あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

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第4章 成長編

第41話 お願い事/亮二

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 ボランティア部の打ち合わせの中で3年生の立花朱里たちばなあかり部長から今後のボランティア活動予定が発表された。

 その活動予定の中に7月5日の日曜日、青葉第二小学校で行われる七夕祭りに参加する地域のお年寄りの人達のお世話をするスタッフというのが含まれていて、俺は自分の耳を疑い立花部長に聞き直した。

「た、立花部長……今、青葉第二小学校の七夕祭りって言われませんでしたか?」

「ええ、言ったわよ。鎌田君にしては珍しく私の話をちゃんと聞いていなかったのかしら?」

「いや、そうじゃないんですけど……実はその七夕祭りに知り合いの中学生の女の子が七夕祭りで行われる演劇に出演するかもしれないと聞いていまして応援に行こうかなと思っていましたので……」

「あら、そうだったの? それは凄い偶然ね。でもいいわよ。その演劇が始まる前に鎌田君はスタッフを抜けて応援に行ってくれても構わないわよ」

「えっ、いいんですか? それなら助かりますけど……」

「ええ、別に構わないわ。鎌田君は1年生の頃からうちの部の中で一番、率先してボランティア活動を頑張ってくれていたし、途中で抜けたって誰も文句なんて言わないわ。まぁ、私が言わせないから安心してちょうだい。フフフ……」

「あ、ありがとうございます!!」

「フフフ、そんなに喜ぶなんて……その鎌田君の知り合いの子って鎌田君にとってとても大切な子みたいだねぇ?」

「えっ? ま、まぁそうですねぇ……大切な子ではありますかねぇ……」

「へぇ、そうなんだぁ……私もその子に会えるのがとても楽しみだわ……」

 いや、俺はカナちゃんをみんなに合せるのは不安しか無いですけど……


「立花部長!! 私も鎌田先輩と一緒に演劇を観に行ってもいいでしょうか?」

「大石さん、あなたはダメに決まっているじゃない? それに七夕祭りには市役所でお借りする青葉市のマスコットキャラ『アオタン』の着ぐるみを1年生全員、順番に着てもらって子供達の相手をしてもらわないといけないんだからね」

「えーっ!? そ、そんな~っ!!」

「えーっ!? ぼ、僕もですかぁ!?」

「橋本君もです!!」

 ガヤガヤ……ガヤガヤ……

 なんか1年生部員達がざわつきだしたぞ。

「えーっ、じゃないわよ。昔から1年生が着ぐるみを着るって決まっているの。去年なんて鎌田君が着た時の『アオタン』の評判がとても良くて去年の部長さんは鼻高々だったわぁ……今年は私もそうなりたいわねぇ……」

 そうなのか? それは初耳だぞ。前の部長さんはそんなこと一言も言わなかったけどなぁ……本当に俺が来た時のアオタンは評判が良かったのか? 

 ってか、今はそんな事よりも大石さん達、1年生にやる気を出してもらわないといけないよな……

「お、俺は大石さんの着ぐるみ姿を見るのって凄く楽しみだよ。大石さんは可愛いいから着ぐるみを着ても可愛らしいオーラを出してきっと子供達に大人気間違い無しだよ。他の1年生も大石さんに負けないように頑張ってくれよな? 当日、一番人気だった人には俺が何か驕らせてもらうからさ」

「 「 「えっ、本当ですか、鎌田先輩!?」 」 」

「鎌田先輩、今私の事を可愛いいって……なんか今の言葉で私の中のやる気スイッチが入っちゃいました♡」

「ハ、ハハハ……それは良かったよ……」

 頼むから着ぐるみを着ることのやる気スイッチであってくれよ。

 ポンポン

「えっ?」

「フフフ、いつも気遣いありがとね。今年も鎌田君を頼りにしているわよ」

 立花部長が微笑みながらお礼を言ってくれたのが俺はとても嬉しかった。
 俺って本当に良い人達に恵まれているよなぁ……

 そうだ。家に帰ったら直ぐカナちゃんに七夕祭りにボランティアで俺も参加する事になったって報告しないといけないよな。



 そしてその日の夜、どうしても今日はカナちゃんとメールではなく会話をしたかったので俺からカナちゃんに電話をした。

 直ぐに電話に出てくれたカナちゃんに俺は勢いよく今日のボランティア部での出来事を話し、こんな偶然ってあるんだねぇとか、部長の計らいで演劇が行われている間はスタッフから抜けてもいいと言われて凄く嬉しいとかの話をしていたが、どうもカナちゃんの反応が薄い事に気が付いた。

 声のトーンがいつもよりも元気がないカナちゃんに俺は「何かあったのかい?」と問いかけてみた。

 するとカナちゃんの口から驚きの言葉が発せられる。
 
「えっ!? カナちゃん、演劇部辞めちゃったのかい?」

 たしか、昨日で仮入部二日目のはずだけど、そんな直ぐに辞めるなんて……カナちゃんに一体、何があったんだ?

「りょう君、ゴメンね? せっかく私が演劇部に入部する事を喜んでくれていたのに……」

「いや、それはいいんだけど、何かあったのかい? ってか、何かあったから辞めたんだよね?」

 俺の問いかけにカナちゃんはなかなか返事をしてくれなかったので俺は触れてはいけないことを聞いてしまったのかと少し焦る。

「あのね……私……演劇部の部長さんに……」

 カナちゃんはゆっくりと演劇部で何があったのかを話し出した。

「そうだったんだね……カナちゃんがその部長に腹が立った気持ちはよく分かるよ……」

「りょう君はそんな私に対して引かない?」

「えっ? ハハハ、引かない、引かない。それは全然、大丈夫だから。その部長がカナちゃんに怒られて少しは性格がマシになってくれればいいのになぁとは思うけどさ」

「よ、良かったぁ……りょう君に引かれたらどうしようかと思って凄く不安だったの。演劇部を直ぐに辞めた事も言わないでおこうかと思ったくらいだったから……でも正直に話して良かったわ。なんかスッキリしたし。やっぱりりょう君には隠し事なんて私、出来ないみたい。フフフ……」

「ハ、ハハハ……正直に言ってくれてありがとね……ハハハ……」

 む、胸が痛い……俺はどうしても先日の『あの事』だけは絶対にカナちゃんには言えないからなぁ……まぁ、カナちゃん以外にも言えないけども……

「ところでさ、りょう君?」

「えっ、な、何だい?」

「りょう君にお願いがあるんだけど……」

「お願い? どんなお願いかな?」

「あ、あのね……私、結局、七夕祭りでの演劇に出演できなくなってしまったから、その日に青葉第二小学校に行く理由が無くなっちゃったでしょ? それでね、今思い付いたんだけど……もし、可能なら私もりょう君のボランティア部のお手伝いをさせてもらえないかな? 無理なら諦めるけど……どうかな……?」

 カナちゃんが俺達、ボランティア部の手伝いだって!?
 うーん……どうなんだろう?

 これは明日、立花部長に相談しないといけないな。

「カナちゃん、明日まで返事を待ってくれるかな? 明日、うちの部の部長さんに聞いてみるからさ」

「えっ、本当に? あ、ありがとう、りょう君!!」

 カナちゃんが手伝ってくれるのは嬉しいけど、他の部員達がどんな反応をするのか考えると少し不安だよなぁ……でも、せっかくカナちゃんが手伝いたいって言ってくれているし、演劇部を直ぐに辞めてしまってきっと落ち込んでいるだろうし、少しでも気を紛らわせることができれば手伝ってくれる意味もあるだろうしなぁ……

「それとね、もう一つりょう君に話しておかないといけないかなって思うことがあって……」

「え、うん、どんな話しかな?」

「私、演劇部の部長にあれだけの酷いことを言ったから他の部員達に嫌われたと思っていたんだけど……誰も逆らえない、女子から絶大な人気のある学校一のイケメンに文句を言ったことで他の男子部員達に私、尊敬されちゃったみたいなの。それで、その人達中心に私の『ファンクラブ』ができたらしくて……全然、意味が分からないでしょ? りょう君、私これからどうすればいいのかな? 何か良いアドバイスはないかなぁ?」

「カナちゃんのファ、ファンクラブだって!?」

 カナちゃん……どちらかと言えば俺はその話の方に引いてしまったよ。

 もしかしてこれはカナちゃんに隠し事をしている俺に対してなんらかのバチなのか? はぁ……なんとなくだけどこれから色々な意味で俺とカナちゃんの周りで大変なことが起こりそうな予感がするよなぁ……





――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。

次回、第4章最終話となります。
どうぞお楽しみに(^_-)-☆
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