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故きを温めて新しきを知る

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クルリさんが文字を教えてくれる人を手配をする間、少しだけレネ様がこの国のことを話してくれた。
やはりここの国は身分制度が残っていて居住地でだいたい棲み分けがされているらしい。
一番身分の高いのがノルマード家、ブーケルハット家、ハプルク家とその分家たち。そのあとにはちらほら身分の高い家があってあとは庶民よりも階級が上の人たちだったりする。複雑なのでここらへんは臨機応変に対応したりするらしい。
ノルマード家、プーケルハット家、ハプルク家が協力しあってそこそこ国を回しているらしい。あとは官僚みたいな人たちがやってる。庶民以下の人たちはよくわからないけど毎月土地代とかそういうのを地区の家に納めてたり、まぁそういうので回してるらしい。町内会費みたいなものか。

「ということはレネ様はかなり階級が上の方なのですね」

「まあな。あとクルリはハプルク家の分家出身だな。レビーはあいつはどこだったか、官僚あたりからか?」

ここにいる人たちは使用人たちもかなり階級が上の方たちだった。

「クルリ様とお呼びしたほうが良かったですね。会ったときはそうします…」

「いや、あいつは呼び捨てでもなんも気にしないだろうが。ま、そこら辺は双方で折り合いをつけて好きにしてくれ。で、それだけだと血が濃くなるから時々庶民以下でも生まれる異能持ちを交ぜる、とここまで言えばわかるか」

「母体ってことですかね」

「そうそう、話が早い」

うわあ、そういう流れ。ただ私は既婚者だしこちらで結婚とかは考えたくもない。

「…私、向こうの世界だと夫がいて、子どももいますし、ちょっと結婚とか出産は考えたくはないですね」

「母体にするにはもう少し若いほうがいいしな!ま、異能持ちの身分の低い女だと分かると、女じゃなく男もだけど、悪いやつらから狙われるから多少は武術の心得を持ったほうがいい」

なんて物騒な世界。ま、でもそれもそうか。あって困るものではないか、フラワーちゃんの足を引っ張っているし。

「異能持ちは大抵身分が上だ。庶民が使いの者になれたら話は別だが、ドラゴンに気に入られないといけないからそもそも難しい。気難しいしな」

…リコ、気難しかったか?かなり気さくだった気がするが。異能試しは楽しそうにしてたからそれなりにイベントとして気に入ってるものだと思ってたけどなんか行き違いがある?この辺は黙っておこ。ここの世界についたときに助けられたとはいったけどそれがドラゴンとは言ってなかったし。運が良かったな、とは言われたけど誰が別の人だと思ってるもの。

「使いの者ってなんなの?」

「そうだな、お使い様の話からまずしないといけないか」

~昔々、この世界のでき始めの頃、あるところにドラゴンと人間がいました。人間とドラゴンはとても仲良く暮らしていました。しかし、種族が違うため、人間のほうが先に死んでしまいます。それを哀しく思ったドラゴンは、自分の血肉を分け与え、人間に力を与えることにしました。人間はドラゴンを傷つけたくはない、そこまでして生きたくはないと拒否をしましたが、寝ている間にねじこまれました。すると人間は、三日三晩苦しみ、強靭な身体と不思議な能力を手に入れました。人間はドラコンとともに長い人生、旅をすることになりました。そこで人間を、時には魔獣を助けていきました。その過程でドラゴンと人間はお使い様と呼ばれるようになりました。また、ドラゴンと人間が通った道や休んだ場所は栄え、そして、恵みが落ちることになったのです。その後、二人はいつしかどこかに消えてしまいましたが、人間にはない能力をもちドラゴンに認められたものは使いの者と呼ぶようになったのです~

「確かこんな内容だったよな、な、クルリ」

いつの間にかドアにはクルリ様が立っていた。

「はい、そのとおりです。人間は助けた時々で子を作っており、それが今の異能持ちに繋がっている、ともいわれていますね。レネ様、来週からマコト様の講師の手配が完了いたしました。グーグルッツ様がいらしてくださるそうです」

「あー、彼女が空いていたんだね。良かったな!」

何がなんだか分からないけれど、適任者は素敵な人らしい。

「…あの、ずっと疑問なのですが、どうしてそこまでしていただけるのでしょうか。私としては大変嬉しいのですが」

レネ様とクルリ様が顔を見合わせている。

「クルリ、言ってないのか」

「…レネ様がここに連れてくるまでに説明しているものと思っていました」

行き違いがあったようだ。

「…んー、こほん。では、改めてレネ・ノルマードだ。私はノルマード家は代々異能持ちの保護、管理を任されているがここ数百年、異能持ちの数が減っている。由々しき事態だとみて発掘や異能持ちに関わる研究を行っているんだ。それに協力してもらいたい。まあ、拒否権はない」

でしょうね。

「どのような条件でしょうか」

「そうだな、まだ当主と話ができていないので話を詰めることになるだろうが、おそらく体質の研究。レビーが主導してやっているんだが血液等の提供だな。あとは、こちらが指定する魔物等の討伐にも参加してもらうことになるだろう。それと、あとはなんだろうか、まあそれは追々だな。因みにきちんと給与も住居も出るから安心して良い」

毎日働き詰めだったしそこそこ良い生活がここでできそうかな。いや、文字が読めないから契約書で騙されてもわからないから、ここで気を緩めてはいけないな。

「分かりました。では、条件がはっきりと分かり次第お知らせください」

「ふむ、そうしよう。マコトも怪我人であることだし、ゆっくり静養するといい。部屋までの移動はできるか?誰か呼ぶか?」

「案内していただけたら動けますので」

「なら、クルリ、あとは頼む」

「かしこまりました」


レネ様をお見送りしてクルリ様が帰ってきた。

「クルリ様、今まで呼び方を様付けせずに申し訳ありません。ハプルク家の方なのだとレネ様から聞きました。そもそもこのお屋敷にいる方たちは私より身分も全て上…?この世界の身分制度とかをよく知らないもので失礼を」

立てないので座って深々と頭を下げる。文化的にお辞儀はどうなんだろうか、誠意が伝わると信じたい。

「頭をお上げくださいませ。そもそも私は分家ですし、レネ様に雇われている身ですのでお客様に畏まられる必要もございませんので、前のままでお願いしますね」

クルリ様、いや、クルリさんからの圧が強い。なんなんだ、この圧。有無を言わせない感じがある。

「…ありがとうございます。部屋に戻る前にシェフの方とお会いすることはできるのでしょうか。お料理のお礼と先程の消耗で少しご飯をいただきたいのですが」

「かしこまりました。シェフにはこちらから要望を伝えておきます。マコト様はあまり人に会われないほうが宜しいので、このまま部屋に戻りますね。本当に運ばなくてよろしいのですか」

オーラ?モヤ?のようなものを自分の身体から生やして歩く動作をする。あまり練習をしていないので、自分の身体から足のようなものが8本ほどでている。
宙に浮くマジックとして考え出したがあまり浮くことができずに諦めた技がこんな時に活きるとは。
クルリさんはかなり引いた目でみてる。

「急いで人目につかないように部屋に戻りましょう」

…気を遣ってくれたようだ。
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