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第11章 運命との戦い編
第71話 一つの恋の終わり
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昼休み、私はいつもよりも早くお弁当を食べて久子と約束をした一階のホールへと行った。
そこには久子はもう来ている。
あの子、お昼ご飯を食べずに来ているんじゃないのかしら?
そんな事を気にしながら私は久子に近づいて行くと久子は私に気付き、笑顔で手を振ってきた。
「ひ、久子お待たせ……それでさっきの話の続きだけど……」
「うん、私ね……山田君に告白されて色々と考えたんだ……」
久子は少しうつむきながら話を始めだしたけど、急に頭を上げ私の方を真っすぐ見ながら真剣な表情で語り出す。
「私は小一の頃から五十鈴君の事が好きだったわ……」
「うん、知ってる……」
「でも彼は全然、私の事を振り向いてくれなかった。恐らく私の気持ちは分かっていたと思うけど……」
「そ、そうだね……」
「私ね、五十鈴君が他の人を好きなのは小一の頃から何となく分かってたんだ……」
えっ、嘘!?
「久子、もしかして……」
「うん、五十鈴君が常谷先生の事を本気で好きだという事を知ってた……でも認めたくなかったの。だって常谷先生と五十鈴君って十七歳も歳の差があるのよ。そ、そんなの認められなかった……認めたくなかったわ……」
私は久子の言葉を聞いて驚いた。まさか小一の頃から気付いていただなんて……
私はもっと後から知ったというのに……
それに私と同じで認めたくないという気持ちだったんだということも……
「覚えているかな? 私達が浩美のお父さんの運転でエキサイトランドに行った時の事を?」
「えっ? ええ、覚えているわよ」
「あの時、車が駅前を通過した時、切符売り場のところに五十鈴君がいたの。きっとあの日、五十鈴君は電車に乗って常谷先生に会いに行ったんだと思う」
あの時、私も彼に似た子を見つけたけど、やはりあの子は彼だったんだ。
そして彼が私達とエキサイトランドに行けなかった理由はつねちゃんに会いに行く日だったから……はぁ……全てが繋がったなぁ……
「小六の頃、七夕祭りの買い物の帰りに私は五十鈴君に正式に告白したの。でも返事はもらえなかった。そしてあれから二年、何の進展もなかった……」
やはり、そうだったんだ。あの時も次の日から久子、元気無かったし……
そしてその後の七夕祭りの時に私は衝撃的な場面を目撃してしまったんだ。
「片方だけが好きでい続けるって辛いよね? 苦しいよね?」
「え、ええ、そうだね……」
「相手から好かれるって嬉しいよね? 幸せだよね?」
「う、うん……そうね……」
「私の事を好きだと言ってくれる人と一緒にいる方が絶対幸せだと思う」
「久子……」
「だから……だからね、私……山田君と付き合う事に決めたの……。五十鈴君の事が好きなのは変わらないけど……、でも、ようやく五十鈴君の事を諦める努力をしようと思えたの……。今も言ったけど、私は私の事を好きだと思ってくれている人と一緒にいたい。それに山田君は私に生まれて初めて告白してくれた人だし……大事にしたい……」
久子は目に涙を溜めながら私にそう言った。
そして私が久子に言葉を返そうとした時にとても驚いた声で私の名前を呼ぶ声がした。
「石田!? い……石田が何で……」
彼がとても驚いた表情をしながら立っている。
まぁ、無理も無いと思う。
まさか喧嘩していると学校中で有名になっている久子の横に私が居るとは思っていなかっただろうから。
でも私はこれから久子が今、私に言った事を思い切って彼に言うんだと理解したので勢いづける為にも笑顔で彼にこう言った。
「五十鈴君何よ? まるでお化けを見るような顔をして? 私がここに居たらおかしいの?」
「・・・・・・」
あれ? 彼が何も言わない……
逆に引いちゃったのかな?
とりあえず私は彼の事など気にしていない素振りを見せながら久子に最後の言葉をかけてその場から離れる事にした。
「久子、分かったわ。あなたは間違ってないから。それじゃぁ、またね……」
「うん、浩美……ありがとね……」
きっと久子は今日から生まれ変わる決意を彼に宣言するに違いない。
久子、頑張って……
教室に戻るといなっちと川ちゃんと順子がお昼を食べずに私の帰りを待っていてくれた。
「浩美、やっと戻って来たわね? もう私達、おなかペコペコよ!!」
「ゴ、ゴメン……でも私なんか待たずに先に食べていてくれて良かったのに……」
「何を言っているのよぉぉ、私達が先にお腹一杯になってしまったら浩美のお母さんが作ったダシ巻き玉子が食べれなくなっちゃうじゃない!!」
「そうそう、浩美のお母さんが作ったダシ巻き玉子、お店の様な味がしてとても美味しいもんねぇぇ?」
「川ちゃんもいなっちも、毎回毎回、私のダシ巻き玉子を狙わないでよぉ!?」
「 「だって美味しいんだもん!!」 」
「でも残念だわ。昨日、お母さん玉子を買い忘れたらしくてお弁当にダシ巻き玉子は入っていないわよ」
「 「えーーーっ!!??」 」
「フフフ……残念だったわね? 今日はお母さんが昨日の夕飯の為に作ったハンバーグの残りが入っていたと思うわ……てことでいただきまーす!!」
「そ、それじゃぁ私達も……」
「 「 「浩美ママの手作りハンバーグ、いっただっきまーす!!」 」 」
「へっ!? じゅ、順子まで何を言っているのよ~!?」
こんな楽しい日常が一日でも長く続きますように……
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。
そこには久子はもう来ている。
あの子、お昼ご飯を食べずに来ているんじゃないのかしら?
そんな事を気にしながら私は久子に近づいて行くと久子は私に気付き、笑顔で手を振ってきた。
「ひ、久子お待たせ……それでさっきの話の続きだけど……」
「うん、私ね……山田君に告白されて色々と考えたんだ……」
久子は少しうつむきながら話を始めだしたけど、急に頭を上げ私の方を真っすぐ見ながら真剣な表情で語り出す。
「私は小一の頃から五十鈴君の事が好きだったわ……」
「うん、知ってる……」
「でも彼は全然、私の事を振り向いてくれなかった。恐らく私の気持ちは分かっていたと思うけど……」
「そ、そうだね……」
「私ね、五十鈴君が他の人を好きなのは小一の頃から何となく分かってたんだ……」
えっ、嘘!?
「久子、もしかして……」
「うん、五十鈴君が常谷先生の事を本気で好きだという事を知ってた……でも認めたくなかったの。だって常谷先生と五十鈴君って十七歳も歳の差があるのよ。そ、そんなの認められなかった……認めたくなかったわ……」
私は久子の言葉を聞いて驚いた。まさか小一の頃から気付いていただなんて……
私はもっと後から知ったというのに……
それに私と同じで認めたくないという気持ちだったんだということも……
「覚えているかな? 私達が浩美のお父さんの運転でエキサイトランドに行った時の事を?」
「えっ? ええ、覚えているわよ」
「あの時、車が駅前を通過した時、切符売り場のところに五十鈴君がいたの。きっとあの日、五十鈴君は電車に乗って常谷先生に会いに行ったんだと思う」
あの時、私も彼に似た子を見つけたけど、やはりあの子は彼だったんだ。
そして彼が私達とエキサイトランドに行けなかった理由はつねちゃんに会いに行く日だったから……はぁ……全てが繋がったなぁ……
「小六の頃、七夕祭りの買い物の帰りに私は五十鈴君に正式に告白したの。でも返事はもらえなかった。そしてあれから二年、何の進展もなかった……」
やはり、そうだったんだ。あの時も次の日から久子、元気無かったし……
そしてその後の七夕祭りの時に私は衝撃的な場面を目撃してしまったんだ。
「片方だけが好きでい続けるって辛いよね? 苦しいよね?」
「え、ええ、そうだね……」
「相手から好かれるって嬉しいよね? 幸せだよね?」
「う、うん……そうね……」
「私の事を好きだと言ってくれる人と一緒にいる方が絶対幸せだと思う」
「久子……」
「だから……だからね、私……山田君と付き合う事に決めたの……。五十鈴君の事が好きなのは変わらないけど……、でも、ようやく五十鈴君の事を諦める努力をしようと思えたの……。今も言ったけど、私は私の事を好きだと思ってくれている人と一緒にいたい。それに山田君は私に生まれて初めて告白してくれた人だし……大事にしたい……」
久子は目に涙を溜めながら私にそう言った。
そして私が久子に言葉を返そうとした時にとても驚いた声で私の名前を呼ぶ声がした。
「石田!? い……石田が何で……」
彼がとても驚いた表情をしながら立っている。
まぁ、無理も無いと思う。
まさか喧嘩していると学校中で有名になっている久子の横に私が居るとは思っていなかっただろうから。
でも私はこれから久子が今、私に言った事を思い切って彼に言うんだと理解したので勢いづける為にも笑顔で彼にこう言った。
「五十鈴君何よ? まるでお化けを見るような顔をして? 私がここに居たらおかしいの?」
「・・・・・・」
あれ? 彼が何も言わない……
逆に引いちゃったのかな?
とりあえず私は彼の事など気にしていない素振りを見せながら久子に最後の言葉をかけてその場から離れる事にした。
「久子、分かったわ。あなたは間違ってないから。それじゃぁ、またね……」
「うん、浩美……ありがとね……」
きっと久子は今日から生まれ変わる決意を彼に宣言するに違いない。
久子、頑張って……
教室に戻るといなっちと川ちゃんと順子がお昼を食べずに私の帰りを待っていてくれた。
「浩美、やっと戻って来たわね? もう私達、おなかペコペコよ!!」
「ゴ、ゴメン……でも私なんか待たずに先に食べていてくれて良かったのに……」
「何を言っているのよぉぉ、私達が先にお腹一杯になってしまったら浩美のお母さんが作ったダシ巻き玉子が食べれなくなっちゃうじゃない!!」
「そうそう、浩美のお母さんが作ったダシ巻き玉子、お店の様な味がしてとても美味しいもんねぇぇ?」
「川ちゃんもいなっちも、毎回毎回、私のダシ巻き玉子を狙わないでよぉ!?」
「 「だって美味しいんだもん!!」 」
「でも残念だわ。昨日、お母さん玉子を買い忘れたらしくてお弁当にダシ巻き玉子は入っていないわよ」
「 「えーーーっ!!??」 」
「フフフ……残念だったわね? 今日はお母さんが昨日の夕飯の為に作ったハンバーグの残りが入っていたと思うわ……てことでいただきまーす!!」
「そ、それじゃぁ私達も……」
「 「 「浩美ママの手作りハンバーグ、いっただっきまーす!!」 」 」
「へっ!? じゅ、順子まで何を言っているのよ~!?」
こんな楽しい日常が一日でも長く続きますように……
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お読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに。
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