あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第5章 嫉妬編

第45話 運命の人/香織・加奈子

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 三田さんの娘さんである加奈子ちゃんから話を聞いて欲しいと電話があった時、私はとても嬉しかった。

 そして加奈子ちゃんの話というのはきっと亮二君のことだと思っていた私はなんとか加奈子ちゃんの力になりたいと思った。

 ただ加奈子ちゃんの話を聞いてこれまでに予想以上の凄い経験をしているのに驚きもあったのは確かだけど……

 そっかぁ……加奈子ちゃんは翔太君っていう子に無理矢理キスをされたんだねぇ……

 それで翔太君と絶交をしない代わりに桜ちゃんという女の子と付き合う事を強要してしまったんだ。

 そして翔太君は約束を守り今も桜ちゃんと交際を続けているというか、加奈子ちゃんの想像以上に二人の関係が進んでいる事を桜ちゃんに堂々と聞かされ、自分は亮二君とキスもしたし、色々と二人で約束事は交わしたけど誰にも堂々と言えない自分に苛立ちや嫉妬の様な感覚が芽生えてきて、それで苦しんでいるんだね……

 そうよね。誰にも言えないのは苦しいよね。あの頃の私達もそうだったから気持ちはよく分かる。それに亮二君が加奈子ちゃんの事を本当はどう思っているのかを考えると不安にもなるだろうし……

 当時の経験が少しでも加奈子ちゃんの気持ちを和らげることができるといいなぁ……と思った私は当時の隆君と私の話を始めた。

 私の話に加奈子ちゃんは終始驚いた表情をしていたけど無理ないよね?
 私も今思えばよくここまで来れたなって思うから……

 でもあの頃の隆君は私と結婚する為に何事にも必死で凄く頑張っていたし、私に対しての想いが薄れる事は無かった。

 だから……

「私は彼が『運命の人』だと確信したわ。だから『その日』が来るまでいつまでも待とうと思えたの。もっと言えば、彼意外とは結婚しないと決めたって感じかな……」

「す、凄い決意ですね……でも、りょう君は……」

「私は亮二君が加奈子ちゃんに対してどう思っているかは分からないけど、加奈子ちゃんの事をとても大切にしているのは分かるし、未だに彼女らしい人がいないというのは、そういうことじゃないかなぁって思うけどなぁ……あまり変に期待をさせてもいけないとは思うけど、亮二君は昔から真面目だし、人を裏切る様な事は絶対にしない子だし……」

「そうですね……私がりょう君を信じないとダメですよね?」

「別にダメじゃないのよ。相手の事を想ったり、心配したり、時には疑ってしまったり……そういった感情になるのは人間だから当たり前なの。きっと亮二君も同じだと思うよ」

「えっ、りょう君も私の事で色々悩んだりしているんですか? まさか疑ったりもですか?」

「ええ、多分ね。いえ間違い無いわ。もしかすると今度は亮二君がうちの主人に相談を持ち掛けるかもしれないわね。フフフ……その時は直ぐに加奈子ちゃんに報告させてもらうわ。勿論、亮二君には内緒でね」

「はい、よろしくお願いします」

 やっと加奈子ちゃんの表情が少し和らいだ感じがする。

 あ、そうだった!!

 私ったら自分と隆君が運命の人って話ばかりをして肝心な事を加奈子ちゃんに伝えるのを忘れていたわ。前に公園で二人に会った後に隆君が言っていた言葉を加奈子ちゃんに伝えてあげないと……

「加奈子ちゃん、私、とても大事なことをあなたに伝えるを忘れていたわ」

「え? 大事なことですか?」

「ええ、前に主人が言っていたの。亮二君と加奈子ちゃんももしかすると俺達みたいに『運命の人』同士かもしれないなぁって……フフ、主人の予想って今までも結構当たっているから期待大かもしれないわねぇ」

「えっ!? そ、そうなんですね……それを聞いて凄く気持ちが楽になりました」

「フフフ……それは良かったわ。最初からそれを言っていれば良かったわね?」

「い、いえ……私は香織おばさんのお話をたくさん聞けて良かったです。今日は本当にありがとうございました」

「いえいえ、また何かあればいつでも連絡してちょうだいね? それと亮二君の部活の応援も頑張ってね?」

「はい、頑張ります!!」

 不思議だなぁ……母娘2代に渡ってこうやってお話ができるなんて……
 二人とも私の人生に於いては運命の人達なのかもしれないわね


――――――――――――――――――――――――
 私は香織おばさんと別れてからも頻繁に電話やメールでやり取りをするようになった。

 りょう君の誕生日プレゼントはどんな物が喜ばれるか、香織おばさんは隆おじさんから貰ったプレゼントで何が一番嬉しかったかなど……

 その時の返事は小6だった隆おじさんからエキサイトランドの大観覧車で大きなハートと小さなハートがくっついたネックレスを貰った時がとても嬉しかったらしい。今も肌身離さずにつけているそうだ。

 その時に起きたハプニングもついでに教えてくれた。隆おじさんが香織おばさんにネックレスをつけようとした時に観覧車が揺れてしまいおじさんはバランスを崩した瞬間、香織おばさんにキスをしてしまったそうだ。そしてその時のキスが二人にとっての初キッスだということでそれを聞いた私は胸がキュンとしてしまった。

「私も観覧車でプレゼントを渡したかったなぁ……」

「そうだね。今はもうエキサイトランドは無いし……でも主人の情報では数年後に新しい観覧車ができるって言っていたけど……本当なのかしらねぇ? まぁ他の遊園地にも観覧車はあるけどねぇ……」

「えっ、そうなんですか? でも今回は間に合わないし……それに他の遊園地に行くのは……りょう君凄く忙しいみたいですから今回はアルバイト先に行って渡そうと思っているんですが……」

「そっかぁ……でもまぁ、どこでプレゼントを渡しても亮二君は喜んでくれると思うわよ」

「そ、そうだといいんですけど……」

「大丈夫、大丈夫よ。あ、もしかしたら私達夫婦と同じように数年後にできると隆君が言っている新しい観覧車の中で亮二君が加奈子ちゃんにプロポーズってこともあり得るわね。もしそうなればとっても素敵よねえ……」

「ハハハ、そうですね……」

 そうなればいいなぁ……いえ、私はそうなる為にこれから今まで以上に頑張って亮二君が心の底から私の事を好きになるくらいに魅力のある女性になると決めたんだった。



 【七夕祭りに向けてのボランティア部 第二回打ち合わせ】

「という事で加奈子ちゃんは鎌田君、大石さん、橋本君とグループになってお年寄りの会場案内係をしてもらうからよろしくね?」

「はい、分かりました」

 良かったぁ……りょう君と一緒のグループで良かったわ。
 ただ、あとの二人はちょっと苦手なんだけど……

「いやぁ、嬉しいなぁ!! 加奈子ちゃんと同じグループなんて僕はなんて幸せ者なんだろう!!」

「橋本君!? 一応俺達は4人グループだけど、休憩を取る時は俺とカナちゃん、橋本君と大石さんで組んでもらうからね?」

「えーっ!?」

 えーっ!? じゃないわよ。りょう君の案が普通じゃない。

 トントン……

「え?」

 大石さん?

「加奈子ちゃんに一つ聞きたいんだけどさぁ、鎌田先輩が最近つけているネックレスってもしかして加奈子ちゃんがプレゼントしたのかなぁ?」

「えっ!? そ、それは……」
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