56 / 93
第5章 嫉妬編
第55話 不安/亮二
しおりを挟む
カナちゃんにプロポーズをしてから数日が経ち、もうすぐ夏休みを迎える。
未だに俺の心はカナちゃんにプロポーズをした事によるものだと思うが何だかドキドキしていた。プラス、不安な気持ちも沸いてきている。
勢いよくプロポーズをしたものの本当にこれから大丈夫なのだろうか……
俺は心を落ち着かせる為にここ数日、いつも以上に勉強や部活を頑張っている。でもまぁ、そう簡単に気持ちが落ち着くはずは無いのだが……
「鎌田先輩~?」
「ん? どうしたんだい、橋本君?」
俺が授業の合間にロビーに設置している椅子に座りジュースを飲みながら休憩をしていると、橋本君が声をかけてきた。
「いえ、先日の七夕祭り以降、大石さんがボランティア部に全然、顔を出さなくなったので心配なんですが……」
そうである。大石さんはあれから部活に顔を出さなくなった。恐らく理由は俺だとは思うけど、まさか俺にそんなにも執着していたというか、部活に出なくなるくらいに落ち込んでいるとは思っていなかったので俺も少し責任は感じていた。
「大学には来ているのかな? 橋本君は大石さんと同じ学部じゃなかったのかい?」
「はい、同じ経済学部です。授業では顔を見かけるんですが僕が近づいて話しかけようとしたら慌てて逃げだすんですよぉ。僕、嫌われているんですかね? 大石さんに嫌われる様な事をした覚えは無いんですけどねぇ……」
ゴメンよ、橋本君……全て俺のせいだから……
「橋本君は何もしていないと思うよ。気にする事は無いと思うよ」
「そうだったら良いんですけどねぇ……」
「大丈夫、大丈夫。また大石さんも気が向いたら部活に来ると思うよ」
「ですかねぇ? ただ、僕は最近、その事が気になり少しストレスが溜まってまして……それでストレス解消の為に昨夜、あのお店に行って来たんですよ」
「え? あのお店?」
「いやだなぁ、鎌田先輩。僕達にとってあのお店と言えばあそこしか無いじゃないですかぁ。僕にとっては思い出のお店ですよぉ」
も、もしかして橋本君が行ったお店って……
「もしかして、あの風俗店に行ったのかい?」
「はい、あの風俗店に行って来ました」
ってことは俺を抜き去り橋本君は二回目の経験をしたということか……
なんか敗北感を感じてしまうのは変かな?
「そ、そうなんだ。そ、それでストレスは解消されたのかい?」
「はい!! キャサリンのお陰で身も心もスッキリしました!!」
「ハハハ……今回もキャサリンを指名したんだね?」
「そうです。やはり僕の事を分かってくれているキャサリンとの方が安心でしたので……それに彼女は褒め上手なんで僕も気分が良くなるんですよぉ」
「へぇ、そうなんだ……まぁ、とりあえずストレス解消が出来て良かったじゃないか」
橋本君が二回目を経験したとなると、味を占めてしまって頻繁に通いそうな感じがするけど、大丈夫なんだろうか? でも彼はお金持ちのボンボンらしいし、俺がそこまで心配する必要は無いのだろうけど……
「いや。ぁ、本当に行って良かったですよ。じゃないと僕も部活を休んでしまいそうでしたから……」
「えっ? そ、それは危ないところだったねぇ。キャサリンに感謝だな? ハハハ……はぁ……」
「そうだ!! 今度、僕がまたお店に行く時は鎌田先輩も一緒に行きましょうよ!? 」
「い、嫌だよ!! 俺は二度と行かないよ」
「えーっ!? そんな事言わずに行きましょうよぉ?」
「絶対に行かない!!」
「はぁ、そうですかぁ……残念だなぁ……あ、そう言えばあの時、鎌田先輩が指名したマリリンはお店を辞めたそうですよ。もう風俗の仕事はやらないって言っていたそうです」
「えっ、そうなのかい?」
そうなのか……俺がお世話になったマリリンはもうあのお店に……って、別に俺が寂しがる必要は無いよな? もう二度と風俗には行かないと俺は決めているんだからな。
「キャサリンが言ってましたよ。マリリンはお店を辞める前まで何度か鎌田先輩の話をしていたって。普段、お客の話なんてしない人なのに不思議だって……鎌田先輩、マリリンに凄く気に入られていたんですね? 余程、お二人はエッチの相性が良かったとかですかねぇ? ハハハ」
「ブッ!! な、何を言っているんだよ!? え、エッチの相性って……」
でも俺はマリリンのお陰で『男』になって自分に自信が持てたのは間違いの無い事だし、マリリンには感謝はしているけどな。
そっかぁ……あの時はあと2年くらいは風俗の仕事をするって言っていたけど気が変わったのかな? でもマリリンには頑張ってもらいたいなぁ……
「二人共、楽しそうね?」
「 「えっ!? あっ、立花部長!?」 」
「フフフ……そんなに驚かなくてもいいじゃない? それとも私に聞かれては困る様なお話でもしていたのかしら?」
「い、いえ、そんな事は……」
しかし、橋本君と風俗の話をすると絶対に誰か来るよな? 今日は部室じゃないから安心していたけど、これは大学内でこの手の話をするのは止めておいたほうがいいかもな。
「た、立花部長も今日は授業があるんですね?」
「うん、私はもう今日の授業は終わったからとりあえず寮に一度帰ってからまた部活に来ようかなって思っているんだけどね」
「え? 立花部長って寮暮らしなんですか?」
「そうよ。私、言ってなかったっけ?」
「はい、初めて聞きました。俺はてっきり地元の人だと思っていましたよ。前に部長のおばさんが青葉第六小学校で演劇をされていたっておっしゃってましたから」
「そう言えばそんな話をしたわね。あの時、私とても酔っ払っていたからあまり覚えていないんだけどねぇ……」
やはり酔っていたんだ。でもマスターの奥さんと会話を始めてから酔いが冷めた感じだったけど……ああ、なるほどね。俺が帰ってからもみんな遅くまでお店にいたそうだから、あれからまた酒をかなり飲んだんだな?
「私のお父さんが高校生になる前でおばさんが中学生になる前かな、私のお爺ちゃんの仕事の都合で東京に引っ越したのよ。だから私は高校生までは東京の学校に通っていたの。で、ここの大学には鎌田君と同じで外部入学したって訳なの」
「へぇ、そうだったんですかぁ……それは驚きました。でも何でまたこの青葉市にある大学をわざわざ受けられたんですか?」
「それは前に話したおばさんの影響だよ。おばさんに会うたびに青葉市に住んで居る頃の話をよく聞いていていつの間にか私も青葉市に興味を持っちゃって……それに何故かおばさんが青葉市の大学を受けるなら青葉学院大学がお勧めだって言っていたから……未だに何で東京に住んで居るおばさんがここの大学を勧めてきたのかは謎なんだけどねぇ……」
「そうなんですね? それは謎ですねぇ……」
「でも私はおばさんに感謝しているわ。ボランティア部と出会って充実した大学生活ができているし、それに素敵な仲間達とも出会えたしね。勿論、鎌田君達もそうだよ」
「あ、ありがとうございます。これからも期待に添えるように頑張ります」
「ぼ、僕も頑張ります!!」
「フフフ……これでしばらくはボランティア部も安泰だわ。私も安心して就活ができるってものね。ただ……さっき大石さんが退部届を持って来たのは残念だったけど……」
「 「えーっ、大石さん、退部したんですかっ!?」 」
「大石さんはアルバイトを頑張りたいからって言っていたけど、彼女、実家から通っているし、お金に困っている様な感じでは無かったんだけどなぁ……私の中では鎌田君の次は大石さんが部長で橋本君が副部長っていう構想もあったんだけどね」
「えっ、鎌田先輩が次の部長なんですか!? っていうか、ぼ、僕がその次の副部長長なんですか!?」
「フフフ、橋本君、あくまでも私の構想だから驚かなくてもいいわよ。次の部長達を決めるのは新部長の鎌田君が決めることだから」
「か、鎌田先輩!? ぼ、僕みたいなのが副部長なんて絶対に無理ですから推薦しないでくださいよ!? 鎌田先輩、聞いています?」
大石さんが退部かぁ……部の中で一番のムードメーカーだった大石さんが辞めてしまったのはボランティア部としては痛手だよなぁ……俺が原因なのは間違い無いけから凄く責任を感じてしまうけど……
その夜の『焼き鳥やまだ』にて……
「こんばんは~」
「おお、鎌田君、お疲れさん。今日もまかないを食べるだろ?」
「は、はい。いただきます」
ん? マスターの後ろに女性がいるけど、誰だろう?
こちらに背中を向けているからよく分からないぞ。
あっ、そう言えば前に体調を崩した人がそのまま長期入院になったから新しいバイトを雇わないといけないって言っていたけど、もしかして新しいバイトの人なのかな?
「そうそう、鎌田君に紹介しないとね。やっとアルバイトしてくれる子が見つかったてねぇ。それで彼女が今日からうちでアルバイトをすることになった……」
マスターの紹介途中で後ろの女性が振り向き俺の前に勢いよく飛び出して来た。
そして俺はその女性を見てとてつもない衝撃が走る。
「ジャーン!! 大石明美でーす!! 鎌田先輩、今日からよろしくお願いいたしまーす!! ウフッ」
「お、お、大石さんが何故!?」
俺の心の中は不安でいっぱいになった。
――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
未だに俺の心はカナちゃんにプロポーズをした事によるものだと思うが何だかドキドキしていた。プラス、不安な気持ちも沸いてきている。
勢いよくプロポーズをしたものの本当にこれから大丈夫なのだろうか……
俺は心を落ち着かせる為にここ数日、いつも以上に勉強や部活を頑張っている。でもまぁ、そう簡単に気持ちが落ち着くはずは無いのだが……
「鎌田先輩~?」
「ん? どうしたんだい、橋本君?」
俺が授業の合間にロビーに設置している椅子に座りジュースを飲みながら休憩をしていると、橋本君が声をかけてきた。
「いえ、先日の七夕祭り以降、大石さんがボランティア部に全然、顔を出さなくなったので心配なんですが……」
そうである。大石さんはあれから部活に顔を出さなくなった。恐らく理由は俺だとは思うけど、まさか俺にそんなにも執着していたというか、部活に出なくなるくらいに落ち込んでいるとは思っていなかったので俺も少し責任は感じていた。
「大学には来ているのかな? 橋本君は大石さんと同じ学部じゃなかったのかい?」
「はい、同じ経済学部です。授業では顔を見かけるんですが僕が近づいて話しかけようとしたら慌てて逃げだすんですよぉ。僕、嫌われているんですかね? 大石さんに嫌われる様な事をした覚えは無いんですけどねぇ……」
ゴメンよ、橋本君……全て俺のせいだから……
「橋本君は何もしていないと思うよ。気にする事は無いと思うよ」
「そうだったら良いんですけどねぇ……」
「大丈夫、大丈夫。また大石さんも気が向いたら部活に来ると思うよ」
「ですかねぇ? ただ、僕は最近、その事が気になり少しストレスが溜まってまして……それでストレス解消の為に昨夜、あのお店に行って来たんですよ」
「え? あのお店?」
「いやだなぁ、鎌田先輩。僕達にとってあのお店と言えばあそこしか無いじゃないですかぁ。僕にとっては思い出のお店ですよぉ」
も、もしかして橋本君が行ったお店って……
「もしかして、あの風俗店に行ったのかい?」
「はい、あの風俗店に行って来ました」
ってことは俺を抜き去り橋本君は二回目の経験をしたということか……
なんか敗北感を感じてしまうのは変かな?
「そ、そうなんだ。そ、それでストレスは解消されたのかい?」
「はい!! キャサリンのお陰で身も心もスッキリしました!!」
「ハハハ……今回もキャサリンを指名したんだね?」
「そうです。やはり僕の事を分かってくれているキャサリンとの方が安心でしたので……それに彼女は褒め上手なんで僕も気分が良くなるんですよぉ」
「へぇ、そうなんだ……まぁ、とりあえずストレス解消が出来て良かったじゃないか」
橋本君が二回目を経験したとなると、味を占めてしまって頻繁に通いそうな感じがするけど、大丈夫なんだろうか? でも彼はお金持ちのボンボンらしいし、俺がそこまで心配する必要は無いのだろうけど……
「いや。ぁ、本当に行って良かったですよ。じゃないと僕も部活を休んでしまいそうでしたから……」
「えっ? そ、それは危ないところだったねぇ。キャサリンに感謝だな? ハハハ……はぁ……」
「そうだ!! 今度、僕がまたお店に行く時は鎌田先輩も一緒に行きましょうよ!? 」
「い、嫌だよ!! 俺は二度と行かないよ」
「えーっ!? そんな事言わずに行きましょうよぉ?」
「絶対に行かない!!」
「はぁ、そうですかぁ……残念だなぁ……あ、そう言えばあの時、鎌田先輩が指名したマリリンはお店を辞めたそうですよ。もう風俗の仕事はやらないって言っていたそうです」
「えっ、そうなのかい?」
そうなのか……俺がお世話になったマリリンはもうあのお店に……って、別に俺が寂しがる必要は無いよな? もう二度と風俗には行かないと俺は決めているんだからな。
「キャサリンが言ってましたよ。マリリンはお店を辞める前まで何度か鎌田先輩の話をしていたって。普段、お客の話なんてしない人なのに不思議だって……鎌田先輩、マリリンに凄く気に入られていたんですね? 余程、お二人はエッチの相性が良かったとかですかねぇ? ハハハ」
「ブッ!! な、何を言っているんだよ!? え、エッチの相性って……」
でも俺はマリリンのお陰で『男』になって自分に自信が持てたのは間違いの無い事だし、マリリンには感謝はしているけどな。
そっかぁ……あの時はあと2年くらいは風俗の仕事をするって言っていたけど気が変わったのかな? でもマリリンには頑張ってもらいたいなぁ……
「二人共、楽しそうね?」
「 「えっ!? あっ、立花部長!?」 」
「フフフ……そんなに驚かなくてもいいじゃない? それとも私に聞かれては困る様なお話でもしていたのかしら?」
「い、いえ、そんな事は……」
しかし、橋本君と風俗の話をすると絶対に誰か来るよな? 今日は部室じゃないから安心していたけど、これは大学内でこの手の話をするのは止めておいたほうがいいかもな。
「た、立花部長も今日は授業があるんですね?」
「うん、私はもう今日の授業は終わったからとりあえず寮に一度帰ってからまた部活に来ようかなって思っているんだけどね」
「え? 立花部長って寮暮らしなんですか?」
「そうよ。私、言ってなかったっけ?」
「はい、初めて聞きました。俺はてっきり地元の人だと思っていましたよ。前に部長のおばさんが青葉第六小学校で演劇をされていたっておっしゃってましたから」
「そう言えばそんな話をしたわね。あの時、私とても酔っ払っていたからあまり覚えていないんだけどねぇ……」
やはり酔っていたんだ。でもマスターの奥さんと会話を始めてから酔いが冷めた感じだったけど……ああ、なるほどね。俺が帰ってからもみんな遅くまでお店にいたそうだから、あれからまた酒をかなり飲んだんだな?
「私のお父さんが高校生になる前でおばさんが中学生になる前かな、私のお爺ちゃんの仕事の都合で東京に引っ越したのよ。だから私は高校生までは東京の学校に通っていたの。で、ここの大学には鎌田君と同じで外部入学したって訳なの」
「へぇ、そうだったんですかぁ……それは驚きました。でも何でまたこの青葉市にある大学をわざわざ受けられたんですか?」
「それは前に話したおばさんの影響だよ。おばさんに会うたびに青葉市に住んで居る頃の話をよく聞いていていつの間にか私も青葉市に興味を持っちゃって……それに何故かおばさんが青葉市の大学を受けるなら青葉学院大学がお勧めだって言っていたから……未だに何で東京に住んで居るおばさんがここの大学を勧めてきたのかは謎なんだけどねぇ……」
「そうなんですね? それは謎ですねぇ……」
「でも私はおばさんに感謝しているわ。ボランティア部と出会って充実した大学生活ができているし、それに素敵な仲間達とも出会えたしね。勿論、鎌田君達もそうだよ」
「あ、ありがとうございます。これからも期待に添えるように頑張ります」
「ぼ、僕も頑張ります!!」
「フフフ……これでしばらくはボランティア部も安泰だわ。私も安心して就活ができるってものね。ただ……さっき大石さんが退部届を持って来たのは残念だったけど……」
「 「えーっ、大石さん、退部したんですかっ!?」 」
「大石さんはアルバイトを頑張りたいからって言っていたけど、彼女、実家から通っているし、お金に困っている様な感じでは無かったんだけどなぁ……私の中では鎌田君の次は大石さんが部長で橋本君が副部長っていう構想もあったんだけどね」
「えっ、鎌田先輩が次の部長なんですか!? っていうか、ぼ、僕がその次の副部長長なんですか!?」
「フフフ、橋本君、あくまでも私の構想だから驚かなくてもいいわよ。次の部長達を決めるのは新部長の鎌田君が決めることだから」
「か、鎌田先輩!? ぼ、僕みたいなのが副部長なんて絶対に無理ですから推薦しないでくださいよ!? 鎌田先輩、聞いています?」
大石さんが退部かぁ……部の中で一番のムードメーカーだった大石さんが辞めてしまったのはボランティア部としては痛手だよなぁ……俺が原因なのは間違い無いけから凄く責任を感じてしまうけど……
その夜の『焼き鳥やまだ』にて……
「こんばんは~」
「おお、鎌田君、お疲れさん。今日もまかないを食べるだろ?」
「は、はい。いただきます」
ん? マスターの後ろに女性がいるけど、誰だろう?
こちらに背中を向けているからよく分からないぞ。
あっ、そう言えば前に体調を崩した人がそのまま長期入院になったから新しいバイトを雇わないといけないって言っていたけど、もしかして新しいバイトの人なのかな?
「そうそう、鎌田君に紹介しないとね。やっとアルバイトしてくれる子が見つかったてねぇ。それで彼女が今日からうちでアルバイトをすることになった……」
マスターの紹介途中で後ろの女性が振り向き俺の前に勢いよく飛び出して来た。
そして俺はその女性を見てとてつもない衝撃が走る。
「ジャーン!! 大石明美でーす!! 鎌田先輩、今日からよろしくお願いいたしまーす!! ウフッ」
「お、お、大石さんが何故!?」
俺の心の中は不安でいっぱいになった。
――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

両親や妹に我慢を強いられ、心が疲弊しきっていましたが、前世で結ばれることが叶わなかった運命の人にやっと巡り会えたので幸せです
珠宮さくら
恋愛
ジスカールという国で、雑草の中の雑草と呼ばれる花が咲いていた。その国でしか咲くことがない花として有名だが、他国の者たちはその花を世界で一番美しい花と呼んでいた。それすらジスカールの多くの者は馬鹿にし続けていた。
その花にまつわる話がまことしやかに囁かれるようになったが、その真実を知っている者は殆どいなかった。
そんな花に囲まれながら、家族に冷遇されて育った女の子がいた。彼女の名前はリュシエンヌ・エヴル。伯爵家に生まれながらも、妹のわがままに振り回され、そんな妹ばかりを甘やかす両親。更には、婚約者や周りに誤解され、勘違いされ、味方になってくれる人が側にいなくなってしまったことで、散々な目にあい続けて心が壊れてしまう。
その頃には、花のことも、自分の好きな色も、何もかも思い出せなくなってしまっていたが、それに気づいた時には、リュシエンヌは養子先にいた。
そこからリュシエンヌの運命が大きく回り出すことになるとは、本人は思ってもみなかった。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定


婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる