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【師匠の憂鬱】
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3年の月日が流れた。俺達は相変わらず決まった日常を過ごしていた。ティナも魔力を完全に制御できるようになり、炎の魔法も第3階層まで使えるようになった。成長速度を考えると、やはり俺はチートである。まずは、ティナのステータス。
ティナ
魔族ハーフ LV18
HP144/144
MP576/576
筋力144
魔力306
防御力144
魔防288
俊敏144
器用144
知力162
幸運144
【ユニークスキル】
魔術 炎操作(中)
【スキル】
炎属性(中) 闇属性(低) 無属性(低) 魔力向上(低)
【魔法】
《生活魔法》(1階層)
《炎魔法》(3階層)
《闇魔法》(2階層)
《無属性魔法》(2階層)
九尾狐(聖獣) LV46
HP774/774
MP3842/3842
筋力549
魔力826
防御力683
魔防876
俊敏533
器用533
知力660
幸運549
【ユニークスキル】
魔術 剣術 異常状態耐性(高)
【スキル】
毒耐性(低) 闇属性(中) 炎属性(中) 風属性(中)
魔力向上(低) MP向上(低) 魔法耐性(低) 物理耐性(低)
【魔法】
《炎魔法》(6階層)
《風魔法》(5階層)
《闇魔法》(5階層)
人間族 LV58
HP3712/3712
MP20880/20880
筋力870
魔力4930
防御力4350
魔防4640
俊敏812
器用754
知力1044
幸運812
【ユニークスキル】
Q&A 空間収納 鑑定 医療の心得 模倣 偽装 真偽 魔術 剣術 精霊魔術 召喚 全記憶 模倣 空間操作・認識 重力操作 多重詠唱Ⅴ 照準
【スキル】
毒耐性(低) 光属性(極) 闇属性(高) 炎属性(極) 水属性(極) 地属性(極)
風属性(高) 無属性(極) 剣(中) 魔力欠乏耐性(極) 無詠唱 魔力調整
魔力向上(極) MP向上(極) 物理耐性(極) 魔法耐性(極) 翻訳 速読
マップ 索敵 演算加速 分離・結合 解体(極) 異常状態耐性(極) 錬金術(極)
創作(極)
【魔法】
《生活魔法》
《医療関連魔法》
《炎魔法》(12階層)
《地魔法》(12階層)
《氷魔法》(12階層)
《水魔法》(12階層)
《風魔法》(12階層)
《光魔法》(12階層)
《闇魔法》(12階層)
《無属性》(12階層)
《錬金魔法》(12階層)
《創作魔法》(12階層)
もう、階層はカンストしてまいす。LVだけ上がる感じ。でも、12階層の魔法は使ったことがない。多分、この世界が壊れるんじゃないの?まぁ、剣術だけは、あまり伸びてない。
ティナも背が大きくなり、もう立派なレディー?だ。父も母も元気で過ごしている。父は、俺に触発されたのか、結構、ハードに仕事をしている。
俺のギルドランクも上がり、今はセリカなんかと同じゴールドランク。受けられる依頼も増えてきた。もはや、南の森は我が庭みたいになっている。ここの街にはダンジョンがない。いずれダンジョンの攻略もしてみたいものだ。
今日は、師匠の所で魔法の鍛錬をする日だ。既に、鍛錬というよりも師匠と魔法について語り合っているレベルだが。そんな、師匠が難しい顔をしている。
「師匠、どうかしたのですか?」
「いや、ちょっと懸念される事が起こってね。最近、やたらゴブリンどもが町周辺に出没するんだよ。もしかするとこの街を偵察しに来ているようにも感じる。もしそうだとすると、彼らを統一する長が現れた可能性がある。」
「えっと、確かゴブリンキングでしたっけ?そうなるとゴブリンメイジやゴブリンウォリアもいそうですね。」
「まぁね、下手したらこの街に攻め込んでくる可能性がある。ヤマト辺境伯から、この街の財政と治安を任されているから大事にならなければいいのだがね。とりあえず、冒険者ギルドにはゴブリン討伐とその調査の依頼は出しているんだが中々成果が出なくてね。近々、調査隊を編成して直接確認しに行こうと思っているんだ。」
師匠は頭を抱えてため息をつく。この街には、俺の大切な人達が暮らしている。他人事ではないな。
「僕でよければ、その時はお供します。お声をかけてください。」
「でも、危険な任務になるけど大丈夫かい?」
「僕は、師匠の弟子ですよ。師匠が出向くのに僕が行かなくて誰が行くんですか?それに、この街には僕の大切な家族や友人がいます。是非、手伝わせてください。」
「ふふふ、タカミも立派になったもんだ。頼りにしているよ。そうだ。この件が解決したら、ヤマト辺境伯に紹介したいんだけどね。いいかい?」
お貴族様なんて無縁だと思っていたけど・・・
「へ?でも、僕平民ですよ。辺境伯様になんて恐れ多いですよ。」
「いや、君はそれぐらいの実力はあると思うよ。辺境伯はあまり身分に拘らないお方なんだ。そう言う事だから少し考えておいて。」
「分かりました。ありがとうございます。それでは、何かありましたらご連絡ください。」
俺は、お辞儀をし、帰る。
“明日から、少しアルファードでゴブリンを討伐するか。人型だから避けていたんだけど、ゴブリンは魔物だからしょうがないかな。後、母になんて話そう。危ないことするなって言われているんだよな。まぁ、今の俺の能力なら全然危なくないんだけど…”
そんな事を考えながら、帰路に就く。
「ただいま。」
「はい。タカミ君おかえりなさい。」
母はいつも通りだ。いや、ちゃんと話をしよう。
「お母さん、話があります。ちょっといいですか?」
おれは、真剣な表情で話を始める。
「何かな?改まって。大事な話?」
「はい。お父さんと話をしているので聞いていると思いますが、最近、この街の付近にゴブリンがよく出没するそうです。本日、師匠との話の中で調査隊が編成されるという事でした。僕は、師匠に“僕も連れて行ってくれ”とお願いしました。僕にとって、この街にはお母さん、お父さんを始め、沢山の大切な人がいます。それを守りたいのです。正直、僕の能力的には全く問題無いと思いますが、油断や過信はしない様に心がけております。以前、お母さんから“危険な事はしないで”と言われました。危険だと思いませんが万が一があります。だからお話ししています。行ってよろしいでしょうか?」
母は黙っている。しばらくの沈黙の後、母がゆっくりと口を開く
「子供はいつか、親の手を離れるもの。タカミ君はまだ、9歳で“普通”であれば親の手を離れる年じゃないわ。でも、きっと“その代り”に神様はタカミ君にすごい能力をくれた。周りの子達と比べてもタカミ君の能力はそれ以上だもの。これ以上欲張っては神様から罰が当たるわ。でもね、親はいつでも子供の心配をするもの。お母さんはタカミ君の事が心配なの。だから、無茶をせず、必ず無事に帰ってきてね。」
母は、声を絞り出すように話をし、調査隊への参加を認めてくれた。
「お母さん、ありがとう!大丈夫!ちゃんと無事に帰ってきますから。」
俺は、元気よく答えた。俺は本当に愛されているんだな。幸せ者だ。
同じように父にも話をした。父は母より反応が薄かったが、万が一があるから気を付けろとの事。まぁ、父はある程度、俺の実力知っているし。それにあれからかなりレベルも上がっているし、ゴブリンには負けるわけ無いんだけどね。
数日後、調査隊が編成された。メンバーは、師匠、俺、セリカ、セリカのパーティーメンバーのムラーノ、ビートル、シャラン。南の森に行くのに通常であれば馬車で1日近くかかる。まず、俺が一人でレビテーションを使い飛んで行き、マップを広げゴブリンをターゲットし、上空からゴブリンを探す。丁度森にさしかかる辺りからゴブリンが現れ始める。俺はレビテーションを解除し、地上に戻る。この場所から転移で冒険者ギルドまで戻り、調査隊のメンバーをゲートで連れて戻る。これなら一時間かからずに目的に移動することが出来る。森の入口付近には監視役だろうゴブリンがかなり沢山うろうろしている。
「ここからゴブリンの巣を探しながらゴブリンの動向を探る。前衛はムラーノ、ビートル。」
「はい。お任せを!」
「おう!任せとけ!ゴブリンなんぞ敵じゃねぇ。」
「私とセリカは中衛でサポートをする。」
「はーい。魔法は僕に任せてね」
相変わらずセリカは軽い感じだなぁ。
「タカミとシャランは後方からの支援を頼む。」
「分かりました。」
「了解しました。後方より援護いたします。」
皆の役割が決まった。俺は後方より、攻撃力アップをムラーノとビートルにかけ、フィジックプロテクションをパーティ全体にかける。これでパーティー全員の物理防御がかなり上がった。
「おー。これはすごい。力が漲ってくる!」
「確かに、すごいですね。いつも以上の力が出ます。」
「タカミの支援魔法はすごいね。これでダメージを結構軽減できそう。ありがとー」
セリカが俺に話しかける。
「それでは行こう。」
俺はマップを展開し、ゴブリンを索敵する。結構な数のゴブリンがいる。なるべく見つからない様にゴブリンの巣を探す。
マップのお蔭で、最小限の遭遇で済んでいるが、流石はゴールドランクパーティ。ゴブリンを物ともせずに進んでいく。マップの一部にすごい数のゴブリンの集まりがある。その中には、ゴブリン単体よりも大きな反応もある。
「師匠、この先にゴブリンの反応があります。その中に、ひときわ大きな反応もあるので注意してください。」
「タカミはマップが使えるんだね。これは、すごく助かる。タカミの指示に従いながら進もう。」
森の奥に進むと、洞窟のような入り口がある。その周りにはゴブリンたちの見張りがいる。
「どうやら、ここが巣の入口のようだな。」
「待ってください。他の場所にも反応があります。多分、入り口は一つじゃありません。」
俺は、マップを見ながら前衛に声をかける。
「では、他の入口も探そう。」
師匠より指示が出る。俺は、マップを活用して他の入口の探索を行う。ゴブリンの巣の入口は広範囲に点在していた。それを順番に偵察していく。
「これは、かなりの規模の軍勢だな。入口の見張りはゴブリンウォーリアで間違いなさそうだ。出入りするゴブリンの中にはゴブリンメイジもいた。かなり、統率されている感じがするな。」
自分達がゴブリンの様子を伺っていると、マップの点が自分達を囲うように近づいてくる。
「師匠、囲まれています。どうしますか?」
「それでは、ゴブリンのとは逆方向に移動しながら撃退しよう。援軍が来られたら厄介だ。」
俺達は、撤退しながらゴブリンを迎え撃つ。
「来ます!ムラーノさんとビートルさんの正面から3体ずつ。後ろは僕が抑えます。」
《マジックミサイル》
俺が放つマジックミサイルがゴブリンに命中する。それを皮切りに次々とゴブリンが現れた。
「シャラン、ゴブリンを討伐しつつ、前衛の回復を。セリカはシャランの支援。」
《サテライト》
《マジックミサイル》
光の球体が俺の周りをまわる。そして、襲い掛かるゴブリンを光の光線で打ち抜く。また、同時に数体のゴブリンにマジックミサイルが発ずつ打ち放たれ、それを受けたゴブリンは絶命し、その場に倒れる。師匠達の放った魔法も多くのゴブリンを倒していく。しかし、次から次へとゴブリン共がやってくる。キリがない。前衛のムラート、ビートルが道を切り開く。
「すごい量のゴブリンだな。ここを抜けるまでが勝負だ!。前衛、少し気張ってくれ!。」
「了解!!。」
「分かりました。」
後方から、ゴブリンの軍勢が押し寄せる。
「師匠!ちょっと大きい魔法を使います。」
「タカミ、任せた。」
「はい!」
《アビスゲート》
俺は、ゴブリンの軍勢の中心に暗黒の球体を出現させる。暗黒の球体は、ゴブリン達を次々と呑み込んでいく。
《ストーンスプラッシュ》
《グラウンドプロトルージョン》
《ストーンウォール》
俺は3重魔法を放ち、後方のゴブリンの軍勢を殲滅していく。ムラーノとビートルが道を切り開き、そんな彼らをシャランが回復させる。師匠やセリカが側方のゴブリンを殲滅させ、俺達はゴブリンの追撃を逃れた。途中、魔物が現れたが難なく撃退する。
「ふぃ、なんとかゴブリン共の包囲から抜けれたようだな。」
ムラーノが息を整えながら周りを見渡す。
「はい。この辺にはゴブリンはいません。もう大丈夫です。」
「では、少し休もう。」
俺は、空間収納から椅子を取り出し、皆に配る。また、木を組みポットに水を入れて、ぶら下げる。その下に牧を組み火を付けお湯を沸かした。そんな中、シャランが全員に回復魔法をかけてくれた。疲れが一気に飛ぶ。
「シャランさん、ありがとうございます。」
シャランは、俺に微笑みかけてくれた。
「皆さん。お弁当にしますか?」
「おー!いいね。丁度腹が減ったところだ!」
俺は、皆にお弁当を配る。お湯も出来上がり、一緒にお茶も配る。
「タカミのその空間集のだっけ?すごく便利だね。荷物を持たなくていいのは、すごくアドバンテージだよ。」
ビートルが空間収納を見て感心している。
「それは、ユニークスキルだね。流石に私も真似できないよ。アイテム袋ならあるけど、時間も経過するし、入る量が限られているからね。」
師匠がお茶を飲みながら、アイテム袋を見せてくれた。なるほど、こういう仕組みね。
「まぁ、アイテム袋でも十分便利だけど。僕も欲しいな。」
「んー。これなら作れないことは無いかな。」
「作れないことは無いって…これ、すごい高価なもんなんだよ。」
セリカは呆れながら言う。
「入れられる量は魔力量によりますね。入れれば入れるだけ魔力を使うから、入れすぎて魔力が尽きると中の物が全部出てしましますね。師匠、ありがとうございます。」
俺は、アイテム袋を師匠に返す。
「そう言えば、ゴブリンとの戦闘中に使ったあの闇魔法のアビスゲート。」
「タカミ君すごいねー。後方の軍勢を一気にやっつけちゃったね。僕もビックリだよ。」
師匠とセリカが俺の魔法について話し始めた。
「あれ、確か第5階層の魔法だけど、使えるようになっていたんだね。」
「え!!5階層!」
「それに、3重魔法も使っていたね。」
「ははは…最近、森で魔法の鍛錬をしていて、使えるようになりました。あはは」
「あははじゃないよ、まったく。君には驚かされてばっかだな。魔法レベルだともう私と変わらないよ。」
「そんな。僕なんてまだまだですよ。」
「そんな事言われたら、僕なんてまだまだまだまだまだじゃないか。確かに、タカミ君には才能があったと思うけど…」
セリカがちょっとイジケ気味だ。
「何言っているんですか。僕がここまで魔法が使えるようになったのは、師匠はもちろん、セリカさんのお蔭でもあるんですよ。セリカさんが師匠を紹介してくれなければ、今の僕はありません。」
「そ、そうかな?」
「そうですよ。魔法は使えるかもしれませんが技術的にはまだまだです。」
そんな感じで休憩時間が過ぎていく。俺が、後片付けをしていると、
「さて、そろそろ街に戻ろうか。タカミ。ゲートをお願いできるかな?」
「はい。それではゲートを開きます。」
俺は、ギルドにゲートを繋ぎ開く。
「どうぞ。ギルドに繋がってまいす。」
俺達は、一旦ギルドに帰還した。俺達は冒険者ギルドに戻り、奥のテーブルに陣取った。
地図を広げ、偵察してきたか所に印をつけていく。
「かなりの数のゴブリンが集結している。これは、何か始める兆候だと思うが。」
師匠が顎に指を当て、思考を凝らしている。
「つまり、どこかの街に攻め込むってことですか?」
セリカが尋ねる
「そう言うことになるね。あそこからだとツイルヴィレッジの村かこのヤマトの街の可能性が高い。」
「攻め込まれて、無事に守りきる事は出来ますか?」
「ここの街の兵力だけでも何とかなるかもしれないが犠牲も多く出ると思う。私たちが遭遇したゴブリン達は1小隊ってところかな。この規模の範囲で巣があるとなると数万のゴブリンがいる可能性があるからね。」
「じゃあ、この街のシルバー以上の冒険者を集めて対抗するってのはどうよ。この街の兵士+冒険者なら案外行けるかもしれないぞ!」
ムラーノが提案する。
「もちろん、この街の冒険者にも協力を仰ぐつもりだ。しかし、普通のゴブリンだけなら問題ないと思うが、ゴブリンウォーリアやゴブリンメイジがいる事がちょっと懸念される事だね。」
「罠を仕掛けるのはどうでしょうか?城壁に沿って溝を掘り、落とした後、魔法で攻撃すれば一気に殲滅できると思いますが。」
俺は、罠を仕掛けることを提案する。
「それはいいと思うが、ちょっと時間が無いかな。それだけの規模の落とし穴となるとかなりの人手と時間を要する。」
「えっと、僕なら多分すぐできますけど…」
「ん?そうなのか?」
「はい。空間魔法で範囲を指定して地魔法で一気に陥没させてば出来ると思います。その上から隠ぺい魔法で穴を隠せばいいと思うのですがどうでしょうか?」
「もし、それが出来るならそれも作戦に入れておきたい。タカミ、よろしく頼む。」
「分かりました。落とし穴に落とすまでと落とした後、中のゴブリン殲滅まで僕がやります。落とし穴を作る時期は指示していただければすぐに取り掛かります。」
「今すぐに落とし穴に取り掛かると往来する行商人達に被害がでる可能性がある。どれくらいで落とし穴は作れる?」
「はい。1時間もあれば十分です。」
「そ、そんなに早く出来るのか。では、追って指示する。それまで待機で。」
師匠は、驚いていたがなんとなく納得もしていた。
「次に魔法部隊と弓の部隊だがセリカに任せる。弓隊と魔法部隊は防壁の上部から落とし穴から這い上がってきたゴブリンに攻撃を仕掛けてくれ。」
「はいよー。おまかせです。」
セリカは“ぴっ”っと敬礼っぽく返答する。
「ムラーノとビートルは、街の兵士団と防壁の後ろで待機。タカミの合図で残党を一掃する形で攻守する。」
「あいよ。任せときな」
二人は胸を叩き返答する
「では、各々準備をよろしく頼む。セリカ、ムラーノ、ビートルは私と一緒に兵士団の所に行きましょう。」
師匠達は、これから兵士団の所に行き作戦を伝えるそうだ。俺は、一旦帰って、落とし穴の指示を待つ。転移でティナのいる家に帰ると部屋に直行した。俺は、親指程度の魔石を取り出し、表面を奇麗にカットする。ミスリルの土台を作りそこに物理、魔法両方の防御の術式と治癒の術式を付与し魔石を取り付ける。ミスリルでネックレス用のチェーンを作り、魔石の付いたミスリルのネックレスを3個作成し、ティナの所に行く。
「ティナ。」
「タカミ、何?」
「あのな。多分、近々、この街にゴブリンの軍勢が攻撃してくるかもしれないんだ。それで、ティナに俺のお母さんを守ってほしい。お願い出来るかな?」
「勿論。タカミのお母さんは私のお母さんのような人。守らないわけがない。」
「そっか。それは、すごく嬉しいよ。じゃあ、これをあげる。これは、魔法と物理療法の防御の術式と治癒魔法の術式を付加してある。この魔石を握ることで術式が発動する。でも、まぁ、俺がゴブリンなんかこの街に近づけさせないけどね。万が一ね。」
「うん。タカミの実力は十分知っている。ドラゴンの軍勢が来ても撃退できるもんね。」
俺は、ティナの頭を撫で、実家に戻る。
実家に帰ると既に父は帰宅していた。そこには母もいる。
「ただいま戻りました。」
「タカミ、ちょっとこっちに来なさい。」
父に呼ばれた。多分、ゴブリン討伐の事だろう。母も同席している。
「今日、ウォーレン大魔導士様が兵団にやってきた。どうやら、近々、ゴブリンの軍勢がこの街に攻め込んでくるらしい。そこで大規模作戦によるゴブリン討伐の話を聞いた。俺は、兵士団を率いてゴブリンの残党を討伐する役割になったがその指示はタカミが出すという。タカミの口から説明してもらえないか。」
俺は、作戦の全容を父と母に話した。父も母も黙って聞いている。きっと反対なんだろうな。黙っていた父が口を開く。
「俺は、タカミを戦場に出すためにウォーレン大魔導士の所に行くことを賛成したわけじゃない。タカミが将来、賢者になりたいと言うからウォーレン大魔導士の所に行くのを賛成したんだ。しかも、タカミはまだ9歳だ。子供にやらせる仕事じゃない!」
父は強めの口調で話をする。
「僕は、お母さんと危険な事はしないと約束しました。だから、ずっと自分のできる範囲内で危険の無いように慎重に行動してきたつもりです。しかし、今回は、街の一大事です。僕一人の事なら断ったと思います。しかし、この街には僕の大切な人が沢山います。僕は、それを守りたい。確かに、僕が出なくてもゴブリン程度なら街を上げれば何とかなるでしょう。しかし、それには多くの犠牲やけが人も出ます。僕が出来る事をやる事でその可能性が一段と下がります。僕は前線には出ません。それでも僕の役割はすごく重要なのです。僕は、家族や友人、師匠や仲間がいるこの街が大好きです。守りたいのです。それには、僕の力も必要なんです。父さん、母さん、分かってください。」
俺も父と母に強めに話をした。少しの間沈黙があった。そして、母は俺の目を見て話し始めた。
「タカミ君。お母さんはタカミ君が決めた事に反対はしません。タカミ君の事だから考えがあっての事でしょう。ですから、必ず無事に帰ってきてください。」
「タカミ、絶対に無茶はするなよ。」
きっと父も理解してくれたのだろう。
「僕から二人に渡したいものがあります。」
俺は空間収納から魔法を付加したミスリルの剣とネックレスを取り出す。
「こちらは、お父さんに。ずっと以前、冷蔵庫と交換でもらった剣です。武器屋の親父さんが最高傑作と言っていました。確かに、すごくいい剣だと思います。これに強力なヒールと攻撃力が上がる魔法が付加されています。剣を掲げることでかなり強力な治癒魔法がかかります。ここの魔石の魔力が無くなるまで使えます。無くなっても魔力を補充することで再度使えるようになります。」
父にミスリルの剣を渡す。この剣なら一撃でゴブリンなら真っ二つになると思う。
「お母さんにはこれを。ミスリルと魔石で作ったネックレスです。凄く強力な防御魔法とリジェネの魔法が付加されています。リジェネはダメージを受けるたびに自然に治癒してくれる魔法です。物理防御と魔法防御の両方が付加されていますのでちょっとやそっとではダメージを受けないと思います。発動は、ここの魔石を握ってください。」
俺は、母の首にネックレスをかけてあげる。こんなの死亡フラグみたいだけど、違うからね。ゴブリンなんぞに負けませんよ。わたくしは!
父は、庭に出て剣を振るう。
「こりゃ、また凄い剣だな。ゴブリンなんて簡単に真っ二つに出来るな。タカミありがとう。」
「うん、僕は前線に出ないから問題は無いんだけど、お父さんは前線でしょ。絶対に負けないでください。」
「おいおい、俺がゴブリンなんぞに負けるわけないだろ。」
「そう言う油断がだめだと僕はお父さんから言われましたよ。」
「あははは!そりゃそうだ!分かった。気を引き締めて行ってくる。」
翌日、師匠の伝令より連絡が入った。
ティナ
魔族ハーフ LV18
HP144/144
MP576/576
筋力144
魔力306
防御力144
魔防288
俊敏144
器用144
知力162
幸運144
【ユニークスキル】
魔術 炎操作(中)
【スキル】
炎属性(中) 闇属性(低) 無属性(低) 魔力向上(低)
【魔法】
《生活魔法》(1階層)
《炎魔法》(3階層)
《闇魔法》(2階層)
《無属性魔法》(2階層)
九尾狐(聖獣) LV46
HP774/774
MP3842/3842
筋力549
魔力826
防御力683
魔防876
俊敏533
器用533
知力660
幸運549
【ユニークスキル】
魔術 剣術 異常状態耐性(高)
【スキル】
毒耐性(低) 闇属性(中) 炎属性(中) 風属性(中)
魔力向上(低) MP向上(低) 魔法耐性(低) 物理耐性(低)
【魔法】
《炎魔法》(6階層)
《風魔法》(5階層)
《闇魔法》(5階層)
人間族 LV58
HP3712/3712
MP20880/20880
筋力870
魔力4930
防御力4350
魔防4640
俊敏812
器用754
知力1044
幸運812
【ユニークスキル】
Q&A 空間収納 鑑定 医療の心得 模倣 偽装 真偽 魔術 剣術 精霊魔術 召喚 全記憶 模倣 空間操作・認識 重力操作 多重詠唱Ⅴ 照準
【スキル】
毒耐性(低) 光属性(極) 闇属性(高) 炎属性(極) 水属性(極) 地属性(極)
風属性(高) 無属性(極) 剣(中) 魔力欠乏耐性(極) 無詠唱 魔力調整
魔力向上(極) MP向上(極) 物理耐性(極) 魔法耐性(極) 翻訳 速読
マップ 索敵 演算加速 分離・結合 解体(極) 異常状態耐性(極) 錬金術(極)
創作(極)
【魔法】
《生活魔法》
《医療関連魔法》
《炎魔法》(12階層)
《地魔法》(12階層)
《氷魔法》(12階層)
《水魔法》(12階層)
《風魔法》(12階層)
《光魔法》(12階層)
《闇魔法》(12階層)
《無属性》(12階層)
《錬金魔法》(12階層)
《創作魔法》(12階層)
もう、階層はカンストしてまいす。LVだけ上がる感じ。でも、12階層の魔法は使ったことがない。多分、この世界が壊れるんじゃないの?まぁ、剣術だけは、あまり伸びてない。
ティナも背が大きくなり、もう立派なレディー?だ。父も母も元気で過ごしている。父は、俺に触発されたのか、結構、ハードに仕事をしている。
俺のギルドランクも上がり、今はセリカなんかと同じゴールドランク。受けられる依頼も増えてきた。もはや、南の森は我が庭みたいになっている。ここの街にはダンジョンがない。いずれダンジョンの攻略もしてみたいものだ。
今日は、師匠の所で魔法の鍛錬をする日だ。既に、鍛錬というよりも師匠と魔法について語り合っているレベルだが。そんな、師匠が難しい顔をしている。
「師匠、どうかしたのですか?」
「いや、ちょっと懸念される事が起こってね。最近、やたらゴブリンどもが町周辺に出没するんだよ。もしかするとこの街を偵察しに来ているようにも感じる。もしそうだとすると、彼らを統一する長が現れた可能性がある。」
「えっと、確かゴブリンキングでしたっけ?そうなるとゴブリンメイジやゴブリンウォリアもいそうですね。」
「まぁね、下手したらこの街に攻め込んでくる可能性がある。ヤマト辺境伯から、この街の財政と治安を任されているから大事にならなければいいのだがね。とりあえず、冒険者ギルドにはゴブリン討伐とその調査の依頼は出しているんだが中々成果が出なくてね。近々、調査隊を編成して直接確認しに行こうと思っているんだ。」
師匠は頭を抱えてため息をつく。この街には、俺の大切な人達が暮らしている。他人事ではないな。
「僕でよければ、その時はお供します。お声をかけてください。」
「でも、危険な任務になるけど大丈夫かい?」
「僕は、師匠の弟子ですよ。師匠が出向くのに僕が行かなくて誰が行くんですか?それに、この街には僕の大切な家族や友人がいます。是非、手伝わせてください。」
「ふふふ、タカミも立派になったもんだ。頼りにしているよ。そうだ。この件が解決したら、ヤマト辺境伯に紹介したいんだけどね。いいかい?」
お貴族様なんて無縁だと思っていたけど・・・
「へ?でも、僕平民ですよ。辺境伯様になんて恐れ多いですよ。」
「いや、君はそれぐらいの実力はあると思うよ。辺境伯はあまり身分に拘らないお方なんだ。そう言う事だから少し考えておいて。」
「分かりました。ありがとうございます。それでは、何かありましたらご連絡ください。」
俺は、お辞儀をし、帰る。
“明日から、少しアルファードでゴブリンを討伐するか。人型だから避けていたんだけど、ゴブリンは魔物だからしょうがないかな。後、母になんて話そう。危ないことするなって言われているんだよな。まぁ、今の俺の能力なら全然危なくないんだけど…”
そんな事を考えながら、帰路に就く。
「ただいま。」
「はい。タカミ君おかえりなさい。」
母はいつも通りだ。いや、ちゃんと話をしよう。
「お母さん、話があります。ちょっといいですか?」
おれは、真剣な表情で話を始める。
「何かな?改まって。大事な話?」
「はい。お父さんと話をしているので聞いていると思いますが、最近、この街の付近にゴブリンがよく出没するそうです。本日、師匠との話の中で調査隊が編成されるという事でした。僕は、師匠に“僕も連れて行ってくれ”とお願いしました。僕にとって、この街にはお母さん、お父さんを始め、沢山の大切な人がいます。それを守りたいのです。正直、僕の能力的には全く問題無いと思いますが、油断や過信はしない様に心がけております。以前、お母さんから“危険な事はしないで”と言われました。危険だと思いませんが万が一があります。だからお話ししています。行ってよろしいでしょうか?」
母は黙っている。しばらくの沈黙の後、母がゆっくりと口を開く
「子供はいつか、親の手を離れるもの。タカミ君はまだ、9歳で“普通”であれば親の手を離れる年じゃないわ。でも、きっと“その代り”に神様はタカミ君にすごい能力をくれた。周りの子達と比べてもタカミ君の能力はそれ以上だもの。これ以上欲張っては神様から罰が当たるわ。でもね、親はいつでも子供の心配をするもの。お母さんはタカミ君の事が心配なの。だから、無茶をせず、必ず無事に帰ってきてね。」
母は、声を絞り出すように話をし、調査隊への参加を認めてくれた。
「お母さん、ありがとう!大丈夫!ちゃんと無事に帰ってきますから。」
俺は、元気よく答えた。俺は本当に愛されているんだな。幸せ者だ。
同じように父にも話をした。父は母より反応が薄かったが、万が一があるから気を付けろとの事。まぁ、父はある程度、俺の実力知っているし。それにあれからかなりレベルも上がっているし、ゴブリンには負けるわけ無いんだけどね。
数日後、調査隊が編成された。メンバーは、師匠、俺、セリカ、セリカのパーティーメンバーのムラーノ、ビートル、シャラン。南の森に行くのに通常であれば馬車で1日近くかかる。まず、俺が一人でレビテーションを使い飛んで行き、マップを広げゴブリンをターゲットし、上空からゴブリンを探す。丁度森にさしかかる辺りからゴブリンが現れ始める。俺はレビテーションを解除し、地上に戻る。この場所から転移で冒険者ギルドまで戻り、調査隊のメンバーをゲートで連れて戻る。これなら一時間かからずに目的に移動することが出来る。森の入口付近には監視役だろうゴブリンがかなり沢山うろうろしている。
「ここからゴブリンの巣を探しながらゴブリンの動向を探る。前衛はムラーノ、ビートル。」
「はい。お任せを!」
「おう!任せとけ!ゴブリンなんぞ敵じゃねぇ。」
「私とセリカは中衛でサポートをする。」
「はーい。魔法は僕に任せてね」
相変わらずセリカは軽い感じだなぁ。
「タカミとシャランは後方からの支援を頼む。」
「分かりました。」
「了解しました。後方より援護いたします。」
皆の役割が決まった。俺は後方より、攻撃力アップをムラーノとビートルにかけ、フィジックプロテクションをパーティ全体にかける。これでパーティー全員の物理防御がかなり上がった。
「おー。これはすごい。力が漲ってくる!」
「確かに、すごいですね。いつも以上の力が出ます。」
「タカミの支援魔法はすごいね。これでダメージを結構軽減できそう。ありがとー」
セリカが俺に話しかける。
「それでは行こう。」
俺はマップを展開し、ゴブリンを索敵する。結構な数のゴブリンがいる。なるべく見つからない様にゴブリンの巣を探す。
マップのお蔭で、最小限の遭遇で済んでいるが、流石はゴールドランクパーティ。ゴブリンを物ともせずに進んでいく。マップの一部にすごい数のゴブリンの集まりがある。その中には、ゴブリン単体よりも大きな反応もある。
「師匠、この先にゴブリンの反応があります。その中に、ひときわ大きな反応もあるので注意してください。」
「タカミはマップが使えるんだね。これは、すごく助かる。タカミの指示に従いながら進もう。」
森の奥に進むと、洞窟のような入り口がある。その周りにはゴブリンたちの見張りがいる。
「どうやら、ここが巣の入口のようだな。」
「待ってください。他の場所にも反応があります。多分、入り口は一つじゃありません。」
俺は、マップを見ながら前衛に声をかける。
「では、他の入口も探そう。」
師匠より指示が出る。俺は、マップを活用して他の入口の探索を行う。ゴブリンの巣の入口は広範囲に点在していた。それを順番に偵察していく。
「これは、かなりの規模の軍勢だな。入口の見張りはゴブリンウォーリアで間違いなさそうだ。出入りするゴブリンの中にはゴブリンメイジもいた。かなり、統率されている感じがするな。」
自分達がゴブリンの様子を伺っていると、マップの点が自分達を囲うように近づいてくる。
「師匠、囲まれています。どうしますか?」
「それでは、ゴブリンのとは逆方向に移動しながら撃退しよう。援軍が来られたら厄介だ。」
俺達は、撤退しながらゴブリンを迎え撃つ。
「来ます!ムラーノさんとビートルさんの正面から3体ずつ。後ろは僕が抑えます。」
《マジックミサイル》
俺が放つマジックミサイルがゴブリンに命中する。それを皮切りに次々とゴブリンが現れた。
「シャラン、ゴブリンを討伐しつつ、前衛の回復を。セリカはシャランの支援。」
《サテライト》
《マジックミサイル》
光の球体が俺の周りをまわる。そして、襲い掛かるゴブリンを光の光線で打ち抜く。また、同時に数体のゴブリンにマジックミサイルが発ずつ打ち放たれ、それを受けたゴブリンは絶命し、その場に倒れる。師匠達の放った魔法も多くのゴブリンを倒していく。しかし、次から次へとゴブリン共がやってくる。キリがない。前衛のムラート、ビートルが道を切り開く。
「すごい量のゴブリンだな。ここを抜けるまでが勝負だ!。前衛、少し気張ってくれ!。」
「了解!!。」
「分かりました。」
後方から、ゴブリンの軍勢が押し寄せる。
「師匠!ちょっと大きい魔法を使います。」
「タカミ、任せた。」
「はい!」
《アビスゲート》
俺は、ゴブリンの軍勢の中心に暗黒の球体を出現させる。暗黒の球体は、ゴブリン達を次々と呑み込んでいく。
《ストーンスプラッシュ》
《グラウンドプロトルージョン》
《ストーンウォール》
俺は3重魔法を放ち、後方のゴブリンの軍勢を殲滅していく。ムラーノとビートルが道を切り開き、そんな彼らをシャランが回復させる。師匠やセリカが側方のゴブリンを殲滅させ、俺達はゴブリンの追撃を逃れた。途中、魔物が現れたが難なく撃退する。
「ふぃ、なんとかゴブリン共の包囲から抜けれたようだな。」
ムラーノが息を整えながら周りを見渡す。
「はい。この辺にはゴブリンはいません。もう大丈夫です。」
「では、少し休もう。」
俺は、空間収納から椅子を取り出し、皆に配る。また、木を組みポットに水を入れて、ぶら下げる。その下に牧を組み火を付けお湯を沸かした。そんな中、シャランが全員に回復魔法をかけてくれた。疲れが一気に飛ぶ。
「シャランさん、ありがとうございます。」
シャランは、俺に微笑みかけてくれた。
「皆さん。お弁当にしますか?」
「おー!いいね。丁度腹が減ったところだ!」
俺は、皆にお弁当を配る。お湯も出来上がり、一緒にお茶も配る。
「タカミのその空間集のだっけ?すごく便利だね。荷物を持たなくていいのは、すごくアドバンテージだよ。」
ビートルが空間収納を見て感心している。
「それは、ユニークスキルだね。流石に私も真似できないよ。アイテム袋ならあるけど、時間も経過するし、入る量が限られているからね。」
師匠がお茶を飲みながら、アイテム袋を見せてくれた。なるほど、こういう仕組みね。
「まぁ、アイテム袋でも十分便利だけど。僕も欲しいな。」
「んー。これなら作れないことは無いかな。」
「作れないことは無いって…これ、すごい高価なもんなんだよ。」
セリカは呆れながら言う。
「入れられる量は魔力量によりますね。入れれば入れるだけ魔力を使うから、入れすぎて魔力が尽きると中の物が全部出てしましますね。師匠、ありがとうございます。」
俺は、アイテム袋を師匠に返す。
「そう言えば、ゴブリンとの戦闘中に使ったあの闇魔法のアビスゲート。」
「タカミ君すごいねー。後方の軍勢を一気にやっつけちゃったね。僕もビックリだよ。」
師匠とセリカが俺の魔法について話し始めた。
「あれ、確か第5階層の魔法だけど、使えるようになっていたんだね。」
「え!!5階層!」
「それに、3重魔法も使っていたね。」
「ははは…最近、森で魔法の鍛錬をしていて、使えるようになりました。あはは」
「あははじゃないよ、まったく。君には驚かされてばっかだな。魔法レベルだともう私と変わらないよ。」
「そんな。僕なんてまだまだですよ。」
「そんな事言われたら、僕なんてまだまだまだまだまだじゃないか。確かに、タカミ君には才能があったと思うけど…」
セリカがちょっとイジケ気味だ。
「何言っているんですか。僕がここまで魔法が使えるようになったのは、師匠はもちろん、セリカさんのお蔭でもあるんですよ。セリカさんが師匠を紹介してくれなければ、今の僕はありません。」
「そ、そうかな?」
「そうですよ。魔法は使えるかもしれませんが技術的にはまだまだです。」
そんな感じで休憩時間が過ぎていく。俺が、後片付けをしていると、
「さて、そろそろ街に戻ろうか。タカミ。ゲートをお願いできるかな?」
「はい。それではゲートを開きます。」
俺は、ギルドにゲートを繋ぎ開く。
「どうぞ。ギルドに繋がってまいす。」
俺達は、一旦ギルドに帰還した。俺達は冒険者ギルドに戻り、奥のテーブルに陣取った。
地図を広げ、偵察してきたか所に印をつけていく。
「かなりの数のゴブリンが集結している。これは、何か始める兆候だと思うが。」
師匠が顎に指を当て、思考を凝らしている。
「つまり、どこかの街に攻め込むってことですか?」
セリカが尋ねる
「そう言うことになるね。あそこからだとツイルヴィレッジの村かこのヤマトの街の可能性が高い。」
「攻め込まれて、無事に守りきる事は出来ますか?」
「ここの街の兵力だけでも何とかなるかもしれないが犠牲も多く出ると思う。私たちが遭遇したゴブリン達は1小隊ってところかな。この規模の範囲で巣があるとなると数万のゴブリンがいる可能性があるからね。」
「じゃあ、この街のシルバー以上の冒険者を集めて対抗するってのはどうよ。この街の兵士+冒険者なら案外行けるかもしれないぞ!」
ムラーノが提案する。
「もちろん、この街の冒険者にも協力を仰ぐつもりだ。しかし、普通のゴブリンだけなら問題ないと思うが、ゴブリンウォーリアやゴブリンメイジがいる事がちょっと懸念される事だね。」
「罠を仕掛けるのはどうでしょうか?城壁に沿って溝を掘り、落とした後、魔法で攻撃すれば一気に殲滅できると思いますが。」
俺は、罠を仕掛けることを提案する。
「それはいいと思うが、ちょっと時間が無いかな。それだけの規模の落とし穴となるとかなりの人手と時間を要する。」
「えっと、僕なら多分すぐできますけど…」
「ん?そうなのか?」
「はい。空間魔法で範囲を指定して地魔法で一気に陥没させてば出来ると思います。その上から隠ぺい魔法で穴を隠せばいいと思うのですがどうでしょうか?」
「もし、それが出来るならそれも作戦に入れておきたい。タカミ、よろしく頼む。」
「分かりました。落とし穴に落とすまでと落とした後、中のゴブリン殲滅まで僕がやります。落とし穴を作る時期は指示していただければすぐに取り掛かります。」
「今すぐに落とし穴に取り掛かると往来する行商人達に被害がでる可能性がある。どれくらいで落とし穴は作れる?」
「はい。1時間もあれば十分です。」
「そ、そんなに早く出来るのか。では、追って指示する。それまで待機で。」
師匠は、驚いていたがなんとなく納得もしていた。
「次に魔法部隊と弓の部隊だがセリカに任せる。弓隊と魔法部隊は防壁の上部から落とし穴から這い上がってきたゴブリンに攻撃を仕掛けてくれ。」
「はいよー。おまかせです。」
セリカは“ぴっ”っと敬礼っぽく返答する。
「ムラーノとビートルは、街の兵士団と防壁の後ろで待機。タカミの合図で残党を一掃する形で攻守する。」
「あいよ。任せときな」
二人は胸を叩き返答する
「では、各々準備をよろしく頼む。セリカ、ムラーノ、ビートルは私と一緒に兵士団の所に行きましょう。」
師匠達は、これから兵士団の所に行き作戦を伝えるそうだ。俺は、一旦帰って、落とし穴の指示を待つ。転移でティナのいる家に帰ると部屋に直行した。俺は、親指程度の魔石を取り出し、表面を奇麗にカットする。ミスリルの土台を作りそこに物理、魔法両方の防御の術式と治癒の術式を付与し魔石を取り付ける。ミスリルでネックレス用のチェーンを作り、魔石の付いたミスリルのネックレスを3個作成し、ティナの所に行く。
「ティナ。」
「タカミ、何?」
「あのな。多分、近々、この街にゴブリンの軍勢が攻撃してくるかもしれないんだ。それで、ティナに俺のお母さんを守ってほしい。お願い出来るかな?」
「勿論。タカミのお母さんは私のお母さんのような人。守らないわけがない。」
「そっか。それは、すごく嬉しいよ。じゃあ、これをあげる。これは、魔法と物理療法の防御の術式と治癒魔法の術式を付加してある。この魔石を握ることで術式が発動する。でも、まぁ、俺がゴブリンなんかこの街に近づけさせないけどね。万が一ね。」
「うん。タカミの実力は十分知っている。ドラゴンの軍勢が来ても撃退できるもんね。」
俺は、ティナの頭を撫で、実家に戻る。
実家に帰ると既に父は帰宅していた。そこには母もいる。
「ただいま戻りました。」
「タカミ、ちょっとこっちに来なさい。」
父に呼ばれた。多分、ゴブリン討伐の事だろう。母も同席している。
「今日、ウォーレン大魔導士様が兵団にやってきた。どうやら、近々、ゴブリンの軍勢がこの街に攻め込んでくるらしい。そこで大規模作戦によるゴブリン討伐の話を聞いた。俺は、兵士団を率いてゴブリンの残党を討伐する役割になったがその指示はタカミが出すという。タカミの口から説明してもらえないか。」
俺は、作戦の全容を父と母に話した。父も母も黙って聞いている。きっと反対なんだろうな。黙っていた父が口を開く。
「俺は、タカミを戦場に出すためにウォーレン大魔導士の所に行くことを賛成したわけじゃない。タカミが将来、賢者になりたいと言うからウォーレン大魔導士の所に行くのを賛成したんだ。しかも、タカミはまだ9歳だ。子供にやらせる仕事じゃない!」
父は強めの口調で話をする。
「僕は、お母さんと危険な事はしないと約束しました。だから、ずっと自分のできる範囲内で危険の無いように慎重に行動してきたつもりです。しかし、今回は、街の一大事です。僕一人の事なら断ったと思います。しかし、この街には僕の大切な人が沢山います。僕は、それを守りたい。確かに、僕が出なくてもゴブリン程度なら街を上げれば何とかなるでしょう。しかし、それには多くの犠牲やけが人も出ます。僕が出来る事をやる事でその可能性が一段と下がります。僕は前線には出ません。それでも僕の役割はすごく重要なのです。僕は、家族や友人、師匠や仲間がいるこの街が大好きです。守りたいのです。それには、僕の力も必要なんです。父さん、母さん、分かってください。」
俺も父と母に強めに話をした。少しの間沈黙があった。そして、母は俺の目を見て話し始めた。
「タカミ君。お母さんはタカミ君が決めた事に反対はしません。タカミ君の事だから考えがあっての事でしょう。ですから、必ず無事に帰ってきてください。」
「タカミ、絶対に無茶はするなよ。」
きっと父も理解してくれたのだろう。
「僕から二人に渡したいものがあります。」
俺は空間収納から魔法を付加したミスリルの剣とネックレスを取り出す。
「こちらは、お父さんに。ずっと以前、冷蔵庫と交換でもらった剣です。武器屋の親父さんが最高傑作と言っていました。確かに、すごくいい剣だと思います。これに強力なヒールと攻撃力が上がる魔法が付加されています。剣を掲げることでかなり強力な治癒魔法がかかります。ここの魔石の魔力が無くなるまで使えます。無くなっても魔力を補充することで再度使えるようになります。」
父にミスリルの剣を渡す。この剣なら一撃でゴブリンなら真っ二つになると思う。
「お母さんにはこれを。ミスリルと魔石で作ったネックレスです。凄く強力な防御魔法とリジェネの魔法が付加されています。リジェネはダメージを受けるたびに自然に治癒してくれる魔法です。物理防御と魔法防御の両方が付加されていますのでちょっとやそっとではダメージを受けないと思います。発動は、ここの魔石を握ってください。」
俺は、母の首にネックレスをかけてあげる。こんなの死亡フラグみたいだけど、違うからね。ゴブリンなんぞに負けませんよ。わたくしは!
父は、庭に出て剣を振るう。
「こりゃ、また凄い剣だな。ゴブリンなんて簡単に真っ二つに出来るな。タカミありがとう。」
「うん、僕は前線に出ないから問題は無いんだけど、お父さんは前線でしょ。絶対に負けないでください。」
「おいおい、俺がゴブリンなんぞに負けるわけないだろ。」
「そう言う油断がだめだと僕はお父さんから言われましたよ。」
「あははは!そりゃそうだ!分かった。気を引き締めて行ってくる。」
翌日、師匠の伝令より連絡が入った。
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