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情けは人の為ならず
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あれから5年は経ったのか。
細々とマジックをしつつ生計を立てている。マジック以外にも歌と大道芸もやってます、昔とった杵柄っていうものですね。まぁ歌はカラオケくらいしかやってないけど。子どもたちが好きでよく行ってたな、懐かしい。
リンはまだ目覚めない。ずっと私のマントにいる。生きているのか死んでいるのか分からないけれど、私のオーラ?モヤ?がなくなるまではそのままぐるぐる巻きにしておいてる。もちろん、親子設定だ。病弱なので治療法をみつけて旅してる、よく眠っているんです、でゴリ押しだ。お母さんはゴリ押しもできます。押しが強くなれてたのは守るべきものがあるからか。
「さ、よってらっしゃい。種も仕掛けもない不思議なことがおこります~!」
昔はもっときちんとした口上を述べてたけど広場とかでやる分にはこのくらいがちょうどよい。最初の街は随分と豊かだったんだな、と今更ながらに気がついた。あそこ、異能試しとかがあるとこの近くの街だし、そうなるんかな。
異能はほとんどの人には見られないから積極的にマジックに活用してます。モヤモヤも巧く操れるようになったし。
その後、自分はお花が操れるらしく手や何もないところから花を出せる。うんうん、マジックっぽい。この世界にない花たちを出すのは生態系が気になるけど、異能で出した花はしばらくすると消えるから多分繁殖はしないでしょう、多分。
異能が使えそうな人がいるときは普通のマジックで、そうじゃないときは異能を使って、とそれなりにやっていたけど、どこでヘマをしたんだろう。
「…ねえ、キミ、聞いているかい?」
リコ、リン、天国にいるであろうみんな、故郷の人たち、お母さん、もうだめかもしれない。
話は少し前に遡る。遡らせて。
いつものようにちょっと賑わってる場所でマジックを始めたのよ。屋台もでててその周辺の人にここでやってもいいか、って許可ももらって。まぁ大抵は許可なんて必要ないんだけど、無駄な争いはしたくないし。
で、許可でたから、いつものようにやって、で、異能が使えそうな人もいないし、ちょびっと派手なパフォーマンスとしたりしたわけてすよ。
助手がいないからね、蔦で自分を覆って合図をすると中にいません!みたいなトリックだったりね。まぁ二重にしたりとか、そういうトリックよ。
で、まあ、そこまではいいのよ。無事に終えてお金回収をしてたら、もう少しで終わるってときにヤクザ?荒れくれ者?っぽい人がきてウンタラカンタラいってまして、まあ、ここもいいのよ、たまにくるタカリの人だと思ったから。
でもお客さんたちは避けるし、屋台の人も関わらないようにしてるし、あ、あのおばさん、運が悪いな、みたいな目で見てくるね?
うん、タカリの人たちをクレーマーとして対応してたら、なんか脅してくるのよ。
“オマエの子ども、シナズケ宿に寝てるんだってな。ぐるぐる巻きになってたなあ。子どもの枕元にあったコレ、売れるかな”
なんて言われたら急いで帰るじゃん?そうするとリンの隣に知らない人がいるし。セキュリティなんて普通のお宿だからね、鍵くらいしかないよ。
で、冒頭に戻るってわけ。
とりあえずは、リンのマントぐるぐる巻きは健在だしオーラのようなものでも包まれてる。うん、大丈夫そう。
「はぁ、リン、無事で良かった。…で、貴方はどちら様でどのようなご用件で?」
なんかごちゃごちゃいってたけど、リンのことが気になりすぎててそれどころじゃないし、私が攻撃されたら反撃できるように花を置いて放置してたんだよね。あーあ、何かやな予感がする。平和な世界が懐かしい。
「全く聞いてなかったわけね」
なんか若い男の人が怒ってるような呆れてるような感じだけど、こっちだってそれなりに怒っているんだよね。不法侵入だし、手下みたいな人たちに脅迫もされてるし、営業妨害もされてる。
「ええ、全く聞いてなかったわ。礼儀のなってないものとは話をする気はないので、どうぞお引き取りを」
ドアの方を指差す。こういうのは舐められたら終わりだからね。あら、フラワーちゃんも指?葉っぱでドアをさすなんて、以心伝心だ。
「そういわないでよ、その子のことが治せるっていっても?」
ほう、そういう手段を使ってくるのか。
「なるほど。お話は聞こうと思います。では、どうぞ、こちらに」
多分向こうは異能持ち。花のこと見えてるみたいだし。強そう。これは使いの者ってやつ?いや、判断するのはまだ早い。
「んー、ここじゃダメかな。着いてきて。あ、もう帰ってこないからその予定で」
…信用はできないけど、リンはこのままでいいはずがない。腐敗臭とはないしあのマントの下はどうなってるのか私じゃ分からないのよね。取らないほうが良いってことくらいしか分からない。付いていくしかないか。リンと自分自身を守ることくらいなら出来るかな。攻撃にはあまり向いてないけど、守ることにはそれなりに自信がある。
「分かった。この子以外に連れはいないし、持っていくものは全てここにあるからこのまま出られる。どこに行くの」
このまま出られる、といったら笑みが深まった。顔はそこそこいいのに不気味で気持ち悪い。
「ついてからのお楽しみ。じゃ、行こっか」
ここの宿は日払いさせてもらっていたし、鍵とチップとしてのお金を受付の子に渡して別れを告げる。前にいる青年をみても何も言わないってどころか畏まってる。偉い人なのか?まだ何も分からない。
「じゃ、これに乗って」
リンを抱きかかえながら着いていくと大通りに出た。ここらへんは、馬車?馬ではないな、車?でもない何か乗り物があるので、私は未知の世界だ。基本的に移動は乗り合いのバスや飛行船?みたいなものとかを使っているがそれはもっと外れにある。ここは中流階級以上の人たちがいるエリアになる。
この薄汚い服でいてもいいのか、と思ったが青年が言うんだし、いいのであろう。
「では、遠慮なく失礼します」
・・・・・
移動の中でなにか質問をされたりするかと思ったがそんなことはなく始終無言で過ごした。自己紹介をしてない気もしたが、些細なことである。
「「「おかえりなさいませ、レネお坊ちゃま」」」
「うん、ただいま」
金髪のさらりとした髪が揺れる。ああ、やっぱりいいとこのお坊ちゃまなのか。どうしてあんなゴロツキを…と思ったけど、あれとは別件か。まだ気を許すな。何があってもいいように小さな花を自分の肩とリンにつけておく。
「それと、その花仕舞っておいてね。ここにいるみんな視えるから」
なるほど、異能持ち集団の使用人ね。敵対心をもたれるのは得策ではない。
「…失礼しました」
ここまでのこのこ付いてきたけど大丈夫だったか、今になって不安がよぎる。最悪花に食べてもらって種としてどこかに飛ばしてもらえばいいけど、屋内だとキツイな。
「それで、キミ、えーっと、貴方はどうしてここに私達を連れてきたのですか。この子のことを治療してもらえるそうだけど、目的を教えてもらえると嬉しいのですが。慈善活動でしたら、教会とかですし、私達は旅をしている最中ですので」
使用人の目もあるので、敬語を使ってみる。レネお坊ちゃまって呼ばれてたからレネ様?になるんだろうけど、まだ呼んでいいのか分からないし。
「せっかちだなあ。じゃ、予定変更!その子をここにおろして、あっ、待って、やっぱこっち来て」
使用人が近づいてきて歩きながら指示をしている。なんなんだ。
「ほら、こっち」
指差したのはお屋敷の隣りにあるホテル?お店のような場所だ。
「ここにおろして。そう、いいよ。少し離れてて」
青年がそういうのでお店のようなところのベンチにリンを寝かせて少し離れる。
「みててね」
悪戯顔をして何やら始めている。うーん、何するのかな。危険なことではなさそう…。ここで刃物を振り上げられたりしたら終わりではあるけど、そんな素振りはなし。オーラ?モヤ?みたいなのが、青年から出てきた。異能か?
「ちょっと弱めてもらっても?」
リンのマントのオーラ?みたいなもののこと?弱めたりとかできるのかな…花に吸い取ってもらえばいっか。
「フラワーちゃん、お願い」
手から出てきた花が歩いていってリンが寝ているマントの上に登る。うん、ファンタジー。ここだけみるととってもほのぼの。
根を張るようにしてぐんぐん吸い取る。あ、花が輝いてきた。それ、私に戻ってくるのかな。
「なんか独特だね、もうそのくらいでいいよ」
だいぶ弱まってきたところで再び青年が何かをしだす。ぶつぶつ唱えてる。異能ってもしかして、魔法の類だったりするのかな。お母さん、そういうの沢山読んできました。ああ、続きはどうなったのかな、それよりも帰れるのかな。
「…よし、もうマントとっていいよ。あとはみんな宜しくね」
「「「かしこまりました」」」
あれよあれよという間にリンが運ばれていく。
「あの…」
聞きたいことが多すぎる。なんなんだ、一体。リンはどうなったのか分からなかった。けど、もう大丈夫なのかな。
「色々聞きたいこともあるだろうし、話そっか」
青年がこちらを向きつつ歩き出す。またお屋敷の方に向かうからこっちが住んでるところなのか。それとも来客用か。いや、マコト、冷静になるんだ。
部屋の中にはいると立派な応接間があった。ああ、これ、ドラマや映画でみたことあるやつ。
「そこ座って。今お茶持ってくるから。それとも先に着替えてくる?着替えならあるけど」
くすくすと青年に笑われてる。確かにここに来てから妙に自分が薄汚く感じてしまっている。服も草臥れているしお風呂もシャワーや水浴びだったので汚れが落ちていないような気もする。匂いには気を遣っているから臭くはないと思うけど、鼻がバカになってる可能性もあるし分からない。
「…いえ、このままで」
青年に笑われてるのも癪だし、何より聞きたいことがあるので先に聞いてしまおう。
「では、聞きたいことがあります。まず、広場で私に香り袋が売れるか、とか話しかけてきた人たちは貴方の差し金ですか。あのようなことは営業妨害です。やめてください。そして、リンはどうなりましたか。何をしましたか。貴方は私に何をさせたいのですか。見返りといってもお支払いできるお金はあまり持ち合わせがありません。そもそも貴方は一体…」
パンパン
青年が手を叩いた。聞きたいことがあるだろうし、話そうっていってきたのはそちらでは。不服なのでそれを隠さずに青年をみるとやはり笑っている。
「聞きたいことがたくさんあるみたいだし、順を追って話していくよ。まあ、焦らずに。んー、やっぱり臭いから湯浴みしてきたら?」
…失礼すぎる。が、臭いといわれたら気になる。お風呂あるのかな、水で拭いたり川で洗ったりだったから正直心惹かれる。そんな顔がバレたのだろう。メイドさんのような方がきて、湯浴みの場所に案内された。
「レネお坊ちゃまの申し付けによりお客様の担当になりましたクルリです。よろしくお願いします。お客様の湯浴みのお手伝いをさせていただきます」
クルリさんという女性の方がにこりともせずに脱がしにかかってきた。いや、そういうのはちょっと求めてないです。
「よろしくお願いしますマコトと申します、って、あの、本当にすみません。湯浴みのやり方とかを教えていただけたら自分でできますので、「だめです」、はい」
押しが強い。なにこれ、押しが強い。怖い、目が座ってる。
「せめて、服は、あの、あまり綺麗じゃないので自分で脱がせてください、いや、本当に、自分で脱げるので、すみません」
服を脱がそうとしてくるのを必死にとどめ、自分で脱ぐ。もうこうなったら恥もなにもない。生娘でもないので元々そこまで恥ずかしいとかはないし申し訳ない気持ちが強い。
「では、脱ぎ終わりましたらこちらへ」
クルリさんも腕まくりして準備万端だ。怖い。もうなるようになれだ。
好き勝手洗われて何やかんやされたけど、やっぱり湯につかれるのはいいね。
しっかり湯につかって緊張がほぐれたのかそれともクルリさんの手がゴッドハンドなのかいつの間にか寝てしまっていた。
細々とマジックをしつつ生計を立てている。マジック以外にも歌と大道芸もやってます、昔とった杵柄っていうものですね。まぁ歌はカラオケくらいしかやってないけど。子どもたちが好きでよく行ってたな、懐かしい。
リンはまだ目覚めない。ずっと私のマントにいる。生きているのか死んでいるのか分からないけれど、私のオーラ?モヤ?がなくなるまではそのままぐるぐる巻きにしておいてる。もちろん、親子設定だ。病弱なので治療法をみつけて旅してる、よく眠っているんです、でゴリ押しだ。お母さんはゴリ押しもできます。押しが強くなれてたのは守るべきものがあるからか。
「さ、よってらっしゃい。種も仕掛けもない不思議なことがおこります~!」
昔はもっときちんとした口上を述べてたけど広場とかでやる分にはこのくらいがちょうどよい。最初の街は随分と豊かだったんだな、と今更ながらに気がついた。あそこ、異能試しとかがあるとこの近くの街だし、そうなるんかな。
異能はほとんどの人には見られないから積極的にマジックに活用してます。モヤモヤも巧く操れるようになったし。
その後、自分はお花が操れるらしく手や何もないところから花を出せる。うんうん、マジックっぽい。この世界にない花たちを出すのは生態系が気になるけど、異能で出した花はしばらくすると消えるから多分繁殖はしないでしょう、多分。
異能が使えそうな人がいるときは普通のマジックで、そうじゃないときは異能を使って、とそれなりにやっていたけど、どこでヘマをしたんだろう。
「…ねえ、キミ、聞いているかい?」
リコ、リン、天国にいるであろうみんな、故郷の人たち、お母さん、もうだめかもしれない。
話は少し前に遡る。遡らせて。
いつものようにちょっと賑わってる場所でマジックを始めたのよ。屋台もでててその周辺の人にここでやってもいいか、って許可ももらって。まぁ大抵は許可なんて必要ないんだけど、無駄な争いはしたくないし。
で、許可でたから、いつものようにやって、で、異能が使えそうな人もいないし、ちょびっと派手なパフォーマンスとしたりしたわけてすよ。
助手がいないからね、蔦で自分を覆って合図をすると中にいません!みたいなトリックだったりね。まぁ二重にしたりとか、そういうトリックよ。
で、まあ、そこまではいいのよ。無事に終えてお金回収をしてたら、もう少しで終わるってときにヤクザ?荒れくれ者?っぽい人がきてウンタラカンタラいってまして、まあ、ここもいいのよ、たまにくるタカリの人だと思ったから。
でもお客さんたちは避けるし、屋台の人も関わらないようにしてるし、あ、あのおばさん、運が悪いな、みたいな目で見てくるね?
うん、タカリの人たちをクレーマーとして対応してたら、なんか脅してくるのよ。
“オマエの子ども、シナズケ宿に寝てるんだってな。ぐるぐる巻きになってたなあ。子どもの枕元にあったコレ、売れるかな”
なんて言われたら急いで帰るじゃん?そうするとリンの隣に知らない人がいるし。セキュリティなんて普通のお宿だからね、鍵くらいしかないよ。
で、冒頭に戻るってわけ。
とりあえずは、リンのマントぐるぐる巻きは健在だしオーラのようなものでも包まれてる。うん、大丈夫そう。
「はぁ、リン、無事で良かった。…で、貴方はどちら様でどのようなご用件で?」
なんかごちゃごちゃいってたけど、リンのことが気になりすぎててそれどころじゃないし、私が攻撃されたら反撃できるように花を置いて放置してたんだよね。あーあ、何かやな予感がする。平和な世界が懐かしい。
「全く聞いてなかったわけね」
なんか若い男の人が怒ってるような呆れてるような感じだけど、こっちだってそれなりに怒っているんだよね。不法侵入だし、手下みたいな人たちに脅迫もされてるし、営業妨害もされてる。
「ええ、全く聞いてなかったわ。礼儀のなってないものとは話をする気はないので、どうぞお引き取りを」
ドアの方を指差す。こういうのは舐められたら終わりだからね。あら、フラワーちゃんも指?葉っぱでドアをさすなんて、以心伝心だ。
「そういわないでよ、その子のことが治せるっていっても?」
ほう、そういう手段を使ってくるのか。
「なるほど。お話は聞こうと思います。では、どうぞ、こちらに」
多分向こうは異能持ち。花のこと見えてるみたいだし。強そう。これは使いの者ってやつ?いや、判断するのはまだ早い。
「んー、ここじゃダメかな。着いてきて。あ、もう帰ってこないからその予定で」
…信用はできないけど、リンはこのままでいいはずがない。腐敗臭とはないしあのマントの下はどうなってるのか私じゃ分からないのよね。取らないほうが良いってことくらいしか分からない。付いていくしかないか。リンと自分自身を守ることくらいなら出来るかな。攻撃にはあまり向いてないけど、守ることにはそれなりに自信がある。
「分かった。この子以外に連れはいないし、持っていくものは全てここにあるからこのまま出られる。どこに行くの」
このまま出られる、といったら笑みが深まった。顔はそこそこいいのに不気味で気持ち悪い。
「ついてからのお楽しみ。じゃ、行こっか」
ここの宿は日払いさせてもらっていたし、鍵とチップとしてのお金を受付の子に渡して別れを告げる。前にいる青年をみても何も言わないってどころか畏まってる。偉い人なのか?まだ何も分からない。
「じゃ、これに乗って」
リンを抱きかかえながら着いていくと大通りに出た。ここらへんは、馬車?馬ではないな、車?でもない何か乗り物があるので、私は未知の世界だ。基本的に移動は乗り合いのバスや飛行船?みたいなものとかを使っているがそれはもっと外れにある。ここは中流階級以上の人たちがいるエリアになる。
この薄汚い服でいてもいいのか、と思ったが青年が言うんだし、いいのであろう。
「では、遠慮なく失礼します」
・・・・・
移動の中でなにか質問をされたりするかと思ったがそんなことはなく始終無言で過ごした。自己紹介をしてない気もしたが、些細なことである。
「「「おかえりなさいませ、レネお坊ちゃま」」」
「うん、ただいま」
金髪のさらりとした髪が揺れる。ああ、やっぱりいいとこのお坊ちゃまなのか。どうしてあんなゴロツキを…と思ったけど、あれとは別件か。まだ気を許すな。何があってもいいように小さな花を自分の肩とリンにつけておく。
「それと、その花仕舞っておいてね。ここにいるみんな視えるから」
なるほど、異能持ち集団の使用人ね。敵対心をもたれるのは得策ではない。
「…失礼しました」
ここまでのこのこ付いてきたけど大丈夫だったか、今になって不安がよぎる。最悪花に食べてもらって種としてどこかに飛ばしてもらえばいいけど、屋内だとキツイな。
「それで、キミ、えーっと、貴方はどうしてここに私達を連れてきたのですか。この子のことを治療してもらえるそうだけど、目的を教えてもらえると嬉しいのですが。慈善活動でしたら、教会とかですし、私達は旅をしている最中ですので」
使用人の目もあるので、敬語を使ってみる。レネお坊ちゃまって呼ばれてたからレネ様?になるんだろうけど、まだ呼んでいいのか分からないし。
「せっかちだなあ。じゃ、予定変更!その子をここにおろして、あっ、待って、やっぱこっち来て」
使用人が近づいてきて歩きながら指示をしている。なんなんだ。
「ほら、こっち」
指差したのはお屋敷の隣りにあるホテル?お店のような場所だ。
「ここにおろして。そう、いいよ。少し離れてて」
青年がそういうのでお店のようなところのベンチにリンを寝かせて少し離れる。
「みててね」
悪戯顔をして何やら始めている。うーん、何するのかな。危険なことではなさそう…。ここで刃物を振り上げられたりしたら終わりではあるけど、そんな素振りはなし。オーラ?モヤ?みたいなのが、青年から出てきた。異能か?
「ちょっと弱めてもらっても?」
リンのマントのオーラ?みたいなもののこと?弱めたりとかできるのかな…花に吸い取ってもらえばいっか。
「フラワーちゃん、お願い」
手から出てきた花が歩いていってリンが寝ているマントの上に登る。うん、ファンタジー。ここだけみるととってもほのぼの。
根を張るようにしてぐんぐん吸い取る。あ、花が輝いてきた。それ、私に戻ってくるのかな。
「なんか独特だね、もうそのくらいでいいよ」
だいぶ弱まってきたところで再び青年が何かをしだす。ぶつぶつ唱えてる。異能ってもしかして、魔法の類だったりするのかな。お母さん、そういうの沢山読んできました。ああ、続きはどうなったのかな、それよりも帰れるのかな。
「…よし、もうマントとっていいよ。あとはみんな宜しくね」
「「「かしこまりました」」」
あれよあれよという間にリンが運ばれていく。
「あの…」
聞きたいことが多すぎる。なんなんだ、一体。リンはどうなったのか分からなかった。けど、もう大丈夫なのかな。
「色々聞きたいこともあるだろうし、話そっか」
青年がこちらを向きつつ歩き出す。またお屋敷の方に向かうからこっちが住んでるところなのか。それとも来客用か。いや、マコト、冷静になるんだ。
部屋の中にはいると立派な応接間があった。ああ、これ、ドラマや映画でみたことあるやつ。
「そこ座って。今お茶持ってくるから。それとも先に着替えてくる?着替えならあるけど」
くすくすと青年に笑われてる。確かにここに来てから妙に自分が薄汚く感じてしまっている。服も草臥れているしお風呂もシャワーや水浴びだったので汚れが落ちていないような気もする。匂いには気を遣っているから臭くはないと思うけど、鼻がバカになってる可能性もあるし分からない。
「…いえ、このままで」
青年に笑われてるのも癪だし、何より聞きたいことがあるので先に聞いてしまおう。
「では、聞きたいことがあります。まず、広場で私に香り袋が売れるか、とか話しかけてきた人たちは貴方の差し金ですか。あのようなことは営業妨害です。やめてください。そして、リンはどうなりましたか。何をしましたか。貴方は私に何をさせたいのですか。見返りといってもお支払いできるお金はあまり持ち合わせがありません。そもそも貴方は一体…」
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「聞きたいことがたくさんあるみたいだし、順を追って話していくよ。まあ、焦らずに。んー、やっぱり臭いから湯浴みしてきたら?」
…失礼すぎる。が、臭いといわれたら気になる。お風呂あるのかな、水で拭いたり川で洗ったりだったから正直心惹かれる。そんな顔がバレたのだろう。メイドさんのような方がきて、湯浴みの場所に案内された。
「レネお坊ちゃまの申し付けによりお客様の担当になりましたクルリです。よろしくお願いします。お客様の湯浴みのお手伝いをさせていただきます」
クルリさんという女性の方がにこりともせずに脱がしにかかってきた。いや、そういうのはちょっと求めてないです。
「よろしくお願いしますマコトと申します、って、あの、本当にすみません。湯浴みのやり方とかを教えていただけたら自分でできますので、「だめです」、はい」
押しが強い。なにこれ、押しが強い。怖い、目が座ってる。
「せめて、服は、あの、あまり綺麗じゃないので自分で脱がせてください、いや、本当に、自分で脱げるので、すみません」
服を脱がそうとしてくるのを必死にとどめ、自分で脱ぐ。もうこうなったら恥もなにもない。生娘でもないので元々そこまで恥ずかしいとかはないし申し訳ない気持ちが強い。
「では、脱ぎ終わりましたらこちらへ」
クルリさんも腕まくりして準備万端だ。怖い。もうなるようになれだ。
好き勝手洗われて何やかんやされたけど、やっぱり湯につかれるのはいいね。
しっかり湯につかって緊張がほぐれたのかそれともクルリさんの手がゴッドハンドなのかいつの間にか寝てしまっていた。
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