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【母のぬくもり】
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いつもの様に朝の日課を終わらせて、家に戻る。今日は母がお弁当を3つ作ってくれている。
「かー様、森から帰ったら友達と九尾、連れてきてもいい?」
恐る恐る、聞いてみた。
「ティナちゃんだっけ?もちろんいいわよ。じゃあ、今晩は沢山作らないとね。」
「お肉なら沢山なるので置いておきますか?」
「なんのお肉なの?」
「ビックホロー、ビックボア、一角ウサギ、ジャイアントファントです。」
「ジャイアントファントのお肉はあるから、それ以外一通り冷凍庫に入れておいてもらえるかしら。」
「分かりました。入れておきます。」
俺は、10kgくらいずつお肉を冷凍庫に入れた。結構、パンパンだ。そして、ティナの所に行った。
「アルファードー!」
相変わらす俺が来ると抱き付いてくる。俺は、ティナの頭を撫でてやる。いつもの様に午前中は狩りに行き、午後は依頼の報告と素材の買取をしてもらうために冒険者ギルドに行く。その後、一旦家に戻り、隠ぺいを解きティナと話をする。
「ティナ。よかったら、今日、実家に一緒に行かない?俺の両親と皆で夕ご飯を食べようよ。」
「タカミの家?ティナも行っていいの?」
「勿論だよ。かー様もティナを連れておいでって言っていた。」
「ナディアも来るか?」
「ん。妾も行っていいのかえ?」
「勿論。大切な仲間だからね。じゃあ、3人で行こう!」
俺はゲートを開き実家に3人で行く。
「ただいまー」
「タカミ君、おかえりなさい。あらあら、あなたがティナちゃんね。可愛らしい子ね。そして、そちらの素敵な女性は九尾様ですか?」
母様、何んか、言葉遣いが変になってらっしゃる。
「紹介します。こちらがティナでこちらが九尾のナディアです。」
「私はティナ。初めまして。」
ペコっとお辞儀をする。
「妾がご主人の第一の従者、九尾の狐ナディアじゃ。ご主人の母上。お見知りおきを」
きっちり、礼をする。こういう時は流石だな。
「はい。私がタカミの母のサニー・エドワードです。よろしくね。ティナちゃん、ナディアさん」
母も挨拶をする。リビングに行き、4人でお茶をしながら話し始めた。
「ティナちゃんは今まで、色々大変だったんだってね。タカミ君から話は聞きましたよ。家には何もないけど、のんびりしていってね。」
「ありがとう。私、人の家に来たの初めて。なんだか楽しい。」
「ほう。ここがご主人の生まれ育った家かえ?」
「なんだ、ディスるのか?」
「そ、そんな訳あるわけなかろう。なんか、感慨深くてのお。」
「なんで?普通の家だろ」
「いや、やっぱりご主人の生まれ育った家だからそう思うのかもしれぬのう。」
「ティナちゃんにナディアさん。いつもタカミ君と仲良くしてくれてありがとう。この子、ちょっと変わっているかお友達できるか心配だったのよ。」
「大丈夫。タカミすごく親切。私はタカミといれてとても幸せ。」
「妾もご主人と楽しくさせてもらっておるぞ」
4人で話しをしていると、父が帰ってきた。
「ただいま。ん?今日はやけに賑やかだな。」
「こんばんは、。父上殿、お邪魔しておるぞ。」
「おお、九尾様、ようこそお越しになりました。」
「ご主人の父上殿なのだからナディアでよい。」
「今日は、皆で食事しようって事になったのよ。」
母が父に説明する。
「なるほど。ナディア殿。お口に合うか分かりませんが、召し上がっていってください。」
「ご主人の母上の料理はとても美味じゃ。お昼も馳走になった。」
「そうですか。では、こちらへ。食事にしましょう」
父が畏まっている。まぁ、それはしょうがないか。
「じゃあ、お話は食事をしながらしましょう!」
母は、結構な量の食事を用意していてくれた。お肉の料理が多めだが、全部おいしそうだ。
「うわ。これ、みんなタカミのママが作った?凄い、美味しそう。」
「うむ。見事なもんじゃのう。」
「さあさあ、皆で食べましょう!」
「いただきます。」
「ほう、このホローの肉、すごく美味じゃのう。」
「こっちのお野菜とボアのお肉も美味しい。」
「まだまだ沢山あるからどんどん食べてね。」
「ありがとう。」
「うむ。馳走になる」
二人もすごく美味しそうに、楽しそうに食事をする。すると父が、
「ナディア殿。一杯どうですか?」
「おお。酒か。いいのう。一緒に飲もうぞ!」
ナディアと父はお酒を飲み始めた。そう言えば、ナディアは何歳なんだ?
「こうやって楽しく食事ができ、美味しいお酒も飲める。これもご主人が妾の命を救ってくれたお蔭じゃ。とても感謝しておるぞ。」
どうやら、ナディアの一族は酒呑童子に襲われたらしい。抵抗したのだが、酒呑童子に手を貸した白虎に嵌められ致命傷を負ったとの事。いつか、その白虎と酒呑童子をぶっ飛ばしてやろう!どうやらその後に俺に会ったらしい。その後は、毎日ティナと楽しく暮らしている話をしていた。そして夕食も終わり、俺とティナと母はリビングで話をしている。ちなみに、父とナディアはまだ飲んでいる。母がお酒を飲まないから父も楽しいのだろう。二人共上機嫌である。
「ティナちゃんは、この後すぐ帰るの?」
「うん。でも、ナディアがまだ時間かかりそうだから待っている。」
「じゃあ、私と一緒にお風呂入らない?」
「え。いいの?」
「勿論よ。じゃあ、一緒に入りましょう。」
そう言って、女子二人は浴室に消えて行った。
========ここからはティナ目線========
タカミのお母さんにお風呂に誘われた。タカミのお母さんはすごく優しくていい匂いがする。私は、母親と一緒にお風呂に入ったが無い。だから少し緊張する。
「さあ、ティナちゃん一緒にお風呂に入りましょう。私が脱がしてあげようか?」
「ありがとう。でも、大丈夫。自分でできる。」
私はそそくさと服を脱ぎ、カラコンを外す。タカミの母は先にお風呂に入って頭を洗っていた。私は、身体をお湯で流し、先に湯船に入る。母がいたらこうなのかなぁって思うとタカミの母に見惚れてしまう。
「どうしたのティナちゃん。私をじーと見つめて。」
「ううん。なんでもない。もし、私にお母さんがいたらこんな感じなのかなって思って。」
タカミの母は、私に微笑みかけて
「じゃあ、ティナちゃんの髪は私が洗ってあげる。こっちにおいで」
「ううん。自分で出来るから大丈夫。」
「そんなこと言わないの。私が洗ってあげたいの。さあ、こっちにおいで」
私は、湯船を出てタカミの母の前に座る。
「ティナちゃんの髪の毛って奇麗ね。私には娘がいないからこうやって女の子の髪の毛を洗ってあげるのが夢だったのよ。」
タカミの母は優しく私の髪を洗ってくれる。
「タカミのお母さんは、私の事が怖くないの?」
「なんで?ティナちゃんはすごくいい子じゃない。」
「私は、炎の民と言われてずっと恐れられていた。皆からどっか行けって言われた。でも、そんな中タカミだけは、私に優ししてくれた。」
「うん。タカミ君は優しい子に育ってくれたよ。そんな子が連れて来たティナちゃんを怖いなんて思わないわよ。」
髪を洗い終わり、身体を洗ってくれている。
「あら、ティナちゃんは肌も奇麗ね。私なんてもう年だからやんなっちゃうわ」
「そんな事ない。タカミのママはとても奇麗で優しい。皆が怖がったこんな目をしている、私を怖くないって言ってくれた。嬉しい。」
「ティナちゃんはすごく奇麗な目をしているわ。そんな目を怖いだなんて思わないわよ。」
身体を洗い終わり、お湯で流す。
「さあ、湯船に入りましょ。」
私は、タカミの母と一緒に湯船に入る。そして私を抱きしめてくれた。
「ティナちゃん、今まで沢山辛い事や寂しい事があったのね。でも、もう、私達がいるから寂しい思いをしなくていいのよ。」
「うん。今はもうあまり寂しくない。タカミが帰っちゃうと少し寂しいけど。でも、また、ちゃんと会いに来てくれる。何ていうんだろう、今は、心が暖かい。」
「私はね、ティナちゃんみたいな娘がいたらいいなーってずっと思っていたの。だから、これからも遠慮せずに私の事をお母さんだと思っていつでも会いに来てね。」
私の頭を撫でながら優しくそう言ってくれる。“お母さんがいる”なんて考えたことも無い。物心がついた時には父と二人だった。その父にも邪魔もの扱いされていた。こんなに優しく私の事を撫でてくれるのは、タカミとタカミの母だけだ。私は、こんなに甘えてもいいんだろうか?こんなに甘えていたらいつか、捨てられるんじゃないだろうか?そんな事無いと分かっていても頭に浮かんでしまう。
「今、私はすごく幸せ。でも、いつか捨てられちゃうんじゃないかと思うとそれが怖い。」
「馬鹿ね。そんなことあるはずないじゃない。ティナちゃんと会うのは初めてだけど、私はティナちゃんも娘の様に感じているわ。だから、沢山甘えて頂戴ね。」
タカミの母は、私に優しく微笑んでくれる。ずっと冷たかった心が暖まるのがわかる。私は、知らないうちに涙を流していた。そんな私をタカミの母は優しく抱きしめてくれている。これが母のいる“幸せ”なんだと初めて感じた。
========ここからタカミ目線に戻ります。========
お風呂から二人が戻ってきた。なんか、ティナが母にべったりだ。きっと母親がいなくて寂しく思っていたティナに何かしてくれたんだろう。
「かー様、ありがとうございます。なんだかティナがすごく幸せそうです。」
俺は母にお礼を言った。
「何言っているの。私は、ティナちゃんに自分が思っていることを話しただけよ。ね。ティナちゃん。」
ティナは赤くなりながら頷く。なんか、連れてきて本当に良かった。
「そうだ!ティナちゃん、今日は家に泊まってらっしゃい。私と一緒に寝ましょ。」
ティナはビックリしたように俺を見る。俺も頷く。
「いいの?」
「もちろんよー。ティナちゃんは私の娘なんだから。」
なるほど、やっぱそう言う事ね。“タカミ”の母は本当に優しいな。
「じゃあ、僕は、父をベッドに運んどくね。」
よく見ると、父もナディアも酔っぱらって寝ている。ナディアは客室に連れて行こう。俺は、まず、父にレビテーションをかけ、浮かせてベッドまで連れて行く。次にナディアを客室のベッドに寝かせる。
「僕もお風呂に入って寝ますから、二人は先に休んでください。」
俺は浴室に行き風呂に入りながら一日を振り返る。ティナやナディアも俺のファミリーを受け入れてくれたし、そして父、母共にティナ、ナディアを受け入れてくれた。今日1日すごく人間的で幸せな時間だったと感じる。俺は、夜の鍛錬をし、ゆっくりと瞼を閉じる。父さん、母さんありがとう。
「かー様、森から帰ったら友達と九尾、連れてきてもいい?」
恐る恐る、聞いてみた。
「ティナちゃんだっけ?もちろんいいわよ。じゃあ、今晩は沢山作らないとね。」
「お肉なら沢山なるので置いておきますか?」
「なんのお肉なの?」
「ビックホロー、ビックボア、一角ウサギ、ジャイアントファントです。」
「ジャイアントファントのお肉はあるから、それ以外一通り冷凍庫に入れておいてもらえるかしら。」
「分かりました。入れておきます。」
俺は、10kgくらいずつお肉を冷凍庫に入れた。結構、パンパンだ。そして、ティナの所に行った。
「アルファードー!」
相変わらす俺が来ると抱き付いてくる。俺は、ティナの頭を撫でてやる。いつもの様に午前中は狩りに行き、午後は依頼の報告と素材の買取をしてもらうために冒険者ギルドに行く。その後、一旦家に戻り、隠ぺいを解きティナと話をする。
「ティナ。よかったら、今日、実家に一緒に行かない?俺の両親と皆で夕ご飯を食べようよ。」
「タカミの家?ティナも行っていいの?」
「勿論だよ。かー様もティナを連れておいでって言っていた。」
「ナディアも来るか?」
「ん。妾も行っていいのかえ?」
「勿論。大切な仲間だからね。じゃあ、3人で行こう!」
俺はゲートを開き実家に3人で行く。
「ただいまー」
「タカミ君、おかえりなさい。あらあら、あなたがティナちゃんね。可愛らしい子ね。そして、そちらの素敵な女性は九尾様ですか?」
母様、何んか、言葉遣いが変になってらっしゃる。
「紹介します。こちらがティナでこちらが九尾のナディアです。」
「私はティナ。初めまして。」
ペコっとお辞儀をする。
「妾がご主人の第一の従者、九尾の狐ナディアじゃ。ご主人の母上。お見知りおきを」
きっちり、礼をする。こういう時は流石だな。
「はい。私がタカミの母のサニー・エドワードです。よろしくね。ティナちゃん、ナディアさん」
母も挨拶をする。リビングに行き、4人でお茶をしながら話し始めた。
「ティナちゃんは今まで、色々大変だったんだってね。タカミ君から話は聞きましたよ。家には何もないけど、のんびりしていってね。」
「ありがとう。私、人の家に来たの初めて。なんだか楽しい。」
「ほう。ここがご主人の生まれ育った家かえ?」
「なんだ、ディスるのか?」
「そ、そんな訳あるわけなかろう。なんか、感慨深くてのお。」
「なんで?普通の家だろ」
「いや、やっぱりご主人の生まれ育った家だからそう思うのかもしれぬのう。」
「ティナちゃんにナディアさん。いつもタカミ君と仲良くしてくれてありがとう。この子、ちょっと変わっているかお友達できるか心配だったのよ。」
「大丈夫。タカミすごく親切。私はタカミといれてとても幸せ。」
「妾もご主人と楽しくさせてもらっておるぞ」
4人で話しをしていると、父が帰ってきた。
「ただいま。ん?今日はやけに賑やかだな。」
「こんばんは、。父上殿、お邪魔しておるぞ。」
「おお、九尾様、ようこそお越しになりました。」
「ご主人の父上殿なのだからナディアでよい。」
「今日は、皆で食事しようって事になったのよ。」
母が父に説明する。
「なるほど。ナディア殿。お口に合うか分かりませんが、召し上がっていってください。」
「ご主人の母上の料理はとても美味じゃ。お昼も馳走になった。」
「そうですか。では、こちらへ。食事にしましょう」
父が畏まっている。まぁ、それはしょうがないか。
「じゃあ、お話は食事をしながらしましょう!」
母は、結構な量の食事を用意していてくれた。お肉の料理が多めだが、全部おいしそうだ。
「うわ。これ、みんなタカミのママが作った?凄い、美味しそう。」
「うむ。見事なもんじゃのう。」
「さあさあ、皆で食べましょう!」
「いただきます。」
「ほう、このホローの肉、すごく美味じゃのう。」
「こっちのお野菜とボアのお肉も美味しい。」
「まだまだ沢山あるからどんどん食べてね。」
「ありがとう。」
「うむ。馳走になる」
二人もすごく美味しそうに、楽しそうに食事をする。すると父が、
「ナディア殿。一杯どうですか?」
「おお。酒か。いいのう。一緒に飲もうぞ!」
ナディアと父はお酒を飲み始めた。そう言えば、ナディアは何歳なんだ?
「こうやって楽しく食事ができ、美味しいお酒も飲める。これもご主人が妾の命を救ってくれたお蔭じゃ。とても感謝しておるぞ。」
どうやら、ナディアの一族は酒呑童子に襲われたらしい。抵抗したのだが、酒呑童子に手を貸した白虎に嵌められ致命傷を負ったとの事。いつか、その白虎と酒呑童子をぶっ飛ばしてやろう!どうやらその後に俺に会ったらしい。その後は、毎日ティナと楽しく暮らしている話をしていた。そして夕食も終わり、俺とティナと母はリビングで話をしている。ちなみに、父とナディアはまだ飲んでいる。母がお酒を飲まないから父も楽しいのだろう。二人共上機嫌である。
「ティナちゃんは、この後すぐ帰るの?」
「うん。でも、ナディアがまだ時間かかりそうだから待っている。」
「じゃあ、私と一緒にお風呂入らない?」
「え。いいの?」
「勿論よ。じゃあ、一緒に入りましょう。」
そう言って、女子二人は浴室に消えて行った。
========ここからはティナ目線========
タカミのお母さんにお風呂に誘われた。タカミのお母さんはすごく優しくていい匂いがする。私は、母親と一緒にお風呂に入ったが無い。だから少し緊張する。
「さあ、ティナちゃん一緒にお風呂に入りましょう。私が脱がしてあげようか?」
「ありがとう。でも、大丈夫。自分でできる。」
私はそそくさと服を脱ぎ、カラコンを外す。タカミの母は先にお風呂に入って頭を洗っていた。私は、身体をお湯で流し、先に湯船に入る。母がいたらこうなのかなぁって思うとタカミの母に見惚れてしまう。
「どうしたのティナちゃん。私をじーと見つめて。」
「ううん。なんでもない。もし、私にお母さんがいたらこんな感じなのかなって思って。」
タカミの母は、私に微笑みかけて
「じゃあ、ティナちゃんの髪は私が洗ってあげる。こっちにおいで」
「ううん。自分で出来るから大丈夫。」
「そんなこと言わないの。私が洗ってあげたいの。さあ、こっちにおいで」
私は、湯船を出てタカミの母の前に座る。
「ティナちゃんの髪の毛って奇麗ね。私には娘がいないからこうやって女の子の髪の毛を洗ってあげるのが夢だったのよ。」
タカミの母は優しく私の髪を洗ってくれる。
「タカミのお母さんは、私の事が怖くないの?」
「なんで?ティナちゃんはすごくいい子じゃない。」
「私は、炎の民と言われてずっと恐れられていた。皆からどっか行けって言われた。でも、そんな中タカミだけは、私に優ししてくれた。」
「うん。タカミ君は優しい子に育ってくれたよ。そんな子が連れて来たティナちゃんを怖いなんて思わないわよ。」
髪を洗い終わり、身体を洗ってくれている。
「あら、ティナちゃんは肌も奇麗ね。私なんてもう年だからやんなっちゃうわ」
「そんな事ない。タカミのママはとても奇麗で優しい。皆が怖がったこんな目をしている、私を怖くないって言ってくれた。嬉しい。」
「ティナちゃんはすごく奇麗な目をしているわ。そんな目を怖いだなんて思わないわよ。」
身体を洗い終わり、お湯で流す。
「さあ、湯船に入りましょ。」
私は、タカミの母と一緒に湯船に入る。そして私を抱きしめてくれた。
「ティナちゃん、今まで沢山辛い事や寂しい事があったのね。でも、もう、私達がいるから寂しい思いをしなくていいのよ。」
「うん。今はもうあまり寂しくない。タカミが帰っちゃうと少し寂しいけど。でも、また、ちゃんと会いに来てくれる。何ていうんだろう、今は、心が暖かい。」
「私はね、ティナちゃんみたいな娘がいたらいいなーってずっと思っていたの。だから、これからも遠慮せずに私の事をお母さんだと思っていつでも会いに来てね。」
私の頭を撫でながら優しくそう言ってくれる。“お母さんがいる”なんて考えたことも無い。物心がついた時には父と二人だった。その父にも邪魔もの扱いされていた。こんなに優しく私の事を撫でてくれるのは、タカミとタカミの母だけだ。私は、こんなに甘えてもいいんだろうか?こんなに甘えていたらいつか、捨てられるんじゃないだろうか?そんな事無いと分かっていても頭に浮かんでしまう。
「今、私はすごく幸せ。でも、いつか捨てられちゃうんじゃないかと思うとそれが怖い。」
「馬鹿ね。そんなことあるはずないじゃない。ティナちゃんと会うのは初めてだけど、私はティナちゃんも娘の様に感じているわ。だから、沢山甘えて頂戴ね。」
タカミの母は、私に優しく微笑んでくれる。ずっと冷たかった心が暖まるのがわかる。私は、知らないうちに涙を流していた。そんな私をタカミの母は優しく抱きしめてくれている。これが母のいる“幸せ”なんだと初めて感じた。
========ここからタカミ目線に戻ります。========
お風呂から二人が戻ってきた。なんか、ティナが母にべったりだ。きっと母親がいなくて寂しく思っていたティナに何かしてくれたんだろう。
「かー様、ありがとうございます。なんだかティナがすごく幸せそうです。」
俺は母にお礼を言った。
「何言っているの。私は、ティナちゃんに自分が思っていることを話しただけよ。ね。ティナちゃん。」
ティナは赤くなりながら頷く。なんか、連れてきて本当に良かった。
「そうだ!ティナちゃん、今日は家に泊まってらっしゃい。私と一緒に寝ましょ。」
ティナはビックリしたように俺を見る。俺も頷く。
「いいの?」
「もちろんよー。ティナちゃんは私の娘なんだから。」
なるほど、やっぱそう言う事ね。“タカミ”の母は本当に優しいな。
「じゃあ、僕は、父をベッドに運んどくね。」
よく見ると、父もナディアも酔っぱらって寝ている。ナディアは客室に連れて行こう。俺は、まず、父にレビテーションをかけ、浮かせてベッドまで連れて行く。次にナディアを客室のベッドに寝かせる。
「僕もお風呂に入って寝ますから、二人は先に休んでください。」
俺は浴室に行き風呂に入りながら一日を振り返る。ティナやナディアも俺のファミリーを受け入れてくれたし、そして父、母共にティナ、ナディアを受け入れてくれた。今日1日すごく人間的で幸せな時間だったと感じる。俺は、夜の鍛錬をし、ゆっくりと瞼を閉じる。父さん、母さんありがとう。
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