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第4章 演劇部編
第13話 親友を応援する
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私が『この世界』に来てから早いもので三年が過ぎた。
現在私は小学四年生……
この三年間で私は色々な事をやり直した気がする。
家族や友人達と『前の世界』の時よりも積極的に会話をしたり遊びに行ったりしてきた。
そう……悔いが残らない様に、いつ死んでもいい様に……
小二の頃は小一と変わらずの生活だったけど、三年生になった時に一つの変化があったの。それは五十鈴君と同じクラスになったこと。
私としては待ちに待った、五十鈴君と同じクラス……本当に嬉しかった。
二年生まではクラスが違うから私から積極的に話す事はしなったけど、同じクラスになってからはお互いによく話をするようになった。
同じ班になって壁新聞を作ったり遠足では一緒にお弁当を食べたり……
本当に楽しい小学校生活をおくれている。
でも私の目的である彼に『好き』とう気持ちは伝えていない。
逆に今はいいかなとも思っている。
中学生になってからでも遅くはないかなって最近思うようになってしまって……
だから今の私は久子の恋の応援をするキャラを演じている。
そんなライバルの応援なんかをして大丈夫なの? って思われるかもしれないけど、この数年の久子を見ていたら本当に可愛くて可愛くて……
五十鈴君に何度も何度もアプローチをしている姿が健気で、とても可愛くて、自分の気持ちを忘れて思わず応援したくなってしまったの。
未来の久子は中学生になれば五十鈴君とは違う彼氏ができる事を知っている私はどこか心に余裕があるのかもしれない。なのでしばらくの間は親友として久子の応援をしてあげてもいい感覚になっていた。
でも私が五十鈴君の事を好きなのは変わりない。というか年々、好きな気持ちが大きくなってはきているし、本当に彼は『前の世界』の時よりも『大人っぽく』て、凄く魅力のある男の子になっている。
それに『前の世界』ではあれだけ口喧嘩をしていたのに『この世界』では一度も口喧嘩をしたことがない。私も喧嘩しないように気を付けてはいるけれど、彼も私に凄く気遣いしてくれているのがよく分かる。
ただ、同級生の中で一番人気のある久子のアプローチを気にもせず、いつもすり抜けて行く彼の気持ちがよく分からないのはたしかだ。
他に好きな子でもいるのかな? とさえ思ってしまう。でも彼の様子を見ていてもソレっぽい子はいないような感じだし……
それと彼は時折、窓の外を見ながら何か凄く考えている表情をしている時がある。
何か悩み事でもあるのかな? と少し気にはなったけど、三年生の時はなかなか聞けなかった。今年はチャンスがあれば聞いてみようかな……
「浩美~っ、おはよう!!」
「あっ、順子おはよう!!」
ここ最近、一つ変わった事があるといえば、私達女子の間では下の名前を呼び捨てで呼び合うようになったことかな。
今までの私は心の中では呼び捨てだったけど、本人の前では『〇〇ちゃん』って呼んでいたから、とてもやりやすくなったと思う。
まぁ、そうなったキッカケは私が間違えて『順子』と呼んでしまったのが発端なんだけど……
「ねぇねぇ、浩美?」
「なーに、順子?」
「四年生から『文化部』には入れるけど浩美は何部に入るつもりなの?」
「う、うーん……そうだなぁ……」
うちの小学校は四年生から部活に入部できる。ただし四年生は『文化部』だけで、『運動部』は五年生からという決まりがある。
私は『前の世界』と同じく『演劇部』に入部しようと思っているのだけど……
「私、『演劇部』に入ろうと思っているんだけど、浩美も一緒に入らない?」
「う……うん、そうねぇ……演劇部かぁ……何だか楽しそうだね?」
私は順子に白々しい返事をした。
「おはよう!!」
「あっ、久子おはよう」
「二人で何の話をしていたの?」
順子とは一年生から同じクラスのままだけど、実は久子とは三年生から同じクラスになっていた。ちなみに五十鈴君の親友の高山君や、皮肉な事ばかり言う森重君も同じクラスである。
「うん、二人で何部に入ろうかっていう話をしていたのよ。久子は何部に入るつもりなの?」
「フフ……私はねぇ、『家庭科部』に入ろうかなって思っているの」
「へ…へぇ、そうなんだぁ……久子らしくていいと思うわ……」
私は内心、ホッとした。何故かと言えば、『この世界』は『前の世界』とは微妙に未来が違っているから、もしかしたら『この世界』の久子は『演劇部』に入るって言うのではないかと少し心配していたから……
それに今の久子なら五十鈴君がどの部に入るのかも気にしていると思っていたけど、『この世界』でもそこは気にしていないんだなぁ……あぁ、良かった……あっ、しばらくは久子の恋路を応援しようと決めていたのに私がそんな事を思ってもいいのかな……?
でも『前の世界』で久子の夢を聞いた事があるけど、『この世界』でも同じ夢のままだったら……
「久子はとっても女の子らしいから『家庭科部』は良いかもしれないね」
最近、活発な女の子に変貌してきた順子がそう言うので私も続けてこう言った。
「そうよね。久子は私達と違って女の子らしいからお料理とか裁縫とかをやる方が似合っていると思うわ……」
「あ、ありがとう!! 二人にそう言ってもらえて嬉しいなぁ……私、将来はお母さんみたいな『素敵な主婦』になりたいの。だから頑張って色々な料理を覚えるね? それでたまにお家で覚えた料理を作ってみるからその時は二人で食べに来てちょうだいね?」
「 「うん、分かった!! 楽しみにしてるわね!!」 」
これで私達が入る部は決まった。後は彼が『前の世界』と同じように『演劇部』に入るのかどうか。もし入ったとして『前の世界』のような接し方を私は上手にできるのかな?
それと彼が『前の世界』と同じように四年生ながら『演劇部副部長』に大抜擢されるのだろうか……
明日の放課後に分かると思うけど……楽しみでもあり、少し不安でもある私だった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
この回から小学四年生編のスタートです。
そして浩美は『演劇部』へ!!
果たして『演劇部』ではどんなドラマが待ち構えているのか?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
現在私は小学四年生……
この三年間で私は色々な事をやり直した気がする。
家族や友人達と『前の世界』の時よりも積極的に会話をしたり遊びに行ったりしてきた。
そう……悔いが残らない様に、いつ死んでもいい様に……
小二の頃は小一と変わらずの生活だったけど、三年生になった時に一つの変化があったの。それは五十鈴君と同じクラスになったこと。
私としては待ちに待った、五十鈴君と同じクラス……本当に嬉しかった。
二年生まではクラスが違うから私から積極的に話す事はしなったけど、同じクラスになってからはお互いによく話をするようになった。
同じ班になって壁新聞を作ったり遠足では一緒にお弁当を食べたり……
本当に楽しい小学校生活をおくれている。
でも私の目的である彼に『好き』とう気持ちは伝えていない。
逆に今はいいかなとも思っている。
中学生になってからでも遅くはないかなって最近思うようになってしまって……
だから今の私は久子の恋の応援をするキャラを演じている。
そんなライバルの応援なんかをして大丈夫なの? って思われるかもしれないけど、この数年の久子を見ていたら本当に可愛くて可愛くて……
五十鈴君に何度も何度もアプローチをしている姿が健気で、とても可愛くて、自分の気持ちを忘れて思わず応援したくなってしまったの。
未来の久子は中学生になれば五十鈴君とは違う彼氏ができる事を知っている私はどこか心に余裕があるのかもしれない。なのでしばらくの間は親友として久子の応援をしてあげてもいい感覚になっていた。
でも私が五十鈴君の事を好きなのは変わりない。というか年々、好きな気持ちが大きくなってはきているし、本当に彼は『前の世界』の時よりも『大人っぽく』て、凄く魅力のある男の子になっている。
それに『前の世界』ではあれだけ口喧嘩をしていたのに『この世界』では一度も口喧嘩をしたことがない。私も喧嘩しないように気を付けてはいるけれど、彼も私に凄く気遣いしてくれているのがよく分かる。
ただ、同級生の中で一番人気のある久子のアプローチを気にもせず、いつもすり抜けて行く彼の気持ちがよく分からないのはたしかだ。
他に好きな子でもいるのかな? とさえ思ってしまう。でも彼の様子を見ていてもソレっぽい子はいないような感じだし……
それと彼は時折、窓の外を見ながら何か凄く考えている表情をしている時がある。
何か悩み事でもあるのかな? と少し気にはなったけど、三年生の時はなかなか聞けなかった。今年はチャンスがあれば聞いてみようかな……
「浩美~っ、おはよう!!」
「あっ、順子おはよう!!」
ここ最近、一つ変わった事があるといえば、私達女子の間では下の名前を呼び捨てで呼び合うようになったことかな。
今までの私は心の中では呼び捨てだったけど、本人の前では『〇〇ちゃん』って呼んでいたから、とてもやりやすくなったと思う。
まぁ、そうなったキッカケは私が間違えて『順子』と呼んでしまったのが発端なんだけど……
「ねぇねぇ、浩美?」
「なーに、順子?」
「四年生から『文化部』には入れるけど浩美は何部に入るつもりなの?」
「う、うーん……そうだなぁ……」
うちの小学校は四年生から部活に入部できる。ただし四年生は『文化部』だけで、『運動部』は五年生からという決まりがある。
私は『前の世界』と同じく『演劇部』に入部しようと思っているのだけど……
「私、『演劇部』に入ろうと思っているんだけど、浩美も一緒に入らない?」
「う……うん、そうねぇ……演劇部かぁ……何だか楽しそうだね?」
私は順子に白々しい返事をした。
「おはよう!!」
「あっ、久子おはよう」
「二人で何の話をしていたの?」
順子とは一年生から同じクラスのままだけど、実は久子とは三年生から同じクラスになっていた。ちなみに五十鈴君の親友の高山君や、皮肉な事ばかり言う森重君も同じクラスである。
「うん、二人で何部に入ろうかっていう話をしていたのよ。久子は何部に入るつもりなの?」
「フフ……私はねぇ、『家庭科部』に入ろうかなって思っているの」
「へ…へぇ、そうなんだぁ……久子らしくていいと思うわ……」
私は内心、ホッとした。何故かと言えば、『この世界』は『前の世界』とは微妙に未来が違っているから、もしかしたら『この世界』の久子は『演劇部』に入るって言うのではないかと少し心配していたから……
それに今の久子なら五十鈴君がどの部に入るのかも気にしていると思っていたけど、『この世界』でもそこは気にしていないんだなぁ……あぁ、良かった……あっ、しばらくは久子の恋路を応援しようと決めていたのに私がそんな事を思ってもいいのかな……?
でも『前の世界』で久子の夢を聞いた事があるけど、『この世界』でも同じ夢のままだったら……
「久子はとっても女の子らしいから『家庭科部』は良いかもしれないね」
最近、活発な女の子に変貌してきた順子がそう言うので私も続けてこう言った。
「そうよね。久子は私達と違って女の子らしいからお料理とか裁縫とかをやる方が似合っていると思うわ……」
「あ、ありがとう!! 二人にそう言ってもらえて嬉しいなぁ……私、将来はお母さんみたいな『素敵な主婦』になりたいの。だから頑張って色々な料理を覚えるね? それでたまにお家で覚えた料理を作ってみるからその時は二人で食べに来てちょうだいね?」
「 「うん、分かった!! 楽しみにしてるわね!!」 」
これで私達が入る部は決まった。後は彼が『前の世界』と同じように『演劇部』に入るのかどうか。もし入ったとして『前の世界』のような接し方を私は上手にできるのかな?
それと彼が『前の世界』と同じように四年生ながら『演劇部副部長』に大抜擢されるのだろうか……
明日の放課後に分かると思うけど……楽しみでもあり、少し不安でもある私だった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
この回から小学四年生編のスタートです。
そして浩美は『演劇部』へ!!
果たして『演劇部』ではどんなドラマが待ち構えているのか?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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