元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ

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【ヤマト辺境伯】

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 ゴブリン討伐から数日が過ぎた。俺の希望もあって、ゴブリン討伐の最功労者はやはりこの人、街の盟主であり人格者であるウォーレン大魔導士となる。ウォーレン大魔導士が弟子二人を引き連れ、大魔法でゴブリンの軍勢の大半を殲滅後、その配下が残りのゴブリンを一掃し、ゴブリンの襲撃に終止符を打ったと街の中で評判になっている。まぁ、嘘ではないからいいんじゃない。そんな師匠より、呼び出しがあったので本日は師匠の屋敷に来ている。

「ゴブリン討伐、お疲れ様。街はお祭り騒ぎですねー。」

「そりゃそうだろう。ゴブリンとは言え、10万規模の大軍勢が襲ってきて、それを怪我人一人出さずに討伐してしまったんだから。本当に君と言う奴は…」

「まぁまぁ、いい事じゃないですか(笑)。それで、御用とは何ですか?」

「うん。以前から、ヤマト辺境伯がタカミに興味を持っていてね。今回の件を報告したら是非、タカミに会って褒美を取らせたいって言いだしてね。3日後、ヤマト辺境伯の屋敷に行くので同行してもらおうと思ったのと、防壁の上で話した、中央帝都にある魔術学園についてもう一度話をしたくてね。」

「魔術学園ですか。とても興味があるご提案ですが、我が家にはそこまで余裕が無くて…」

「その魔術学園なんだけどね、特待生の枠があるんだよ。これに合格できれば、学費が全額免除になる。私は、タカミのその素晴らしい才能を眠らせたくないんだ。君は、本当に大賢者になれる人物だ。魔術学園にはこの世界の魔法の歴史から今に至るまでの英知が集結している。そこで学ぶ事の意義を考えてほしい。」

師匠がここまでぐいぐい来るのは珍しい。それほど優秀な学校なんだろう。魔法は使えるが正直、学術的な知識は乏しい。一応、師匠の部屋にあった本は暗記しているが…

「特待生ですか。どんな試験があるんですか?」

「テストの内容としては、実技とペーパーと面接と推薦状で判断されるかな。」

ふむ、やはりペーパーはあるよな。後問題は面接かな。俺は平民だからその辺も厳しいんじゃなかな。

「正直、自信ないですね。確かに魔法は使えますが知識は乏しいですから。それに僕の身分は平民です。いくら身分は関係ないと言っても特待生にするには身分も必要なんじゃないですか?」

「うん。確かに身分は大きいね。でも、君の能力は身分じゃ計れないけどね。推薦は、私がするから問題ないよ。ペーパーも私が話をしている限り問題無いと思う。君は、ここの書籍をほぼ読破しているしね。試験までまだ半年以上あるし、とりあえず受けるだけ受けてみるのをお勧めするよ。」

師匠は一冊の本を俺に手渡す。

「これは?」

「この本は、過去のペーパーで出題された物をまとめた本だよ。ちょっと見てみるといい。」

俺は、速読を用いてペラペラと読んでいく。確かに、ほとんどが知っている内容だ。

「なるほど、こんなような問題が出題されているんですね。ほぼ分かりますね。しかし、分からに物もそれなりにありました。」

「それなら、帝都の中央図書館に行くといい。帝都の図書館ならかなりの数の書物がある。読み切れないほどにね。興味があるなら図書館の閲覧許可をもらえるように手配してあげるよ。」

それはとても有難い!入試云々では無く、普通に利用したい!

「それは、すごく嬉しいです。では、家族に相談してみます。」

「うん、君なら必ず特待生になれると思う。是非、前向きに考えてほしい。それと、3日後にヤマト辺境伯の所に行きます。ヤマト卿から是非タカミも連れてくるように言われているんだ。だから、3日後のヤマト辺境伯訪問の際には同行をお願いしたい。いいかい?」

「はい。分かりました。それでは、3日後の朝に再度伺います。




本日、師匠と共にヤマト辺境伯の所へ行く。ヤマト辺境伯の所に行くことを両親に話すと急いで正装を用意してくれた。馬子にも衣装とはこの事かな。ばっちり正装して、俺は師匠の元に向かった。

「おはようございます。」

「おはよう。ん。今日はなんだか決まっているね。ぷぷ」

笑っているし。確かに俺に正装は似合わないと思っているけど…

「いやいや、悪い悪い。いつもと全然違うからちょっと面白くなっちゃってね。」

「まあ、うん。大丈夫!いい男だ!かっこいいよ。」

なんか、取って付けたように言われた。もういいよ…

「さて、それでは行こうか。」

「はい。よろしくお願いします。」

 俺達は、馬車に乗りヤマト辺境伯のお屋敷に向かった。貴族の居住区を通り約30分程度で到着した。門を抜け、更に馬車を走らせる。おいおい、ここ敷地内なのか…。馬車に揺れ更に15分ほどでとても大きなお屋敷の前に到着する。俺は、馬車を降り、周りを見渡す。目の前には豪壮なお屋敷と庭園があり、お屋敷の前に広がる庭園の中央には多きな噴水がある。手入れするのも大変だと思われる庭園の中央に大きな噴水があり、その周りを遊歩道と花壇で囲まれ、ところどころに彫刻が飾られている。まさにお貴族様のお屋敷という感じだ。俺が見惚れていると師匠から声がかかる。

「ほら、行きますよ。」

 俺は、師匠に続き屋敷の前に行く。扉の前に紳士風の人がいる。多分、執事の人だろう。その執事らしき人が師匠に声をかけた。

「ウォーレン様、お待ちしておりました。主人が応接間にてお待ちです。どうぞこちらへ。」

「うん。ありがとう。じゃあ、行こうか。」

 俺は師匠に続き廊下を歩いていく。廊下も広く、彫刻や絵画が飾ってある。いくつかの部屋?を超えてひと際広い部屋に通された。室内にも多くの美術品が飾られ、立派なソファーとテーブルがある。

「ご主人様、ウォーレン氏をお連れいたしました。」

 そう言うと執事は扉の所に向かい、直立不動で立っている。奥には、黒髪をオールバックにし、口ひげを生やし、スラっとしたダンディーなイケメンがいる。年は見た目で40前後だと思う。

「ヤマト辺境伯殿、お久しぶりです。」

「うむ。ウォーレンも元気そうで何よりだ。ん?その子が、君が言っていた子かな?」

辺境伯は俺を見ると師匠に問いかける。

「はい。彼は、タカミ。私のとても優秀な弟子です。この度のゴブリン討伐に際しては、彼がほぼ一人で討伐しました。実力は折り紙付きです。」

「初めまして。ヤマト辺境伯様。ただいま紹介にあずかったタカミ・エドワードです。」

 一応、貴族式の挨拶をしてみる。ってゆうか、した事ないからこれでいいか分からないけど。

「タカミ君か。私がバルケッタ・フィアット・ヤマトだ。君の事はウォーレンからよく聞かされているよ。ウォーレンに並ぶ魔導士だそうじゃないか。」

 侯爵がビックリする事を言ったきた。

「な、何をおっしゃいますか。そんな。恐れ多いです。私なんか、まだまだこれから勉強しようと思っているくらいです」

 俺は、とっさに両手で“違う違う“をしてしまった。

「そんな、謙遜しなくていいんだよ。ゴブリン討伐の際に大魔法を使ったって言うじゃないか。」

うーん、俺的にはそんなに大魔法じゃないんだけど。でも、俺、人である自信が無いからいっか。

「そうそう!それでだ。今回、ゴブリン軍討伐の功労として君に報奨金を出すことにした。受け取ってくれ。」

 侯爵が手を“パンパン”とすると執事の人が袋をもってやってきた。

「受け取ってくれ。街や人が全くの無傷で済んだんだ。これでも安いと思っているが。」

 俺に袋を差し出す。俺は、師匠を見た。すると師匠も頷く。

「それでは有難く頂戴いたします。ヤマト卿、ありがとうございます。」

「うむ。それと、何か私に出来ることは無いか?私に出来る事であれば力を貸そう。」

 侯爵がとんでもない事を言い出した。

「い、いえ。滅相もございません。十分でございます。逆に私がヤマト卿のお力になりたい 

位です。」

 またもや、とっさに両手で“違う違う“をやってしまった。

「ははは。君は面白いな。まぁ、後でもいい。何かあったら、言ってくれ。」

 すると部屋をノックする音が聞こえた。

「お父様、シルビアでございます。」

「うん。入っておいで。」

 扉が開き、黒髪の美しいブラウンの目をした、可愛らしい女の子が入ってきた。年は、10歳前後かな。俺と同じくらいに見えるけど。お嬢様らしい可愛い服がとても似合っている。

「この子は、シルビア。私の娘だ。よろしく頼むよ。」

「シルビア・フィアット・ヤマトです。どうぞお見知りおきを。」

 優雅な挨拶を俺と師匠にする。

「ウォーレン大魔導士の弟子のタカミ・エドワードです。よろしくお願いします。」

「まぁ、あなたがタカミ様ですのね。ウォーレン様からよくお話を聞きますわ。」

 師匠、この人は、一体何を言っているのだろう。

「あれ、今日は、奥様はいらっしゃらないのですか?」

「うむ。今日は、ここ数日調子が悪くてな。今、寝室で休んでいるよ。」

「あら、それはいけませんね。お腹に子供がいるから心配ですね。」

 どうやら、侯爵の奥さんは妊娠中のようだ。

「うむ。専属の回復師に見せておるがな、休んでいれば良くなると言っておるが、あまり良くならないんだよ。」

「そうなんですね。それは心配ですわね。」

 師匠が心配そうにしている。仲がいいのかな?

「それよりもタカミ様、わたくしに魔術を教えてくださいませんか?」

 シルビアが横から“ぴょこ”と出て口を挟む。

「え。魔術をですか。それなら私の師匠であるウォーレン師匠の方がいいかと思いますが。」

「その、ウォーレン様がタカミ様に教えてもらうと言いよって言ってました。」

 俺は、師匠を見ると、師匠は視線を反らす。うーん、この人は何をさせたいんだ。

「そんな、私もまだまだ未じゅ…」

 自分が話をしている最中、突然、ドアが“バン”と開いた。可愛らしいメイド服を着た女性が息を切らせ入ってくる。

「なんだね。騒々しい。今、来客中だぞ!」

「そ、それが、ご主人様、奥様が、奥様が…!!」

 メイドは言葉を失っている。

「家内がどうかしたのか!?」

「はい。今、回復師様が治療に当たっているのですが、大変な苦しみようで…」

「すぐ行く!」

 侯爵は、走って出て行く。師匠が後を追ったので、俺もそれについて行く。
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