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第15章 アルバイト編
第94話 初恋の人に似ているんだよ
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根津さんに見られていた……
というか、それを今でも覚えているなんて……
サングラス越しなのに凄い人だ……
それに根津さんは『つねちゃん』みたいな人が好きなタイプだったというのも驚きだ。
どう答えるべきか。人違いだと誤魔化したほうが良いのか?
それとも正直に言った方が後々『この世界』の俺には都合が良いのか?
何故そう思うかというと、『この世界』の俺はあまり隠さない時の方がスムーズな様な気がするからだ。
『ホームルーム合宿』で新見が俺と『つねちゃん』が今も会っているとう事を話してしまったが、今のところ誰からもそのことに関して質問されることも無い状態だ。
だからお陰で俺は何の問題も無く高校生活をおくれているし、もしかしたらソレが原因で大塚達からアルバイトの誘いが無いのではという不安もあったが、逆に俺だけが誘われ、こうしてここでアルバイトが出来ている。
よしっ……
「ね……根津さん、何年も前の事なのに……それにたくさんのお客がいる中なのによく俺達のこと覚えておられたんですね……?」
俺がそう言うと根津さんは逆に本当に当たっていた自分自身に驚いたのかサングラスの奥からうっすら見える目を丸くしながらこう言った。
「おーっ!! やっぱりそうだったんだね!?」
「は、はい……おそらくそうだと思います……実は俺もあの時『急流すべり』の操縦室にいた根津さんのことを覚えていたんですよ。それで今日、久しぶりに根津さんの顔を見て思い出したというか、驚いたってのが本当のところです……」
「いやあ、俺も見間違えじゃなかったってのが驚きだよ。でもしかし五十鈴君もよく俺の事を覚えていたね?」
いっ……いや、普通は忘れられないでしょう!?
サングラスをしてパンチパーマで口ひげを生やしている、どう考えても『子供達の楽園』には相応しくないような人のことは……
それにあの時、『つねちゃん』も根津さんとは逆の理由でとても気にしていたしな……
「それよりも、俺みたいなどこにでもいるような小学生の顔を覚えていたほうが驚きですよ!! それだけ『つねちゃん』が根津さんの好きなタイプだったことですか……?」
「『つねちゃん』? ああ、あの時、五十鈴君と一緒にいた女性のことなんだね? そうそう、本当に俺の好きなタイプの女性だったんだよ。でも何故覚えていたかと言えば別の理由になるんだけどね……」
「別の理由……?」
「ああ、そうそう……別の理由さ。俺は君達二人を見た時になんとなく不思議に思ったんだよ。この二人は一体どういう関係なんだろうか? ……とね。姉弟にしては年が離れすぎているように見えたし、親子にしては逆に歳が近いようにも思えたしね。俺は操縦席で君達を見ながらずっとそんなことを考えていたからとても印象に残っていたんだと思う……」
なるほど、そういうことか。
あの時、『つねちゃん』が言っていたもんな。根津さんが俺達のことをジッと見ているような気がするって……
「それで実際のところ五十鈴君とあの女性はどういう関係なんだい?」
さぁ、どうする?
本当のことを言うべきか……というか、ここまで話すと誤魔化す言葉も見つからないのだが……いや一つだけある。
そうだな……一応、一つだけ『嘘』を入れた返答をしておこう……
「『つねちゃん』……あの人の名前は『常谷香織』っていうんですが、『つねちゃん』は俺が幼稚園の頃の先生なんですよ。それで卒園してからもたまに会ったりしていて……で、あの時は『つねちゃん』と弟さん、そして弟さんの彼女の四人でこの『エキサイトランド』に遊びに来ていたんです。それで途中から弟さんと彼女さんの二人は別行動を取り出して……それで俺と『つねちゃん』の二人で『急流すべり』に乗ることになったんですよ……」
「へぇぇ、そうだったのかぁ。卒園してからも会える関係だなんて、とても素敵だねぇぇ。なんだかとても羨ましいよ。実はさぁ……俺も昔、幼稚園の先生のことが大好きで卒園してからもよく家に遊びに行ってたんだよ」
「えっ、そうなんですか!?」
俺はまさかの根津さんの言葉に驚いた。
「ああ、そうだよ。小三の初めくらいまでは遊びに行ってたかな……」
「えっ、小三までなんですか?」
「うん、そうなんだ……本当はずっとずっと遊びに行きたかったけどさぁ……遊びに行けなくなったんだよ……」
根津さんがとても寂し気な表情に変わっていくのが分かる。
「何故、遊びに行けなくなったんですか? 親に行くのを反対されていたとかですか?」
「いやいや、親は関係無いよ。たださ、遊びに行ってもさ……先生はもういなかったから……」
「えっ?」
「俺が小三の頃の夏休みに先生は交通事故で亡くなったんだ……」
「!!!!」
俺は根津さんの口から『前の世界』では聞いた事も無かった事実を聞き衝撃を受けてしまい何も言えないでいた。
「今思えば、その『つねちゃん』って人が俺の大好きだった先生にとてもよく似ていたんだろうなぁ……だから余計に印象に残っていたんだと思うよ。そして驚いたよ。まさか五十鈴君も俺と『似た境遇』だなんてね。でも五十鈴君は俺と違って今も幼稚園の頃の先生に会えて、そして一緒に遊びに行ったり出来ている……ほんと、羨ましいと思うし、いつまでもこの素敵な関係を続けていってほしいなぁ……」
見た目と違い、根津さんは本当に優しい人だ。
そしてこの人に『つねちゃん』のことを話して良かったと俺は思った。
そして俺はある事に気が付く。
『この世界』でも何故俺はここでアルバイトをしたいと思ったのか……
別にこだわる必要は無かったし、別の選択だってできたのだ。
でも俺は何故だか分からなかったがここで働きたかった。
心の中でここには『俺にとって大事な何かがある』と思っていたんだろう。
それで今の根津さんの話……
根津さんの『悲しい過去』を聞くことにより、俺は更に『つねちゃん』を大切にしたいという気持ちがが沸いてくる。
そして絶対に『つねちゃん』と結婚したいという思いが強くなったのだ。
『つねちゃん』と初めてデートをした遊園地……
『つねちゃん』と初めてキスをした遊園地……
『つねちゃん』のことを大切にしたいと強く思わせてくれた人がいる遊園地……
この遊園地には俺にとって……俺が成長していくうえで大事な何かがある。
『皆さま大変長らくお待たせ致しました。只今よりエキサイトランド開園です……』
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
根津さんにまさかの過去が……
衝撃を受ける隆だったが、それ以上に『つねちゃん』を大切にしようという気持ちも強くなる。
根津さんが出来なかった分まで……
これから隆はアルバイトの中でどんな経験をしていくのか?
どうぞ次回もお楽しみに!!
というか、それを今でも覚えているなんて……
サングラス越しなのに凄い人だ……
それに根津さんは『つねちゃん』みたいな人が好きなタイプだったというのも驚きだ。
どう答えるべきか。人違いだと誤魔化したほうが良いのか?
それとも正直に言った方が後々『この世界』の俺には都合が良いのか?
何故そう思うかというと、『この世界』の俺はあまり隠さない時の方がスムーズな様な気がするからだ。
『ホームルーム合宿』で新見が俺と『つねちゃん』が今も会っているとう事を話してしまったが、今のところ誰からもそのことに関して質問されることも無い状態だ。
だからお陰で俺は何の問題も無く高校生活をおくれているし、もしかしたらソレが原因で大塚達からアルバイトの誘いが無いのではという不安もあったが、逆に俺だけが誘われ、こうしてここでアルバイトが出来ている。
よしっ……
「ね……根津さん、何年も前の事なのに……それにたくさんのお客がいる中なのによく俺達のこと覚えておられたんですね……?」
俺がそう言うと根津さんは逆に本当に当たっていた自分自身に驚いたのかサングラスの奥からうっすら見える目を丸くしながらこう言った。
「おーっ!! やっぱりそうだったんだね!?」
「は、はい……おそらくそうだと思います……実は俺もあの時『急流すべり』の操縦室にいた根津さんのことを覚えていたんですよ。それで今日、久しぶりに根津さんの顔を見て思い出したというか、驚いたってのが本当のところです……」
「いやあ、俺も見間違えじゃなかったってのが驚きだよ。でもしかし五十鈴君もよく俺の事を覚えていたね?」
いっ……いや、普通は忘れられないでしょう!?
サングラスをしてパンチパーマで口ひげを生やしている、どう考えても『子供達の楽園』には相応しくないような人のことは……
それにあの時、『つねちゃん』も根津さんとは逆の理由でとても気にしていたしな……
「それよりも、俺みたいなどこにでもいるような小学生の顔を覚えていたほうが驚きですよ!! それだけ『つねちゃん』が根津さんの好きなタイプだったことですか……?」
「『つねちゃん』? ああ、あの時、五十鈴君と一緒にいた女性のことなんだね? そうそう、本当に俺の好きなタイプの女性だったんだよ。でも何故覚えていたかと言えば別の理由になるんだけどね……」
「別の理由……?」
「ああ、そうそう……別の理由さ。俺は君達二人を見た時になんとなく不思議に思ったんだよ。この二人は一体どういう関係なんだろうか? ……とね。姉弟にしては年が離れすぎているように見えたし、親子にしては逆に歳が近いようにも思えたしね。俺は操縦席で君達を見ながらずっとそんなことを考えていたからとても印象に残っていたんだと思う……」
なるほど、そういうことか。
あの時、『つねちゃん』が言っていたもんな。根津さんが俺達のことをジッと見ているような気がするって……
「それで実際のところ五十鈴君とあの女性はどういう関係なんだい?」
さぁ、どうする?
本当のことを言うべきか……というか、ここまで話すと誤魔化す言葉も見つからないのだが……いや一つだけある。
そうだな……一応、一つだけ『嘘』を入れた返答をしておこう……
「『つねちゃん』……あの人の名前は『常谷香織』っていうんですが、『つねちゃん』は俺が幼稚園の頃の先生なんですよ。それで卒園してからもたまに会ったりしていて……で、あの時は『つねちゃん』と弟さん、そして弟さんの彼女の四人でこの『エキサイトランド』に遊びに来ていたんです。それで途中から弟さんと彼女さんの二人は別行動を取り出して……それで俺と『つねちゃん』の二人で『急流すべり』に乗ることになったんですよ……」
「へぇぇ、そうだったのかぁ。卒園してからも会える関係だなんて、とても素敵だねぇぇ。なんだかとても羨ましいよ。実はさぁ……俺も昔、幼稚園の先生のことが大好きで卒園してからもよく家に遊びに行ってたんだよ」
「えっ、そうなんですか!?」
俺はまさかの根津さんの言葉に驚いた。
「ああ、そうだよ。小三の初めくらいまでは遊びに行ってたかな……」
「えっ、小三までなんですか?」
「うん、そうなんだ……本当はずっとずっと遊びに行きたかったけどさぁ……遊びに行けなくなったんだよ……」
根津さんがとても寂し気な表情に変わっていくのが分かる。
「何故、遊びに行けなくなったんですか? 親に行くのを反対されていたとかですか?」
「いやいや、親は関係無いよ。たださ、遊びに行ってもさ……先生はもういなかったから……」
「えっ?」
「俺が小三の頃の夏休みに先生は交通事故で亡くなったんだ……」
「!!!!」
俺は根津さんの口から『前の世界』では聞いた事も無かった事実を聞き衝撃を受けてしまい何も言えないでいた。
「今思えば、その『つねちゃん』って人が俺の大好きだった先生にとてもよく似ていたんだろうなぁ……だから余計に印象に残っていたんだと思うよ。そして驚いたよ。まさか五十鈴君も俺と『似た境遇』だなんてね。でも五十鈴君は俺と違って今も幼稚園の頃の先生に会えて、そして一緒に遊びに行ったり出来ている……ほんと、羨ましいと思うし、いつまでもこの素敵な関係を続けていってほしいなぁ……」
見た目と違い、根津さんは本当に優しい人だ。
そしてこの人に『つねちゃん』のことを話して良かったと俺は思った。
そして俺はある事に気が付く。
『この世界』でも何故俺はここでアルバイトをしたいと思ったのか……
別にこだわる必要は無かったし、別の選択だってできたのだ。
でも俺は何故だか分からなかったがここで働きたかった。
心の中でここには『俺にとって大事な何かがある』と思っていたんだろう。
それで今の根津さんの話……
根津さんの『悲しい過去』を聞くことにより、俺は更に『つねちゃん』を大切にしたいという気持ちがが沸いてくる。
そして絶対に『つねちゃん』と結婚したいという思いが強くなったのだ。
『つねちゃん』と初めてデートをした遊園地……
『つねちゃん』と初めてキスをした遊園地……
『つねちゃん』のことを大切にしたいと強く思わせてくれた人がいる遊園地……
この遊園地には俺にとって……俺が成長していくうえで大事な何かがある。
『皆さま大変長らくお待たせ致しました。只今よりエキサイトランド開園です……』
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
根津さんにまさかの過去が……
衝撃を受ける隆だったが、それ以上に『つねちゃん』を大切にしようという気持ちも強くなる。
根津さんが出来なかった分まで……
これから隆はアルバイトの中でどんな経験をしていくのか?
どうぞ次回もお楽しみに!!
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