元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ

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【図書館と道場】

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今日、図書館に行く前にちょっとやりたいことがある。帝都には海がある。今まで、海が無かったから、塩を作る事が出来なかったのだ。そこで俺は、海洋深層水と食塩、純水、塩化ナトリウムを大量に作っておきたいと思った。海洋深層水はミネラルが豊富な水で飲み水としては最高だ。それに、滅菌して点滴の溶液に使ってもいいかな。普通は純水に溶かした物を使うんだけど。塩もミネラルたっぷりの物が作れるので、塩の中でも結構高級品だ。俺は、飛翔し海に向かう。中央帝都から海までは飛翔して5分程度で着く。海岸線を飛びながら、人気のない砂浜や岩場を見つける。砂浜の砂も少し採取していこう。俺は、砂浜の砂を40トンほど空間収納に収める。そして、遠洋に向かった。スキャンで海底の深さをモニターしながら、深さが200m以上ある場所を探した。沖は棚になっており、一定の距離まで進むとかなり深くなっていた。俺は、自分の肺にエアレーションの魔法をかけ、水圧に耐えられるようにプロテクションをかける。

”うん。これなら息をしなくても苦しくないぞ。行けるかな。”

 俺は、海底250m程度のところまで潜っていく。そこは明かりが届かない闇の世界だった。ライトの魔法を使いながら深海を進んでいく。深度が約300m程度の所で地面に到着する。そこをゲートポイントとして人が通れる程度のゲートを作れるようにした。

”これでよし!”

 用事を済ませ、転移で屋敷に戻る。庭にプールを作り、そこにゲートを繋げ水深350mの海水で満たす。

「タカミ、何しているの?」

 ティナが興味津々で俺の所にやってくる。

「ん?お塩とお水を作るんだよ。海水のままじゃ飲めないからね。それに、これは海の深い所の海水だから凄く体に必要な成分が含まれているんだ。」

「へー、良く分かんないけど、タカミがやる事だからすごい事なんだろうね。」

 最初に俺は、分離の魔法を使い、塩と水に分離させる。この時の水は、まったくの純水だ。これはこれで使い道があるのだ。塩は、分離された水以外なのでミネラルが豊富な塩となっている。これはこれで、とても質の高い塩だ。次にミネラルはそのままで、塩分を0.009%ほど残して塩化ナトリウムを分離させた。これは、純物質の塩化ナトリウムだ。これはこれで使える。これを10回ほど繰り返して大量の塩、塩化ナトリウム、海洋深層水、純水を作り出した。

 塩作りの作業を終え、俺は図書館へ向う。

「ご主人、私も一緒にお供していいかしら?」

「いいよ。じゃあ、一緒に行こうか。」

ノアも俺の肩に留まり、一緒に行くらしい。ついに、この時が来たのだ。図書館は、城の近くにあり、大きな教会みたいな作りだ。俺は、早速中に入ってみる。入口には、警備がおり、使用許可書を提示して中に入っていく。中には、司書の方がいるスペースを仕切りに、本棚エリアと読書のスペースがある。本棚のエリアは、体育館2個ほどの広さがあり、本棚がスラっと並んでいる。図書のスペースは4階分の吹き抜けになっていて、壁側にずらっと本が並んでいる。前後の壁際には階段があり、上の階へと続く。上の階は本棚と通路のみだ。各階のエリアごとに書物の種類が分別されている。俺は、とりあえず、この世界に関する本を読み漁る事にした。特記すべきことは、この大陸は山脈と境界線で5つの国によって統治されているらしい。今いる中央帝都は東の都と呼ばれているらしい。西側にはオールドネームルーフ、更に西にはビックスロープ、更にはワイドアイランド、オールドネームルーフの北側にはにはその北側にはトデイシティーがあり、各々事なる国が統治しているようだ。この大陸は結構広そうだ。海を隔て3つの大陸がある事は分かっているが、どのような国なのかどのような大陸なのかは分かっていないらしい。やっぱ、世界は広いな。

”さて、今日はこれ位にするかな。”

俺は、図書館を後にする。辺りは、すっかり日が落ちていた。しかし、人通りは全く少なくならない。それどころか、街は街頭に溢れ、人通りが増してきている気がする。

”なんだか、東京の夜を思い出すな。”

俺は、そんな事を考えながら街を歩いている。折角なので街をぶらぶらと散策する事にした。夜の街には、様々な露店やお店が出ている。お店と言ってもほとんどが夜のお店または飲食関連のお店、露店が多い。でも、”かっぺ”の俺はそれも新鮮で楽しい。ノアも楽しそうだ。

「ここの街は夜でも賑やかなのね。楽しいわ。」

「そうだね。じゃあ、少し買い食いでもしながら散歩しようか。」

「賛成!!そうしましょう!」

俺達は、露店でちょっとした串物と”ケバブ”みたいな巻物を買ってノアと半分ずつ食べながら散策する。マーケットの中心は凄く賑やかで明るいが、中心を外れるとだんだん暗くなっていく。その一角に一風変わった建物がある。よく見ると剣の道場らしいが、人がいない。

”剣術大会か。基本的に俺は魔法寄りだから力と能力で”ゴリ押”するしかないのかな?折角の機会だから剣術でも習ってみるか。”

「なぁ、ノア。ちょっと、ここ、見て行ってもいいか?」

「あら、剣術道場?勿論、ご主人が行きたいなら私もついて行くわよ。」

俺は、そこの門戸をくぐり、中に入っていく。

「すみません。ここって剣術道場ですか?」

 中から、髪をポニーテールに縛った道着を着た女の子が出てきた。年は16~17歳って感じだ。華奢だがしまった身体は、ずっと鍛錬を積み重ねた証なのだろう。

「そうよ。何の用かしら?」

「えっと、剣術を習ってみようと思ってきたんですが・・・」

 その女の子は俺を下から上までなめまわす様に見ると、今度は身体を触ってくる。稽古中だったのか、少し汗ばんだその子の身体からいい香りがする。

”やべ、これはまずいかも・・・”

 俺は、女の子を身体から引き離す。

「結構、身体は締っているのね。どこかで、武道か剣術をしていたの?」

「はぁ、自分の父が街の自警団の隊長をしていまして、その父に習った事を反復する程度ですかね。」

「まあいいわ。そこにある道着に着替えて、道場に入りなさい。」

 籠の中に入っている道着を指さし、着替える様に促す。ノアは、”パタパタ”と近くの小枝に留まり様子を見ている。俺は、言われるがまま道着に着替え道場に入る。道場は決して広くはないが歴史のありそうな感じがする。

「私が相手をしてあげる。構えなさい。」

「え、いきなりですか!?」

「父親に習ったんでしょ?それでいいからかかってきて。」

俺は父に習った構えをする。本気でいくと”ごり押し”しちゃいそうなので相手の力量に合わせてギアを上げて行こうと思う。そして、俺は、正面からかかっていく。

「どりゃ!」

 俺の竹刀は簡単に弾かれる。続けて前後左右にフェイントを混ぜながら打つ。かかり稽古はシン兄ちゃんと稽古をしていた時以来だ。

「えい、ハッ、どりゃ、フン!」

 ことごとく竹刀が弾かれるが、相手もそれなりに本気を出し始めている。すると、今度は相手から攻めてくる。俺は、避けられる所は避け、避けられなさそうな時は竹刀で受ける。まぁ、本気出せば全部避けられちゃうんだけどね。そんな攻防を5分程度行った。

「はい!もういいわ。あなた、基本は全然なっていないけど、それなりに鍛錬はしてきたのね。」

「はぁ、言われたことの反復ですが。ほぼ毎日やっていますね。」

「そうなのね。あなたには見込みがあるわ。努力できる人はきっと強くなれる。どお、うちで稽古してみない?」

「はぁ、とりあえず話を聞くだけって思っていたんですが・・・まぁ、これも何かの縁ですね。お願いします。」

「じゃあ、決まりね。私は、この道場の師範代をしているドミノって言うの。あなたは?」

「俺は、タカミです。よろしくお願いします。ドミノさん。」

「ドミノでいいわ。」

 ドミノは、ここで剣術を習うための費用や注意事項などを教えてくれた。どうやら、ここの道場は、基本的な剣術から居合にもっていく。神明流”抜刀術”が主な流儀らしい。

「まぁ、こんな所かしら。じゃあ、明日から来て頂戴。」

「分かりました。よろしくお願いします。」

 俺は、剣術所を後にし、帰路に就く。

「ご主人は、十分強いのに、剣術を習う意味はあるのかしら?」

「まぁ、何にしても基本は大事だからね。今の俺は、スキル頼りだからきちんと基本を身に付けたいんだよ。」

「ご主人は、勤勉なのね。でも、そう言うのも悪くないわ。」

「付き合ってくれてありがとな。ノア」

「あら、私は、私の意思でご主人と一緒に居るんだもの。お礼を言われる事は無いわ。」

「うん。分かった。じゃあ、帰ろうか。」

 今の俺の剣術は、すべて能力とスキルによるものだ。せめて、剣術の基本だけでも押さえておきたい。そんな事を考えながら帰路に就いた。屋敷に着くと、ナディアとティナが魔法の鍛錬をしている。

「ただいまー」

「はぁはぁ、おかえり。」

「ご主人、お帰りなのじゃ。」

「ティナも頑張てるね。ナディアもいつもご苦労さん。」

「ティナ、もっともっと頑張ってタカミの役に立つ!」

 なぜか、ティナは張り切っている。

”確か、オッティーは大魔導士で師匠の師匠だったな。ティナ事頼んでみようかな。“

 俺は、オッティーがいる書斎に向かう。

「コンコン。」

「誰じゃ。開とるぞ。」

「失礼します。」

「おお!主君殿。どうなされた?」

「うん。オッティーに相談があるんだけど。」

「なんじゃ。改まって。」

「うん、出来ればでいいんだけど、ティナに魔法を教えてあげて欲しいんだ。」

「儂にか?」

「うん、オッティーは元魔導騎士団の団長で俺の師匠の師匠だろ?ティナにもちゃんとした基礎から学んで欲しいと思ってね。ナディアは、俺が教えた実践向きの鍛錬がメインだから。」

「まぁ、時間もたっぷりあるしお嬢ちゃんさえ良ければよいぞ。懐かしいの。人に魔導を指導するのなんて久ぶりじゃ。」

「ありがとう!早速、ティナに聞いてみるよ。」

 俺は、書斎を後にし、ティナの部屋に向かう。

”コンコン”

「ティナいる?」

「うん。開てる。どうぞ。」

 俺は、ティナの部屋に入る。ティナはベッドで”グデ”っとなっている。結構魔力を使い、疲れたんだろう。俺は、ティナの横に座る。

「ティナ、今、ナディアと魔法の鍛錬をしているだろ?基本的な魔法についてオッティーが教えてくれるんだけど、習ってみないか?」

 ティナは”ガバっ”と起きて俺を見て言う。

「本当に!ティナ。オッティーに魔法習う。タカミ、ありがと!」

「うん。よかった。じゃあ、オッティーに伝えておくよ。ティナも頑張ってね。」

「うん。もっともっと、タカミのために頑張る。」

「うん。ありがとう。でも、俺の為じゃなく、自分の為に頑張って欲しいかな。」

「分かった。ティナも沢山”せいちょう”出来るように頑張る!」

「うん。ティナは頑張り屋さんだからきっと凄い魔導士になれるよ。」

 俺が立ち上がって部屋を出ようとした時、

「タカミ!ティナは、ティナは、タカミの役にたっている?」

「もちろん!ティナの笑顔にはいつも癒されているよ。」

「ティナはもっと頑張って、ナディアやノアみたいになるから。だから・・・」

 俺は、ティナの下に戻り、ティナを抱きしめる。

「ティナはティナのままでいいんだ。無理せず、じっくりと成長すればいい。」

「でも、ナディアやノアは凄くタカミの役にたっているのに、ティナは・・・」

「言っただろ。俺にとってティナも凄く大事なんだよ。だから、そんなに焦らなくても大丈夫。」

 俺は、ティナの頭を撫でながら、囁く。俺が急に成長したので、ティナはきっと不安になって”自分ももっと成長しなきゃ”って思ったのかな?

「さて、もう少ししたらご飯だからそれまでゆっくりしてな。」

「うん。分かった。タカミ、ありがと。」

「ううん。全然問題無いよ。」

 俺は、ティナの部屋を後にした。その後、いつもの日常を過ごし、眠りにつく。俺の日課をちょっと記載する。

=============

起床:剣術の鍛錬(父に習った型と素振り)

鍛錬後は自由時間

夕食後:異空間に行き、魔法の組み合わせ実験と最上級魔法の無詠唱訓練→魔力が枯渇するまで。魔法の鍛錬後は、再度自由時間(大抵は就寝)

=============



 翌日、朝の鍛錬を終え、図書館に向かう。図書館には凄い数の書籍があるが、上手く選別しながら速読と全記憶を駆使し、次々と読破していく。しかし、このペースで読み続けてもここにある書物を全部頭に入れる為には1年以上かかるだろう。そのため、必要な書物を選定して暗記していく。この作業をすると結構、”ヘロヘロ”になる。ぶっちゃけ、ここまでやらなくても特待生は楽勝だと思うけど。折角のチート能力があるので出来る事はやろうと思っている。昔から、ボッチ作業は得意だしね。

 俺は”ヘロヘロ”になりながら、次に道場に向かう。道場には、ドミノが一人で稽古している。

「こんにちわー。」

「タカミ、よく来たわね。そこに道着を準備しておいたから着替えて道場に着て頂戴。」

 俺は、言われるがまま道着に着替え、道場に向かう。その際も誰とも会うことは無かった。俺が道場に入るとドミノは早速と言わんばかりに稽古を始める。ウォーミングアップをし、その後、俺に基本的な剣術について教え始めた。

「剣術の基本技は67技あるの。面技が23種、籠手技が17種、胴技12種、突き技15種ね。これを習得する事によって正しい剣術の技を発揮できるようになり、自然と姿勢は良くなって、実戦に対する心構えが出来るようになるの。そして、その技を習得した後に、奥義を習得、そして更に技を自由自在に変化させ、自身の技を完成させる事で新しい技を生み出すことが出来るようになるのよ。まずは、簡単な所からやっていきましょう。」

 俺は、ドミノと共に剣術の基本的な技の練習をする事となった。最初にドミノが見本を示し、俺がそれをマネするように何度も繰り返す。何度も何度も繰り返し、体に覚えさせるように打ち込む。それをドミノが細かく指導してくれる。数十分後、やっとドミノより休憩が貰えた。結構、スパルタ的だ。

「さて、いったん休憩にしましょう。あそこにお茶を用意してあるわ。喉を潤す程度に飲んで。決して、飲みすぎない様にね。飲みすぎると休憩後がキツイわよ。」

 コップにお茶を注ぎ、ゆっくりと飲む。しかし、稽古中も誰も来ない。

「あのー、他の門下生の方々は来られないんですか?」

 ドミノの顔が険しくなる。

”ん?聞いちゃいけなかったか(;’∀’)”

 ドミノは大きく深呼吸(ため息)をすると、重い口を動かした。

「他の門下生は、他の道場に移っちゃったのよ。」

「え!?って事は、俺一人ですか?」

「まぁ、今はね。でも、必ずこの道場を復活させて見せる!!」

「なぜ、そんな事に・・・(;’∀’)」

「まぁ、いずれ分かる事だから話しとくわ。この道場はね、私のおじい様が運営していたの。おじい様は、中央帝都でもちょっと名の知れた剣士だった。多くの門下生がおじい様に憧れこの道場の門徒を叩いたわ。しかし、20年くらい前の話で私も生まれて無かったけど、ある事件に巻き込まれた少年をおじい様が連れて来たの。おじい様はその少年の面倒を見て、少年は道場の手伝いをしながらおじい様の指導を受けていたわ。その少年には剣術の才能があり、おじい様も凄く評価していた。しかし、半年前。彼の態度が急変し、おじい様に勝負を挑んだの。彼が勝ったらここの看板を貰っていくって言ってね。勿論、おじい様は拒んだわ。しかし、彼は、この街の大手の道場と手を組み、三週間位前に再度やって来た。今度は道場同士の名前を賭けた形になった。道場の評判の事もあり、おじい様は勝負を受けざる負えなかったの。しかし、おじい様の年齢は87歳。その青年は20代後半。技はおじい様の方が一日の長があるかもしれないが、体力的にはかなり不利だった。しかし、勝負は拮抗したわ。長期に及ぶ戦いの末、最後におじい様が足を滑らせて・・・、勝負はついたわ。そして、おじい様はその時、頭に受けた衝撃でずっと目を覚まさない・・・、街の回復師の所でもこれ以上の回復は見込めないと言われ、おじい様はあれからずっと寝たきりの状態。総師範代がそんな状態になり、門下生もほとんど辞め、残った数人も彼が引き抜き、そして今の状態という訳ね。」

「なるほどですね。なんか大変でしたね。おじい様は今どうなされているのですか?」

「街の大きな回復院で帝都でも有名な回復師様が見てくださっているけど、未だに目を覚ましてないわ。」

「!?ってことは、まだ、生きていらっしゃるんですね!!」

「人のおじい様を勝手に殺さないで!」

「違いますよ。まだ、間に合うかもしれません!!俺がドミノのおじい様を治します!」

「な、何言っているの!そんなこと出来別けないじゃない!!勝手な事言わないで!!」

「今のままでは、死を待つだけですよ。頭の病気はそう言うものなんです。一刻を争います。そこに案内して!!」

 俺は、急いでその回復院にドミノと共に行く。図書館の近くにあるかなり大きな建物だった。中に入ると怪我した人や病気になった人が大勢いる。回復院は”この世界”で言う病院なんだろう。俺とドミノは急いで病室に入る。病室には半目を開け、ボーとした老人がベッドに横たわっている。ベッドの周りには魔石がはめ込まれており、常にヒールがかかるようになっている。この老人はかなりタフだ。飲まず食わずで約3週間、魔法の力だけで生きている。もう、いつ死んでもおかしくない状態だ。

「これが、この世界の現実なのか・・・」

「何言っているの。おじい様を治せるの?」

「ああ、今から治療を始める。」

 すると、”ドタドタ”誰かが入ってくる。この老人を担当している回復師と助手だろう。

「ちょっと、待て!!何だ貴様は。急にやって来て、貴様、この患者をどうするつもりだ!!」

「治すに決まっているだろ!!このままじゃ、この患者は確実に死ぬぞ!!!」

「そんな事は分かっている。頭にダメージを受けてずっとこのままだ。永くはないだろう。」

「兎に角、俺は、ドミノと約束した。この患者を治すと。邪魔をするな!」

「何を言っている!だれか、衛兵を呼んでくれ!」

 こんな事ですったもんだしている場合じゃない。俺は、部屋に結界を張り、誰も出られない、誰も入れない様にする。そして、回復師と助手にパラライズの魔法をかけ動けなくした。

「だまって見ていろ!!」

 俺は、点滴を取り出し、ショックを起こさない様に少しずつエネルギーと水分を身体に供給する。魔石によりヒールが効いているため、上手く導入できたと考えられる。

《アナライズ》

 最初に体内のバイタルをチェックし、オペ耐えられるか確認する。数値の低いものに関しては追加で処置を行った。タイムアクセルを併用し、時間を調整しながら、身体を正常値に戻していく。ただし、病状の悪化も考えられるので様子を見ながら体の時間だけを調節する。生命維持に必要なエネルギー源を導入した事を確認し、病状の確認をする。

《スキャン》

 俺は、脳内を調べ始める。あった。”クモ膜下出血”だ。脳の表面にある血管から出血し、その血の塊が脳を圧迫する事で脳が損傷したのだろう。しかも、運の悪い事にかなり時間が経っている。間違いなく後遺症は残ってしまうだろう。とにかく、この血の塊を除去する事が先決だ。俺は、白衣を空間収納から取り出し、バサッと着、オペ室を作り出す。

<クリーンルーム>

そして、オペの準備をし、オペに入る。

「これより、脳クモ膜下のの血溜除去のオペを始める。」

《アネスシージャ》

 俺は、麻酔をかけ、オペを始める。患者の体力を考え、開頭せずにオペを行う事にした。生憎、魔石のよるヒールで病状は安定している。アシスタントを起動し、状態の把握とサポートをしてもらう事にした。

《アシスタント》

ディメンションカッターで血の塊だけを剥離し取り除いていく。剥離した塊を転移にてトレーに移す。

《ディメンションカッター》

《転移》

《スキャン》

《ディメンションカッター》

《転移》

《脳に炎症が見られます。処置いたします》

 時間が経っているせいか損傷した脳が腫れている。俺は、アシスタントに脳の腫れを処置任せ、オペを進めていく。

最後に、出血していた部分の血管を再生させ繋げる。そして再度、出血を起こさない様に処置する。

《ターゲット》

《ヒール》

《シール》

《リジェネレイト》

 俺は出血と血の塊が無いか確認し、麻酔を解く

《スキャン》

《キュア》

「ふぅ、オペ終了。」

 俺は、すべての魔法を解除する。すると、部屋の外で待機していた衛兵が押し寄せてくる。

「貴様!大人しくしろ!!」

「こ、こら、ちょ、おい離せ!!」

「ちょっと、あんた達病人の前で何しているのよ!!いい加減にして!!」

 ドミノが叫ぶ。そんな中、ベッドの方から声が聞こえた。

「相変わらず、ドミノはうるさいの。おちおち寝てもいられんわ。」

「お、おじ、おじい様?」

「なんじゃ、儂は腹が減ったぞ。何か食うもんを持ってこんかい!」

 周りは、シーンとした。最初に口を開いたのは担当の回復師だった。

「き、奇跡だ・・・一体、何が起こったんだ・・・」

「病気をちゃんと治したんだよ。あ、でも、重症だったからまだ気は抜けないけどね。多分、身体にマヒが残っていると思われるが。」

 俺は、衛兵を振り払い、ドミノの祖父の下に行く。

「ご気分はどうですか?良くないと思いますが。」

「あぁ、左半身は動かんが気分は良いぞ。それよりも腹が減った。」

「ですよね。3週間何も食べていませんでしたからね。でも、急に食べるとまた調子を崩すので消化に良いものから徐々に普通の食事に切り替えてください。」

「儂の左半身は、もう動かんのか?」

「私の知る限りでは、これが限界です。が、しかし、可能性はあります。それは、俺もやった事がありません。もし、成功すれば元通りとまではいきませんが、動くようになる可能性があります。」

「どんなことをするんじゃ?」

「脳にダメージを負った場合、大抵は何らかの後遺症が残る事が多くあります。そのうちの一つがマヒです。しかし、脳のダメージを取り除くこと、つまり脳を再度、再生(生き返らせる)事でその機能は回復すると思われます。しかし、残念なことに脳が再生する事は無いのです。そこで、身体の一部を使って無理やり脳を再生させる方法です。」

「どうやってそんな事するのじゃ。」

「はい。身体には怪我を自分で治すという自己再生機能があります。それを使います。ただし、簡単にはいきません。皮膚は皮膚だけを、臓器なら臓器だけをと言う風にすでに出来上がっている部分を再生させる機能しか持たないからです。それを無理やりどの部分でも再生できるようにする事で治療します。」

「そんなこと出来るのか?」

「正直、分かりません。俺もやった事無いので。でも、試してみる価値はあると思いますが。」

「ふん。どうせもうダメじゃったんじゃ。お主の好きにせい。しかし、儂を生きながらえさせるとは大した回復師じゃ。」

「え、俺、回復師じゃないですよ。ドミノさんの所の門下生ですが・・・」

「な、なんじゃと!!門下生!?ここの回復師ではないのか!?」

「昨日、偶然来たのよ。剣を習いたいって。しかし、タカミ、あなたは一体何者?おじい様を治すなんて。どんな名回復師でももうダメだと言われていたのに・・・」

「そ、そうです!一体何をしたんですか?出来れば、我々にも教えていただきたい!!」

 ドミノを割って、回復師たちが俺を取り囲み始めた。

「わ、分かりましたよ。では、説明しますので部屋を用意して、興味のある人は、その部屋に来るようにして下さい。」

 回復師達は、バタバタと出て行った。

「とりあえず、一命を取り留められて何よりでした。しかし、マヒが残っています。そのままにしておくと拘縮と言って固まってしまいます。痛いでしょうが、毎日、必ず指、関節、足の曲げ伸ばしを行ってください。拘縮すると治っても、可動域が狭まりますよ。」

「うむ。わかった。きちんと修練しよう。」

「今日は、私もこれからおじい様を看病するから、この後の稽古は中止にします。」

「分かりました。では、また明日道場に行きますね。それではお大事に!」

 俺は、病室を出て回復師たちの用意する部屋に向かおうとしたその時、

「た、タカミーー!!」

「ん?何?」

「タカミ・・・その・・・ありがと。」

「うん。どういたしまして。じゃあ、おじいさんの看病頑張ってね。」

 俺は、病室を出て回復師たちが待つ部屋に向かう。

「なんか、不思議な青年じゃのう。」

「そうね。きっと、神様が私達に会わせてくれたのよ。」
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「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

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