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第5章 謎めいた合宿編

第55話 具材争奪戦

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「ウジ虫共~っ!! ここの敷地は自然豊かで小川も流れているし、『名染伊太農園』も『名染伊太牧場』もある。この敷地内にある物は何でも好きなだけ持って来ても良いぞ―――っ!!」

「ルッ、ルイルイ! 一体あんたは何を企んでいるんだ!?」

「何を言っているヒトヤン? 人聞きが悪いなぁ~私が何か企むような人間に見えるか?」

「思いっきり見えるわ!!」

 ルイルイのことだ。きっと具材は簡単に手に入らないように何か仕掛けをしているんじゃないのか!?


「ど、どうしよう? みんな行っちゃったわ……」

「一矢!! 今、ルイルイに文句を言っている暇は無いんじゃない!?」

「そ、そうだな舞奈……」

 うわぁ、舞奈の顔見るのつれぇなぁぁ……

「よ、よしフツオ!! 俺がここに残るから、お前と舞奈ちゃん、和久塁さんの3人で具材を探してきてくれ!?」

「えっ、ちょっと待ってよモブオ? 俺は走るのは苦手だし、お前は足が速いんだから、モブオが具材を探しに行った方が良いんじゃないのか!?」

「フツオ、お前さ、大事な事を忘れていないか? ちょっと耳を貸せ」

「え?」

「今回の合宿でのお前の目的は何だ? あの2人を仲良くさせる事だろ? ってことはあの2人の傍には俺よりお前が居た方が良いに決まっているじゃないか。それと俺には良い作戦があるんだ」

 ボソボソボソ……ボソ、ボソボソ……

「よし、分かったよ。お前凄いな!? さすが学年総合200位の男だな!!」

「それ褒めてないぞ!! 嫌味かよ!?」

「それじゃぁ米を炊くのはモブオに任せて後の3人で具材を探しに行こう!!」


 しかし、ルイルイの奴、とんでもない企画を考えやがって……具材を洗ったり切ったりするだけでも大変なのに、その具材を探して持ってこいだなんてよ。チッ、覚えてろよ……いつか反撃の狼煙《のろし》を上げてやるからな!!

「ねぇ一矢? カレーの具材のメインはジャガイモやニンジンだけど、まずはルイルイが言っていた農園に行ってみる?」

「そうだな舞奈。まずは農園に行こう」

「布津野君、お肉はどうする? 向こうに牧場があるけど、それはさすがに無理があるわ……」

「そ、そうだよな!! 俺達に肉をさばけるわけないし、それ以前に牛を捕まえるなんて怖くて無理だし……まぁ、肉の事は後で考えようぜ? まずは無難に野菜から集めよう!!」


 さぁ、この慌ただしい状況の中で、この2人を仲良くさせる事なんてできるのか?

『頑張れ俺。諦めるなヒトヤン!!』って何で俺が自分の事を『ヒトヤン』って言わなきゃいけないんだ!? 思わずつられちまったぜ……それもこれもみんなルイルイのせいだ!!

――――――――――――――――――――――
【名染伊太合宿所敷地内】

「おい、アレ見ろよ!? あの3人って3組の……この間の中間テストで学年総合1位だった『桃色ナイスバディ』こと『寿志光舞奈すしこうまいなちゃん』と総合2位『赤髪世話好き美少女』こと『和久塁聖香わくるいせいかちゃん』とまさかの総合10位『なんか凄い普通の子』として有名になった『布津野一矢ふつのひとや』じゃないのか!?」

「ほんとだ、なんか凄いメンバーの班だな!? しっかし、美人2人と仲良く鼻の下を伸ばしながら具材探しをしている布津野の野郎には絶対負けたくないよな!?」

「あぁ、そうだよな。あんな奴に絶対負けたくないな!! 3組の奴等はともかく他のクラスの奴等とは協力して、あいつ等には絶対勝とうぜ!?」

「ねぇ、ちょっと~あんた達~? この具材探しで勝ち負けなんかあるのかしら?」

「そ、それは分からないけど……でも、あの口は悪いけどめちゃくちゃセクシーで妖艶な美人所長代理だったらあり得るんじゃ無いのか? とりあえず早く具材を探したほうが絶対良いに決まってるぜ!!」



「痛っ!!」

「ど、どうした舞奈!?」

「ッツ~……ちょっと足首をひねったみたい……」

「舞奈大丈夫? 歩ける?」

「歩けるのは歩けるけど……走るのは無理みたい……」

「仕方ない、ゆっくり歩いて行こう? 農園まではもう後少しだし、最悪肉は諦めよう。別に野菜カレーでも良いじゃん」

「そ、そうよね。ヘ、ヘルシーで良いんじゃないかな? 私、バスの中でお菓子をたくさん食べたからあまりお腹空いてないし……それに、ちょうど私、今ダイエット中だから……」

 いや和久塁、お前のお菓子はほとんど舞奈が食べていなかったか? それにめちゃくちゃスリムなお前がダイエット中ってのも嘘だろ? きっと舞奈の事を気遣って言ってくれているんだろうなぁ……ほんとお前は良い奴だな。

「一矢~私、お腹ペコペコなんだけどぉぉ!!」

 舞奈、お前はどの口でそんな事を言ってやがる!?

「布津野君、あの木の下を見て!? 皆、集まっているわ!!」

「え?」


「オ――――――イッ!! この木の枝に牛肉の入った袋がいくつもぶら下がっているぞーっ!!」

「なっ、何だと―――っ!?」

「そういう事だったのね? 牛を捕まえるところからじゃ無かったのね!?」

「マジでそれはホッとしたけど、そういうことなら俺達も肉をゲットしないとないけないよな!? よし、俺が肉を取りに行って来るから、2人はゆっくり歩いて農園に向かってくれないか!?」

「わ、分かったわ。それじゃあ舞奈、私達は農園に行きましょう」

――――――――――――――――――――――
【2年3組 4時限目・テルマ視点】

 そろそろ一矢君達、お昼の準備をしている頃かしら?
 一矢君達とならきっと楽しいだろうなぁ……

 舞奈ちゃんは料理が上手だからきっと美味しい昼食になるでしょうねぇ……私も食べたいなぁ……私の『神の舌』がそう言ってるわ……ってね。クスッ



「ちょ、ちょっと今の見たか!? あのテルマちゃんが『クスッ』って微笑んだぞ!!」
「あぁ、俺も見た!! 凄い可愛らしい笑顔だったよな!? 一体テルマちゃんに何があったんだ!? もしかして思い出し笑いカナ? あぁ~っ、ギュウッと抱きしめたくなってきたぞ!!」
「ほんと木西さんってリスみたいで可愛らしいわ~♡ ずっと見ていても飽きないし、女の私から見ても可愛い過ぎてたまらないわ♡」
「ちょっと~やめてよねぇ? 変な道に走らないでよ~? でも、あんたの気持ち分からない訳じゃ無いけどね♡」

 ザワ、ザワザワザワ、ザワザワ、ザワザワ、ザワザワザワザワ……

 な、何!?
 何で急に教室中がざわつきだしたの?

 それに何でクラス全員が私をにらんでいるのよ!?
 私が何かしたっていうの?

 いつも目立たないようにしている私が何かするはずは……
 あぁ~もう、そんなに私をジロジロ見ないでよ!!
 私が一体何をしたっていうのよ!?

 はぁ……こんな時に一矢君が居てくれたらなぁ……
 あっ、そうだわ。お昼休みに一矢君に自撮り写メ送ってみようかな?
 へ、返事来るといいなぁ……


――――――――――――――――――――――
 
【肉の入った袋がぶら下がっている木の下】

「う、嘘だろ……?」

「へへへ、悪いな布津野ぉ、早い者勝ちだし仕方無いよなぁ~?」
「さぁ肉はゲットしたし、次は野菜だな? 皆、早く農園に行こうぜ!?」

 な、な、なんてこった……

 何で肉の袋が一つも残ってないんだよ―――――――――っ!!??
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