上 下
25 / 34
2.ヨドの街

さん、魔王様とのお話

しおりを挟む
指をさした方を見てみると、魔王様がいる。昨晩みたときは目が光っていたと思ったけれど、今は光ってないわね。というよりも初めてお顔をみたけど、美形だ。服はなんだか民族衣装ね、どこの国に近いかしら。教養が足りないわ。刺繍が素敵だわ、ドイツっぽい?いや、でもうーん。容姿はゲームにこういう顔の人いたような、ってレベルね。もしかしてこれがこの世界の標準!?いや、まさかね。彫刻のような方なのね、魔王様。二次元って感じだわ。いえ、るみ、ここは異世界げんじつよ。

「こんばんは、この度はありがとうございます。お風呂も最高でお食事もとっても美味しかったです」

「それは重畳ちょうじょうである。さて、本題に移る前に、『             』飯を運んでくれ。吾は腹ぺこだ」

「ワカッタ。もってくル」

シーツおばけさんに話しかけたようだけど、お名前のところだけ聞き取れなかったわ。そして、シーツおばけさんは敬語ではないのね、付き人のような感じかしら?分からないわね。

「飯が来る前に重要なことを話しておこう。もうそちはあそこには戻れぬ。荷物はこれで全部か?持ってきたぞ。それからこの生物はこちらで少し預かる。なかなかに興味深い。そちの扱いだが、そちは食客として扱う。が、人間を暇にさせるのはよくないと聞く。よって、こちらは衣食住を提供及び家庭教師とやらをつける。そちは1日1回 吾と食事を共にすること、3日に1回指定する場所にいってもらう、というのはどうだ。嫌と行ったところで拒否権はないんだが。我はどうする?帰るなら送って、なに?『            』」

魔王様がいきなり色んなことを話しているせいでキャパがオーバーしそうだわ。パサランと話しているのね。その間に少し頭の整理をしましょう。
荷物の確認はあとでいいわね、スマホもみえてるから、大丈夫そう。モチは魔王様のところにいるのね、あ、楽しそうな雰囲気ね、こちらも大丈夫ね。
拒否権はないといっていたけれど、衣食住は大きいわね、正直いうとあの花畑で生活は不可能だったものね、栄養失調か何か病気で死ぬ運命だったわ。家庭教師はよく分からないけど教えてくれるということね、この世界のことを学べということかしら。まあ、これはこれでよいわ。よく分からないし考えてもしたかないことよ。
ご飯を一緒に食べるのは拒否する必要はないわね、指定する場所が問題よね、危険がないのかそこで何をするのかってことを聞けば良いかしら。

「お、なんだ、考えが少しはまとまったか」

わぉ、声がけがよいタイミングね。心の声が読めているのかしら。

「指定する場所に行くとは私がそこに行って何かを行う必要があるのでしょうか。私は特に秀でたものは何もないのですが」

「はっはっは!真剣に悩んでいると思ったらそんなことか!そちは弱い。分かっておる。危ないところには行かせぬ。そちはそこに行くだけでよいし、ちゃんと供もつけるから心配するな。さ、準備ができたようだな飯にするか」

魔王が手を2度叩くと眼の前にご飯が並んだ。魔王様がご飯食べるのってもっと机バーン!みたいなところかと思ったけれど、こういう感じでも食べるのね。シーツおばけさんはいつの間にか魔王様の後ろにいる。なんで、いつの間に!?と思ったけれど、それよりも美味しそうな匂いにやられてしまう。おかしい、私はこんなに食いしん坊だったかしら。

「サ、ドウゾ。たくさんタベるとよいデス」

「どうした。さっさと座る」

ご飯に見とれていたら魔王様は既に座っていた。音が立てないとか忍者すぎるわね。

「あ!はい、座ります」

座るとお昼に食べたときよりも少し豪華なご飯が並んでいる。パンが主食なのかしら。

「「では、合唱(いただきます)」」

パサランも近くにやってきてるわね。なにか欲しいのかしら。あら、魔王様が話しかけているわ。相変わらず聞き取れないのよね。音なのかしら。違う言語ならそれなりに耳に音として入ってきてもいいはずなのに分からないわ。ま、いいわ、聞こえないものは仕方ないものね。
作法も分からないけれど、魔王様の見様見真似でなんとなく食べましょ。お肉をパイで包んでるお料理よ、フレンチっぽいわね、美味しいわあ。
あら、これは果物?なにかしら。バナナのような味がするのに形はザクロだわ。面白いわね。
ああ、家族にも届けてあげたいわ。魔王様の前だと失礼だから一人で食べるときに写真でも撮って送りましょう。

「そち、味は満足してるみたいだな」

「ええ、とても美味しいです。見たことのない食事がたくさんあって、楽しいです。ありがとうございます」

「それなら良い。…まだ眠くはないかの」

「やっぱり分かっちゃいますか?2日くらいあまり食べてなかったからですかね、ご飯食べてるときからとっても眠くて、すみません」

「いや、よいのだ」

魔王様の食べ方はとっても上品だわ。私もそれなりに昔は会食に連れて行ってもらったけど、ここまできれいに食べられるかしら。
毎回意識してやってみましょ。テーブルマナーはほぼ一緒のようね。ただ、コースのようにでてくるのではないのでこれが一般なのかしら。それとも私に…ふわあ、本当に眠いわね。まだお食事の途中なのに。

「眠いならここで寝ても良い」

「いえ、荷物の確認もやりたいので、ふわっ、すみません」

魔王様がじっと見てくるわ。欠伸を我慢してもでてきちゃうわ、なんでかしら。
あら、パサランが近寄ってきたわ。何かしら、うわ、まぶし。眼の前でチカチカしないでちょうだい。
思わず眩しくて目を閉じてしまったところから記憶がない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

緑の魔法と香りの使い手

兎希メグ/megu
ファンタジー
ハーブが大好きな女子大生が、ある日ハーブを手入れしていたら、不幸な事に死亡してしまい異世界に転生。 特典はハーブを使った癒しの魔法。 転生した世界は何と、弱肉強食の恐ろしい世界。でも優しい女神様のおかげでチュートリアル的森で、懐いた可愛い子狼と一緒にしっかり準備して。 とりあえず美味しいスイーツとハーブ料理を振る舞い、笑顔を増やそうと思います。 皆様のおかげで小説2巻まで、漫画版もアルファポリス公式漫画で連載中です。 9月29日に漫画1巻発売になります! まめぞう先生による素敵な漫画がまとめて読めますので、よろしくお願いします!

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...