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【中央図書館の許可】
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あれから、数カ月。大和侯爵夫人の出産も終わり、子供はジュークと名付けられた。そして、無事にシルフとの契約も出来、俺は4大精霊との契約を果たした。シルビアも俺に触発されたのか更に一生懸命になった。そんなある日、俺は師匠に呼ばれ、師匠の所に行った。
「やあ、タカミ、久しぶりだね。呼び出して悪かったね。」
「いえ、とんでもないです。お久しぶりです。師匠もお元気そうでよかったです。」
「私は、相変わらずだよ。それにしてもとうとう精霊魔術まで習得したらしいね。伯爵から聞いたよ。」
「はい、何となく成り行きで…」
「成り行きで、大精霊と契約なんて全く、どんだけ規格外なんだい。普通は、エレメントやアークから契約するもんだけどね。」
「そうなんですね。魔力を注いだら大精霊が現れたので自分も驚きました。」
「まぁ、それだけタカミの魔力がすごいと言う事だよ。そうそう、今日、来てもらったのは、中央帝都の図書館利用許可が下りたからなんだよ。」
師匠は、俺に一枚のカードを渡してきた。
「利用期限は、半年間。入口でこのカードを見せれば中に入れるよ。」
「ありがとうございます!では、早速、中央に行きたいと思います。」
「うん。頑張ってきなさい。君には期待しているよ。」
中央帝都にある図書館への利用の許可が下りた。これで、中央にやっと行ける。俺は、家に戻り家族に報告後、侯爵の所に出向く。
「侯爵様、少しお話があるのですが。」
「どうした?何か用か?」
「はい。中央帝都の図書館の使用許可が下りました。近々、中央帝都に行こうと思っております。期間は、半年間なのですが、お暇頂けませんか?」
「そうか。確か、中央帝都の魔術学園に行きたいって言っていたな。そのための準備なのだろ。」
「はい。経済的な理由もありますが、自分を試したいので特待生を狙っています。そのためには、まずは知識を身に付けないといけないと思っています。」
「分かった。中央帝都に行く日が決まったら教えてくれ。」
「はい。分かりました。」
「それと、中央帝都から帰ってきたらまた、シルビアの専属魔術師としてお願い出来るか?」
「はい。魔術学園に行く間であれば、是非お願い致します。」
「うむ。えー、なんだ、その、タカミ、頑張ってきなさい!」
「はい。ありがとうございます。」
俺は、侯爵への報告と今後の話を終え、シルビアの部屋に向かいノックする。”コンコン”
「はい。どうぞ。」
「タカミです。失礼します。」
「あ!タカミ!どうしたの?今日は、来る日じゃないのに?私に会いに来てくれたの?」
うーん、なんか良く分からない事を言っている。俺はシルビアの部屋に入り、今後の説明をする。
「シルビア、実は、中央帝都に行くことが決まりました。その報告です。」
「え!タカミ、いなくなっちゃうの?」
「そういう訳ではありませんが、半年ほどお暇を頂きました。」
シルビアが、俺に抱き付いてくる。
「行っちゃダメー!タカミは私のなんだから!」
意味が分からないけど、多分”私の専属魔導士なんだから”と言いたいのかもしれない。
「それに、私はまだ、精霊魔法が使えないんだよ。ちゃんと教えてくれなきゃ!」
「シルビアに大切なことは魔力をきちんと扱えるようになる事です。それと、剣の鍛錬です。焦らず少しずつやっていきましょう。これは、僕がいなくてもシルビアなら十分できますよ。」
それでもシルビアが離れない。
「私には、タカミが必要なの!タカミがいなくなったらまた、一人になっちゃう。」
「シルビアは一人じゃないですよ。侯爵様や奥様、弟のジュークもいます。」
「ううん。私は分かってる。お父様は私に興味ないもの。」
「シルビア、ちゃんと帰ってきますから少しだけ待っててください。」
俺はシルビアを宥め続けた。そしてやっと分かってくれたと思う。俺は、シルビアとの話が終わると家に戻る。そして、ティナやナディアにも近々中央へ行くことを話す。
「ティナは、タカミが行くなら一緒に行く!」
「妾もご主人と一緒に行くぞ。」
「二人ともありがとう。じゃあ、一緒に中央に行こう。」
俺達は、3人で中央行きを決めた。
《ここからはシルビア目線》
私は、シルビア・フィアット・ヤマト。ヤマト辺境伯の娘で現在11歳。父は、辺境伯と言う貴族でこの周辺の街や村を治めている。父の周りには、優秀な人達が集まり、父を支えてくれている。私は特に取柄もないため父は私に全く関心が無い。小さい頃から父に愛情を注いでもらいたいと頑張ってきたが、私の付き人となった魔導士や回復師の人達は、”魔導士の素質は無く、剣士の方が向いている”と言われ続けた。父の専属魔術師であるウォーレン大魔導士様はとても優しく、聡明で美しい。私もウォーレン様の様な女性になれれば、父も私を認めてくれる。どうすればウォーレン様の様に成れるか悩んでいたところ、ウォーレン様が弟子を連れてお父様の所に来るという話を聞いた。どうやら彼は、ヤマトの街に攻め込んで来たゴブリン約10万を一人で撃退した凄腕の魔術師らしい。流石、ウォーレン様の弟子だ。どんな方かと思いウォーレン様がやって来た時にリビングに行った。するとそこには、私と同じくらいの男の子がいた。
”え!彼がウォーレン様の弟子!?”
しかし、彼はすごかった。
私は一人っ子だけど、もうすぐ姉になる。母のお腹の中には妹か弟がいる。最近、母の調子が悪く専属の回復師ももしかしたらお腹の子は危ないかもしれないと言っていた。専属の回復師が全く手に追えなかったお母さまとお腹の子をウォーレン様が連れて来た”タカミ”という弟子が見事に母子共に救ってくれた。まだ、9歳の子供なのに凄い。しかも、”あの父”も感心し、何か彼に期待しているようだ。
そんなタカミが私の専属魔導士になって色々教えてくれる。でも、やっぱり最初に言われたのは魔術師より剣士の方が向いているだった。しかし、他の魔術師や回復師の人達と違うところは、
” シルビアにはシルビアの魅力があるんだからそれを伸ばせばいいと思いますよ。剣を使い、精霊を使役するなんですごく素敵じゃないですか。それに、シルビアはとても魅力的な女性です。僕はすごく好きですよ。だから、シルビアの魅力を最大限に伸ばしてみるといいかもしれませんね。”
と言ってくれた。そんな風に言ってもらったのはタカミが初めてかもしれない。それからタカミは、私に魔力の使い方と魔力の上げ方を丁寧に教えてくれる。もしかしたら私でもお父様の役に立てるように成れるかもしれない。そんな期待を胸にタカミに精霊魔術について色々学んでいた。タカミは本当に凄い。私に精霊魔術を教えるために今まで習得してなかった精霊魔術を”私のため”に習得してくれた。しかもその時、一人の声の出ない女性に出会った。タカミはその女性の声も治し、その人の人生まで治した。本当にこの人は何者だろう。
そんなある日、タカミが私の部屋にやって来た。
「シルビア、実は、中央帝都に行くことが決まりました。その報告です。」
タカミが中央帝都に行ってしまうらしい。
”まだまだ、教えてもらわなきゃいけないことが沢山あるのに…タカミも私を見捨てるの?やっぱり、私は一人なの?あぁ、それは、私がきっと才能が無いからだ…あ、でも、もし私が精霊と契約出来たらお父様もきっと私を見てくれるかも…”
私は自分の力だけで精霊との契約をすることを決めた。翌日、私は、書置きをして屋敷を抜け出し、途中スラムを抜けて、郊外の森へと一人で向かった。森の入口付近に人影があるのが見えた。
魔物か?私は、剣に手をかけ、注意深く進んでいく。
”ガサガサ”っと音がすると、数人の汚らしい男達に囲まれた。
「おっと、こんな所で何してるんだい。」
剣を肩にかけ、”ポンポン”しながら男が近づく。私は、剣を構え応戦する構えをとる。
「おっと、危ないなぁー。俺達はお嬢ちゃんに怪我させる気は無いんだが、そっちがその気ならちょっと、商品に傷がつくが仕方がない。」
男達は”ニヤニヤ”しながら近づいてくる。
「えい!」
私が剣を振るうと、その剣を剣で受け止めお腹を蹴られた。余りの激痛に身体がくの字になる。
「おいおい、余り暴れないでくれよ。」
男は私から剣を奪うと顔を鷲掴みにする。
「ほぉ、中々な高く売れそうだな。」
私は、その手を噛みつく。
「うぁ!いてーー!何しやがるんだ!」
左の頬を叩かれた。”何しやがるんだ!”は私のセリフだ。
「この女をの手足を縛りあげろ。連れて行くぞ!」
お腹に一発キツイのを受け、意識が遠のいた。
======ここからはタカミ目線=========
今日は、朝の鍛錬後、拠点でティナの魔法の訓練をしている。中々、剣が上達しない。やはり、達人に見てもらわないと剣技は上達しないみたいだ。魔法は、はっきり言ってもうやることが無い。魔力アップと操作を地道にやっていくしかないだろう。そんな感じで過ごしていた。昼に一旦、ティナ達を連れ家に戻り、昼食を皆でとる。そんな中、アコードさんがやって来た。
「すみません。タカミ様いらっしゃいますか?」
アコードさんは、何か焦っているようだ。
「はい、何でしょうか?」
「あ!タカミ様、大変申し訳ございませんが、急いで主人の所に行っていただけないでしょうか?」
昼食中だが、どうやら急ぎの様なのですぐに師匠の所に行く準備をする。
「分かりました。すぐ伺います。アコードさんも一緒に行きますか?」
「お願いできれば幸いです。よろしくお願い致します。」
俺は、ゲートを繋ぎ師匠の元に行く。
「師匠、どうかしましたか?」
「あぁ、タカミよく来てくれたね。実は、ヤマト辺境伯からシルビアお嬢様がいなくなったと連絡が来んだよ。」
「え!シルビアがいなくなったんですか?どっかで疲れて寝ているとかじゃなくて?」
「それだったらいいんだけどね。どうやら本当にいなくなったらしいんだ。」
「うーん、分かりました。ちょっと、侯爵様の所に行ってきます。」
俺は、ゲートを開き侯爵の屋敷に行った。
「すみません。タカミです。」
「おお!!タカミ来てくれたか!シルビアが!シルビアが居なくなったんだ!」
侯爵は取り乱している。
「えっと、侯爵様のお屋敷の敷地は広いからどこかで隠れて何かやったいるとかじゃないんですか?」
「私もその可能性を考えたのだが、こんなものが出て来たんだ。」
侯爵は、シルビアの書置きを俺に渡す。
「どうやら、森に行ったらしい。魔物もそうだが最近、スラムの子供がいなくなる事件が多発している。」
確かに冒険者ギルドの酒場でもそんな話題があったような…
「その事件に巻き込まれていないか心配なのだよ。タカミ、どうか娘を探してきてもらえんか?」
「分かりました。それでは、お嬢様を探しに行ってきます。」
「うむ、頼んだぞ!!礼はいくらでもするから無事に連れて帰ってきてくれ!」
「はい、わかりました。それでは行ってきます。」
俺は、転移で森の入口付近まで移動した。そこでマップを開き、シルビアを探索する。すると、森の中腹 に反応がある。その近くには、別の反応も多くある。
”うん、シルビアは確かに森にいるな。それにこの反応。ちょっと、厄介ごとに巻き込まれている可能性が高いな。”
俺は、相手に気付かれない様にそっとその反応に近づく。すると、盗賊風の男たちが見回りをしている。
”ありゃ、これは、人攫い確定なんじゃないの?”
周りに他の見回り以外がいないか確認して、見回りを麻痺させる。
《索敵リンク》
《パラライズ》
見回りの男達は、その場で動けなくなった。俺はその男達を拘束し、奥に進んでいく。洞窟の中には通路があり、部屋もありそうだ。俺は、索敵しながら進んでいく。すると、奥に牢があり、その中に何人かの子供がいる。中には全身傷だらけの子供や服を剝ぎ取られた子供もいた。見張りを麻痺させ拘束する。そして、牢にいる子供達に話しかけた。
「君達、大丈夫か?俺は、君達を助けに来た。いい子だから大声を出さないでくれ」
子供達は怯えた目で俺を見たが、俺が助けに来た事を話すと少しだけ安堵した感じだ。
《アンロック》
《ヒール》
俺は、鎖に繋がれている子供達を開放していく。そして、怪我をしている子を治療する。人数は8人。年は6~14歳くらいの子供達だ。
「これで全員?」
「いいえ、まだどこかに何人かいるはずです。私の友達も攫われて、ひどい目にあっているかもしれません。お願いです。友達も助けて!」
服がボロボロの少女が俺に嘆願する。
「勿論、助けるよ。子供達にこんなひどい事をするなんて、許せないな。」
俺に見つかったのが運の尽きだ。こいつらどうしてくれようか。まぁ、それより、他の子とシルビアを探さないと。
「兎に角、全員ぶちのめしてくるのでここで大人しく待っててくれないか?必ず、助け出してくるから。」
「分かりました。本当に、本当によろしくお願いします。」
少女は、涙を流しながら俺にすがった。さて、では他の子を探すかな。
通路には何人かの人攫いの仲間がいたが麻痺させ動けなくなったところを拘束する。同じ様に牢があり、子供達が捕らわれていた。俺は、先ほど同様に子供達を開放し、治癒する。そしてその場で待機するようにお願いした。しかも、この通路の先にはどうやら部屋があるっぽい。そこにシルビアの反応もある。
それでは、ボスの所に乗り込みますか!
「やあ、タカミ、久しぶりだね。呼び出して悪かったね。」
「いえ、とんでもないです。お久しぶりです。師匠もお元気そうでよかったです。」
「私は、相変わらずだよ。それにしてもとうとう精霊魔術まで習得したらしいね。伯爵から聞いたよ。」
「はい、何となく成り行きで…」
「成り行きで、大精霊と契約なんて全く、どんだけ規格外なんだい。普通は、エレメントやアークから契約するもんだけどね。」
「そうなんですね。魔力を注いだら大精霊が現れたので自分も驚きました。」
「まぁ、それだけタカミの魔力がすごいと言う事だよ。そうそう、今日、来てもらったのは、中央帝都の図書館利用許可が下りたからなんだよ。」
師匠は、俺に一枚のカードを渡してきた。
「利用期限は、半年間。入口でこのカードを見せれば中に入れるよ。」
「ありがとうございます!では、早速、中央に行きたいと思います。」
「うん。頑張ってきなさい。君には期待しているよ。」
中央帝都にある図書館への利用の許可が下りた。これで、中央にやっと行ける。俺は、家に戻り家族に報告後、侯爵の所に出向く。
「侯爵様、少しお話があるのですが。」
「どうした?何か用か?」
「はい。中央帝都の図書館の使用許可が下りました。近々、中央帝都に行こうと思っております。期間は、半年間なのですが、お暇頂けませんか?」
「そうか。確か、中央帝都の魔術学園に行きたいって言っていたな。そのための準備なのだろ。」
「はい。経済的な理由もありますが、自分を試したいので特待生を狙っています。そのためには、まずは知識を身に付けないといけないと思っています。」
「分かった。中央帝都に行く日が決まったら教えてくれ。」
「はい。分かりました。」
「それと、中央帝都から帰ってきたらまた、シルビアの専属魔術師としてお願い出来るか?」
「はい。魔術学園に行く間であれば、是非お願い致します。」
「うむ。えー、なんだ、その、タカミ、頑張ってきなさい!」
「はい。ありがとうございます。」
俺は、侯爵への報告と今後の話を終え、シルビアの部屋に向かいノックする。”コンコン”
「はい。どうぞ。」
「タカミです。失礼します。」
「あ!タカミ!どうしたの?今日は、来る日じゃないのに?私に会いに来てくれたの?」
うーん、なんか良く分からない事を言っている。俺はシルビアの部屋に入り、今後の説明をする。
「シルビア、実は、中央帝都に行くことが決まりました。その報告です。」
「え!タカミ、いなくなっちゃうの?」
「そういう訳ではありませんが、半年ほどお暇を頂きました。」
シルビアが、俺に抱き付いてくる。
「行っちゃダメー!タカミは私のなんだから!」
意味が分からないけど、多分”私の専属魔導士なんだから”と言いたいのかもしれない。
「それに、私はまだ、精霊魔法が使えないんだよ。ちゃんと教えてくれなきゃ!」
「シルビアに大切なことは魔力をきちんと扱えるようになる事です。それと、剣の鍛錬です。焦らず少しずつやっていきましょう。これは、僕がいなくてもシルビアなら十分できますよ。」
それでもシルビアが離れない。
「私には、タカミが必要なの!タカミがいなくなったらまた、一人になっちゃう。」
「シルビアは一人じゃないですよ。侯爵様や奥様、弟のジュークもいます。」
「ううん。私は分かってる。お父様は私に興味ないもの。」
「シルビア、ちゃんと帰ってきますから少しだけ待っててください。」
俺はシルビアを宥め続けた。そしてやっと分かってくれたと思う。俺は、シルビアとの話が終わると家に戻る。そして、ティナやナディアにも近々中央へ行くことを話す。
「ティナは、タカミが行くなら一緒に行く!」
「妾もご主人と一緒に行くぞ。」
「二人ともありがとう。じゃあ、一緒に中央に行こう。」
俺達は、3人で中央行きを決めた。
《ここからはシルビア目線》
私は、シルビア・フィアット・ヤマト。ヤマト辺境伯の娘で現在11歳。父は、辺境伯と言う貴族でこの周辺の街や村を治めている。父の周りには、優秀な人達が集まり、父を支えてくれている。私は特に取柄もないため父は私に全く関心が無い。小さい頃から父に愛情を注いでもらいたいと頑張ってきたが、私の付き人となった魔導士や回復師の人達は、”魔導士の素質は無く、剣士の方が向いている”と言われ続けた。父の専属魔術師であるウォーレン大魔導士様はとても優しく、聡明で美しい。私もウォーレン様の様な女性になれれば、父も私を認めてくれる。どうすればウォーレン様の様に成れるか悩んでいたところ、ウォーレン様が弟子を連れてお父様の所に来るという話を聞いた。どうやら彼は、ヤマトの街に攻め込んで来たゴブリン約10万を一人で撃退した凄腕の魔術師らしい。流石、ウォーレン様の弟子だ。どんな方かと思いウォーレン様がやって来た時にリビングに行った。するとそこには、私と同じくらいの男の子がいた。
”え!彼がウォーレン様の弟子!?”
しかし、彼はすごかった。
私は一人っ子だけど、もうすぐ姉になる。母のお腹の中には妹か弟がいる。最近、母の調子が悪く専属の回復師ももしかしたらお腹の子は危ないかもしれないと言っていた。専属の回復師が全く手に追えなかったお母さまとお腹の子をウォーレン様が連れて来た”タカミ”という弟子が見事に母子共に救ってくれた。まだ、9歳の子供なのに凄い。しかも、”あの父”も感心し、何か彼に期待しているようだ。
そんなタカミが私の専属魔導士になって色々教えてくれる。でも、やっぱり最初に言われたのは魔術師より剣士の方が向いているだった。しかし、他の魔術師や回復師の人達と違うところは、
” シルビアにはシルビアの魅力があるんだからそれを伸ばせばいいと思いますよ。剣を使い、精霊を使役するなんですごく素敵じゃないですか。それに、シルビアはとても魅力的な女性です。僕はすごく好きですよ。だから、シルビアの魅力を最大限に伸ばしてみるといいかもしれませんね。”
と言ってくれた。そんな風に言ってもらったのはタカミが初めてかもしれない。それからタカミは、私に魔力の使い方と魔力の上げ方を丁寧に教えてくれる。もしかしたら私でもお父様の役に立てるように成れるかもしれない。そんな期待を胸にタカミに精霊魔術について色々学んでいた。タカミは本当に凄い。私に精霊魔術を教えるために今まで習得してなかった精霊魔術を”私のため”に習得してくれた。しかもその時、一人の声の出ない女性に出会った。タカミはその女性の声も治し、その人の人生まで治した。本当にこの人は何者だろう。
そんなある日、タカミが私の部屋にやって来た。
「シルビア、実は、中央帝都に行くことが決まりました。その報告です。」
タカミが中央帝都に行ってしまうらしい。
”まだまだ、教えてもらわなきゃいけないことが沢山あるのに…タカミも私を見捨てるの?やっぱり、私は一人なの?あぁ、それは、私がきっと才能が無いからだ…あ、でも、もし私が精霊と契約出来たらお父様もきっと私を見てくれるかも…”
私は自分の力だけで精霊との契約をすることを決めた。翌日、私は、書置きをして屋敷を抜け出し、途中スラムを抜けて、郊外の森へと一人で向かった。森の入口付近に人影があるのが見えた。
魔物か?私は、剣に手をかけ、注意深く進んでいく。
”ガサガサ”っと音がすると、数人の汚らしい男達に囲まれた。
「おっと、こんな所で何してるんだい。」
剣を肩にかけ、”ポンポン”しながら男が近づく。私は、剣を構え応戦する構えをとる。
「おっと、危ないなぁー。俺達はお嬢ちゃんに怪我させる気は無いんだが、そっちがその気ならちょっと、商品に傷がつくが仕方がない。」
男達は”ニヤニヤ”しながら近づいてくる。
「えい!」
私が剣を振るうと、その剣を剣で受け止めお腹を蹴られた。余りの激痛に身体がくの字になる。
「おいおい、余り暴れないでくれよ。」
男は私から剣を奪うと顔を鷲掴みにする。
「ほぉ、中々な高く売れそうだな。」
私は、その手を噛みつく。
「うぁ!いてーー!何しやがるんだ!」
左の頬を叩かれた。”何しやがるんだ!”は私のセリフだ。
「この女をの手足を縛りあげろ。連れて行くぞ!」
お腹に一発キツイのを受け、意識が遠のいた。
======ここからはタカミ目線=========
今日は、朝の鍛錬後、拠点でティナの魔法の訓練をしている。中々、剣が上達しない。やはり、達人に見てもらわないと剣技は上達しないみたいだ。魔法は、はっきり言ってもうやることが無い。魔力アップと操作を地道にやっていくしかないだろう。そんな感じで過ごしていた。昼に一旦、ティナ達を連れ家に戻り、昼食を皆でとる。そんな中、アコードさんがやって来た。
「すみません。タカミ様いらっしゃいますか?」
アコードさんは、何か焦っているようだ。
「はい、何でしょうか?」
「あ!タカミ様、大変申し訳ございませんが、急いで主人の所に行っていただけないでしょうか?」
昼食中だが、どうやら急ぎの様なのですぐに師匠の所に行く準備をする。
「分かりました。すぐ伺います。アコードさんも一緒に行きますか?」
「お願いできれば幸いです。よろしくお願い致します。」
俺は、ゲートを繋ぎ師匠の元に行く。
「師匠、どうかしましたか?」
「あぁ、タカミよく来てくれたね。実は、ヤマト辺境伯からシルビアお嬢様がいなくなったと連絡が来んだよ。」
「え!シルビアがいなくなったんですか?どっかで疲れて寝ているとかじゃなくて?」
「それだったらいいんだけどね。どうやら本当にいなくなったらしいんだ。」
「うーん、分かりました。ちょっと、侯爵様の所に行ってきます。」
俺は、ゲートを開き侯爵の屋敷に行った。
「すみません。タカミです。」
「おお!!タカミ来てくれたか!シルビアが!シルビアが居なくなったんだ!」
侯爵は取り乱している。
「えっと、侯爵様のお屋敷の敷地は広いからどこかで隠れて何かやったいるとかじゃないんですか?」
「私もその可能性を考えたのだが、こんなものが出て来たんだ。」
侯爵は、シルビアの書置きを俺に渡す。
「どうやら、森に行ったらしい。魔物もそうだが最近、スラムの子供がいなくなる事件が多発している。」
確かに冒険者ギルドの酒場でもそんな話題があったような…
「その事件に巻き込まれていないか心配なのだよ。タカミ、どうか娘を探してきてもらえんか?」
「分かりました。それでは、お嬢様を探しに行ってきます。」
「うむ、頼んだぞ!!礼はいくらでもするから無事に連れて帰ってきてくれ!」
「はい、わかりました。それでは行ってきます。」
俺は、転移で森の入口付近まで移動した。そこでマップを開き、シルビアを探索する。すると、森の中腹 に反応がある。その近くには、別の反応も多くある。
”うん、シルビアは確かに森にいるな。それにこの反応。ちょっと、厄介ごとに巻き込まれている可能性が高いな。”
俺は、相手に気付かれない様にそっとその反応に近づく。すると、盗賊風の男たちが見回りをしている。
”ありゃ、これは、人攫い確定なんじゃないの?”
周りに他の見回り以外がいないか確認して、見回りを麻痺させる。
《索敵リンク》
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見回りの男達は、その場で動けなくなった。俺はその男達を拘束し、奥に進んでいく。洞窟の中には通路があり、部屋もありそうだ。俺は、索敵しながら進んでいく。すると、奥に牢があり、その中に何人かの子供がいる。中には全身傷だらけの子供や服を剝ぎ取られた子供もいた。見張りを麻痺させ拘束する。そして、牢にいる子供達に話しかけた。
「君達、大丈夫か?俺は、君達を助けに来た。いい子だから大声を出さないでくれ」
子供達は怯えた目で俺を見たが、俺が助けに来た事を話すと少しだけ安堵した感じだ。
《アンロック》
《ヒール》
俺は、鎖に繋がれている子供達を開放していく。そして、怪我をしている子を治療する。人数は8人。年は6~14歳くらいの子供達だ。
「これで全員?」
「いいえ、まだどこかに何人かいるはずです。私の友達も攫われて、ひどい目にあっているかもしれません。お願いです。友達も助けて!」
服がボロボロの少女が俺に嘆願する。
「勿論、助けるよ。子供達にこんなひどい事をするなんて、許せないな。」
俺に見つかったのが運の尽きだ。こいつらどうしてくれようか。まぁ、それより、他の子とシルビアを探さないと。
「兎に角、全員ぶちのめしてくるのでここで大人しく待っててくれないか?必ず、助け出してくるから。」
「分かりました。本当に、本当によろしくお願いします。」
少女は、涙を流しながら俺にすがった。さて、では他の子を探すかな。
通路には何人かの人攫いの仲間がいたが麻痺させ動けなくなったところを拘束する。同じ様に牢があり、子供達が捕らわれていた。俺は、先ほど同様に子供達を開放し、治癒する。そしてその場で待機するようにお願いした。しかも、この通路の先にはどうやら部屋があるっぽい。そこにシルビアの反応もある。
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優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
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