上 下
5 / 34
1.始まりの地

ご、初めての生命体

しおりを挟む
何かとっても幸せな夢を見た気がするけれど、現実は厳しいわね。

目の前に広がる花畑の中にいる光の綿毛は私が捕まえることができるのかしら。ちょっと観察してみたいわ。夜になっても光っているのか気になるわね。
最初からいたとは思えないから、お昼頃からでてきたのかしら、謎だわ。生きているのよね、多分。

それとも、魔力がない人はこの世界のものが見えない、なんてことはあるかしら。それだったら一大事よね。視力が悪い、みたいなものかな。
時間が経つと私の魂も魔力が馴染んできたので見えるようになったとか。赤ちゃんも生まれたては視力が弱いからそういうことかしら。少し楽観的だけど、そういう見方もできるわね、というよりそれしか考えられないわ。きっとそうよ!
色のない魂というのは魔力のない魂のことよね、きっと。説明不足なのよ、あの神もどき。様なんてつけてあげないんだからね。

まあ、魔力の問題は時間とともにきっと分かることも多いでしょう、解決しない問題は住むところの空間設備よね。
こればっかりはちょっとねえ、災害用の簡易トイレは車の中に置きっぱなしだし、トイレがほしい。
作り方は昔どこかでいわれてた、ビニールに新聞紙を丸めてそこにするとかそういうの、、そうよね、作っておきますか。バケツみたいなのがあるといいのだけれども、ないわね、都合よく落ちてたりもしないし、仕方ないわ。穴を掘ってそこに作りましょう。
人は催すものだし、この際野外でも良いということにしましょう。誰もいないものね、少し離れたところに掘りましょう。

夜は暗くなるだろうから、明かりの準備、といっても火は危ないわね、いくら下が砂利ではあるといっても隣は花畑だし。このまま気温があまりさがらないといいのだけれども。大丈夫かしら。
夜になると魔物がでるとかはないわよね、信じたくないけどそこまでハードモードだったら諦めるしかないわね。そうならないことを神に祈りましょう、いえ、自分に祈りましょう。

そうね、火がだめだとするとスマホのライトとペットボトルでいけるかな。なんで私はこんなサバイバルなことをしているのかしら、本当に。
あとは明るいうちにやっておくことは何があるかしら…

お昼を食べたら少し落ち着いたのか少し考えながら動くことができるし、やっぱり空腹は大敵ね。


とりあえず、思いつく限りやれることをやったわ。
あら、もう2時過ぎになるのね、あっという間だったわ。今日中に西の方に行ってみたかったのだけれども、間に合うかしら。んー、まだ日も高いあるし、行ってみるとしましょう。

相変わらず静かねえ、此処は。

「あっるっこー♪あるっこー♪ふふ、歩くのは好きだけれど、こんな場所で一人で歩くのは好きじゃないわ。何処かに誰かいないかしら。もしもーし、こんにちはー」

いないと分かっててもそろそろ寂しくなってきてしまったので、歌いつつ話しつつ西に向かって進んでいきます。

「あら、君達もついてきたの?いいわ、こっちよ、おいでなさい。冒険をしてるのよ」

花畑から光った綿毛もちらほらと後をついてくるように私の周りを飛んでいる。懐かれたのかしら。

・・・・・

西に進むと湿った土だし水音も近くなってきた。

「ここらへんから聞こえるんだけどな、どこだろう」

水源を探していると、目の前にいきなり自分の背丈ほどある高さの積み重なった鏡のようなものから水滴が垂れていて、下に川ができている。

「今までなかったわよ、こんなの」

数歩下がってみるとまた景色と同化して見えなくなってしまう。

「なるほど、目の錯覚ね、面白いわ」

鏡のような石に映るのは自分の姿。異世界だというのにここだけなんだかおかしな感じ。
いつも通りに写真だけ撮って触れずに拠点まで戻ることに。

「とりあえず、調査だものね。水はありそうで何よりだわ。飲むには一回濾過したほうがいいわよね、細菌とかも怖いし。濾過の仕方が分からないわ。やっぱり火を付けるしかないのかしら。乾いた木なんてあったかしら。紙を燃やしたら火種になるわよね。ま、手持ちのものがなくなったら考えましょう。さ、拠点に戻りましょ」

光っている綿毛もちらほらと花畑の方へ帰っていくようなので、案内されてるようで少し嬉しくなって目の前にいる子達に声をかける。

「案内してくれるの?ありがとう、綿毛ちゃんたち」

パチ、パチッ

いきなり静電気のような音が聞こえたと思ったら、綿毛2つが地面に落ちてしまった。

「ひえっ、な、なに…」

いきなりの音にびっくりしたけど、光っている綿毛が落ちていること以外は変わりないようだ。

「一体どういうことなの」

恐る恐る落ちている光の綿毛に近づいてみる。
花畑でみたときよりもくっきりその形がわかるようになっているみたいだ。

「ケサランパサランのようね、子どもたちがみたら喜びそう」

スマホで写真を撮ってそこを離れようとしたけれど、なんとなくこのままにしておくのもいけない気がしてそっとハンカチで包んでおく。

「もしかして死んじゃったのかな。でも、まだ光ってるから大丈夫かな。静電気みたいな音は一体何だったのかしら。君たち生きてる?」

返事はないとわかっていても、ついつい話しかけてしまうのはどうしようもないわよね。
そのまま拠点まで戻ることにした。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...