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第11章 運命との戦い編
第70話 親友
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昭和六十年四月
私は中学三年になった。
『この世界』に来てから約八年になるのかな?
『前の世界』で考えると私の命は残り五ヶ月を切った事になる。
最近の私は体調が良くなったり悪くなったりの繰り返しでまだ入院とまではいかないけど病院には頻繁に通っている。
なので部活も休みがちになっていた。
また、治療費も結構かかるので中二の途中に私から両親に塾を辞めると言い出した。
お父さんは治療費の事は心配しなくても良いと言ってくれたし、お母さんも私も働く事にしたから塾は辞める必要は無いと言ってくれたけど、私の心の中に『どうせ勉強を頑張っても高校生になる私の未来は無い』という思いが消えず、正直勉強に身が入らない自分もいたので私は頑なに塾を辞めるという考えを曲げなかったのだ。
彼とクラスも違うので会話をする機会はめっきり減ってしまい、塾も辞めてしまったから余計に接点が無くなり、私は少し寂しい気持ちになっていた矢先、彼から私に声をかけてきた。
「い、石田……ちょっといいかな?」
「え? う、うん……いいよ……」
久しぶりに会話をするという事も有り、お互いにどことなくぎこちなかった。
「実はさ、妹の奏が入学したんだけどさ……」
「あっ、そうだったわね? 奏ちゃんも中学生になったんだよねぇ」
「そうなんだ。それでさ、奏は女子バレー部に入部したいらしいんだけど……」
「えっ、そうなの!? へぇ、意外だなぁ……奏ちゃんはてっきり演劇部に入ると思っていたわ」
「なんかさ……奏は昔から石田の事を憧れていたらしいんだよ……」
「えっ、そうなの? そんな憧れだなんて……恥ずかしいわ……でもそんな事を言って貰えて嬉しいわ……」
「ただ、奏は大人しい性格だからバレー部でうまくやっていけるのかが心配でさ……それで申し訳無いけど石田に面倒見て欲しいなって思ってさ……」
「ハハハ、なーんだ、そんな事なの? 全然、大丈夫よ。奏ちゃんの事は私に任せておいて」
「あ、ありがとう……助かるよ……」
私は今、演技をしている。本当は奏ちゃんがバレー部に入部する事は『前の世界』と同じだから知っていたし、彼に奏ちゃんの事をよろしく頼むと言われる事も知っていた……
でも私としては『この世界』の奏ちゃんには違う部に入って欲しかったというのが正直な気持ちだった。
『前の世界』の私はいずれ病気で死ぬ事は覚悟していたけど、まさか突然、飛行機事故で死ぬとは思っていなかったから部活を引退してもしばらくは奏ちゃんが慣れるまで交流が持てると思っていたので喜んで彼のお願いを引き受けたのに……
でも『未来』を知っている今の私はとても複雑な気持ちになってしまう。
「石田、大丈夫か? なんか顔色が悪いけど……」
「えっ? だ、大丈夫よ。奏ちゃんは今日、入部届を持って来るのかな? 私、今日は部活に出るから丁度良いんだけど……」
「多分、今日入部するって言っていたと思うけど……後で奏に確認してみるよ。ほんと、ありがとな?」
「いえいえ、どういたしまして……」
「そ、それと石田に一つ聞きたい事が……いや、まぁそれはいっか……」
「・・・・・・」
もしかして彼は私が中二の途中で突然、塾を辞めた理由を聞きたかったんじゃないのかしら?
彼は頭を掻きながら自分の教室へと戻って行った。
こうして私は四月のうちは体調が良くなくても出来るだけ部活に参加する様に頑張った。そして奏ちゃんとなるべく多く交流が持てるようにしたのだった。
お陰で奏ちゃんは私の事を本当のお姉ちゃんの様に慕ってくれるようになっていく。
五月……ゴールデンウイークも終わり、もうすぐ中間テストが始まるという時期に思わぬ人物が私に声をかけてきた。
「ひ、浩美……?」
「久子?」
そうである。ずっと気まずい関係になり全然口を利いていなかった久子が私に声をかけてきたのだ。
ただ私には久子が声をかけてきた理由がなんとなく分かっている。
遂に『彼』が動き出したんじゃ……
「ひ、浩美……あのね……少しだけお話がしたいんだけどいいかな?」
「別にいいけど……」
「ありがとう……実はね……私、同じクラスの山田君に告白されたんだ……」
やはりそうだったんだ。
「えっ、そうなの!? でも久子は可愛いしモテるから告白されるのは当たり前だと思うけど……」
「ううん、私は今まで誰にも告白されたことは無いよ」
「う、嘘……」
「嘘じゃないよ。本当だよ。まぁ今回の山田君みたいに私に好意を持ってくれている男の子はいたのかもしれないけど……でも告白してくれたのは山田君が初めてなんだぁ……」
そっかぁ……そうよね……
久子が彼の事を好きだという事は同じ青葉第六小出身の人は皆、黙認している事だし、その事を知らない青葉第一小出身の人達もこの二年間の間で噂は聞いているだろうし……
それを知っていてなかなか告白なんてしずらいのかもしれないよね?
「そうなんだね……それで久子はどうするの? 山田君と付き合うの?」
「……わ、私は……」
キーンコーンカーンコーン
「あっ? チャイムが鳴っちゃった。ゴメン浩美……悪いけど今日のお昼休みに一階のホールに来てくれないかな? その時に話の続きをするから」
「え、ええ……分かったわ……それじゃぁまた後で……」
こうして中途半端に終わったけど二年振りに久子と会話をする事ができた私は心が少しだけ晴れた気持ちのまま自分の教室へと向かうのだった。
―――――――――――――――――――
山田に告白された事を浩美に伝える久子……
果たして久子が出した結論は!?
どうぞ次回もお楽しみに。
私は中学三年になった。
『この世界』に来てから約八年になるのかな?
『前の世界』で考えると私の命は残り五ヶ月を切った事になる。
最近の私は体調が良くなったり悪くなったりの繰り返しでまだ入院とまではいかないけど病院には頻繁に通っている。
なので部活も休みがちになっていた。
また、治療費も結構かかるので中二の途中に私から両親に塾を辞めると言い出した。
お父さんは治療費の事は心配しなくても良いと言ってくれたし、お母さんも私も働く事にしたから塾は辞める必要は無いと言ってくれたけど、私の心の中に『どうせ勉強を頑張っても高校生になる私の未来は無い』という思いが消えず、正直勉強に身が入らない自分もいたので私は頑なに塾を辞めるという考えを曲げなかったのだ。
彼とクラスも違うので会話をする機会はめっきり減ってしまい、塾も辞めてしまったから余計に接点が無くなり、私は少し寂しい気持ちになっていた矢先、彼から私に声をかけてきた。
「い、石田……ちょっといいかな?」
「え? う、うん……いいよ……」
久しぶりに会話をするという事も有り、お互いにどことなくぎこちなかった。
「実はさ、妹の奏が入学したんだけどさ……」
「あっ、そうだったわね? 奏ちゃんも中学生になったんだよねぇ」
「そうなんだ。それでさ、奏は女子バレー部に入部したいらしいんだけど……」
「えっ、そうなの!? へぇ、意外だなぁ……奏ちゃんはてっきり演劇部に入ると思っていたわ」
「なんかさ……奏は昔から石田の事を憧れていたらしいんだよ……」
「えっ、そうなの? そんな憧れだなんて……恥ずかしいわ……でもそんな事を言って貰えて嬉しいわ……」
「ただ、奏は大人しい性格だからバレー部でうまくやっていけるのかが心配でさ……それで申し訳無いけど石田に面倒見て欲しいなって思ってさ……」
「ハハハ、なーんだ、そんな事なの? 全然、大丈夫よ。奏ちゃんの事は私に任せておいて」
「あ、ありがとう……助かるよ……」
私は今、演技をしている。本当は奏ちゃんがバレー部に入部する事は『前の世界』と同じだから知っていたし、彼に奏ちゃんの事をよろしく頼むと言われる事も知っていた……
でも私としては『この世界』の奏ちゃんには違う部に入って欲しかったというのが正直な気持ちだった。
『前の世界』の私はいずれ病気で死ぬ事は覚悟していたけど、まさか突然、飛行機事故で死ぬとは思っていなかったから部活を引退してもしばらくは奏ちゃんが慣れるまで交流が持てると思っていたので喜んで彼のお願いを引き受けたのに……
でも『未来』を知っている今の私はとても複雑な気持ちになってしまう。
「石田、大丈夫か? なんか顔色が悪いけど……」
「えっ? だ、大丈夫よ。奏ちゃんは今日、入部届を持って来るのかな? 私、今日は部活に出るから丁度良いんだけど……」
「多分、今日入部するって言っていたと思うけど……後で奏に確認してみるよ。ほんと、ありがとな?」
「いえいえ、どういたしまして……」
「そ、それと石田に一つ聞きたい事が……いや、まぁそれはいっか……」
「・・・・・・」
もしかして彼は私が中二の途中で突然、塾を辞めた理由を聞きたかったんじゃないのかしら?
彼は頭を掻きながら自分の教室へと戻って行った。
こうして私は四月のうちは体調が良くなくても出来るだけ部活に参加する様に頑張った。そして奏ちゃんとなるべく多く交流が持てるようにしたのだった。
お陰で奏ちゃんは私の事を本当のお姉ちゃんの様に慕ってくれるようになっていく。
五月……ゴールデンウイークも終わり、もうすぐ中間テストが始まるという時期に思わぬ人物が私に声をかけてきた。
「ひ、浩美……?」
「久子?」
そうである。ずっと気まずい関係になり全然口を利いていなかった久子が私に声をかけてきたのだ。
ただ私には久子が声をかけてきた理由がなんとなく分かっている。
遂に『彼』が動き出したんじゃ……
「ひ、浩美……あのね……少しだけお話がしたいんだけどいいかな?」
「別にいいけど……」
「ありがとう……実はね……私、同じクラスの山田君に告白されたんだ……」
やはりそうだったんだ。
「えっ、そうなの!? でも久子は可愛いしモテるから告白されるのは当たり前だと思うけど……」
「ううん、私は今まで誰にも告白されたことは無いよ」
「う、嘘……」
「嘘じゃないよ。本当だよ。まぁ今回の山田君みたいに私に好意を持ってくれている男の子はいたのかもしれないけど……でも告白してくれたのは山田君が初めてなんだぁ……」
そっかぁ……そうよね……
久子が彼の事を好きだという事は同じ青葉第六小出身の人は皆、黙認している事だし、その事を知らない青葉第一小出身の人達もこの二年間の間で噂は聞いているだろうし……
それを知っていてなかなか告白なんてしずらいのかもしれないよね?
「そうなんだね……それで久子はどうするの? 山田君と付き合うの?」
「……わ、私は……」
キーンコーンカーンコーン
「あっ? チャイムが鳴っちゃった。ゴメン浩美……悪いけど今日のお昼休みに一階のホールに来てくれないかな? その時に話の続きをするから」
「え、ええ……分かったわ……それじゃぁまた後で……」
こうして中途半端に終わったけど二年振りに久子と会話をする事ができた私は心が少しだけ晴れた気持ちのまま自分の教室へと向かうのだった。
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山田に告白された事を浩美に伝える久子……
果たして久子が出した結論は!?
どうぞ次回もお楽しみに。
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