食の使徒 素人だけど使徒に選ばれちゃいました。癒しの食事を貴方に 幻想食材シリーズ

優しい王女の為の料理を

　獣王国の王女様の話を聞き、涙が流れた。　
　
　僕なんかよりも遥かに年下の王女が、さらに幼い子達を守るために自らを盾にした。　
　
　並大抵の事ではない。　
　
　そんな彼女の為に、回復はもちろん精一杯僕の出来る美味しい料理を食べてほしい。　
　
　いつも通りコーンスープでいくのか？もちろん自信があって自分の中で完全に１００のものを出せといわれたら、コーンポタージュ一択だが、折角食の使徒としているのに同じ料理ばかりでは意味がない気がする。　
　
　ヴィシソーワズスープ、冷たいポロネギ風、ジャガイモのポタージュ。　

　バターでポロネギとジャガイモを炒め、ブイヨンをいれてから生クリームで伸ばすといった製法でまろやかでそれでいて涼しげで爽やかな一杯。　
　
　スープはこれでいい、次は前菜だ。　
　
　丸い型に、クリームチーズ、アボガド、サーモンを層の様に乗せ、塩とオリーブでイタリアンパセリをかけて完成だ。　
　
　今回は味見役の二人がいないので、完全に自分の好きなように創造しているがいいのだろうか？　
　
　アントレ、入口の肉料理にはしもふり鴨を使った肉料理を、鴨肉には血のソース、トゥールダルジャンを使う。　
　
　マディラ酒とコニャック、骨髄からでたエキスとしぼった血をまぜあわせたソース。　
　
　魚料理　ポワソン　
　
　サンマのルロー　オスフリット　
　
　サンマは三枚おろしに下ごしらえして、身を丸めて串でとめて焼き上げる。　
　
　中骨はカリカリに脂で揚げ、塩をかけ盛り付ける。　
　
　ラディッシュにすだち、クレス、セルフィーユ、パルメザンチーズをちらして完成。

　定番の王牛のローストビーフ、ソースはニンニク、玉ねぎ、醬油、酒、みりんを煮詰めれば完成。　
　
　ソルベ　スターフルーツのソルベ　
　
　デザート　
　
　ブルーベリーとハニークリームソースのパイ生地仕立て、ハーブを乗せて　
　
　とここまであっという間にコース料理が組みあがった。　
　
　まだ二回目という事もあって、ローストビーフなどの本当に基本的な料理などもはいっている。　
　
　特別過ぎず、初めて食べるには優しい衝撃を得る様な？感動を得る様な構成にしてみたのだけど、果たしてこの構成で伝わるかどうかわからないが、今できる最善の調理や火入れで調理は進めていく。　
　
　サンマなんかも使っているから、極度に豪華って事もないけど、それでもきっと楽しいはずだ。　
　
　彼女が今現在どんな姿なのか？そして怪我を負う前はどんな姿だったのかは僕にはわからない。　
　
　それでも肉体が元気な時、力強かった時に戻る様に治る様に肌や髪も綺麗に、そして次同じ事が起こっても今度は彼女が勝てるようにと思いを詰め込みながら料理をしていく。　
　
　神々の飛躍をつかってやっと生き延びられる程度に回復したと聞いた。　
　
　神々、そんな大層な名前のつく秘薬を使ってぎりぎり生きられる程度に回復するってどれだけ痛い思いをしただろうか？そして今もの尚癒えない傷にどれほど苦労し、苦痛を味わっている事か、その苦痛を自分の料理なら取り払ってあげる事ができるかもしれない。　
　
　医者でもないのに、どこか医者の様な目線をもちつつ、それでいて傷が癒える食事とは、忘れられない程の幸せを料理に乗せて味として最大限味わってほしい。　
　
　未熟な僕が怪我人のみんなに分けてあげられる、人生の再スタート、それは思い出深い幸せの味でなければいけない。　
　
　だからこそ、失敗は許されない。　
　
　まだまだレシピを真似するだけで精一杯、アレンジなんて事は投擲できないけど、レシピ通り丁寧に丁寧に料理を作る。　
　
　味をみて、味付け、食感の快感度を確かめ自分の中でOKがでれば、盛り付けて完成させる。　
　
　アイテムボックスに投入して、当日は料理を運ぶだけで済む状態になればとりあえず一段落。　
　
　だが、蝕の使徒としてこれだでは終われない、料理の改善点はないか？味のアレンジはできるか？もちろんお客様に出す事はできないけど、自分なりの研究は続けていく。　
　
　もっと美味しく！もっと感動的に！まるで生まれ変わる様に！幸せを口から体全体に痺れる様に！快感の波を！そしてこの味に出会えてよかったと思える料理を。　
　
　今回のメインにはド直球にローストビーフを選んだ。　
　
　もっとも基礎となるローストビーフ、だからこそわかる事もある。　
　
　自分のローストビーフで人を喜ばせる事ができるか？その領域まで到達する事ができているか？それらを測り知る事が出来る。　
　
　お客様で試す真似をするような事はいけないが、自分だけの味覚では限界があるし、傲慢になると思った。　
　
　お客様相手に挑戦するかのように、料理を作らなければいずれは、これでいいという言葉に飲み込まれ停滞する。　
　
　王女様が感動する料理、自分は作れただろうか？アイテムボックスをのぞきながらも恐怖心が僕を襲う。　
　
　まだまだ料理が楽しいなんてよりも、僕の料理なんかでいいのだろうか？美味しいだろうか？楽しいだろうか？と不安になる。　
　
　情けない話だ。　
　
　それでも人は味なんか二の次で治癒の料理を求める事だろう。　
　
　この強力な治癒に負けない、料理人にならないといけないだから今は、ただレシピ通りに料理を作ろう。　
　
　今の僕の料理でも喜んでくれる人の為に、常に最善を尽くそう。　
　
　さぁ王女様に幸せの時間を届けよう。　
　
　どうか幸せになりますように。