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第3章 銀河の中枢 [央星]
第8話 助っ人は幼馴染
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【登場人物】
▼何でも屋(IMIC)
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
[水王 涙流華]
元名家・水王家の侍で、水の遺伝子能力者。
プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。
▼政府軍
[ラルト・ローズ]
白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。
口が悪く、目つきももれなく悪い。
炎の遺伝子能力者。
[ブラスト・オール]
政府軍大元帥。政府軍のトップ。
[ラバブル・ラバーズ]
政府軍元帥。政府軍のナンバー2。
▼敵勢力
[ヴァンガルド・キル]
違法の遺伝子強化技術を使用する殷生師団の一人。
最近まで投獄されていたが、脱獄に成功し、指名手配犯となっている。
[デーモン]
政府軍上級大将。政府軍のナンバー3。
[ボルボン]
政府軍大将。政府軍のナンバー4。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
悪名高い指名手配犯の前に立ちはだかったのは、かつて学生時代を共にした幼馴染だった。
「プラズマ!」
「セリナ! なんでこんなところに!?」
「そんなことは後でいいから!!」
セリナはプラズマの横まで駆け寄ると、ヴァンガルド・キルに対して構えた。
「助太刀か。それよりもさっきの技は……」
ヴァンガルドが気にかけていたのは、セリナが発した煉術だった。
彼の知る限りでは、その煉術は簡単に使用できる代物ではない。
「封唱!」
セリナから再度青白い光が放たれる。
放たれたセリナの煉術を避けながら、ヴァンガルドは驚きを口にしていた。
「なぜこんな小娘が封唱を……!?」
その様子に驚いていたのはヴァンガルドだけではなかった。
バリスも信じられない、といった様子でセリナを見ている。
「プラズマ、あいつ何者だ? お前の知り合いか?」
「セリナ。同じ高等部に通ってたやつ。俺達と同い年の幼馴染だけど?」
「同い年ってことはまだ18歳か!?」
バリスは柄にもなく、声を上げて驚いている。
ラルトも同様に驚愕していた。
「封唱って言ってたよな? 18歳で封唱を……?」
そんな二人とは真逆に、プラズマは分かりやすくハテナマークを浮かべている。
「“ふうしょう”ってことは煉術? 風の奴か? 普通のより難しいのか?」
事の重大さを分かっていないプラズマに、ラルトが声を上げた。
「違うわ! 封印の煉術だ! 難しいなんてどころの話じゃない。Mastersに入る条件の一つだぞ!?」
「封唱の存在を知らないのなんてお前くらいのもんだぞ!!?」
バリスのその言葉にプラズマは近くに立っていた涙流華に目を向けた。
涙流華はバカにするようなプラズマの視線に分かりやすく眉間に皺を寄せる。
「おいプラズマ、なぜ私を見る」
セリナはヴァンガルドに向かって駆けだす。
「轟唱・封力!」
彼女がそう唱えると、地面から青白い鎖が伸び、ヴァンガルドの身体に巻き付いた。ヴァンガルドも見たことのない煉術を前に、完全に後手に回っている。
鎖はゆっくりとヴァンガルドの身体の中に“染み込んで”いく。
「轟唱まで……」
そう呟いたところでヴァンガルドは自身のある異変に気付く。
「遺伝子能力が使えない…!」
どう考えてもおかしかった。
ただの少女がここまでの複合煉術の轟唱を使えるはずがない。
彼女の歳なら基本となる煉術、基唱単体が精一杯のはず。
ましてや封唱系の複合技である轟唱を使える者など、ヴァンガルドが知る限り一人しかいない。
あるとすればその封唱を得意とする能力者の……
「お前……【封氷】の弟子か……!」
ヴァンガルドの上げたその名に、セリナは誇らしそうに笑みをこぼした。
「レオンさんはやっぱりどこに行っても有名ね」
「やはりな……! 道理で封印系煉術を……!」
封氷の弟子と聞いたラルトは驚愕していた。
「【封氷】レオン・アイシーの弟子……?」
「レオン・アイシーって、あのレオンさん?」
知っている名にプラズマは“どういうこと?”とラルトに説明を求めた。
「封唱の複合煉術、轟唱系を使えるのは【封氷】のレオン・アイシーだけだ」
それは政府軍でもよく知られたことだった。彼が弟子を取っていたことも知っている。しかし、その弟子までもが封唱を使えるなど誰が予想しただろうか。
「封唱を使えるのならまだ……なんとか理解はできる。だがいくら弟子とはいえ、封印系複合煉術をたった18歳で……?」
「あんな“ザ・天才”が幼馴染なんて、お前さぞ辛い学生時代を過ごしたんだろうな……」
バリスは目の前で超高等煉術を使用する同い年の女性の凄さに苦笑している。
「あいつ天才……かぁ?どっちかっていうと“天然”な気がするが……」
「轟唱・二重封印陣砲!」
セリナは両手から二重に組まれた封印の円陣を放つ。
迫りくる封印陣にヴァンガルドは感嘆の声を漏らした。
「また訳の分からんほど難しそうなのをいとも容易くやってのけるな。」
射出された封印陣は驚く程のスピードはなく、ヴァンガルドは横に飛んで何とか躱す。
「なんなんだアイツは!!封印陣を飛ばすだなんて無茶苦茶だ!」
ラルトは超高等煉術を使いこなす少女の存在がまだ信じられなかった。
言わずと知れた凶悪犯のヴァンガルド・キル。政府軍高官であっても苦戦は必至の相手。それを一方的に追い詰めているのだから、信じることができないのももっともだろう。
セリナは攻撃の手を休めず、更なる煉術を放っている。
「轟唱・四重封体。」
ヴァンガルドの四方に封印陣が現れると、素早く伸びる青白い鎖が彼の身体を縛り上げた。
「能力も封じ、身動きも取れなくする。やることがえげつないな……」
「わかった。ならこちらもそれ相応の力で応えよう」
ヴァンガルドの身体から赤黒く禍々しい靄が溢れ出すと、徐々に大きくなりセリナの鎖ごと彼を呑み込んでいく。
赤黒い靄が晴れるとともに、封印の鎖は靄を纏いながら崩れ落ちた。
そして彼はセリナに向け、尋常ではない殺気を放ち始める。
「四帝が来る前に勝負つけねぇといけないからな」
「AGIS………」
強敵の遺伝子能力の同調に、セリナは制止するように手を振った
「ちょっと待ってください!話合えば分か……」
ヴァンガルドが能力を解放させるよりも速く、オール大元帥はヴァンガルドに向けて遺伝子能力を放つ。
オール大元帥からヴァンガルドの方向へ、メキメキと音を立てながら地面が沈下していく。
「轟唱・封壁!」
しかしあろうことかセリナが発した封印系煉術により、オールの能力を無効化された。
「よくわからんが助かった」
セリナがオールの能力を無効化した際に、ヴァンガルドを縛っていた封印系煉術が解かれる。ヴァンガルドはすぐさま体勢を立て直した。
「さすがに、このレベルの煉術師と大元帥相手は厳しいか」
突然の強敵、セリナの出現に流石のヴァンガルドも退かざるを得ない状況に陥っていた。
「惜しいが、ウラズマリーはまたの機会にするか」
そう言ってヴァンガルドがその場から撤退を図ろうと、開いた壁へと走っていく。デーモンとボルボンも彼を追うように撤退を始める。
退却するヴァンガルドを追撃するように、オール元帥は再度能力を放つ。
「逃がすか!!」
「轟唱・封壁!」
しかし、またセリナの封印系煉術によってオールの攻撃は防がれた。
そしてその間にヴァンガルド達は姿を消してしまった。
予想外のセリナの行動に、プラズマは彼女に詰め寄った。
「おい!セリナ!何やってんだ!!敵守ってどうすんだよ!!」
「いや……別にわざわざ揉める必要もないからさ………」
オール大元帥がセリナへと歩み寄り、険しい顔で尋ねた。
「どういうつもりです……貴女はどちらの味方なのですか?」
プラズマを助けるように乱入してきた彼女が、あろうことか敵であるヴァンガルドを助けた。そちら側なのかをはっきりさせようとするのも自然なことだった。
「どちらって……私はプラズマの味方。勘違いしないで。別にあなたの味方じゃない」
“味方ではない”という回答にオール大元帥は顔を顰めた。
「あと大元帥が私みたいな小娘に敬語は変だからやめて。」
敬語をやめるように言われたからか、オールは先ほどよりも厳しい言葉をセリナに浴びせた。
「ヴァンガルド・キルを逃がして市民に危害が加わったらどう責任をとる?彼は指名手配のかかった大量殺人鬼だ。」
セリナの反応はない。ただ鋭い目つきでオールを睨んでいる。
しかしその眼光に引くことなく、オールも続けた。
「それにまたこの少年を攫いにくるかもしれない。」
「また俺を攫いに来んの!?」
ヴァンガルド・キルの話から、『彼がプラズマを狙っていること』と『プラズマが何かしらの鍵を握っていること』は明らかだった。
「ったく、なんで俺はこんな面倒な奴に着いて行ったんだ……!」
バリスは悉く面倒事に巻き込まれる自身の運の無さを嘆いていた。
「攫いに来たって、そのときはまた守ればいい」
セリナは自身に満ちた目で、オール大元帥にそう断言する。
「何度だって私がプラズマを守る」
To be continued.....
【EXTRA STORY】
「あんな“ザ・天才”が幼馴染なんて、お前さぞ辛い学生時代を過ごしたんだろうな……」
▽▽▽▽▽▽
~遺伝子能力養成学校・高等部時代~
「おいセリナ、A班の班長呼ばれてるぞ」
「A班の班長はプラズマでしょ?」
「何言ってんだ、俺B班だって」
「あ、そっか。逆だった。プラズマってA班のイメージあったから……!」
「どんなイメージだよ。ってか自分と逆に覚えるかぁ?」
▽▽▽▽▽▽
「セリナの身体検査表……もらったぁ!!」
「こらっ! プラズマ返しなさい!!」
「どれどれ、セリナの身長、体重、その他もろもろをお披露目と……ん?」
「お前、煉術のとこに間違えて書いてるぞ。ホレ。」
「う、うそ……!? ほ、ほんとだ……や、やっちゃった!!」
「って、検査結果返せ!! たた、体重見てないでしょうね!!?」
▽▽▽▽▽▽
「あいつ天才……かぁ? どっちかっていうと“天然”な気がするが……」
To be continued to next EXTRA STROY.....?
【登場人物】
▼何でも屋(IMIC)
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
[バリス・スピア]
元軍医で、毒の能力を持つ医者。
薄紫で、天を衝くようなツンツン頭。目つきが死ぬほど悪い。
どんな病でも直す幻の植物を探すため、医星を出てプラズマと旅をすることになる。
[水王 涙流華]
元名家・水王家の侍で、水の遺伝子能力者。
プラズマ達に妹を救われた一件で、自分に足りないものを探すため、水王家当主から世界を回ることを命じられる。
▼政府軍
[ラルト・ローズ]
白色の長髪で、いつもタバコをふかしている政府軍中佐。
口が悪く、目つきももれなく悪い。
炎の遺伝子能力者。
[ブラスト・オール]
政府軍大元帥。政府軍のトップ。
[ラバブル・ラバーズ]
政府軍元帥。政府軍のナンバー2。
▼敵勢力
[ヴァンガルド・キル]
違法の遺伝子強化技術を使用する殷生師団の一人。
最近まで投獄されていたが、脱獄に成功し、指名手配犯となっている。
[デーモン]
政府軍上級大将。政府軍のナンバー3。
[ボルボン]
政府軍大将。政府軍のナンバー4。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
悪名高い指名手配犯の前に立ちはだかったのは、かつて学生時代を共にした幼馴染だった。
「プラズマ!」
「セリナ! なんでこんなところに!?」
「そんなことは後でいいから!!」
セリナはプラズマの横まで駆け寄ると、ヴァンガルド・キルに対して構えた。
「助太刀か。それよりもさっきの技は……」
ヴァンガルドが気にかけていたのは、セリナが発した煉術だった。
彼の知る限りでは、その煉術は簡単に使用できる代物ではない。
「封唱!」
セリナから再度青白い光が放たれる。
放たれたセリナの煉術を避けながら、ヴァンガルドは驚きを口にしていた。
「なぜこんな小娘が封唱を……!?」
その様子に驚いていたのはヴァンガルドだけではなかった。
バリスも信じられない、といった様子でセリナを見ている。
「プラズマ、あいつ何者だ? お前の知り合いか?」
「セリナ。同じ高等部に通ってたやつ。俺達と同い年の幼馴染だけど?」
「同い年ってことはまだ18歳か!?」
バリスは柄にもなく、声を上げて驚いている。
ラルトも同様に驚愕していた。
「封唱って言ってたよな? 18歳で封唱を……?」
そんな二人とは真逆に、プラズマは分かりやすくハテナマークを浮かべている。
「“ふうしょう”ってことは煉術? 風の奴か? 普通のより難しいのか?」
事の重大さを分かっていないプラズマに、ラルトが声を上げた。
「違うわ! 封印の煉術だ! 難しいなんてどころの話じゃない。Mastersに入る条件の一つだぞ!?」
「封唱の存在を知らないのなんてお前くらいのもんだぞ!!?」
バリスのその言葉にプラズマは近くに立っていた涙流華に目を向けた。
涙流華はバカにするようなプラズマの視線に分かりやすく眉間に皺を寄せる。
「おいプラズマ、なぜ私を見る」
セリナはヴァンガルドに向かって駆けだす。
「轟唱・封力!」
彼女がそう唱えると、地面から青白い鎖が伸び、ヴァンガルドの身体に巻き付いた。ヴァンガルドも見たことのない煉術を前に、完全に後手に回っている。
鎖はゆっくりとヴァンガルドの身体の中に“染み込んで”いく。
「轟唱まで……」
そう呟いたところでヴァンガルドは自身のある異変に気付く。
「遺伝子能力が使えない…!」
どう考えてもおかしかった。
ただの少女がここまでの複合煉術の轟唱を使えるはずがない。
彼女の歳なら基本となる煉術、基唱単体が精一杯のはず。
ましてや封唱系の複合技である轟唱を使える者など、ヴァンガルドが知る限り一人しかいない。
あるとすればその封唱を得意とする能力者の……
「お前……【封氷】の弟子か……!」
ヴァンガルドの上げたその名に、セリナは誇らしそうに笑みをこぼした。
「レオンさんはやっぱりどこに行っても有名ね」
「やはりな……! 道理で封印系煉術を……!」
封氷の弟子と聞いたラルトは驚愕していた。
「【封氷】レオン・アイシーの弟子……?」
「レオン・アイシーって、あのレオンさん?」
知っている名にプラズマは“どういうこと?”とラルトに説明を求めた。
「封唱の複合煉術、轟唱系を使えるのは【封氷】のレオン・アイシーだけだ」
それは政府軍でもよく知られたことだった。彼が弟子を取っていたことも知っている。しかし、その弟子までもが封唱を使えるなど誰が予想しただろうか。
「封唱を使えるのならまだ……なんとか理解はできる。だがいくら弟子とはいえ、封印系複合煉術をたった18歳で……?」
「あんな“ザ・天才”が幼馴染なんて、お前さぞ辛い学生時代を過ごしたんだろうな……」
バリスは目の前で超高等煉術を使用する同い年の女性の凄さに苦笑している。
「あいつ天才……かぁ?どっちかっていうと“天然”な気がするが……」
「轟唱・二重封印陣砲!」
セリナは両手から二重に組まれた封印の円陣を放つ。
迫りくる封印陣にヴァンガルドは感嘆の声を漏らした。
「また訳の分からんほど難しそうなのをいとも容易くやってのけるな。」
射出された封印陣は驚く程のスピードはなく、ヴァンガルドは横に飛んで何とか躱す。
「なんなんだアイツは!!封印陣を飛ばすだなんて無茶苦茶だ!」
ラルトは超高等煉術を使いこなす少女の存在がまだ信じられなかった。
言わずと知れた凶悪犯のヴァンガルド・キル。政府軍高官であっても苦戦は必至の相手。それを一方的に追い詰めているのだから、信じることができないのももっともだろう。
セリナは攻撃の手を休めず、更なる煉術を放っている。
「轟唱・四重封体。」
ヴァンガルドの四方に封印陣が現れると、素早く伸びる青白い鎖が彼の身体を縛り上げた。
「能力も封じ、身動きも取れなくする。やることがえげつないな……」
「わかった。ならこちらもそれ相応の力で応えよう」
ヴァンガルドの身体から赤黒く禍々しい靄が溢れ出すと、徐々に大きくなりセリナの鎖ごと彼を呑み込んでいく。
赤黒い靄が晴れるとともに、封印の鎖は靄を纏いながら崩れ落ちた。
そして彼はセリナに向け、尋常ではない殺気を放ち始める。
「四帝が来る前に勝負つけねぇといけないからな」
「AGIS………」
強敵の遺伝子能力の同調に、セリナは制止するように手を振った
「ちょっと待ってください!話合えば分か……」
ヴァンガルドが能力を解放させるよりも速く、オール大元帥はヴァンガルドに向けて遺伝子能力を放つ。
オール大元帥からヴァンガルドの方向へ、メキメキと音を立てながら地面が沈下していく。
「轟唱・封壁!」
しかしあろうことかセリナが発した封印系煉術により、オールの能力を無効化された。
「よくわからんが助かった」
セリナがオールの能力を無効化した際に、ヴァンガルドを縛っていた封印系煉術が解かれる。ヴァンガルドはすぐさま体勢を立て直した。
「さすがに、このレベルの煉術師と大元帥相手は厳しいか」
突然の強敵、セリナの出現に流石のヴァンガルドも退かざるを得ない状況に陥っていた。
「惜しいが、ウラズマリーはまたの機会にするか」
そう言ってヴァンガルドがその場から撤退を図ろうと、開いた壁へと走っていく。デーモンとボルボンも彼を追うように撤退を始める。
退却するヴァンガルドを追撃するように、オール元帥は再度能力を放つ。
「逃がすか!!」
「轟唱・封壁!」
しかし、またセリナの封印系煉術によってオールの攻撃は防がれた。
そしてその間にヴァンガルド達は姿を消してしまった。
予想外のセリナの行動に、プラズマは彼女に詰め寄った。
「おい!セリナ!何やってんだ!!敵守ってどうすんだよ!!」
「いや……別にわざわざ揉める必要もないからさ………」
オール大元帥がセリナへと歩み寄り、険しい顔で尋ねた。
「どういうつもりです……貴女はどちらの味方なのですか?」
プラズマを助けるように乱入してきた彼女が、あろうことか敵であるヴァンガルドを助けた。そちら側なのかをはっきりさせようとするのも自然なことだった。
「どちらって……私はプラズマの味方。勘違いしないで。別にあなたの味方じゃない」
“味方ではない”という回答にオール大元帥は顔を顰めた。
「あと大元帥が私みたいな小娘に敬語は変だからやめて。」
敬語をやめるように言われたからか、オールは先ほどよりも厳しい言葉をセリナに浴びせた。
「ヴァンガルド・キルを逃がして市民に危害が加わったらどう責任をとる?彼は指名手配のかかった大量殺人鬼だ。」
セリナの反応はない。ただ鋭い目つきでオールを睨んでいる。
しかしその眼光に引くことなく、オールも続けた。
「それにまたこの少年を攫いにくるかもしれない。」
「また俺を攫いに来んの!?」
ヴァンガルド・キルの話から、『彼がプラズマを狙っていること』と『プラズマが何かしらの鍵を握っていること』は明らかだった。
「ったく、なんで俺はこんな面倒な奴に着いて行ったんだ……!」
バリスは悉く面倒事に巻き込まれる自身の運の無さを嘆いていた。
「攫いに来たって、そのときはまた守ればいい」
セリナは自身に満ちた目で、オール大元帥にそう断言する。
「何度だって私がプラズマを守る」
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【EXTRA STORY】
「あんな“ザ・天才”が幼馴染なんて、お前さぞ辛い学生時代を過ごしたんだろうな……」
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~遺伝子能力養成学校・高等部時代~
「おいセリナ、A班の班長呼ばれてるぞ」
「A班の班長はプラズマでしょ?」
「何言ってんだ、俺B班だって」
「あ、そっか。逆だった。プラズマってA班のイメージあったから……!」
「どんなイメージだよ。ってか自分と逆に覚えるかぁ?」
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「セリナの身体検査表……もらったぁ!!」
「こらっ! プラズマ返しなさい!!」
「どれどれ、セリナの身長、体重、その他もろもろをお披露目と……ん?」
「お前、煉術のとこに間違えて書いてるぞ。ホレ。」
「う、うそ……!? ほ、ほんとだ……や、やっちゃった!!」
「って、検査結果返せ!! たた、体重見てないでしょうね!!?」
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「あいつ天才……かぁ? どっちかっていうと“天然”な気がするが……」
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