6 / 22
第6話 エルフ、詰む。
しおりを挟むエルフになって二日目。
目を覚まし、顔を洗いがてら鏡を覗くと、改めて自分がエルフになってしまったと実感が湧いてくる。
「はぁ……」
昨日はエルフになってすぐで、調子に乗って実験やら何やらと色々試してきたわけだが、一回寝て夜を越してみると冷静さが戻ってくるわけで……
「昨日の俺、まじ無いわぁ……」
結構へこむ。いや、マジで。
スマホを開き、昨日撮ってトゥイッターにあげた写真をみるとよりへこむ。
「って、すげーバズってるし……」
自分のアカウントを開いてみると、フォロワーがすでに一万を超えていた。
さらに、自分のトゥイートのコメントを見てみるが、「すげー可愛い!!」とか、「クォリティー高すぎ!!」とか高評価。
一躍有名になってしまった。
一応社交辞令風にコメント返しとくか……
「高評価ありがとうございます。っと」
これで大丈夫だろう。たぶん。
そしてスマホをベッドに置き、昨日そのままにしっぱなしのお肉やお皿を片付けていく。ついでに部屋の片付けも。
ゴミ捨ては、自分の姿が目立たない夜にすることにした。
部屋の片付けが終わり、いつものポジション(ベッド)にあぐらをかいた俺は、今後の事について考えていた。
まあ、昨日も同じようなことを言っていた気もしないが、昨日は冷静さはなく、興味の方にそれてしまっていたため、それは気にしないで欲しい。
真剣に考えてみると、色々な問題が頭の中に浮かんでくる。
具体的には「肉食えねぇ」とか、「肩こりやべぇー」とか、「風呂どうしよう」とかだ。
その中で一番心配なのが、俺という存在を認めてもらえるかどうかだ。
何より、この姿では俺が俺ということを証明出来ない。色々証明の仕方はあるかもしれないが、俺が俺だとこの世の中に肯定させることはほぼ不可能に等しいだろう。近しい人だったら信じてくれる人もいるとは思うが。
このままずっと自宅警備員という名の引きこもりニートだったらそういう心配とかはしなくても大丈夫なのだが、生憎一人暮らしの俺は、働かなくてはならない。今は親から貰ったお金で生活できてはいるが、そろそろそのお金も底をついてしまいそうだ。
ならどうするか。
まあ、アルバイトするしかないだろう。だが、そのアルバイトには自分の証明書とか必要だ。
顔が凄い変わってるとかだったら最悪信じてもらえそうだが、性別も変わってしまっては無理と書いてゼロに等しいだろう。
てな訳で、結果、俺は将棋でいう王手をかけられているわけだ。
さて、このほぼ詰んでいる状況でどうしようか……
生憎今は時期的に春休み。まだ時間は……って、俺社会人だから関係ないじゃん。
そんな意味もない一人芝居をしている時だった。
「お兄ちゃん、電話だよっ!出ないと許さないんだからっ!」と、俺のスマホから三原 茜ちゃんから呼び出しが。
俺はそれにびっくり仰天。天地がひっくり返りそうになった。
だってさ、友達ゼロ人万年引きこもりニートの俺のスマホに電話がかかってきてるだぞ?
驚くに決まってるだろ。むしろ、驚きを通り越して死にかけたわ。
俺は恐る恐るスマホを取り、通話ボタンを押した。
「はい、もしもし?」
『あっ、えーくん?(えーくんは俺のこと)姉の詩織だけど……』
「姉かよ!!」
スマホをベッドに叩きつける。
期待してた俺の青春を返せよっ!!って思ったけど、俺の青春もう終わってた……
『えーくん?大丈夫?』
「あー、大丈夫です、気にしないでもらえると」
俺は気を取り直して電話の続きをする。
「ところで何用でございますでしょうか?」
『何用って、今日私がえーくんの家に行くことになってたはずだよ?』
「えっ?」
カレンダーを確認してみると、今日の日付にその通り記されていた。
「あははっ、忘れてました。てへっ」
『てへっじゃないよ、もお~。覚えておいてよね。それより、さっきから女の子みたいな声で喋ってるけど風邪でも引いてるの?』
「そ、ソウナンダー、風邪引いてるだけだから気にシナイデー」
『風邪薬買ってきてあげようか?』
「いや、ダイジョウブデス」
『うん、わかった。じゃあ後五分くらいで着くから」
「あっ、了解です」
そして終了ボタンを押した。
それと同時に、将棋の場面も変わってしまっていた。
「これ、俺詰んだわ」
試合終了のカウントダウンが始まった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
彗星と遭う
皆川大輔
青春
【✨青春カテゴリ最高4位✨】
中学野球世界大会で〝世界一〟という称号を手にした。
その時、投手だった空野彗は中学生ながら152キロを記録し、怪物と呼ばれた。
その時、捕手だった武山一星は全試合でマスクを被ってリードを、打っては四番とマルチの才能を発揮し、天才と呼ばれた。
突出した実力を持っていながら世界一という実績をも手に入れた二人は、瞬く間にお茶の間を賑わせる存在となった。
もちろん、新しいスターを常に欲している強豪校がその卵たる二人を放っておく訳もなく。
二人の元には、多数の高校からオファーが届いた――しかし二人が選んだのは、地元埼玉の県立高校、彩星高校だった。
部員数は70名弱だが、その実は三年連続一回戦負けの弱小校一歩手前な崖っぷち中堅高校。
怪物は、ある困難を乗り越えるためにその高校へ。
天才は、ある理由で野球を諦めるためにその高校へ入学した。
各々の別の意思を持って選んだ高校で、本来会うはずのなかった運命が交差する。
衝突もしながら協力もし、共に高校野球の頂へ挑む二人。
圧倒的な実績と衝撃的な結果で、二人は〝彗星バッテリー〟と呼ばれるようになり、高校野球だけではなく野球界を賑わせることとなる。
彗星――怪しげな尾と共に現れるそれは、ある人には願いを叶える吉兆となり、ある人には夢を奪う凶兆となる。
この物語は、そんな彗星と呼ばれた二人の少年と、人を惑わす光と遭ってしまった人達の物語。
☆
第一部表紙絵制作者様→紫苑*Shion様《https://pixiv.net/users/43889070》
第二部表紙絵制作者様→和輝こころ様《https://twitter.com/honeybanana1》
第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》
登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる