あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第5章 嫉妬編

第50話 あの時の人/亮二

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「三田さん!! 僕はあれから心を入れ替えたんだ!! そして今では『三田加奈子ファンクラブ会長』としても頑張っているんだ!!」

「はぁ、そうなんですね……えっ!? か、会長!? 私にあれだけ酷いことを言われたのに……何で荻野部長が会長なんですか!?」

「まぁ、ジャンケンで勝ったからってのもあるけど、僕は君に厳しい事を言われて目が覚めたんだよ。そして僕にあれだけの事を平気で言ってきた君を本気で好きになってしまって……三田さんに僕の本気をみてもらう為に美樹とも別れたんだ」

 あの子が前にカナちゃんが話していた演劇部の部長さん……
 クソッ、悔しいけどめちゃくちゃイケメンだな。
 そりゃぁモテるのもよく分かる気がする。

 ってか、今カナちゃんの事が本気で好きになったって言ったよな?
 よくこんな大勢の前でそんなことを平気で言えるよな!?

 それに彼女とも別れたって言ってな……
 これは非常にヤバい状況じゃないのか……?

「加奈子、ゴメンね? 荻野部長がどうしても会長やりたいっていうから、それを阻止する為にジャンケンで決めたのに荻野部長が勝ってしまって……」

「別に沙耶香が謝る事じゃないわ。いずれにしても私は荻野部長のそういうところが嫌いなんです!! 何で大川さんと別れる必要があったんですか!? それに荻野部長が私の事を好きになる意味も分かりません!! お願いですから大川さんと寄りを戻してください!! そしてファンクラブの会長もってか、ファンクラブなんて私には必要無いので解散してください!!」

「イヤイヤイヤッ、三田さん、それは無理な相談だよぉ」

「無理じゃないです!!」


「三田さん……」

「あ、大川さん!? この人は一体何なんですか!? 私なんかの為に何で二人が別れなくちゃいけないんですか!?」

 カナちゃんがかなり興奮している。これはヤバい状況になってきたぞ。
 俺が間に入った方が……でも俺の様な部外者が入っていいものなんだろうか……

「三田さん、私は荻野部長と別れて正解だと思っているから気にしないで」

「で、でも!!」

「大丈夫よ。逆に今は荻野部長と別れてホッとしている自分がいるの。やはり惚れた者の弱みっていうのはとても辛かったから……彼が何を言っても何をしても笑って許していた自分がとても嫌いだったから……」

「大川さん……」

「辛くなるのが分かっていたから小学生の頃の私は山田翔太君に告白しなかったのにねぇ……ほんと私ってバカだよね?」

「えっ!? や、やっぱり、大川さんは翔太の事が……」

「ゴメンね? あの時は恥ずかしくて言えなかったから……でもこれからはもっともっと自分を磨いて魅力のある女性になりたいと思っているし、いつかそんな私の事を好きになってくれる人が現れてその人と付き合うことができればいいなって……だから私の事は気にしないで欲しいの」

「は、はい、分かりました……私、大川さんを応援します!!」

「フフ、ありがとう。あ、それと私もあの時から三田さんの事が大好きになっちゃったから『三田加奈子ファンクラブ』の会員になったのよ。だから解散するのは嫌だなぁ……」

「えーっ!? 大川さんまで会員なんですか!? なんか理解に苦しむんですけど……でも大川さんの気持ちはよく分りました。ただし、私が荻野部長を許せないのは変わりませんので!!」

「フフフ……荻野部長を許さないのは三田さんの自由よ。だから私はそれに関しては何も言わないわ。私も荻野部長の事はどうでもいいし……」

「ちょっと待て、美樹ちゃん!? 君も『元カノ』として少しは俺をフォーローしてくれたらどうなんだ!?」

「黙れ、バカ部長!! いえ、ただのバカ!!」

「ヒエッ!?」

 ウワッ、俺も清楚系な感じの彼女の口からそんな言葉が出るとは思わなかったから少し驚いてしまったぞ。

「こんなところで時間を費やしている暇は無いはずよ。早く控室に行って最後の打ち合わせをしないといけないんじゃないのかしら? 荻野部長、部長としてしっかりしてもらわないと困るわ。じゃないと七夕祭り後にあなたには部長を降りてもらうわよ」

「み、美樹ちゃんって怒るとこんなにも怖かったのかい……?」

「何を言っているの? 普通は怒れば誰だって怖いものよ。そんな事よりも『三田加奈子ファンクラブ』の会長を名乗るならボランティア活動中の三田さんの邪魔をしている場合では無いでしょ? さぁ、早く控室に行くわよ!?」

「あ、ああ……わ、分かったよ……」

 あの女子のお陰で何とか騒ぎは収まったみたいだな?
 でも、あの子の口から翔太君の名前が出たのは驚いたなぁ……

「か、カナちゃん? そろそろ昼休みだから俺達も控室に行こうか?」

「え? うん……」

「それじゃぁ行こう」

「りょう君? 変なところを見せちゃったみたいでゴメンね?」

「ハハハ……いや、大丈夫だよ。中学生でも色々とあるからね。俺の中学の時もそうだったしさ……ハハハ……」


「あーっ!!」

 えっ!? 何!?
 急にカナちゃんの隣にいる女の子が大きな声を出しながら俺に向かって指を差しているんだが……

「沙耶香、急にどうしたのよ? ビックリするじゃない? ってか、何でりょう君を指さして……ん? あ……あーーーっ!! ま、マズい!!」

 へっ? カナちゃんまで大声を出しているぞ。それに何がマズいんだ?

 指を差している女の子が血相を変えて俺に近づいて来るんだが……俺、この子の事、全然知らないけど……知らないういちに俺がこの子に何かしたことがあるのかな? いや、それは絶対無いはずだ。

「あのぉ!! お名前教えていただけませんか!?」

「え? お、俺は鎌田亮二って名前だけど……」

「沙耶香……」

 カナちゃんが凄く心配そうな顔をしているけど、この子は一体誰なんだ?

「鎌田さん、こんにちは!! 私は平田沙耶香といいます。一つお聞きしたいのですが鎌田さんは昔、青葉第三中学校の文化祭で演劇部員として演劇をされていませんでしたか?」

「え? ああ、中学生の頃の俺はたしかに青葉三中の演劇部だったけど……それがどうかしたのかい?」

「やっぱりそうだったんですね!? 私、小さい頃に鎌田さんと五十鈴広美さんの演技を初めて観た時から二人の大ファンになったんです!! まさかこんな所で会えるなんて奇跡だわ……これって運命の出会いですよね!?」

「ハハハ、運命の出会いってのは大袈裟過ぎると思うんだけど……」

 しかし俺にファンがいたなんて信じられないな。まぁ、広美のファンで俺はついでって感じのファンなんだろうけど……

 でも、あの期間、嫌々ながらも演劇を頑張った甲斐はあったってことなのかな?

 それに大ファンって言われて悪い気はしないよな。カナちゃんも自分のファンクラブが出来て本当は悪い気はしていないとか……いや、それはないか。カナちゃんの性格からすれば、やっぱファンクラブなんて嫌に違いない。

「大袈裟では無いです!! 私は本心で言っていますし、鎌田さんに会えてめちゃくちゃ感動してます!! あの時、恥ずかしくて出来なかった握手をしてもらえないでしょうか!?」

「え? 握手?」

「はい、お願いします!!」

 チラッとカナちゃんを見ると凄く不安そうな顔をしている。そんなカナちゃんを目の前にして嬉しそうな顔で握手をするのはマズいと思う俺であった。



――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
この章もあと数話で完結です。
どうぞよろしくお願い致します。
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