬼神衆が十王の一人、冥王セバス・バルバドス!二君に仕えると世界に笑われようとも!六条一輝様に忠誠を誓います!何卒あの子をお救い下さい!!!」 
 
 涙ながらに無我夢中で体全身を使って爆発する感情を表現するセバス、まるで壊れたかの様に鬼神衆の中でも十人の猛者の一人が頭を地面にこすりつけ懇願する。 
 
 病気と言うより、何かの代償を支払った結果、肉体にダメージが反動で帰ってくると言うのなら、これは治癒の領域の話なのだろうか? 
 
 セバスさんを立ち上がらせて、俺に出来る事なら全力でやりますよ。 
 
 そういって強がって笑って見せるのが今の限界だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

処理中です...