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第8章 逆戻り編
第41話 初恋の人が住んで居た家
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「隆? そんなに慌ててどこに行くの!?」
「あっ、ああ……ちょっと志保姉ちゃんのところに行って来るよ……」
「えっ!? し、『志保姉ちゃん』?」
ガチャッ……
母さんは何故か不思議そうな顔をしていたが、俺は気にすることなく志保姉ちゃんの自宅に向かった。
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
「はっ、はーい!! そんなに鳴らさなくても聞こえてるわよ!! で、どちらさま?」
「たっ、隆です!!」
「えっ!? 隆君? ちょっと待っててね? 直ぐにドアを開けるから」
ドアを開けてくれた志保さんも俺の事を不思議そうに見ている。
まぁ、仕方ないよな。
俺が『この世界』の志保姉ちゃんに会うのは約五年振りだが、志保姉ちゃんにしてみれば俺とは昨日会ったばかりだからな……
「電話してくれてたら私の方からおうちに行ったのに……で、隆君、今日はどうしたの?」
俺は意を決して志保姉ちゃんにお願いをする。
「志保姉ちゃん、お願いだ!! つっ、つねちゃんの自宅の住所を教えてくれないか!?」
「しっ、『志保姉ちゃん』ですって!?」
「へっ?」
俺は志保姉ちゃんの驚くところが違った事に戸惑ったと同時に、ようやく出かける前に母さんが不思議がり、目の前の志保姉ちゃんも驚いている理由が判明した。
「隆君、私の事を『志保姉ちゃん』って呼ぶなんて何十年振りかしら? 私とてもビックリしたわ。最近は私の事は『志保さん』って呼んでいたから……なんか懐かしいわねぇ……」
志保姉ちゃん、思い出に慕っている場合じゃないんだと俺は言いたかったが、あんなに嬉しそうな志保姉ちゃんの顔を見ると俺はなかなか言えずにいた。
「あの頃の隆君はホント可愛かったなぁ……私は妹しかいなかったから隆君みたいな弟が欲しくて欲しくて仕方なかったもんねぇ……でも……はぁぁ……今は『ただのおっさん』ね。何でこの歳になるまで独身だったのよ? もっと若い頃にちゃんと恋愛をしておけば良かったのに……」
志保姉ちゃんに散々な言われようをされてしまうが、この人は全然悪意は無く昔から思った事をストレートに言ってしまうところがあったので俺は言い返さず苦笑いをしていた。
逆に俺は『鎌田家』に婿養子として入った志保姉ちゃんの旦那さんが気の毒で仕方が無い気持ちになってしまう。
そう言えば俺は志保姉ちゃんの旦那さんに一度も会った事が無かったよな……
俺が社会人になってから両親はともかく俺は『鎌田家』の人達との付き合いはほとんどなかったからな。当然、結婚式にも行って無いし……
って、俺はそんな事を考える為に志保姉ちゃんの家に来た訳じゃ無かった。
「それで志保さん!? つねちゃんの自宅の住所を教えてくれるの? くれないの?」
「えーっ、何で志保さんって言うのよぉぉ!? 志保姉ちゃんのままで良かったのにって、まぁそんな事はどうでもいいわ。ちょっと待ってて。香織先輩から頂いた年賀状があるわ。たしかそれに住所が書いてあったはずだから……」
――――――――――――――――――――――
俺は電車を数回乗り継いでようやく『つねちゃん』が住んで居た町を歩いている。
『つねちゃん』が書いた年賀状を握りしめながら……
『つねちゃん』が志保さん宛てに書いた年賀状……
たくさんの文章が書いている。とても綺麗な字だ。
それにしてもこの年賀状、あまりに文章が多くて年賀状というよりも手紙に見える。俺は読んでいないので内容は分からないが、帰りの電車の中でゆっくり読む事にする。
まぁ、志保さん宛ての年賀状だから俺が読んでもあまり関係の無い事ばかり書いてあるんだろうけども……
この町は都会の端にある小高い山を開拓した『新興住宅地』……
十数年前にこの土地に引っ越したとさっき志保さんから聞いた。
『山本香織』……
俺は年賀状に書かれている『差出人』の名前をじっと見る。
そうなんだ。俺はあの時、『つねちゃん』の部屋に居る際にかかってきた電話の相手の名前が『山本』と知り、この人が将来の旦那さんになるのではないかと思ってしまったんだ。
そしてそこから『嫉妬の心』が湧いてきて……
『この世界』の『つねちゃん』は見合い結婚だと志保さんから聞いていた。
でも『あの世界』でもそうかといえば、そんな保証はどこにも無い。
だってそうだろ?
こんな俺が寿や石田に告白されたくらいだからな。
『つねちゃん』だって見合い相手のはずの男が恋愛相手として現れる可能性だってあるかもしれないんだ。
でもあの時の俺の『嫉妬』は間違いだった……
『つねちゃん』の気持ちも知らずに……
今更、後悔しても仕方の無い事だが、やはり後悔してしまう。
それに俺は『つねちゃん』を裏切る様な行為(石田とのキス)をしてしまった。
だから俺は『つねちゃん』に謝りたい……
『この世界』でついこの間まで住んで居た、そして生きていた家の前で俺は『つねちゃん』に謝りたいんだ。
そして遂に俺は『つねちゃん』が住んで居た家が視界に入ってきた。
二階建で一戸建て、大きな庭やガレージもある。
外壁が白色に統一されていてとても清潔感のある家だ。
家の前には立派な門もある。
俺がその門に近づこうとした瞬間……
ギー……
えっ? 家から誰か出て来たぞ!?
ん? あの顔、どこかで見たことがある様な……
あっ、あの人は!!
の、昇さんだ!!
――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
隆は『つねちゃん』に詫びる為、生前に住んで居た自宅を訪問する。
しかしその自宅から『つねちゃん』の弟『昇』の姿が!?
次回、昇の口から『つねちゃん』に関する意外な事実を聞かされる!?
それでは次回もお楽しみに(^_-)-☆
「あっ、ああ……ちょっと志保姉ちゃんのところに行って来るよ……」
「えっ!? し、『志保姉ちゃん』?」
ガチャッ……
母さんは何故か不思議そうな顔をしていたが、俺は気にすることなく志保姉ちゃんの自宅に向かった。
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
「はっ、はーい!! そんなに鳴らさなくても聞こえてるわよ!! で、どちらさま?」
「たっ、隆です!!」
「えっ!? 隆君? ちょっと待っててね? 直ぐにドアを開けるから」
ドアを開けてくれた志保さんも俺の事を不思議そうに見ている。
まぁ、仕方ないよな。
俺が『この世界』の志保姉ちゃんに会うのは約五年振りだが、志保姉ちゃんにしてみれば俺とは昨日会ったばかりだからな……
「電話してくれてたら私の方からおうちに行ったのに……で、隆君、今日はどうしたの?」
俺は意を決して志保姉ちゃんにお願いをする。
「志保姉ちゃん、お願いだ!! つっ、つねちゃんの自宅の住所を教えてくれないか!?」
「しっ、『志保姉ちゃん』ですって!?」
「へっ?」
俺は志保姉ちゃんの驚くところが違った事に戸惑ったと同時に、ようやく出かける前に母さんが不思議がり、目の前の志保姉ちゃんも驚いている理由が判明した。
「隆君、私の事を『志保姉ちゃん』って呼ぶなんて何十年振りかしら? 私とてもビックリしたわ。最近は私の事は『志保さん』って呼んでいたから……なんか懐かしいわねぇ……」
志保姉ちゃん、思い出に慕っている場合じゃないんだと俺は言いたかったが、あんなに嬉しそうな志保姉ちゃんの顔を見ると俺はなかなか言えずにいた。
「あの頃の隆君はホント可愛かったなぁ……私は妹しかいなかったから隆君みたいな弟が欲しくて欲しくて仕方なかったもんねぇ……でも……はぁぁ……今は『ただのおっさん』ね。何でこの歳になるまで独身だったのよ? もっと若い頃にちゃんと恋愛をしておけば良かったのに……」
志保姉ちゃんに散々な言われようをされてしまうが、この人は全然悪意は無く昔から思った事をストレートに言ってしまうところがあったので俺は言い返さず苦笑いをしていた。
逆に俺は『鎌田家』に婿養子として入った志保姉ちゃんの旦那さんが気の毒で仕方が無い気持ちになってしまう。
そう言えば俺は志保姉ちゃんの旦那さんに一度も会った事が無かったよな……
俺が社会人になってから両親はともかく俺は『鎌田家』の人達との付き合いはほとんどなかったからな。当然、結婚式にも行って無いし……
って、俺はそんな事を考える為に志保姉ちゃんの家に来た訳じゃ無かった。
「それで志保さん!? つねちゃんの自宅の住所を教えてくれるの? くれないの?」
「えーっ、何で志保さんって言うのよぉぉ!? 志保姉ちゃんのままで良かったのにって、まぁそんな事はどうでもいいわ。ちょっと待ってて。香織先輩から頂いた年賀状があるわ。たしかそれに住所が書いてあったはずだから……」
――――――――――――――――――――――
俺は電車を数回乗り継いでようやく『つねちゃん』が住んで居た町を歩いている。
『つねちゃん』が書いた年賀状を握りしめながら……
『つねちゃん』が志保さん宛てに書いた年賀状……
たくさんの文章が書いている。とても綺麗な字だ。
それにしてもこの年賀状、あまりに文章が多くて年賀状というよりも手紙に見える。俺は読んでいないので内容は分からないが、帰りの電車の中でゆっくり読む事にする。
まぁ、志保さん宛ての年賀状だから俺が読んでもあまり関係の無い事ばかり書いてあるんだろうけども……
この町は都会の端にある小高い山を開拓した『新興住宅地』……
十数年前にこの土地に引っ越したとさっき志保さんから聞いた。
『山本香織』……
俺は年賀状に書かれている『差出人』の名前をじっと見る。
そうなんだ。俺はあの時、『つねちゃん』の部屋に居る際にかかってきた電話の相手の名前が『山本』と知り、この人が将来の旦那さんになるのではないかと思ってしまったんだ。
そしてそこから『嫉妬の心』が湧いてきて……
『この世界』の『つねちゃん』は見合い結婚だと志保さんから聞いていた。
でも『あの世界』でもそうかといえば、そんな保証はどこにも無い。
だってそうだろ?
こんな俺が寿や石田に告白されたくらいだからな。
『つねちゃん』だって見合い相手のはずの男が恋愛相手として現れる可能性だってあるかもしれないんだ。
でもあの時の俺の『嫉妬』は間違いだった……
『つねちゃん』の気持ちも知らずに……
今更、後悔しても仕方の無い事だが、やはり後悔してしまう。
それに俺は『つねちゃん』を裏切る様な行為(石田とのキス)をしてしまった。
だから俺は『つねちゃん』に謝りたい……
『この世界』でついこの間まで住んで居た、そして生きていた家の前で俺は『つねちゃん』に謝りたいんだ。
そして遂に俺は『つねちゃん』が住んで居た家が視界に入ってきた。
二階建で一戸建て、大きな庭やガレージもある。
外壁が白色に統一されていてとても清潔感のある家だ。
家の前には立派な門もある。
俺がその門に近づこうとした瞬間……
ギー……
えっ? 家から誰か出て来たぞ!?
ん? あの顔、どこかで見たことがある様な……
あっ、あの人は!!
の、昇さんだ!!
――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
隆は『つねちゃん』に詫びる為、生前に住んで居た自宅を訪問する。
しかしその自宅から『つねちゃん』の弟『昇』の姿が!?
次回、昇の口から『つねちゃん』に関する意外な事実を聞かされる!?
それでは次回もお楽しみに(^_-)-☆
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