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第4章 運動会編
第17話 初恋の人よりも……
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チクショウ……足首がメチャクチャ痛い……
『つねちゃん』に良いところを見せれない......
俺は足の痛みが治まらず焦っていた。
そして悩んでもいた。
どう考えてもこの足ではまともには走れない。
だが、よくあるドラマやアニメなら足の痛みを我慢してリレーに出るのが『普通』だし、その方がカッコイイのだろう……
この痛みなら、びっこを引きながらゆっくりとなら最後まで走る事は出来ると思う。
そして周りのみんなからは『足が痛いのに最後まで諦めずに良く頑張って走ったね』と言われるのが『定番』だ。
それに『現実世界』の頃の俺とは違い、『今の世界』の俺はクラスの中でも人気がある方なので誰一人、嫌味を言う者もいない事も隆は理解している。
しかし……
『本物の小学一年生』なら、せっかく掴んだ『リレー選手の座』を足の痛みのせいで諦める事はせずに無理して走ることだろう。例え自分のせいでクラスが負けると分かっていても……
『こんな俺をつねちゃんに見せたくない』と思っている俺だけど、きっと『つねちゃん』は痛みを我慢しながら走り切った自分を褒めてくれるに違いない……
だけど……
「俺は大人だ……」
本当は皆、リレーに負けたくないに決まっているんだ。
逆の立場なら俺だってそうだ。
それなのに『絶対に負ける』『皆をガッカリさせる』と分かっているのに『今』の俺が出ても良いのか?
俺はそう思いながら、決断をした。
担任の井上先生に足を挫いたので誰かと交代させて欲しいとお願いした。
井上先生は驚いた様子だったが、隆の真剣な目を見て、直ぐにニコッと微笑みながら隆の頭を撫でながら、『分かったわ。五十鈴君、先生に教えてくれてありがとね』と言ってくれた。
そして急遽、俺の代役は友人の高山に決まったのである。
まぁ、俺が名指しで指名したんだが……
高山は『え――――――っ!?』と叫びながらも井上先生に『五十鈴君がどうしても高山君と代えて欲しいって言うし、お願いだから頑張ってちょうだい』と言われると、高山は急に『目の色』が変わり『五十鈴が言うんなら仕方ないよなぁぁ!!』と嬉しそうに言いながら気合いを入れていた。
ホント、あいつは良い奴だな。
俺は高山を見ながらそう思っていた。
井上先生は隆に『今から保険室に一緒に行こう』と言ってくれたが、俺は『リレーを見たいから後にしてほしい』とお願いし、井上先生も心配そうにしていたが渋々、俺のお願いを聞き入れてくれた。
そして俺はクラスの待機場所にある自分の椅子に座りグランドを見つめながら心の中で『自問自答』をしている。
「ふぅぅぅ……俺は間違っていないはずだ……多分……」
俺はこの『選択』は間違ってはいないんだ。と自分に言い聞かせていたが、やはり『つねちゃん』に良いところを見せる事が出来なくなった事はショックであった。
やはり、『この世界』でもリレーで活躍する事は出来なかったか……
でも出てコケてしまうのと、怪我をして出れなくなるのとではどっちがマシなんだろうか?
そんな事を考えている俺を優しく呼ぶ声がする。
「隆君……」
俺は慌てて後ろを振り向くと、そこには笑顔で立っている『つねちゃん』がいた。
「つっ、つねちゃん!? いっ、一体どうしたの?」
俺は驚いた声で『つねちゃん』に問いかける。
「隆君、先生と一緒に『保健室』に行こっか?……」
『つねちゃん』からまさか保健室に一緒に行こうと言われるとは思っていなかった俺はビックリして椅子ごと倒れそうになったが、なんとか持ちこたえた。
「で、でもさっき井上先生に……」
「大丈夫よ。井上先生には私からお話しておいたから。実は井上先生は私が通っていた大学の先輩なのよ。って、そんな事より早く『保健室』で治療しましょう。『捻挫』は早く治療しないといけないのよ。だから行きましょう!! ねっ、隆君?」
俺はとても真剣にそして、とても心配そうな表情をしている『つねちゃん』に対して少し頬を赤くしながらうなずくのであった。
「う、うん……分かったよ……」
『つねちゃん』と一緒に『保健室』に行こうとしていた隆の頭の中では『つねちゃん』のサラッと言ったセリフの一部の内容が駆け巡り、驚きを隠せずにいた。
ま、まさか、井上先生が『つねちゃん』の大学の先輩だったなんて……
それに、あの志保さんも『つねちゃん』の大学の後輩であり、先では『幼稚園の先生』としても後輩になる……
知らなかった……
そして驚いた……
俺の周りの人達がこんなにも繋がっていただなんて……
俺はこの数ヶ月、皆が知らない『未来』を自分は沢山知っているとだけ思っていた……
しかし『現実世界』では絶対に知る事の出来なかった『過去』が『この世界』ではあまりに多すぎる。と、今は痛感しているし、それにこれからもっともっと知りたいという気持ちにもなってきている。
そんな色々な事を考えながら俺は『つねちゃん』に連れられて『保健室』に向かうのであった。
――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
結局、リレーに出ない事を決断した隆
その決断は本当に隆にとって正しかったのか?
次回、その結果が明らかになります。
そして『運動会編』も最終話となります。
『つねちゃん』に良いところを見せれない......
俺は足の痛みが治まらず焦っていた。
そして悩んでもいた。
どう考えてもこの足ではまともには走れない。
だが、よくあるドラマやアニメなら足の痛みを我慢してリレーに出るのが『普通』だし、その方がカッコイイのだろう……
この痛みなら、びっこを引きながらゆっくりとなら最後まで走る事は出来ると思う。
そして周りのみんなからは『足が痛いのに最後まで諦めずに良く頑張って走ったね』と言われるのが『定番』だ。
それに『現実世界』の頃の俺とは違い、『今の世界』の俺はクラスの中でも人気がある方なので誰一人、嫌味を言う者もいない事も隆は理解している。
しかし……
『本物の小学一年生』なら、せっかく掴んだ『リレー選手の座』を足の痛みのせいで諦める事はせずに無理して走ることだろう。例え自分のせいでクラスが負けると分かっていても……
『こんな俺をつねちゃんに見せたくない』と思っている俺だけど、きっと『つねちゃん』は痛みを我慢しながら走り切った自分を褒めてくれるに違いない……
だけど……
「俺は大人だ……」
本当は皆、リレーに負けたくないに決まっているんだ。
逆の立場なら俺だってそうだ。
それなのに『絶対に負ける』『皆をガッカリさせる』と分かっているのに『今』の俺が出ても良いのか?
俺はそう思いながら、決断をした。
担任の井上先生に足を挫いたので誰かと交代させて欲しいとお願いした。
井上先生は驚いた様子だったが、隆の真剣な目を見て、直ぐにニコッと微笑みながら隆の頭を撫でながら、『分かったわ。五十鈴君、先生に教えてくれてありがとね』と言ってくれた。
そして急遽、俺の代役は友人の高山に決まったのである。
まぁ、俺が名指しで指名したんだが……
高山は『え――――――っ!?』と叫びながらも井上先生に『五十鈴君がどうしても高山君と代えて欲しいって言うし、お願いだから頑張ってちょうだい』と言われると、高山は急に『目の色』が変わり『五十鈴が言うんなら仕方ないよなぁぁ!!』と嬉しそうに言いながら気合いを入れていた。
ホント、あいつは良い奴だな。
俺は高山を見ながらそう思っていた。
井上先生は隆に『今から保険室に一緒に行こう』と言ってくれたが、俺は『リレーを見たいから後にしてほしい』とお願いし、井上先生も心配そうにしていたが渋々、俺のお願いを聞き入れてくれた。
そして俺はクラスの待機場所にある自分の椅子に座りグランドを見つめながら心の中で『自問自答』をしている。
「ふぅぅぅ……俺は間違っていないはずだ……多分……」
俺はこの『選択』は間違ってはいないんだ。と自分に言い聞かせていたが、やはり『つねちゃん』に良いところを見せる事が出来なくなった事はショックであった。
やはり、『この世界』でもリレーで活躍する事は出来なかったか……
でも出てコケてしまうのと、怪我をして出れなくなるのとではどっちがマシなんだろうか?
そんな事を考えている俺を優しく呼ぶ声がする。
「隆君……」
俺は慌てて後ろを振り向くと、そこには笑顔で立っている『つねちゃん』がいた。
「つっ、つねちゃん!? いっ、一体どうしたの?」
俺は驚いた声で『つねちゃん』に問いかける。
「隆君、先生と一緒に『保健室』に行こっか?……」
『つねちゃん』からまさか保健室に一緒に行こうと言われるとは思っていなかった俺はビックリして椅子ごと倒れそうになったが、なんとか持ちこたえた。
「で、でもさっき井上先生に……」
「大丈夫よ。井上先生には私からお話しておいたから。実は井上先生は私が通っていた大学の先輩なのよ。って、そんな事より早く『保健室』で治療しましょう。『捻挫』は早く治療しないといけないのよ。だから行きましょう!! ねっ、隆君?」
俺はとても真剣にそして、とても心配そうな表情をしている『つねちゃん』に対して少し頬を赤くしながらうなずくのであった。
「う、うん……分かったよ……」
『つねちゃん』と一緒に『保健室』に行こうとしていた隆の頭の中では『つねちゃん』のサラッと言ったセリフの一部の内容が駆け巡り、驚きを隠せずにいた。
ま、まさか、井上先生が『つねちゃん』の大学の先輩だったなんて……
それに、あの志保さんも『つねちゃん』の大学の後輩であり、先では『幼稚園の先生』としても後輩になる……
知らなかった……
そして驚いた……
俺の周りの人達がこんなにも繋がっていただなんて……
俺はこの数ヶ月、皆が知らない『未来』を自分は沢山知っているとだけ思っていた……
しかし『現実世界』では絶対に知る事の出来なかった『過去』が『この世界』ではあまりに多すぎる。と、今は痛感しているし、それにこれからもっともっと知りたいという気持ちにもなってきている。
そんな色々な事を考えながら俺は『つねちゃん』に連れられて『保健室』に向かうのであった。
――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
結局、リレーに出ない事を決断した隆
その決断は本当に隆にとって正しかったのか?
次回、その結果が明らかになります。
そして『運動会編』も最終話となります。
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