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第7章 試練編
第76話 彼女からのお願い事/亮二
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「えーっ!?」「結婚!?」
俺と加奈子ちゃんは同時に驚きの声を出した。
「千夏ねぇって彼氏がいるのに毎日、俺のお見舞いに来てくれていたのかい? それは彼氏さんに申し訳ないなよ。俺の事はもういいから、彼氏さんと……」
「だからその事について今日は話そうと思ったの。ただね、彼も亮君の事情も私の想いも知ってくれているから……私が毎日、亮君のお見舞いに行く事は承諾してくれていたの。だから私も甘えてしまって……」
俺の事情はともかく、千夏ねぇの想いって……?
「最初は彼と付き合うつもりなんて全然なかったというか、私が付き合える様な立場の人では無いというか……でも会話をしたり一緒に食事をしたりしているうちにいつの間にか彼に対して今まで感じた事の無い感情が芽生えたというか……初めて本当の自分をさらけ出せる心地良い人っていうか……そして自分の心の奥底に閉まっている感情を消してくれたんだ……」
そうなんだ。あの『元ヤンキー』の千夏ねぇにそこまで言わせる彼氏さんって凄い包容力がある人かもしれないな。でも最後に言った自分の心の奥底に閉まっている感情っていうのはよく分からないけど……
チラッと加奈子ちゃんを見ると彼女は少し緊張した表情をしながら黙って千夏ねぇの話を聞いている。
「千夏ねぇ、良かったじゃん。俺に残っている千夏ねぇの記憶ってさぁ、常に彼氏が入れ代わり立ち代わりしていたイメージだったし……千夏ねぇがそんな気持ちになれる人が見つかったのは弟分の俺とすれば凄く嬉しいよ」
「入れ代わり立ち代わりって……まぁ、その通りではあったけどさ……それに弟分かぁ……でも有難う。それでね、そろそろ私も彼に甘えるのは止めようかなって思ってさ……あ、勘違いしないでね? これからお見舞いには来ないって言っている訳ではないのよ」
「ハハハ、それは分かってるよ。彼氏との時間を大事にしたいって事だろ? それでいいじゃん。俺は千夏ねぇにそんな彼氏ができたのがとても嬉しいしさ……それでその彼氏さんとはどこで知り合ったんだい?」
「うん、彼氏は会社の上司なんだ……」
「えっ、そうなのかい!? それは凄いなぁ」
「凄いかどうかは分からないけど、亮君も彼に会えば驚くかもよ」
「驚く? もしかして俺が知っている人なのかい?」
「ええ……亮君も知っている人よ」
「千夏ねぇが働いている会社に俺の知り合いっていたかな? ん? 一人だけいたような……でも、まさか……」
「フフフ、そのまさかよ。私の彼氏は隆おじさんの弟、五十鈴博さんよ」
「 「えーっ!?」 」
博おじさんの名前を聞いて俺が驚くのは当然だけど、何故か加奈子ちゃんも驚いている。
「加奈子ちゃん、博おじさんの事を知っているのかい?」
「ううん、私は五十鈴博さんっていう人は知らないけど、隆おじさん……広美さんのご両親の事は知っているから……だから、その弟さんって聞いて驚いちゃったの」
そうなんだ。加奈子ちゃんは広美や隆おじさん達の事を知っているんだ……あの人達の事を知っているって事はやはり俺と加奈子ちゃんは結構、濃い付き合いをしていたんだなぁ……それなのにお何故俺は加奈子ちゃんの事を何一つ覚えていないんだろうか……?
「はぁ……」
「えっ、何で亮君、ため息なんてつくの? あっ!? ははぁん……私が他の人に取られるのが嫌でヤキモチを妬いているのね?」
「ち、違うよ!! 何で俺が千夏ねぇにヤキモチを妬かないといけないんだよ!? 俺は千夏ねぇの事を恋愛対象で見た事なんて一度も無いんだからさ……」
「い、一度も無いかぁ……はぁ……」
今度は何故か千夏ねぇがため息をついたけど、直ぐに笑顔になり加奈子ちゃんに近付いて行く。そして俺に聞こえない様に加奈子ちゃんの耳元で何かささやいたみたいだ。
加奈子ちゃんは千夏ねぇのそのささやきに対して「えっ? は、はい。分かりました。有難うございます」と少し驚いた表情をしながら答えていた。
「亮君?」
「な、何、千夏ねぇ?」
「あのさぁ、もし亮君の記憶が戻っても高3の頃に私とやり取りをした記憶は忘れたフリをしてくれないかな? フフフ……」
「えっ、やり取り? どんなやり取りをしたんだい? それにせっかく思い出しても忘れたフリをしろって何だよ? 忘れたフリをしないといけない様な事があったのかい?」
「ハハハ、冗談よ。冗談……別に何でも無いからさ。それよりも私としては早く三田さんとの思い出の記憶が戻る事を願っているわ。これだけ毎日、亮君の為に足を運んでくれているんだし……」
「う、うん、そうだね……」
「まぁ、思い出すのに何年もかからないとは思うけどね」
千夏ねぇはそう言うと「また来るわね」と言い残し病室から出て行った。
病室には俺と加奈子ちゃんの二人きりとなった。いつものパターンなのにさっきまで千夏ねぇがいた事により少し病室内の空気が違う様な感じがするのは俺だけだろうか? 加奈子ちゃんも同じ気持ちかな?
「か、加奈子ちゃん? さっき耳元で千夏ねぇに何か言われてたみたいだけど何を言われたんだい?」
「え? そ、それは……秘密かな……」
「えーっ、秘密なのかい? 凄く気になるんだけどなぁ……」
「でも秘密」
「はぁ……そっかぁ……分かりましたよぉ……」
「フフフ……りょう君、そんなにガッカリしないで。また近いうちに話せる時が来ると思うから。いえ、話せる時が来て欲しいなぁ……」
加奈子ちゃんはそう言うとカバンから教科書を取り出した。
「りょう君、そろそろ勉強しましょうか?」
「そ、そうだね。でも来月高校の入学試験なのに俺に勉強なんて教えていていいのかい? 試験まで日も無いし加奈子ちゃん自身の勉強をしたほうが……」
「大丈夫だよ。私は人に教えながら勉強する方がとても頭によく入るの。りょう君に勉強を教え始めてからの成績の方が教える前よりもアップしているんだよ」
「えっ、そうなのかい? それは凄いなぁ……それじゃ青葉東高校よりもレベルが上の高校を受ける事もできたんじゃ……」
「それは嫌よ。私は何が何でもりょう君が通っていた青葉東高校に行きたいもん」
「加奈子ちゃん……」
俺が通っていた高校かぁ……でも俺は青葉東高校時代の事を何一つ覚えていないんだよなぁ……俺はどんな高校生活をおくっていたのだろうか?
千夏ねぇがさっき言っていた高3での出来事も気になるしなぁ……それに高校時代の広美とのやり取りだって思い出したい。広美に直接聞くこともできるけど、今の広美は助演女優賞という凄い賞を取った超有名人だし、俺みたいな男が簡単に連絡なんてしてはいけないような気もするし……
「りょう君?」
「えっ?」
「あのね、一つお願いがあるの……」
「お願い? どんなお願いかな? 加奈子ちゃんにはとてもお世話になっているし、俺ができる事なら何でもしたいとは思うけど……」
「あのね、りょう君が退院して私が無事に青葉東高校を合格して高校生になったら……」
「高校生になったら……?」
「私とデートして欲しいの……いいかな……?」
「デート!? デートかぁ……ま、まぁ、デートはいいんだけど……加奈子ちゃんの高校合格は間違いないとしてもさぁ……俺が退院できるのはいつになることやら……まだちゃんと歩けるようになった訳ではないし……」
「大丈夫だよ。りょう君、毎日リハビリ凄く頑張っているし、少しずつでも歩けるようになっているし……きっと退院する日はそんなに遠くないと思うわ。でも、すぐに退院は無理でも外出許可をもらってりょう君は車椅子でも構わないし」
「外出許可をもらって車椅子でかぁ……そんな状態の俺とのデートって大変じゃない? 加奈子ちゃんはどこにデートに行きたいんだい?」
「全然大変では無いわ。一緒にデート出来るだけで私は幸せだし……」
本当に加奈子ちゃんは俺の事を想ってくれている……何で俺の事をそこまで想ってくれるようになったのか早く記憶が戻って欲しくてたまらない気持ちだ。
「それと私がりょう君と一緒にデートしたい所は今、エキサイトランド跡地に建設中で今年の8月に完成予定の水族館『サワレル』よ」
「なるほど、水族館かぁ……それなら車椅子でも回れそうだね? ってか『サワレル』って名前、めちゃくちゃ面白いね?」
「フフフ……でしょう? だから8月に入ったらその『サワレル』に行こうね?」
「うん、行こう」
「それでね……実はりょう君が歩けるようになった時にはもう一つ行きたい所があるんだなぁ……」
「もう一つ行きたい所? そこは車椅子では行けない所なのかい?」
「うーん、行けなくはないかもしれないけど……乗り込む時に大変かもしれないなぁ……」
「乗り込む時?」
「実は来年の4月、水族館の隣に大観覧車が完成するの。名前は『ジャンプスター』私はりょう君と一緒にその『ジャンプスター』に乗りたいの。そして……」
「そして?」
「ううん、何でもないわ……」
ジャンプスター……
その名前を俺は以前、どこかで聞いた事がある様な……どこで聞いたんだろう……
俺と加奈子ちゃんは同時に驚きの声を出した。
「千夏ねぇって彼氏がいるのに毎日、俺のお見舞いに来てくれていたのかい? それは彼氏さんに申し訳ないなよ。俺の事はもういいから、彼氏さんと……」
「だからその事について今日は話そうと思ったの。ただね、彼も亮君の事情も私の想いも知ってくれているから……私が毎日、亮君のお見舞いに行く事は承諾してくれていたの。だから私も甘えてしまって……」
俺の事情はともかく、千夏ねぇの想いって……?
「最初は彼と付き合うつもりなんて全然なかったというか、私が付き合える様な立場の人では無いというか……でも会話をしたり一緒に食事をしたりしているうちにいつの間にか彼に対して今まで感じた事の無い感情が芽生えたというか……初めて本当の自分をさらけ出せる心地良い人っていうか……そして自分の心の奥底に閉まっている感情を消してくれたんだ……」
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チラッと加奈子ちゃんを見ると彼女は少し緊張した表情をしながら黙って千夏ねぇの話を聞いている。
「千夏ねぇ、良かったじゃん。俺に残っている千夏ねぇの記憶ってさぁ、常に彼氏が入れ代わり立ち代わりしていたイメージだったし……千夏ねぇがそんな気持ちになれる人が見つかったのは弟分の俺とすれば凄く嬉しいよ」
「入れ代わり立ち代わりって……まぁ、その通りではあったけどさ……それに弟分かぁ……でも有難う。それでね、そろそろ私も彼に甘えるのは止めようかなって思ってさ……あ、勘違いしないでね? これからお見舞いには来ないって言っている訳ではないのよ」
「ハハハ、それは分かってるよ。彼氏との時間を大事にしたいって事だろ? それでいいじゃん。俺は千夏ねぇにそんな彼氏ができたのがとても嬉しいしさ……それでその彼氏さんとはどこで知り合ったんだい?」
「うん、彼氏は会社の上司なんだ……」
「えっ、そうなのかい!? それは凄いなぁ」
「凄いかどうかは分からないけど、亮君も彼に会えば驚くかもよ」
「驚く? もしかして俺が知っている人なのかい?」
「ええ……亮君も知っている人よ」
「千夏ねぇが働いている会社に俺の知り合いっていたかな? ん? 一人だけいたような……でも、まさか……」
「フフフ、そのまさかよ。私の彼氏は隆おじさんの弟、五十鈴博さんよ」
「 「えーっ!?」 」
博おじさんの名前を聞いて俺が驚くのは当然だけど、何故か加奈子ちゃんも驚いている。
「加奈子ちゃん、博おじさんの事を知っているのかい?」
「ううん、私は五十鈴博さんっていう人は知らないけど、隆おじさん……広美さんのご両親の事は知っているから……だから、その弟さんって聞いて驚いちゃったの」
そうなんだ。加奈子ちゃんは広美や隆おじさん達の事を知っているんだ……あの人達の事を知っているって事はやはり俺と加奈子ちゃんは結構、濃い付き合いをしていたんだなぁ……それなのにお何故俺は加奈子ちゃんの事を何一つ覚えていないんだろうか……?
「はぁ……」
「えっ、何で亮君、ため息なんてつくの? あっ!? ははぁん……私が他の人に取られるのが嫌でヤキモチを妬いているのね?」
「ち、違うよ!! 何で俺が千夏ねぇにヤキモチを妬かないといけないんだよ!? 俺は千夏ねぇの事を恋愛対象で見た事なんて一度も無いんだからさ……」
「い、一度も無いかぁ……はぁ……」
今度は何故か千夏ねぇがため息をついたけど、直ぐに笑顔になり加奈子ちゃんに近付いて行く。そして俺に聞こえない様に加奈子ちゃんの耳元で何かささやいたみたいだ。
加奈子ちゃんは千夏ねぇのそのささやきに対して「えっ? は、はい。分かりました。有難うございます」と少し驚いた表情をしながら答えていた。
「亮君?」
「な、何、千夏ねぇ?」
「あのさぁ、もし亮君の記憶が戻っても高3の頃に私とやり取りをした記憶は忘れたフリをしてくれないかな? フフフ……」
「えっ、やり取り? どんなやり取りをしたんだい? それにせっかく思い出しても忘れたフリをしろって何だよ? 忘れたフリをしないといけない様な事があったのかい?」
「ハハハ、冗談よ。冗談……別に何でも無いからさ。それよりも私としては早く三田さんとの思い出の記憶が戻る事を願っているわ。これだけ毎日、亮君の為に足を運んでくれているんだし……」
「う、うん、そうだね……」
「まぁ、思い出すのに何年もかからないとは思うけどね」
千夏ねぇはそう言うと「また来るわね」と言い残し病室から出て行った。
病室には俺と加奈子ちゃんの二人きりとなった。いつものパターンなのにさっきまで千夏ねぇがいた事により少し病室内の空気が違う様な感じがするのは俺だけだろうか? 加奈子ちゃんも同じ気持ちかな?
「か、加奈子ちゃん? さっき耳元で千夏ねぇに何か言われてたみたいだけど何を言われたんだい?」
「え? そ、それは……秘密かな……」
「えーっ、秘密なのかい? 凄く気になるんだけどなぁ……」
「でも秘密」
「はぁ……そっかぁ……分かりましたよぉ……」
「フフフ……りょう君、そんなにガッカリしないで。また近いうちに話せる時が来ると思うから。いえ、話せる時が来て欲しいなぁ……」
加奈子ちゃんはそう言うとカバンから教科書を取り出した。
「りょう君、そろそろ勉強しましょうか?」
「そ、そうだね。でも来月高校の入学試験なのに俺に勉強なんて教えていていいのかい? 試験まで日も無いし加奈子ちゃん自身の勉強をしたほうが……」
「大丈夫だよ。私は人に教えながら勉強する方がとても頭によく入るの。りょう君に勉強を教え始めてからの成績の方が教える前よりもアップしているんだよ」
「えっ、そうなのかい? それは凄いなぁ……それじゃ青葉東高校よりもレベルが上の高校を受ける事もできたんじゃ……」
「それは嫌よ。私は何が何でもりょう君が通っていた青葉東高校に行きたいもん」
「加奈子ちゃん……」
俺が通っていた高校かぁ……でも俺は青葉東高校時代の事を何一つ覚えていないんだよなぁ……俺はどんな高校生活をおくっていたのだろうか?
千夏ねぇがさっき言っていた高3での出来事も気になるしなぁ……それに高校時代の広美とのやり取りだって思い出したい。広美に直接聞くこともできるけど、今の広美は助演女優賞という凄い賞を取った超有名人だし、俺みたいな男が簡単に連絡なんてしてはいけないような気もするし……
「りょう君?」
「えっ?」
「あのね、一つお願いがあるの……」
「お願い? どんなお願いかな? 加奈子ちゃんにはとてもお世話になっているし、俺ができる事なら何でもしたいとは思うけど……」
「あのね、りょう君が退院して私が無事に青葉東高校を合格して高校生になったら……」
「高校生になったら……?」
「私とデートして欲しいの……いいかな……?」
「デート!? デートかぁ……ま、まぁ、デートはいいんだけど……加奈子ちゃんの高校合格は間違いないとしてもさぁ……俺が退院できるのはいつになることやら……まだちゃんと歩けるようになった訳ではないし……」
「大丈夫だよ。りょう君、毎日リハビリ凄く頑張っているし、少しずつでも歩けるようになっているし……きっと退院する日はそんなに遠くないと思うわ。でも、すぐに退院は無理でも外出許可をもらってりょう君は車椅子でも構わないし」
「外出許可をもらって車椅子でかぁ……そんな状態の俺とのデートって大変じゃない? 加奈子ちゃんはどこにデートに行きたいんだい?」
「全然大変では無いわ。一緒にデート出来るだけで私は幸せだし……」
本当に加奈子ちゃんは俺の事を想ってくれている……何で俺の事をそこまで想ってくれるようになったのか早く記憶が戻って欲しくてたまらない気持ちだ。
「それと私がりょう君と一緒にデートしたい所は今、エキサイトランド跡地に建設中で今年の8月に完成予定の水族館『サワレル』よ」
「なるほど、水族館かぁ……それなら車椅子でも回れそうだね? ってか『サワレル』って名前、めちゃくちゃ面白いね?」
「フフフ……でしょう? だから8月に入ったらその『サワレル』に行こうね?」
「うん、行こう」
「それでね……実はりょう君が歩けるようになった時にはもう一つ行きたい所があるんだなぁ……」
「もう一つ行きたい所? そこは車椅子では行けない所なのかい?」
「うーん、行けなくはないかもしれないけど……乗り込む時に大変かもしれないなぁ……」
「乗り込む時?」
「実は来年の4月、水族館の隣に大観覧車が完成するの。名前は『ジャンプスター』私はりょう君と一緒にその『ジャンプスター』に乗りたいの。そして……」
「そして?」
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ジャンプスター……
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